巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
最後の1000文字ほどは、深夜テンションで書き上げました(00:40くらい?)。なので、ちょっと変な所とかがあるかもしれませんが、ご了承ください。
「ハルカさん」
吹き飛んだシアが起き上がり、覚悟を決めた真っ直ぐな瞳で晴香の目を見る。晴香も真剣な表情をして、シアに向き直った。尚、抱えられているユエからはとても攻撃的で不機嫌な雰囲気がひしひしと伝わってきており、それを0距離で受け止める晴香の背中には気持ちの良い冷や汗が流れ出る。
S処かM気質も兼ね備える晴香である。
「私をあなたの旅に連れて行って下さいっ、お願いします!!」
頭を下げたシアに、晴香はというと・・・
「―――と、申しておりますがユエ閣下、如何しましょう?」
晴香的には連れて行ってもいい・・・と言うか、今後を考えると絶対連れて行きたい所存であった。でも、ユエが如何しても嫌と言うのならば、連れて行かずにこれからの戦略方針を練り直す事も視野に入れている。晴香はシアの参入に肯定であっても、最終判断はユエに委ねる事にしたのだ。
「んっ!拒否るが宜し!」
「ちょっ!?ユエさん!?」
満面の笑みでそう宣言したユエ閣下であり、その決定にシアが驚きの悲鳴を上げる。勝負の結果をはぐらかされそうではあったが、一応、晴香に【旅に連れて行こうと言う】と約束したのだ。守ると宣言したのだ。なのに、まさかの裏切り行為にシアが泣きそうになる・・・が。此処でユエに変化が訪れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、言いたい。でも・・・約束は守る。」
苦虫を100匹は噛み潰してしまった様な、心底【嫌です】という機嫌状態ではあるが、私はユエ。約束したことはきちんと守る女!なのである。
「・・・・・・ハルカ、連れて行こう」
「物凄く嫌そうね・・・それが、勝負の賭け事?」
「・・・無念」
心底、本当に心底無念!と言った表情で深い溜息を吐くユエの頭を撫でつつ、ユエのお許しが出たとの事で、晴香は最終確認。
「いいのね?」
「・・・・・・ん」
ユエは、不本意そうではあるが仕方ないという様に肩を竦める。この10日間、シアの頑張りを誰よりも近くで見ていたからこそ、そして、その上で自分が課した障碍を打ち破ったからこそ、旅の同行は認めるたのだ。元々、シアに対しては晴香の事を抜きにすれば、其処まで嫌いというわけではないという事もあるのだろう。
「わかったわ。シアの加入を認めましょう」
「よ、よろしくお願しm「―――その前に!」・・・ふぇ?」
感激に震えながら、喜びを爆発させようとしたシアを、晴香はインターセプトした。
「その前に、ついて来る理由を聞かせてちょうだい。カムたちの迷惑になりたくない、とか、同類だから、とか、そんな理由じゃないでしょう?」
「うっ・・・その・・・私自身が、付いて行きたいと本気で思っているから・・・」
「本音は?」
いや、大体わかるんだけど、ちゃんと聞いて回答を出さないと。
「で、ですからぁ、それは、そのぉ・・・」
「・・・」
モジモジしたまま中々答えないシアだったが、シアは【女は度胸!】と言わんばかりに声を張り上げた。思いの丈を乗せて。
「ハルカさんの傍に居たいからですぅ!しゅきなのでぇ!!」
しゅきなのでぇ!!―――しゅきなのでぇ!!――――――しゅきなのでぇ!!・・・・・・・
シアの告白が、静かな樹海に反響する。
うん。フラグが立ったのは、やっぱり長老会議で命を救ったから・・・だろう。ユエとくっ付いてるのに私の腕に抱き着いて幸せそうな表情を浮かべていたのだから。あの女の子の顔を見て好意を抱いていないなんて感じるほど、私も朴念仁系鈍感野郎じゃない。
でも、私にはユエがいる。と、『言っちゃった、そして噛んじゃった!』と、あわあわしているシアを前に、晴香は如何返答を返そうかと悩んだ。
そして、
「私には、一人の最愛で、唯一無二の特別な存在のユエがいる。だから、貴方の想いには答えられないわ。ごめんなさい」
振った。
本当に好きな私のユエは、私の心の中を完全に埋め尽くしている。そこに、他人が入り込む余地など存在しないというように隅々にまで浸食されていると言っても良い。晴香も日本のサブカルに犯されているので、百合ハーなどを考えた事は一度ではない。しかし、実際にユエという最愛が出来て、まだまだ短い間だがユエと共に育んだ愛の形が形成されてからは、百合ハーなんて如何でも良いくらい濃密なものであった。
私は、ユエに対しての独占欲とか依存度とかが、多分、凄く重い。これからを生き抜くためにはシアが必要な場面が多々あると感情で理解していても、心では私とユエの二人だけで歩みたいという思いがソレはもう強くあるのだ。そんな二人の中に異物が一人、混入してくる。
