陰キャなんで恋愛なんてしません   作:*白湯*

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前回挨拶を忘れてました白湯です
三日目坊主とならずにどうにか四日目まで到達しました
今日確認したら初めてのお気に入り登録がされていてとても嬉しかったです
このお気に入り登録を励みに毎日頑張って投稿していこうと思います
明日はもしかしたらニ本投稿するかもしれないです


生徒会なんで2

しばらく気まずい時間を過ごした後、机の上をおそらく今回行う会議の資料がすーっと静かに移動してきた。

その資料を動かした主を見ると、とても恥ずかしそうに指で資料を押している黒岩の姿があった。

何、呼んだのって資料渡すためだったの?

どこまで恥ずかしがり屋なのこの子、何そんなに恥ずかしい?

それとも俺と話すのがそんなに嫌だったの?

とりあえず資料をスライドさせて自分の机の見やすい位置に置いた。

「これ、今回の?」

「目を通しておいて欲しいのだけれど」

なに、話しかけるのがそんなに苦手?さっき廊下で会った時は挨拶出来てたじゃん。

二人だとそんなに話しかけずらい?

というか話しかけるのだけ済んだらすらすら喋れるのね。

黒岩の不器用ぶりは学年でも有名ではある。

表に出る時、もしくは生徒会などの公的な会話は問題なく出来るのだが、これが1対1となると全くと言っていいほど会話ができない。

基本的に挨拶や誰かに話しかけられればすらすらといつもの口調で話すことは出来るのだが、これが話しかけようとするといつもの調子を狂わせてしまう。

俺も基本会話は受け身だが、流石に話しかけられないということはない。

一応だが、嫌っているサッカー部でも話をすることは出来る。

黒岩の会話下手は本人にとっても周りにとっても筋金入りの問題だろう。

しばらく資料に目を通しているとベランダの扉が開き七海先輩が戻ってきた。

「よーし、そろそろ始めようか」

その一声で全員が会議へと意識を切り替える。

「明日は科学部主催で行われる科学祭りのお手伝いです。基本的に資料にある通り受付とその他の雑務がお仕事です」

資料を見ると先輩の言う通り小中学生向けに科学部が行うという科学祭りの内容、そして、生徒会の仕事内容が書かれていた。

だが、その仕事内容を見ると振り分けられている仕事量が現状の生徒会の人数とは合わないものだった。

「あの、先輩。これ仕事量に対して生徒会の人数が足りないのですが」

俺の疑問は黒岩が代弁して先輩に聞いてくれた。

その質問に対して先輩は、ぽかーんと思考が停止したように黙ってしまったが数秒後にはっと何かを思い出したように質問の答えをくれた。

「あー、明日はね。(だい)ちゃん先輩とゆかつんが来てくれるよ」

「あー、なるほどです」

え?それってなるほどで済むの?

あの人たち受験生でしょ?てか今任期続いてるのかどうかの凄い曖昧な立場じゃん。

まぁ、生徒会の人数不足はこちらとしても懸念している問題ではあるが、先輩たちに手伝わせるのは良いのか?

「先輩たち受験は大丈夫なんすか?」

「あの人たちは大丈夫だからそこは気にしなくていいよ」

自分の思っていることを率直に先輩に聞いてみたが、なんか大丈夫らしい。

「とりあえず振り分けだけど受付は私と花ちゃんとゆかつんでやるとして、それ以外は大ちゃん先輩と天ちゃんに任せる感じで大丈夫かな?」

「問題無いですね」

「まぁ、やってくれるなら」

俺なんかが受付やったら小中学生すぐ帰っちゃうよ。

適材適所という言葉の通り人には向き不向きがあり、それに従うのもまた社会の摂理である。

だが、雑用というのは一見面倒くさそうに見えて全ての基礎となる素晴らしい役目なのだ。

皆が嫌だと思うことを進んですること、これが出来ることにより周りとのアドバンテージが生まれる。

これは自分でも誇って良い事だと思える。

というか皆がやりたがらないからやらされてるだけなんだけどな。

まぁ正直言って雑用がいないと何事も回らない気がするから本当に大事だとは思う。

そこからはほぼ確認だったので流れるように会議が進んで行った。

どうやら俺の役目は何回か分けて行われる電気パンとやらの抽選係らしい。

これに関しては今年からの試みらしく、前例がないので大変かもしれないと先輩に言われた。

何より問題だと思えるのがそれに関しての詳しい説明を受けていないことだ。

これは七海先輩が悪いのではなく科学部の担当の教師の連絡不足だろう。

大人なんだから報連相ぐらいちゃんとしろよ。

「天ちゃん大変かもだけど大ちゃん先輩と頑張ってくれたまえ」

「はぁ、最善は尽くします」

そんなに簡単に言わないでくれよ…まぁ文句は先生に言うとしよう。

「では、今日の会議は終了で。私電車の時間あるからお先に」

そう言うと七海先輩はすぐにカバンを背負って生徒会室から出て行ってしまった。

外を見るともう既に日も暮れて空には大きな月が昇っていた。

「お前もう帰る?」

「いいえ、まだ帰らないけど 」

「そうか」

特に意味もないが一応会話をしようと試みたが、これが悪手だった。

先程のこともあり、余計気まずい空気になってしまった。

とりあえず何かしなければと読みかけだった本を取り出して読み始めた。

確認するために黒岩の方を見ると、資料に何か書き込みを始めていて変に気を回していたのは自分だけなのだと気付き少しほっとした。

恐らくこちらに用は何も無いだろうと思い、ゆっくり視線を黒岩からページへと落とした。

それから本当に何も無く、ひたすらページを進めているとまた向かいの席から咳払いが聞こえてきた。

「あの、帰らない?」

「お、おう」

黒岩からいきなり出てきたとんでもなく曖昧な提案に対して、俺は中途半端な返答をしてしまった。

え?どういう事なのそれ。

え?待ってどう意味でそれを聞いたんだ?

