巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます。
今日の夜頃、感想返信したいと思います!
(書く時間に取られて、コメ欄みる暇がなかったです。ごめんなさいm(__)m)



50話 失意に沈むシア

「――――――ど、如何言う事ですかハルカさんッ!!お父様たちに何をしたんですかッ!?!?」

 

大混乱。今のシアの表情は、正にコレである。いつの間にか強靭な肉体を有し、歴戦の猛者となった家族に対しては勿論の事、なにより、鞭に撃たれてあんなに気色の悪い恍惚とした表情を浮かべる、変わり果ててしまった家族の、あられもない有様に、脳内は滅茶苦茶だ。

 

でも、このような有様にした犯人は判明しており、シアは晴香に詰めよる。

 

「良く聞いてくれた、シアよ。これは・・・彼等ハウリアの、懸命なる努力の賜物sa☆彡」

「なにが『賜物sa☆彡』ですかッ!!何をどうすればこんな有様になるんです!?完全に別人じゃないですかッ!!」

「私の施した訓練のカリキュラムの成果よ。凄いでしょう?(どやっ)」

 

晴香が施した訓練。それは、身体が壊れるまで体を酷使させ続ける、特殊部隊の育成係ですら顔を真っ青にしてしまいそうなほど、とても苛酷な訓練である。訓練2時間、休憩時間は10分。食事は朝昼夜の三食、睡眠時間は4時間。のペースで筋トレ、戦闘訓練、実戦、鞭打ちが行われた。

 

これ程までに酷い訓練をやらされ続ければ、当然、肉体も精神も疲弊し壊れる事となるだろう。しかし、それは晴香が許さない。限界を超える訓練に筋肉が引き千切れても、魔物との戦闘で大けがを負ってしまっても、晴香は在庫が豊富に存在する【神水】を遠慮なくハウリアに投与し続けた事により、晴香の半魔物化の様に急速に変化を促すのではなく、疑似的で緩やかな細胞の破壊と再生を繰り返させ、肉体を短期間でより強靭に育て上げたのである。

 

勿論、肉体だけを回復させたとしても、心は死ぬ。なので、晴香はかなり気を使って対処したのだ。

 

休憩時間にはストックしてい砂糖などを全面開放して菓子を作っては甘味による幸福を与え、リラックス効果の高いハーブティーを神水で注ぎ、朝昼夜の三食には香辛料を遠慮なく投入して作られた晴香手製の特性料理に舌包みを打ち、ハーブティーのとはまた違う香りでリラックス効果の高いハーブを入れた暖かなお風呂に一日の疲れを癒し、睡眠時には全身を柔らかく包み込む温いふかふかな晴香特製のベットによる至高の睡眠が与えられる。

 

ハウリア達にとって、今までに食べた事の無い香辛料マシマシの未知の料理(地球産の料理)は、疲弊しまくった心に、最大級の幸福を与えた。これにより、どんなに辛い事があっても、乗り越えた先には至高の料理が待っている!と、活力を与えた。

 

因みにだが、晴香は並み以上に料理が出来る。食材はハウリアに採取してもらったりはしたが、所持する調理器具系アーティファクトなどを用いて日本レベルと大差ない料理を提供できたのだ。

 

閑話休題。

 

なので、落第者は存在せず、男性に女性、子供から老人までもの、正に老若男女全ハウリア族は、並み以上の肉体、戦闘力、連帯、気配の操作などを身に着けた猛者となったのである。

 

確かに、この短期間で此処まで育て上げたのは凄いかもしれない。でも、変態にする必要は無かったでしょう!?と、怒りを顕わに燃え上がるシアの目と耳には、後悔も反省もしていない晴香のドヤ顔という油が注がれた。

 

結果、手を上げた。ユエとの勝負により、身体強化に特化したシアによる重い一撃は、今や樹木を一発で粉砕するレベルの威力を誇る。そのような一撃が晴香に向かう・・・が、しかし。迷宮攻略者である晴香からすれば、その程度の攻撃は、速度威力共に子供の件かレベルで遅く、弱く見える。

 

なので、ユエを抱えていない空いた手一つで簡単にあしらう事が出来た。

 

シアからすれば本気の一撃も、ぺしぺしといなされてはいなされて埒があかないと判断し、矛先をカム達に向かった。

 

「父様!みんな!一体何があったのです!?まるで別人ではないですか!さっきから口を開けば恐ろしいことばかり・・・しかも、変態に堕とされてる・・・正気に戻って下さい!」

 

縋り付かんばかりのシアにカムは、恍惚に染まる表情を元の温厚そうな表情に戻した。それに少し安心するシア。

 

だが・・・・・・

 

「何を言っているんだ、シア?私達は正気だ。ただ、この世の真理に目覚め、心の奥に存在した扉を開放しただけだ。マムのおかげでな」

「し、真理?扉?何ですか、それは?」

 

