俺の幼馴染みはヤンデレです 作:太公望
ラストなんで頑張りました
頑張ったんで(たぶん)長いです
今日は文化祭の最終日。そんな朝に俺は隣の家の玄関の前、つまり千聖の家の玄関の前に立っている。
「っっっ! さっむ! もっと厚着してくればよかったわ」
いきなり吹いた強風に体温を奪われながら呟いた。こんなことになりながらも玄関の前にいる理由は、千聖を今日の後夜祭のダンスパーティーに誘うため。なんだけど、誘うタイミングが見つからなさそうだから朝一緒に登校して、そこで誘おうって言う作戦を成功させるため。
なんで千聖を誘おうとしてるかと言うと、実際のところ理由はあんまりない。強いていえばずっと一緒にいた幼馴染だから高校最後の文化祭で一緒に思い出を作れたらなってこと、最近様子がおかしいからそこでなら話せるかもってこと、この2つぐらい。
「うし、ちさt『いってきます』ぐふっっ」
「よ、耀太!?」
俺が千聖の家の扉を開けようとした瞬間、逆側から千聖がドアを開けた。つまり、俺の顔面にクリーンヒットした。寒さもあり、当たったところが分かるように縦一直線に跡が出来ていた。
「ご、ごめんなさいね」
「いや、俺が悪い。ついでに運も悪い……」
「それよりどうしたの? 耀太が私の家まで来るなんて……」
千聖は当たり前のことを聞いてきた。だけどその言葉からはいつもの千聖からは感じられない不安が感じられた。まぁそれはしょうがない。とりあえず誘うだけ誘うか。
「一緒に学校行かね?」
「……久しぶりにそれもいいわね」
俺と千聖の2人きりで学校への道を歩く。文化祭が始まってからはいつも誰かと登校していた。何か話しながら登校していた。
だけど、俺と千聖の間には会話は一切ない。そうしている間にも学校が見えてくる。学校に行ったら話しづらいからな……ここで言うしかないか。
「今日の後夜祭さ、相手いなかったら一緒に躍らね?」
「!? ……わかったわ。キャンプファイヤーが始まる5分前には屋上にいるから。またあとで」
「ああ。またあとでな」
またあとでと言ったものの、午前中は生徒会で忙しく、千聖と会う機会は1度もなかった。
そしてお昼頃になってやっと生徒会から開放された。と、思いきや今度はクラスの出し物の喫茶店。おれの仕事はフロアスタッフで注文を受けるのと注文の品を持っていくこと。でも服装が魔王のコスだから厨二病みたいな発言ヨロシクって言われてるんだよね。
「はぁぁ……もう疲れた」
「ヨーター! 今度これおねがい!」
注文を受けてキッチンに連絡して注文の品を持っていく。この一連の作業を何度も何度も繰り返していく。俺はそんな作業に飽きると言うよりも疲れを感じていた。いつもとはまた違う疲れ。多分だけど千聖のこと考えてるんだろうなって自分でも思う。こんなこと無かったのに……
「ヨータ、今日なんか変だよ?」
「我は普通だぞ?」
「ほら、妾と話す時も魔王ボイスで喋ってるもん」
「あ、無意識じゃん」
サーリャに言われた通り、俺は無意識に魔王ボイスのまま会話をしていた。ずっとこのままいなきゃ、って感じの感情なのかな。俺もなんかわかんないけどモヤモヤしてきてる。
「むぅ……そんなヨータつまんない! 遊び行くよ!」
「でも仕事が『カノン! あとよろしゅう願うなり!』
「う、うん……!」
妾はいつもと雰囲気が違うヨータを連れて学校を回ろうとしていた。朝、チサトと一緒に学校来た時からどこかおかしいと思ってて、カノンも一緒のことを思っていたらしく、「なにかあったら任せて」って言ってくれたからカノンの言葉に甘えてヨータを連れ出した。
「どこに行きたい? お化け屋敷? わたあめ?」
「俺はどこでもいいかな」
「それじゃお化け屋敷に決定じゃ!」
そう言って連れてきたけど、すっごく並んでた。最後尾は30分待ち……待とうかな。
「30分待ちか。それまで暇だな」
「そうよの〜。そうだ、今日嫌なことあった?」
「……いや、なんもねーよ」
妾でも一瞬でわかるほどわかりやすい嘘。そんな嘘をついて妾を騙せるわけが無い。だって……ヨータのこと考えると同じような嘘つくんだもん。実体験があるからわかること! 妾は天才!
