巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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9話 【オルクス大迷宮】

【オルクス大迷宮】

 

それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、改装が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測り易いのと、地上の魔物よりも良質な魔石を体内に抱えているからだとか。

 

魔石とは魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな魔石を備えており、この魔石は魔法陣を制作する際の原料となる。魔法陣は唯描くだけでも発動するが、粉末状にした魔石を染料に混ぜるなりした場合と比較すると、効果は三分の一まで減衰する。

 

ようは、魔石を使う方が効率的ということ。

 

因みに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、魔力はあっても詠唱や魔法陣を制作できない魔物が使う唯一の魔法である。一種につき一種類しか使えない代わりに、詠唱も魔法陣も無しに放つことが出来る。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

私達は、メル団率いる騎士団員数名と共に【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者たちの為の宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

「おぉ~素朴な部屋で安心する!!」

「今まで豪華絢爛な内装で、正直辟易したからね・・・」

 

二人部屋であり、私の同居人は鈴ちゃんである。この時のハジメさんは何故だか分からないが1人であり、寂しくなんてないもん!っと、負け惜しみの様な事をしてらっしゃるとか。明日の早朝から実戦訓練が始まるので、早めに就寝しようとしたところでネグリジェ姿な香織ちゃんの突撃に合うようだが、此処は何も手を加えない。例え傍で、あの人物が潜んで居ようと。事実、彼が行動を起こすのは明日()()()()()だからね。

 

「ねぇねぇハルチン!カオリンの部屋行こうよ!」

「ほら、明日朝早いってメル団が言ってたでしょう?だから、早めに寝よう?」

 

せっかくのお誘いだけど、明日の為に私は備える事にする。

 

「えぇ~夜はこれからだよ!」

「・・・そう?なら、私のベットに来る?大丈夫、優しくするよ・・・?」

「ふぇっ!?い、いやそういう、訳じゃ」

 

ペロリっと舌なめずりして微笑めば、面白いように動揺する鈴ちゃん。ふふふ、可愛い・・・

 

「なに勘違いしてるの鈴ちゃん。ただ一緒に寝ようって、誘ってるだけだよ?」

「ま、紛らわしぃっ!!」

 

本当に襲う訳ないじゃない。

 

結局、別々で寝る事になりましたとさ。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

翌朝。まだ日が昇って間もない頃、私達は【オルクス大迷宮】の正面入り口のある広場に集まっていた。誰もが少しばかりの緊張と未知への好奇心を表情に浮かべている。もっともハジメさんだけは少々複雑そうな表情を浮かべているようだ。迷宮と言えば定番の洞窟ではなく、博物館の入場ゲートの様な入り口だからね。想像してたの違ってたようだ。私は知ってたけども。

 

入り口付近では露天などが所狭しと並び立っており、それぞれの店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

そんな喧噪に揉まれながら、メル団の後をカルガモのヒナの様に付いて行った。

 

迷宮の中は外の騒がしさとは無縁であった。縦横5メートル以上ある通路は明かりも無いのにぼんやり発行しており、松明や灯りの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。前にウォルペンさんに頼んで貰った【緑光石】という特殊な鉱石が多数埋まっており、【オルクス大迷宮】は、巨大な緑光石の鉱脈を掘ってできている。

 

一行は隊列を組みながらぞろぞろと進む。しばらく何事も無く進んでいると広場に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは7、8メートルくらいはありそうだ。その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出て来た。あれがラットマンか・・・

 

「よし、光輝たちが前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが大した敵じゃない。冷静に行け!」

 

その言葉通り、ラットマンは結構な速度で飛び掛かって来た。灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はネズミっぽいが・・・二足歩行で上半身がムキムキだ。八つに割れた腹筋と膨れ上がった胸筋の部分だけ毛が無い。まるで見せびらかす様だ。正面に立つ光輝たち―――特に前衛に雫ちゃんの頬が引きつる。気持ち悪いらしい。

 

間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子である中村恵里と谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。光輝は純白に輝くバスタードソードを高速で振るって数体をまとめて葬っている。彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は【聖剣】である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという”聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 

龍太郎は、空手部らしく天職が【拳士】であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 

雫は、サムライガールらしく【剣士】の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

 

流石お姉さまです!・・・あれ、なにか違う様な?

 

私達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――【螺炎】」」」

 

三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命した。そして気が付けば広場のラットマンは全滅していた。他の生徒たちの出番は無し。既に弱体化したメル団並みの戦力を備えた光輝たちには、ラットマンは弱すぎた。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ!次はお前たちにもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメル団。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメル団は肩を竦めた。

 

「それとな・・・今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

メル団の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返した。私は生産職ということで戦力には慣れないから、ということで貰ったアーティファクトである弓矢を用いて遠距離から確実に仕留めるアウトレンジ戦法を取っている。もし仕留められなくても他の生徒や騎士団員が倒してくれるので問題ない。何とも安全でつまらない戦闘であった。

 

チート集団である私達は、順調に階層を下げて行く。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている、私にとっては運命を左右する二十階層へと着いた。

 




指摘に「ご都合主義ばかりで【ピーっ!!(モザイク音)】」とありましたが、今後は一部を省いてご都合主義を少々、後は春香の実力とありふれ知識で頑張らせる予定です。本当にどうしようもない時にはご都合主義を捩じ込みますが・・・
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