嫌な予感に頬を引き攣らせながら尋ねるシアに、カムはにっこりと微笑むと胸を張ると、

 

「この世の問題の九割は暴力で解決できる。そして、マムの鞭打ちは気持ちいいッ!!」

 

のように自信に満ちた様子で宣言した。因みに現在進行形で地に沈んでいる。

 

「やっぱり別人ですぅ~!変態ですぅ~っ!あの頃の父様は、もう死んでしまったんですぅ~、うわぁ~ん」

 

ショックのあまり、泣きべそを掻きながら踵を返し樹海の中に消えていこうとするシア。しかし、霧に紛れる寸前で小さな影とぶつかり「はうぅ!?」と情けない声を上げながら尻餅をついた。

 

小さな影の方は咄嗟にバランスをとったのか転倒せずに持ちこたえ、倒れたシアに手を差し出した。

 

「あっ、ありがとうございます」

「いや、気にしないでくれ、シアの姐御。男として当然のことをしたまでさ」

「あ、姐御?」

 

霧の奥から現れたのは未だ子供のハウリア族の少年。パル君―――否。バル君。その肩には大型のクロスボウが担がれており、腰には二本のナイフとスリングショットらしき武器が装着されている。晴香の訓練により、随分ニヒルな笑みを見せる少年になった。シアは、未だかつて【姉御】などという呼ばれ方はしたことがない上、目の前の少年は確か自分のことを【シアお姉ちゃん】と呼んでいたことから戸惑いの表情を浮かべる。

 

そんなシアを尻目に、少年はスタスタとハルカの前まで歩み寄ると、

 

「マム!手ぶらで失礼します!報告と上申したいことがあります!発言の許可をッ!」

 

ビシッと惚れ惚れするような敬礼をしてみせた。シアは引きつる。

 

晴香は内心、驚く。晴香とユエは、亜人族にたいして、そしてフェアベルゲンにたいしても友好的に接触してきた。しかし、このバル君による報告は、史実のような感じである。つまり、奴らが来た事になる。

 

「・・・よろしい。申しなさい」

「ハッ!」

 

少年の歴戦の軍人もかくやという雰囲気に、晴香の気分は司令官。少年は報告を続ける。

 

「課題の魔物を追跡中、完全武装した熊人族と土人族の集団を発見しました。場所は、大樹へのルート。おそらく我々に対する待ち伏せかと愚考しますッ!」

 

驚いた事に、今回は土人族もプラスでやって来たらしい。族長会議にで晴香が打ち破ったのは熊人族族長のジンであり、土人族といえばボロ負けしたジンの友人のような立ち位置だったはず。そして、その騒動は密閉された室内での出来事であり、族長は無論、使用人などには箝口令も敷かれて外部に漏れる事はなかったはづである。

 

なのに来た。しかも熊人族と土人族の連合で。如何やら、史実とは異なる展開を向かえたようだ。

 

「へぇ、それで?」

「はっ!宜しければ、奴らの相手は我らハウリアにお任せ願えませんでしょうか!」

「ほぅ・・・カムよ。彼はそう申しているが、そちは如何する?」

 

話を振られたカムは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると願ってもないと言わんばかりに頷いた。

 

「お任せ頂けるのなら是非。我らの力、奴らに何処まで通じるか・・・試してみたく思います。な~に、そうそう無様は見せやしませんよ」

 

スタっと音もなく立ち上がった族長の言葉に、周囲のハウリア族が全員、同じように好戦的な表情を浮かべる。自分の武器の名前を呼んで愛でる奴が心なし増えたような気もする。シアの表情は絶望に染まっていく。

 

「できるのね?」

「肯定でありますッ!」

 

最後の確認をする晴香に元気よく返事をしたのは少年だ。晴香は、一度、瞑目し深呼吸すると、ゆっくり目を開いた。

 

そして・・・

 

「聞け!ハウリア族諸君!勇猛果敢な戦士諸君!今日を以て、貴方達は糞蛆虫を卒業する!貴方達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない!力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる!最高の戦士である!決定に反し状況判断も出来ない―――な熊共にそれを教えてやりなさい!奴らはもはや唯の踏み台に過ぎない!唯の―――野郎どもだ!奴らの屍山血河を築き、その上に証を立てよ!生誕の証である!ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明しなさいっ!」

「「「「「「「「「「Sir、yes、Ma'am!!」」」」」」」」」」

「答えなさい、諸君!最強最高の戦士諸君!貴方達の望みはなに!」

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

「貴方達の特技は何だ!」

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

「敵はどうする!」

「「「「「「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」」」」」」

「そうよ、殺せ!貴方達にはそれが出来る!自らの手で生存の権利を獲得しなさい!」

「「「「「「「「「「Aye、aye、Ma'am!!」」」」」」」」」

「いい気迫よ!ハウリア族諸君!私からの命令は唯一つ!サーチ&デストロイ!行け!!」

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」

 