だから振った。同行は認めたが、それ以上に踏み込んでほしくなかったから。
でも―――
「ふふ・・・私も断られると思ってました―――でも、知らないんですか?未来は絶対じゃあないんですよ?」
それは、未来を垣間見れるシアだからこその言葉。未来は覚悟と行動で変えられると信じている。だから暗に、未来には私とユエの間に混入してやるという、晴香に対しての宣戦布告である。
むっ、とジト目でシアを睨みつけるユエを宥めながら、晴香はひとつ、深い溜息を吐き、シアの瞳を見つめる晴香は、その真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込む。
そして、
「そんな未来は訪れないわ。はぁ~・・・・・・兎も角。告白はお断り。でも、同行は許可するわ」
やがて晴香は、長めな溜息をつきながらそう宣言をした。
樹海の中に一つの歓声と、不機嫌そうな鼻を鳴らす音が響く。その様子に晴香は、これから本当にどうなってしまうのだろうか、と本気で不安になるのであった。
* * * * *
「えへへ・・・うへへへ・・・くふふふ~・・・」
同行を許されて上機嫌のシアは、奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた。それは、晴香と目を合わせた時の真剣な表情が嘘のように残念な姿だった。
やはり残念ウサギの名は伊達では無い。
「・・・キモイ」
「そうね」
見かねたユエがボソリと呟く。それに晴香が、小声で即座に肯定した。実際、キモイ。
しかしシアの優秀なウサミミは、その呟きをしっかりと捉えた。
「・・・ちょっ、キモイって何ですか!キモイって!嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ~何せ、晴香さんの初デレでs「いや、デレてないわよ?」―――・・・初デレですよ!見ました?最後の表情。私、思わず胸がキュンとなりましたよ~、これは私にメロメロになる日も遠くないですねぇ~!」
否定したのに、それを無かった事にしたシアは、完全に調子に乗っている。それはもう乗りに乗っている。そんなシアに向かって晴香とユエは声を揃えてうんざりしながら呟いた。
「「・・・ウザウサギ」」
「んなっ!?何ですかウザウサギって!いい加減名前で呼んでくださいよぉ~、旅の仲間ですよぉ~、まさか、この先もまともに名前を呼ぶつもりがないとかじゃあないですよね?ねっ?」
「「・・・」」
「何で黙るんですかっ?ちょっと、目を逸らさないで下さいぃ~。ほらほらっ、シアですよ、シ・ア。りぴーとあふたみー、シ・ア」
必死に名前を呼ばせようと奮闘するシアを尻目に今後の予定について話し合いを始める晴香とユエ。それに「無視しないでぇ~、仲間はずれは嫌ですぅ~」と涙目で縋り付くシア。旅の仲間となっても扱いの雑さは変わらない。
というか、変えたくない。
「・・・そう言えば、なんで軍服?」
シアとの勝負の敗北が余程堪えていたのか、晴香の服装について漸く認識したユエが質問する。全体的なデザインは晴香が行ったが、コレを着る晴香が映えるようにと細部の微調整を行ったのはユエである。そして、この服装は、来る夜戦に備えた自慢の出来の一着。
まだ昼間だし、何で夜戦装備を?と疑問に思うのも無理はない。
何なら、鞭も持ってるし。
「ああ、これはね―――」
と、晴香が説明しようとしたところで複数の気配が近づいて来る。ハウリアだ。霧をかき分けて数人のハウリア族が、晴香に課された課題をクリアしたようで魔物の討伐を証明する部位を片手に戻ってきた。よく見れば、その内の一人はカムである。史実通り、一番最初に課題を終えたようだ。
シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。たった10日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。
早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気が、何やらかおかしいことに気がついたからだ。
歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線を晴香に戻した。
そして・・・
「マム。お題の魔物、きっちり狩って来やしたぜ?」
「ま、マムっ?と、父様?何だか口調が・・・というか雰囲気が・・・」
父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。
「ふむ・・・私は一体でいいと言ったけど?」
晴香の疑問に対し、カム達は不敵な笑みを持って答えた。
「ええ、そうなんですがね?殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして・・・生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ?みんな?」
