巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
不思議そうに配られたプレートを見る生徒たちを横目に、私は香織さんの後ろに隠れる様にして陣取ると、誰も注目していないのを確認してから針を指に刺した。ぷつりっと出て来た血液を、プレートの魔法陣に擦り付けると、直ぐに両手で抱え込んだ。
ステータスプレートに血を垂らす事によって、本人登録が完了するのだが、その時に淡く輝く。これはこのプレートに本人の魔力を刻むためらしい。因みにだが、私の魔力の色はハジメさんと同じく【空色】である。これはもしかしなくても、生産系の天職かもしれない。なら、私は【錬成師】で有る事を切に願う。
閑話休題。
もう一つの理由は、発光現象により、まだ扱い方を教えて無いはずなのに、登録方法を知っているのがバレるのは不自然極まりないからだ。それに、自身の技能を先に確認して、公開したくない技能を隠蔽する為でもある。このカードは便利な事に、能力値や技能を隠蔽できる機能があり、それは本人にしか操作できない。因みに、この【隠蔽が出来るよ!】って事は教えられないので、此処に居る生徒たちは隠蔽機能を知らないので、そのまま開示する事となる。
さて、皆にバレぬよう、私の能力を見ようではないか。
こっそりやっていると、この場に来た騎士団長であるメルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
騎士団長が訓練に付きっ切りで良いのかという疑問を持つかもしれないが、対外的にも内面的にも【勇者ご一行】を半端なものに預ける訳にはいかないという事らしい。メルド団長本人も「むしろ面倒な雑用を副団長に押し付ける理由が出来て助かった!」と豪快に笑っているので、本人は問題ないようだが、押し付けられた副団長さんは大丈夫では無いかもしれない。
「よし、全員に配り終えたな?このプレートはステータスプレートと呼ばれて・・・」
メル団の説明を耳にしながら、私は”ステータスオープン”と小声で唱えた。
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綾瀬春香 17歳 女 レベル:1
天職:錬成師
筋力:50
体力:45
耐性:50
敏捷:65
魔力:230
魔耐:230
技能:錬成
[+鉱物系鑑定][+鉱物系探査]
弓術
火属性適性
土属性適性
全属性耐性
魔力感知
言語理解
異界収納
[+重量無制限][+内部時間停止]
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―――っ!?
思わずガッツポーズを取ろうとしてしまったが、寸での所で思いとどまれた私を褒めて欲しい。錬成師であれば、ハジメさんが取るファンタジーの世界観を壊す、邪道ともいわれそうな【銃による】戦法が可能となる。勿論、銃器一つ作るのには途方もない時間と試行錯誤を繰り返す事となるが、それでも高威力の攻撃をノータイムで叩き込めるのは、接近戦や矢や魔法による遠距離攻撃しか存在しないこの世界では途轍もないアドバンテージになるだろう。
強力な魔物にも対抗できるソレは、ハジメさん自身が証明している。
しかし、錬成師でなかった場合に備えた計画数十パターンが無駄になったが、それは些細な事だ。
他にもハジメさんが所持しておらず、殆ど周りの人が持つ事となる技能が多い中、一際異彩を放つ技能がある。それは【異界収納】。こんな技能は、ありふれでは登場せず、全く見たとこがないけど、そのほかの物語・・・例えば、同じようなファンタジー世界を舞台にした小説には似たスキル【アイテムボックス】がある。これは、そのアイテムボックスと殆ど同じ機能をする技能らしい。
なので早速、【異界収納】を隠蔽した。これがバレれば非戦闘職であるからとして、迷宮攻略を行う皆の物資を運ぶ【お荷物係】に強制就任させられる。迷宮内でも魔法が使えるので、水属性適性者により水は確保できるが、食料は持参しなければならない。魔物は猛毒で食べられない
そんな事にならないように私の【異界収納】へ、物資なり色々積み込めば問題は無くなる。その分、皆の生命線となるので、探索中の一人行動は必然的に出来なくなってしまう。それは、今後の計画の破綻を意味しているので、一人行動が出来る様、私の存在価値を下げなければならない。
存在価値を下げないと行けないのだが、魔力と魔耐が勇者である光輝の100を軽く上回っている。軽く二倍だ。これは、同じく100に修正しておいた方がいいだろう。
本当の数値のまま公表してしまえば、勇者よりも一部ステータスが突出していると忽ち騒ぎになり、より注目されてしまう。
何度も言うが、今注目されるのは避けねばならない。
「・・・プレートの一面に魔法陣が刻まれて居るだろう?そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所有者が登録される。”ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ。」
「アーティファクト?」
光輝が皆を代弁して質問する。それにメル団がフランクに答えた。
「アーティファクトっていうのはな、現代じゃ再現できない強力な能力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属たちが地上にいた時代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、昔からこの世界に普及している唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝にもなるもんだが、これは一般市民にも流通している。身分証明に便利だからな」
因みに、このステータスプレートを制作するアーティファクトも存在しており、毎年、教会の厳重管理のもと必要に応じて制作・配布がなされているとのこと。
それらの説明に「なるほど」と頷きつつ、私を含めた生徒たちは顔を顰めながら指先に針をちょんと刺し、ぷくっと浮き上がった血を魔法陣に擦り付ける。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。私も同じことをやったが、勿論登録されているので光る事はなかったが、真似だけでもしておけば怪しさは出ない。魔力の漏れが見れないのも、影に隠れているので気にさえされなかった。
ステータスプレートの色が変わった事に、ハジメさん以下全生徒が瞠目している。私は振りだ。
そんな生徒たちにメル団が説明を加える。曰く、魔力と言う者は人其々違う色をもっているらしく、プレートに自己の情報を登録すると、所持者の魔力色に合わせて染まるとのこと。つまり、そのプレートの色と本人の魔力色の一致を持って身分証明とするのである。
私の魔力色はハジメさんと同様に近い【空色】で、勇者(笑)は純白、龍太郎は深緑色、香織ちゃんは白菫、雫ちゃんは瑠璃色である。
「珍しいのは判るが、しっかり内容も確認してくれよ」
苦笑いしながらメル団が確認を促す。その声で生徒たちはハッとしたように顔をあげて直ぐに確認に入った。私は隠れるのを止めて、雫ちゃん達のグループに混ざると、恰も今初めてステータスを見るよといった感じに視線を落とす。そして、彼女たちのステータスをチラ見。雫ちゃんは剣士、香織ちゃんは治癒師、鈴ちゃんは結界師と、変わっていない事に安心する。ハジメさんのを確認できないのが残念だが、直ぐに分かるだろう。
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