「あ、耀太先輩とサリヤス先輩じゃないですか」
「足元気をつけてくださいねー」
順番が回ってきて受付席に行くと、ミサキとアリサがいた。ヨータの様子を見て何となく察してくれたみたいでその事には触らずに接してくれたからあとは妾が頑張るだけ。ヨータに元気だしてもらわなきゃ!
「ワーーー!!!」
「オバケメイクかわいいね!」
「いやそこは驚くところだろ」
「あ、そっか!」
ちょっとズレた反応をしたことをヨータに言われて気づいた妾。こうやっているとマミーと一緒にいるみたい。こんな妾でヨータのこと元気にできるかな……ちょっと不安になってきたかも。
そうして最終日の文化祭を満喫して、キャンプファイヤーが始まる15分前になった。周りではカップルが校庭にでて踊ろうとしていたり、男子が女子をナンパしたりしていた。
「なぁサリヤス、俺って千聖のことどう思ってたんだろうな」
「ヨータがチサトのこと?」
「そう。サリヤスも分かると思うけどさ、俺と千聖は幼馴染で俺にとっては一緒にいて当たり前だった。それはウザイほど絡まれたりするのも含めてな。全部ひっくるめて千聖だったし、今の千聖はなんか違うんだよな」
ヨータの言うことも何となくわかった。妾が来た頃、チサトは「ヨータは私のモノ!」って感じで妾は近づけなかったし、チサトはヨータのことを離そうとしなかった。
でも、今のチサトは違う。ヨータの事が大好きって言うことは変わってないんだけど、ヨータを自分から手放してる感じがする。まるでチサトがヨータのことを嫌いになったみたいに突き放している。チサトがそうしたいんだったら好き好き大好きって感じにはならないと思う。だけど……妾はヨータを見るチサトを見てて羨ましいって思っちゃってる。妾はヨータのことを欲しいって思っちゃってる。例えるなら妾が来た頃のチサトみたいに。
今だってそう。ヨータが妾に話しかけてきてくれて嬉しい。このままずっと2人でいたい。ヨータを
「妾はね、ヨータはチサトのこと好きだったんじゃないかなって思うの。好きじゃなかったらヨータはそんなにチサトのこと考えないと思うよ? それにね、好きな人のことを考えると、ここがキューってなってモヤモヤしてぐるぐるするの」
妾は自分の胸の当たりを指さして話を続けた。
「だからね、ヨータはきっとチサトのことが好きなんだよ。チサトはヨータのことが大好き。だけどきっと我慢して今のヨータみたいに苦しいんだと思うの。それを無くしてあげられるのはヨータだけだよ?」
「そっか……」
ヨータはそう呟いて空を見上げた。
「千聖のこと好きなのか……だったら言うことは決まってる。ありがとな、
「妾は後の世に君臨する大魔女のサリヤスだぞ〜!!!」
「そうだったな。んじゃ、約束あるから行ってくるわ」
「行ってらっしゃい!!!」
妾はヨータの背中を見送った。誰にわからないように、誰にも見えないようにヨータの背中に向けて手を振った。これで良かったんだ。大魔女の妾が我慢すればいい。大魔女の妾だけが悲しめばいい。いい大魔女は誰にも頼らないのに1人ですっごくつよいって本で読んだもん。
「……あれ?」
突然頬を伝った一筋の涙。止めようと拭うけど、拭えきれないほど溢れ出てくる。それと一緒に嗚咽も込み上げてきてその場に座り込んだ。
「いやだよぉ……好きだよヨータ…好き、好き、大好き! いかないでよ……」
我慢しなきゃ。そう思っても立ち直れない。我慢しなきゃまた独りになる。我慢せずにいたらみんなを困らせてみんなを悲しませる。それがわかっていても止めることが出来ない。
ヨータは我儘な妾のことを構ってくれた。いや、構ってくれたんじゃない、一緒にいてくれた。ヨータの隣にいたい。ヨータの隣で笑っていたい、一緒に笑いたい、甘えたい。チサトでもアヤでもサヨでもない、
それが出来ないことがわかっている。だから今だけ、今だけは泣いていいんだよね。誰も怒らないよね。
「さびしい……よぉたぁ……いかないで、そばにいて欲しいよぉ……ひとりに…しないで……」
耀太との約束の時間の少し前、私は1人で屋上にいた。外はやはり寒く、風が寒さを風と共に吹き付ける。やはりコートだけでは寒いと思いながらポケットに手を入れて1人で待つ。