「そうなんですよ、マム。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」
「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」
「ウザイ奴らだったけど・・・いい声で鳴いたわね、うふふっ♪」
「見せしめに晒しとけばよかったか・・・?」
「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」
不穏な発言のオンパレードだった。全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたまま晴香に物騒な戦闘報告をする。
「そうなの?まぁ、課題はクリアしたし・・・お疲れ様」
「「「「「ありがとうございます、マムッ!!」」」」」
ビシッと決まる規則正しい敬礼。実戦経験が豊富な軍人が、いま、目の前に存在するような、そんな錯覚に陥りそうである。変貌し過ぎた家族・・・いや、元家族のまさかな有様に、シアは早速茫然とするしかない。
そんなシアに一瞥した晴香は、これからする事に対して如何しようかと一瞬だけ悩む・・・が、別に気にする事は無いということで、鞭を握った。
「でも・・・私が出した課題は一体の討伐。殺意を向けられたとはいえ、全部狩ってこい何て一言も言ってないわ」
鞭を握り出した晴香に対してユエは、晴香が何をするのか見当がついたようで、僅かながら目を見開いて動揺する。
まさか、えっ、そうなの?とでも言わんばかりの表情。
そして、その疑問は確信へと変わる。
「え、いや、でもですs「おだまりッ!(ベシンッ)」ありがとうございますぅッ!!」
弁解しようとしたカムに鞭が飛ぶ。当たった場所は尻。綺麗なカーブを描いて飛来してきた鞭の先端が、ここ10日の戦闘訓練と言う名の精神改造&肉体改造にて強靭化した筋肉にぶち当たり、乾いた気持ちの良い音が樹海に反響した。カムは、痛いけど気持ちいい―――ティオ擬きと化して感謝の歓声を上げた。
後続のハウリア達がカムを羨ましそうな目で見ている。なので、晴香は彼等にも平等に鞭を与えた。上がるのはやっぱり歓声。
因みに、結構な激痛なため、喰らった者達は地面に沈んだ。感に堪えない表情である。
エムノトビラ~♪|晴香が開けてくれた~・・・
ドMの扉を、晴香が開いてしまった様なモノである。しかし、こうしたのには訳があった。これから先、同じ時系列で出来事を消化していけば、多分だが、ほぼ確定でティオと出会う事となるだろう。将来的にティオの技能【痛覚変換】は凄い役立つ。なので、ハルカは出会ったら即ケツパイルを強行するつもりだ。
その予行練習的に、Mを量産した。晴香の心に存在したS心と、ハウリア達を10日間も見続けて来た晴香には、Mに対しての扱いの匙加減は無論の事、精神的な耐性も十分に備わった。これで、ケツパイルを行いドMを作ってしまっても、疲弊する事はない・・・はず。それに、Mになるならないは別として、史実並み以上に戦闘訓練をさせたつもりで有るからして、目的は達成している。
とまぁそんな理由でMの道へと堕とされたとは知らない、恍惚の表情で沈むハウリアに、汚物を見るような冷たい視線を向けたユエは、続いて晴香を見た。途轍もないジト目で。晴香はゾクっとした。
「・・・ハルカ。なんで、鞭を使ったの?」
「ん、ん~と・・・調k―――こほんっ。教育には、コレが一番適していると思ったからよ!」
その回答に、ユエはシアの同行と告白とは別の意味で、不機嫌な表情を浮かべた。ほっぺが膨らんでいる。そして・・・
「・・・・・・その鞭は、私とハルカの夜戦で使おうと思ってたのに・・・」
ちょっぴり沈んだ表情で鞭に目をやるユエ。コレで打ち付けたり、打ち付けられたりといった、ちょっぴりハードで高度なplayを、晴香と二人っきりで楽しむはずだったのに―――ハウリアの所為で、この鞭は穢されてしまった・・・と。憐憫の心である。
そんなユエに、晴香は「大丈夫よ、ユエ!」と声を掛けた。そして、【異界収納】よりあるものを取り出し、ユエに渡す。
「・・・なるほど」
ソレをみたユエは笑顔になった。
渡されたのは、一つの箱。
中には【鞭(ハウリアに使った奴とは別の奴で、本当にplay専用)】【足枷】【手錠】【目隠し】【晴香とネームプレートが彫られた鎖付きの首輪】etc・・・
つまり、今日はコレで夜戦しよっ?と、晴香が誘ったのだ。自身が
攻めて攻めてっ♪と主人にたいして尻尾を振る子犬の様な眼差しで、ユエを見る晴香に、嗜虐心の溢れる眼差しをユエは向ける。そして、ユエは箱から取り出した晴香専用の首輪を付けてあげよう――――――と、した所で、止まった。
「――――――ど、如何言う事ですか晴香さんッ!!お父様たちに何をしたんですかッ!?!?」
再起動したシアの絶叫で。