俺の幼馴染みはヤンデレです   作:太公望

37 / 62
誠に申し訳ございません
寝ぼけて書きかけの方を投稿してたみたいです。何でもするから許してください


37話 耀太がしたいこと

 文化祭が終わった次の日、俺はいつも起きる時間になっても体が起きるのを拒否していた。理由はわかっている。昨日のことだ。

 

『耀太のことは今日、今ここで諦めるわ。おやすみなさい。今日は楽しかったわ。そして……さようなら』

 

 今でもその言葉が頭の中に浮かぶ度にピシャリと頬を叩かれた感覚に襲われる。嘘だったんじゃないか、なにかのドッキリだったんじゃないか、いつもの悪ふざけかなにかじゃないか。そう思っているなら自分から千聖に電話をかければいいだけだろ。そんな自分の思考とは裏腹に、指先は千聖のアドレスを押そうとしない。なんか、もうなにもかもがどうでもよくなってきた。

 

 その日の学校はもちろん休んだ。パスパレのレッスンの方も麻弥に『休む』とだけ連絡を入れておいた。

 

「一日……暇だな」

 

 今日の学校は文化祭の片付けをするだけだから午前中だけで終わる予定だった。それぐらきならいけばいいとおもったけど、いまは一人でいたい。千聖と会いたくない、顔を合わせたくない。

 

 ふて寝してみるけど気分が悪いだけ。変わったことといえば腹が減ったこと。昨日の昼飯をサーリャと一緒に食べたあとから今に至るまで飲み物すら口にしていない。喉も乾き、胃袋は空のままだった。

 

「腹減ったし、飯食うか。時間はありに余ってる……どうせならパーっとフランス料理でも作るか!」

 

 冷蔵庫の中身と相談して作ることにしたのはオニオングラタンスープとラタトゥイユ。初めて作る訳では無いからあんまり時間はかからなそうだな。

 

 材料を取り出してまな板の上に並べる。1人にしてはそこそこ多い量だが、昨日の昼以降なにも食べてないし、元から量は食べれるから何とかなるだろう。

 

 準備をしてまな板の前に立つ。そして包丁で材料を切ろうとした時、指先に痛みが走った。

 

「いっっっつ」

 

 材料を切るどころか自分の指を切る始末。俺は腹が減っていたけど、血が止まらないので応急処置をしてもう一度まな板の前に立った。その結果、また指を切った。

 

 何度繰り返しただろうか、俺の手は絆創膏だらけになっていた。その絆創膏も何重にもなっており、ところどのろ赤黒く染っているところもあった。

 

「あーもうやだ。気晴らしにどっか行く」

 

 一人でいたい、それと矛盾しているが、気を紛らわすためにしょうがない事だった。

 

 俺だって言うことを悟られないように、父さんの衣装ケースから左胸に虎マークがあるライダースーツを引っ張り出して、サングラスをかける。普段の俺だったらライダースーツなんて着ないから誰も分からないよな。

 

 外に出てしばらく歩くと花咲川の制服がちらほら見える。もう終わったのか、なら千聖は事務所に向かってるから大丈夫か。

 

 フラフラと歩いて行き着いたのはコンビニだった。どうせならここで昼飯買ってくか。

 

「あれ? 耀太君……?」

 

「誰のことでしょうか」

 

「いやいや、ライダースーツ着ててもさすがに分かるんですけど?」

 

 最悪の事態に陥った。コンビニに入るや否や、中にいた花音と美咲に見つかってすぐにバレた。いや気まずいわぁ……

 

「具合大丈夫?」

 

「まぁ……なんとかな」

 

「その手、どうかしたんですか?」

 

「な、なんでもねーよ」

 

 花音に具合の事を聞かれて髪をかこうと右手を上げた。それを美咲に見られて、花音の視線も俺の右手に向けられる。

 

「なんでもないならこんなに絆創膏だらけで血だらけなんですか?」

 

「何かあったら話聞くよ?」

 

「はぁ……この後、空いてるなら家きてよ。ここでは話したくない」

 

 2人とも時間が空いていたらしく、俺の家に来た。話すって言っても本心は話したくない。でも言っちゃったならしょうがない、話せば少しぐらい楽になれるかな。

 

「耀太君、無理しないでね?」

 

「時間なんていくらでもあるんですからゆっくりでいいですよ」

 

「……俺、千聖にフラれたっぽいわ」

 

 俺は一言そう言った。これ以上にわかりやすい言葉がないぐらいに簡潔に済ませた。これ以上何をいえばいい? どう説明すればいい? そんなことを自分で自分に聞いたって答えが出てくるわけもないし、答える気にもならない。

 

「最近千聖の様子がおかしかったからダンスに誘って聞こうとしてさ。そんで踊り終わって聞こうとしたら千聖から言ってきたんだよ。ま、別に楽になるからいいんだけどな。そもそも好きでもないし、ただの幼馴染の腐れ縁だったんだから。そんなこと言われたぐらいで料理すら出来なくなる俺が幻滅対象なのは知ってるよ」

 

 自分自身を嘲るような口調で話す。実際のところ、俺は俺自信に呆れてるからな。たった1人にフラれたぐらいで、好きでもなんでもない相手にフラれたぐらいで、ずっと一緒にいた幼馴染にフラれたぐらいでこんなにも落ち込むなんてありえない。

 

「それ、サーリャちゃんの顔みても言える?」

 

「サーリャの顔みても? 言えんじゃねーの」

 

「だって……サーリャちゃんは耀太君のこと好きなんだよ? 昨日告白されたでしょ?」

 

「告白? そんなのされてないけど……」

 