私は今まで何をしてきたのか、私は何をしたかったのか、私は誰が好きだったのか。そんなのは決まっている。私は耀太に認められたい、耀太と一緒にいたい、パスパレの中でも耀太のことが好きで好きでたまらない。
だけど、その思いは私から耀太に向ける一方的なものだった。それを今考えてみると耀太自身の枷になっていたのかもしれない。
「私は今まで何をしてきたのかしら」
自分がしてきたことに呆れながら呟く。いつからだろうか、私は耀太のことを苦しめていたのかもしれないと考えるようになったのは。私が諦めればきっと耀太は幸せになれると思ったのは。
私なんかじゃ耀太に見合わないもの。耀太といる時間が人一倍長いからって調子に乗っていた。身長も小さいし、ベースも上手く引くことが出来ない。お芝居だって下手だし、パスパレだって私がいなくてもきっとうまくやって行ける。
そして合図となる吹奏楽部の演奏と共にキャンプファイヤーの火は灯された。
「ハァ、ハァ……千聖!」
「耀太……そんなに急がなくても間に合ったわよ?」
「いいんだよ。1秒でも待たせるのは悪いだろ」
今もこうして耀太は自分が苦しむより人のことを考えて行動している。私じゃ耀太のように行動できないわ。こんなにも人のことを考えて自分のことを押し殺すことなんて……生き地獄のようなものじゃない。
「っっ……ふぅ、踊ろうぜ」
「もう大丈夫なの?」
「まぁな。昔から体力はそこそこある方だし。そんじゃ早速お手を拝借お姫様。ってか?」
「ええ、しっかりとエスコートしてね? 王子様」
耀太に手を取られて私は踊り始める。基本的なステップはドラマでやったっきり。そんな私を完璧にリードしてくれる耀太。きっと薫の入れ知恵だろうけど、それだけじゃないわね。
目と目を合わせて見つめあって微笑みを交わす。私と耀太の間には朝のように会話はないが、朝とは明らかに違う空気が流れていた。
「これで3校合同文化祭の全日程を終了します。みなさんお疲れ様でした……!」
燐子ちゃんの放送によって文化祭は終わった。そして私と耀太のダンスも終わり、私は自分の思いを告げる覚悟を決めた。
「耀太、話があるの」
「奇遇だな、俺もだよ。お先にどうぞ」
「ええ……」
そして私は一息ついて口を開いた。
「耀太のことは今日、今ここで諦めるわ。おやすみなさい。今日は楽しかったわ。そして……さようなら」
私は立ち尽くす耀太をそこに残して屋上を去った。
「耀太のことは今日、今ここで諦めるわ。おやすみなさい。今日は楽しかったわ。そして……さようなら」
千聖はそう言って屋上を去った。
俺はと言うと、その言葉を聞いた瞬間に頬を叩かれた感覚がして、周りの全てが止まった。いや、周りの全ては動いていた。止まったのは俺の方だった。
千聖が俺の事を諦める? なんで? なんのために?
俺にとって千聖がいて当たり前。千聖が絡んできて当たり前。千聖が俺を好きでいてくれることが当たり前。
でも、そんなことは当たり前ではない。
「俺、なんのためにここに来たんだっけ」
俺はバカだった。千聖がいてくれて当たり前じゃない。千聖がいてくれたから俺の当たり前があったんだ。
絶対と言いきってもいい。千聖がいなきゃ俺の高校生活はこんなにも華やかなものでは無い。千聖がいなきゃパスパレに関わることもなかった。そもそも花咲川にすら来なかったかもしれない。
俺の日常はたった一言で簡単にも崩れ去った。それを俺は止めることは出来ない。取り戻すことも出来ない、しようともしない。千聖が選んだことなんだから俺が邪魔する余地はない。
虚無感と喪失感に纏われながら俺は1人で家への道を歩く。当たり前が当たり前ではなくなった俺は家へ帰るやいなや、何をする訳でもなくベッドに体と意識を投げ出した。
書いてるひとが書きたく無くなる文章があるってまじ?笑
サーリャもだし、千聖さんも耀太も今回はえぐいほど病んでますねぇ(ボルサリーノ風語尾)特にサーリャのセリフなんて書いてて泣きそうになったもん笑
ここで文化祭編としては一旦区切り着きます。
今度は耀太のことを書きます。
心苦しいけど頑張ります。