あの、そろそろ帰らない?の意味で聞いたの?

それとも、あの一緒に帰らない?の意味で聞いたの?

え、わかんない。とてつもなく分からない。

俺が心の中で動揺していると、先に黒岩が帰る支度を初めてしまったの

でそれに合わせて俺も支度を始めた。

俺はあまり物をカバンから出していないためすぐに支度は終わったが、黒岩は資料やら何やらをしまっていて時間がかかっていた。

先程の疑問が晴れない以上どちらか分からないので、先に出ては行かずに待つことにした。

しばらくすると黒岩は支度を終えて扉の方へと向かったので、俺もそれの後をついて行った。

最後に出るなら鍵を閉めようと入る時に自分で置いた場所に向かったが、そこに鍵の姿が無かったので黒岩が取ってくれたのだとすぐに分かった。

何もしないのは悪いので出る時に部屋の電気を全て消してから出ると、俺が出て直ぐにカチャンと鍵を閉める音が聞こえたので、鍵をよこせと黒岩に対して手を差し出した。

鍵を閉め終えて振り返った黒岩は俺の差し出された手に対して何これ的な視線を浮かべて小首を傾げていた。

黒岩は少し考えた後に何を考えたのか鍵を持っていない方の手を俺の手の平の上にポンと乗せてきた。

え?何この子お手だと思ったの?んなわけないやん、よく考えてよ…

てか、なんだよこいつ可愛いかよ…

「いや、鍵を…」

俺がそう言うと顔が火でもついたように真っ赤になり、すぐさま反対の手にある鍵を手の平に置いてきた。

まじで、ほんとに気まずすぎるんだけど。

黒岩も恥ずかしさからか足早に生徒会室の前を後にしたので、その後を俺も一定の速度で追いかけた。

玄関まで降りると文化部と思われる生徒がちらほらと下駄箱で会話をしていた。

黒岩の後をつけていた俺は下駄箱に曲がらずに職員室に向かおうとする黒岩に帰っていいと言おうとしたところ、職員室から町田先生が帰りの支度を済ませて出てきた。

「天草と黒岩か、会議は終わったのか?」

「えぇ、今鍵を返しに来たところで」

「なら、私が貰っておこう。わざわざ職員室に入るのも面倒だろう?」

「まぁ、助かりますが、先生この後婚活パーティーでは?」

俺のその質問に対して先生の膝がガクンと落ちたような気がしたが、とても動揺した口調で先生は堂々とシラを切った。

「あ、天草は、な、何を言ってるんだ?」

「いや、ほら先生も忙しいですし生徒に甘えてくださいよ。先生の幸せは僕らの幸せですよ?遠慮なんてしないでッ…!?」

俺の言葉は最後まで言わせて貰えなかった、それもまっちーが俺の胸ぐらを掴んで耳元で囁いてきたせいだ。

「天草ァ、いいか?私は鍵を返すと言っているんだ、先生のいうこと聞けるよな?あとは余計なことを言わずにすぐさま帰れ分かったな?」

「ひゃ、ひゃい」

怖い、年増の女性怖い。

いいな、いいな、若いっていいな。

僕は帰ろ、お家へ帰ろと心の中で歌いながら急いで下駄箱へと向かった。

下駄箱に向かうと既に黒岩が靴を履き替えており、扉の前で待っていた。

待っていてくれたのなら申し訳ないので急いで靴を履き替えた。

俺が靴を履き替えて歩き出すと同時に黒岩も体を外へと向けて歩き出した。

二人ともこの市に住んでいるのだが、正門まで進むと家の方向が違うので曲がる方向も自動的に変わってくる。

秋の乾いた冷たい夜風が体に刺さるように吹き、俺は冷静になった。

そもそも一緒に帰るわけがないのだ。

俺と黒岩は生徒会であるという関係でしかなく、それ以上の関係性はないのだ。

ここまで一緒であっても正門からは家の方向が違う。そこから別れてしまうのだから、一緒と言ってもここまでと考えるのが普通だ。

俺と黒岩がそれ以上の関係である必要もなく、ましてやそこまでの関係でもないのだ。

黒岩が正門を右に曲がるのならば、俺は左に曲がり自分の家に帰るのが普通のこと。

そうだ、俺は普通に正門を左に曲がればいいのだ。

俺にとって恋愛などはもう無縁のことだ。

そんなことにわざわざ近づいていく必要も無いのだ。

玄関から正門まではわずか数百メートルしかない。

ないはずなのだがこの数百メートルが俺にはとてつもなく長く感じてしまった。

黒岩は正門まで行くと彼女の家がある右の方へと曲って行った。

ならば、俺はこのまま左へと曲がるだけだ。

俺は夜風による寒さを凌ぐために両手をブレザーのポケットに突っ込んで、足早に正門を出て左へと曲がって行った。

正門の右など確認はしない。

黒岩がどうしているかなど気にしてはいけない。

いや、気にしているのは何故だ。

とにかく自分の家へと帰ろう。

俺は陰キャなんだ。

周りとは違う、どうせ俺の名前を覚えている奴などいないのだから。

そもそも、陰キャなのだから恋愛などするわけがないだろう。




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