 告白するならタイミング的には1番良かったんじゃないか? 2人だったし、千聖も彩も誰もいなかった。それなのになんでしなかったんだよ。いや、されたとしてもすぐに答えを出せたか? 出せるわけが無いの知ってるし、サーリャは転校してきてから嫌という程見てるはず。だからなのか……

 

「っっ、あーもう何もわかんねーよ!」

 

「耀太君……」

 

「今の先輩はあたしが知ってる、あたしが好きになった先輩じゃないですよ」

 

「は? 俺はいつも俺だろ」

 

 美咲の言葉に一瞬苛立ちを覚え、声が低いまま返答をしてしまう。そのせいで花音は怯えるが、美咲はそんなことお構い無しで話を続ける。

 

「あたしが好きになった先輩はいつも後先考えなくて誰にでも優しいバカな先輩ですよ。誰も悲しませないようにいつも自分のことを後回しにしてその人のことを一番に考えてあげられる先輩です。

 

 それに比べて今はなんなんですか? 白鷺先輩にフラれたからってなんでそんなにいじけてるんですか? 黒羽先輩の思いに気づけなかったからってなんなんですか? 

 

 今の先輩が幻滅対象? そんなわけないに決まってますよ。いっつも優しいし、頼りになる先輩を幻滅するわけないじゃないですか。自分を押し殺して押し殺して今この状態なんでしょ? 白鷺先輩が、幼馴染が遠くに行っちゃいそうで寂しいんでしょ? 

 

 自分のことを後回しにするのも別に構いません。だけど、それがいいとは思わないです。人を頼ってくださいよ。寂しいなら寂しいっていえばいいし、悲しいなら話して泣けばいいし、我慢しないでください。弱い先輩だって頼りになる先輩だって耀太先輩はあたしの先輩です。誰がなんと言おうとあたしはいつでも先輩の味方だし、あたしが好きになるのは先輩以外ありえないですから」

 

「んなこと……知るか…」

 

「ほらそうやって泣いてる。あたしだっていつも頼りっぱなしで何も出来てないですよ。だからこういう時ぐらい頼ってくださいよ。こんなあたしじゃ頼りないと思いますけどね」

 

 いつの間にか流れていた涙に気づく。俺が自分を押し殺してた? そんなの知るか、美咲の言葉を一蹴しようとして言った言葉も震えていた。

 

 本当は怖かったんだ。ずっと一緒にいて当たり前だった千聖がいなくなるのが。当たり前の日常が壊れるのが。美咲がいってた「自分を押し殺してる」の意味が何となくわかる、俺が俺じゃなくなってたんだ。

 

 人を頼っちゃいけない、人に頼られていたい、人の役に立ちたい、人を悲しませたくない、ずっと俺は他の人のために動いていた。

 

 それなのになんだ? 美咲と花音には迷惑かけて、サーリャにはとんでもないことをしている。これでどこが他の人のために動いてたんだろうな。矛盾がすぎるよ。

 

「はぁ……やっぱりダメなやつだな、俺ってやつは。いっそ死んだ方がマシか?」

 

「そんな事ないですって……あーもう! 耀太先輩、こっち向いて!」

 

「なんだよ……いふぁいんだふぇど?」

 

 自分自身に呆れている中、美咲に言われたから美咲の方をむく。すると美咲に頬を抓られ、伸ばされたりして遊ばれた。そんなことをしている美咲の顔を笑ってる訳では無い、目が赤くなって今にも泣きそうになっていた。横にいる花音も一緒だった。

 

「今のままだったら絶対一人で耀太先輩死んじゃいそうで怖いんですから! どれだけ心配させるんですか! いい加減にしてくださいよ!」

 

「そ、そうだよ! 耀太君がいなかったらみんな悲しむし……千聖ちゃんだってサーリャちゃんだってどうすればいいの!」

 

「……」

 

 ほんっとに自分に呆れる。人に心配させないようにしてきたつもりが、逆に心配させてるなんてな。あーもういいや、好き勝手させてもらうわ。

 

「はいはい、わかったわかった」

 

「先輩……?」

 

「絶対に死なねーから安心しとけ。迷惑かけて悪かったな、俺はもう大丈夫だから……な?」

 

「もう二度と冗談でも死ぬとか言わないでください! 絶対絶対絶対ですからね!」

 

「わーってるって。冗談でもいわねーよ」

 

 人のためになるってことは自分のためにもなること。人のためになりたいなら自分が自分であること。こんな当たり前のことに気づくのに俺はどれだけの時間をかけた? どれだけ迷惑をかけた? 自分に呆れるし、殴りたくなる。

 

「気晴らしになんか料理でも作るよ。迷惑かけたしな」

 

「だから迷惑じゃないですってば。ていうか、その手で料理する気ですか?」

 

「何とかなんじゃね?」

 

「そういうところがダメなんだからね! 耀太君は座ってて。私と美咲ちゃんで何か作っちゃうから」

 

「でも『いいから』はい…」

 

 説教まがいなことを言われたので静かに座って待っていた。結局、俺はバカやってたんだなってやっとわかった。それに気づくのに時間がかかりすぎた。

 

 そして自分のやりたいこともわかった、しなくちゃならないことも分かった。

 

 俺は千聖に好きだって伝える。あいつが諦めようがなんだろうが知るか。だからって答えが今すぐ出るわけじゃないし、卒業式まで待たせることになると思う。

 

 だとしても俺は迷惑かけるとかはもう考えない。俺は俺のやりたいことをやりたい時にやりたいだけやる。もう二度と後悔はしない、自分を殺さない。

 

 じゃなきゃ今ここにいる意味が無いだろ? 

 

 待ってろ千聖、ぜってぇに言ってやるよ。お前の顔を見て、目と目を合わせてな。




今日中に次の話投稿します。それでどうかごかんべんを
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。