晴香のほぼパクリ号令に凄まじい気迫を以て返し、霧の中へ消えていくハウリア族達。温厚で平和的、争いが何より苦手・・・そんな種族いたっけ?と言わんばかり。

 

「うわぁ~ん、やっぱり私の家族はみんな死んでしまったですぅ~」

 

変わり果てた家族を再度目の当たりにし、崩れ落ちるシアの泣き声が虚しく樹海に木霊する。流石に見かねたのかユエが晴香の膝からおりて、ポンポンとシアの頭を慰めるように撫でている。

 

しくしく、めそめそと泣くシアの隣を少年が駆け抜けようとして、シアは咄嗟に呼び止めた。

 

「パルくん!待って下さい!ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ?君まで行かなくても・・・お姉ちゃんとここで待っていませんか?ね?そうしましょ!」

 

どうやら、まだ幼い少年だけでも元の道に連れ戻そうとしているらしい。傍に咲いている綺麗な花を指差して必死に説得している。何故、花で釣っているのか。それは、この少年が、かつてのお花が大好きな「お花さ~ん!」の少年だからである。(原作p36を参照)

 

しかし、晴香はお花を散らしてないので、お花を愛でる心は残っていると思われる。

 

シアの呼び掛けに律儀に立ち止まったお花の少年もといパル少年は、「ふぅ~」と息を吐くとやれやれだぜと言わんばかりに肩を竦めた。まるで、欧米人のようなオーバーリアクションだ。

 

「姐御、あんまり古傷を抉らねぇでくだせぇ。俺は既に過去を捨てた身。花を愛でるような軟弱な心は、もう持ち合わせちゃいません」

 

残って無かったのである。晴香の辛辣過ぎた訓練は、パル少年を壊し、新たなる生を与えてしまった様である。

 

「ふ、古傷?過去を捨てた?えっと、よくわかりませんが、もうお花は好きじゃなくなったんですか?」

「ええ、過去と一緒に捨てちまいましたよ、そんな気持ちは」

 

ちなみに、パル少年は今年11歳だ。

 

「そんな、あんなに大好きだったのに・・・・・・」

「ふっ、若さゆえの過ちってやつでさぁ」

 

繰り返すが、パル君は今年11歳だ。

 

そして、なにより・・・

 

「それより姐御」

「な、何ですか?」

 

『シアお姉ちゃん!シアお姉ちゃん』と慕ってくれて、時々お花を摘んで来たりもしてくれた少年の、余りにも見るに堪えない変わりように、意識が自然と現実逃避を始めそうになるシア。パル少年の呼び掛けに辛うじて返答する。しかし、それは更なる追撃の合図でしかなかった。

 

「俺は過去と一緒に前の軟弱な名前も捨てました。今はバルトフェルド【必滅のバルトフェルド】。これからはそう呼んでくだせぇ」

「―――誰!?バルトフェルドってどっから出てきたのです!?ていうか必滅ってなに!?」

「おっと、すいやせん。仲間が待ってるのでもう行きます。では!」

「あ、こらっ! 何が【ではっ!】ですか!まだ、話は終わって、って早っ!待って!待ってくださいぃ~」

 

恋人に捨てられた女の如く、崩れ落ちたまま霧の向こう側に向かって手を伸ばすシア。答えるものは誰もおらず、彼女の家族は皆、猛々しく戦場に向かってしまった。ガックリと項垂れ、再びシクシクと泣き始める、失意に沈んだシア。既に彼女の知る家族はいない。実に哀れを誘う姿だった。

 

そんなシアの姿を何とも言えない微妙な表情で見ているユエ。晴香はというと、これで私に対する好意を少しでも下げられたらいいなぁ~という思惑を心の中で隠しながら、ちょっぴり気まずそうな表情だ。ユエは、晴香に視線を転じるとボソリと呟いた。

 

「・・・流石晴香。人には出来ないことを平然とやってのける」

「すごいでしょう?」

 

なでなで。雰囲気がちょっぴり甘くなる。

 

「・・・ん・・・闇系魔法も使わず、洗脳・・・すごい」

「ありがとう♪でも、シアには少し可哀想な事をしちゃったかな?・・・反省も後悔もないけど(ぼそっ)」

 

しばらくの間、ハウリア族が去ったその場には、シアのすすり泣く声と、微妙な空気でもイチャつく、敢えて空気読まない系主人公&ヒロインがいた。

 

 









次回、新生ハウリア対熊土連合軍決戦






・・・ネーミング微妙ですね(熊土とか特にw)
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