俺の幼馴染みはヤンデレです 作:太公望
「さっむいわぁ」
正月がすぎてすぐの日曜日。俺はこたつでみかんを食べながら駅伝を見ていた。やっぱし年始はこれに限るだろ。
「うし、こたつで寝るか」
そう思って全身こたつに入って丸めた座布団を枕にして寝ようとした時、呼び鈴がなった。どうせ広告配りとか宗教勧誘とかだろうな。適当に流すか。
「新年早々なんですか」
「あ、あけましておめでとうございます。遊びに来ちゃいました」
「まぁ寒いから中入ろうぜ」
いやなんか想定外。年越してパスパレ以外で初めて会う知り合いがましろとか予想するか? 七深か薫かと思ってたけど……まぁ千聖を除けば1番家近いからな。ありうる。
「よー先輩ってなにか予定とかあるんですか?」
「こたつに入りながらみかん食べて駅伝見るっていう予定がある」
「わ、私もそうします」
2人揃ってこたつに入ってテレビを眺める。特に何もすることは無いし……ってなんでましろ来たの? ま、いっか。
「よー先輩と一緒のこたつで……夫婦みたい///」
「夫婦かぁ……別にいんじゃね?」
あ、めっちゃ口滑ったわ。でも悪くは無いと思うし、なんなら楽しいまで思う。だってのんびり出来そうじゃん?
「じゃ、じゃぁ毎日こうやってよー先輩と一緒にいます!」
「さすがにそれは無理があると思いますが」
「で、ですよね……」
言いすぎました、ごめんなさい。ていうか夫婦って俺もよく言ったよな……でも家近いし、ましろってめっちゃ料理上手そうだし、一緒にいて退屈しなそうだし……
「ま、まぁ……毎日とまでは行かなくとも、週末とかぐらいならいいけど。家も近いんだし、夜遅くまでいても泊まる必要ないしさ」
「夫婦なら一緒に寝るんじゃ……」
「泊まっていいから泣かないでくれる?」
結局、週末はできる限りましろが泊まりに来ることに。もう通い妻? 週末は絶対に千聖たち呼べないね! もしも千聖達とましろが出くわしたら……俺のバットエンドコースまっしぐら間違いなし。
「今から着替えとってきますね! あ、あと枕とシャンプーと……」
「荷物多そうなら俺も行くか?」
「だ、大丈夫です!」
ましろは1度家に戻り、俺はまた1人になった訳だが……さて、どうするか。枕とかシャンプーまで持ってくる必要あるかって思うけど、女子なんだし、ましてやお嬢様学校の1年なんだからそこまで気にするのは納得出来る。なんから他のやつらが気にしない方がおかしいんだよな。
「って絶対に一緒に寝るとかいうやつやん。布団と部屋と片付けるか。ついでに脱衣所とかも全部か……用意に時間かかりそうだしやっちまうか」
まずは自分の部屋からやる、と言ってもやることはあまりない。ベッドのシーツ変えて、机の椅子にかけてあるコートを衣装ダンスにしまう。それだけじゃなんか不安だからこの前日菜に貰ったアロマオイルをお湯の張ったコップに垂らして机の上に置いておく。日菜のやつ、俺がベルガモットの匂いのこと好きだって知っててこれ作ったよな。だって聞いてきたもん。
そして今度は脱衣場。なんだけど……脱衣場をどうやって片付けていいのか分かりません。だからといって何もしない訳には行かないからシャンプーを置いてある台を綺麗にして、タオルとかを入れてある棚も綺麗にする。まぁ……これくらいでいいか?
「た、ただいま戻りました……!」
「おかえり……でいいのか?」
まず一言だけ。めっちゃリア充してると思います! 何この空気よ。千聖たちと一緒にいる時にこんな空気になったことがあるか? んなわけねぇだろ! あんないつも俺の命狙うみたいに殺伐としやがって……それに比べてましろを見てみろ! こんなにおしとやかで清楚なんだぞ!? 既成事実とか薬とかスタンガンとか婚約とか絶対に口から出てこないからな!? いやでもまぁ婚約が出てくる可能性はまだ少なからずあるのか。
「ええっと、私はどうすれば……」
「なんもしなくてもいいよ。正月なんだし、のんびりしてようぜ」
「そうですね」
本当に俺とましろはのんびりとしていた。こたつに入って、みかんを食べてお茶を飲んで、くだらない話をしていた。こんな平和で心安らぐ週末をすごしたことがあるか? いつもは燐子から連絡来てNFOに拘束されたり、日菜に町中振り回されたり、最悪の場合は彩とか紗夜に脅されてる。しかもそれを全部パレオにストーカーされてるって始末だ。それに比べてみろよ。幸せってこういうことを言うんだな、ってしみじみと実感してる。
「あ”ー平和すぎてまじ幸せ」
「私も幸せです。よー先輩と一緒に……って、これから毎週末一緒ってことは通い妻に……///」
「奇遇。俺も一緒の考えだったわ」
「あ、頭がクラクラしてきた……」
「こたつに入りすぎ。逆上せたんだろ」
といってましろのほうを見るけど時すでに遅し。ましろは顔から湯気を出して目を回していた。そのまま寝かせておく訳にも行かないから、ましろを抱き上げて自分の部屋に向かう。別に襲おうとかじゃないからな? ベッドで寝させておいた方がいいと思いまして。
「ふぅ……とりあえず時間も時間だし、夕飯でも作っておくか」
▽▽▽▽▽
目を覚ますと、知らない部屋の天井だった。体を起こすと見知らぬベッドで寝ていて、鼻の奥をいい匂いがくすぐってくる。
「ましろ、起きたか?」
「よー先輩……あ、もしかして」
「こたつで逆上せてたんだよ。夕飯できてるけど食べるか?」
「は、はい!」
リビングに行くと、よー先輩が作った夕飯が並べてあった。どれも美味しそうだし、とてもじゃないけど私には作れなそう。やっぱりすごいな……
「うみゅ……おいひい♪」
「口にあってよかったよ。ってか、ご飯粒ついてる」
「え、あ……///」
「ん? ……わ、わるい」
食べている途中、頬についていたご飯粒をよー先輩が取って口に運んで行った。これって恋人同士でやるんじゃ……でもでも、今はよー先輩の通い妻だから……もうわかんなくなったきた。
「うぅ……お風呂いただきます!」
「廊下の奥を右に行ったところだから迷うなよ」
よー先輩の部屋に戻って着替えを取ってからお風呂場に向かう。肩まで湯船につかり、ボーっとしてしまう。それでも頭に浮かぶのはよー先輩のこと。よー先輩の声、よー先輩の顔、よー先輩の匂い、よー先輩の全部が頭に浮かぶ。よー先輩のことが好きだって気づいてからはずっとこうだ。こんなにも人のことを求めてしまうのは初めてだから最初はモヤモヤして分からなかったけど、今となってはモヤモヤも晴れている。
「あ、また逆上せる前に上がらなくちゃ」
お風呂を上がって、パジャマに着替えてリビングへ向かう。よー先輩はまたこたつに入ってみかんを食べていた。今日だけで何個食べてるんだろう。
「お、上がったか」
「お風呂、いただきました……」
「俺も入るか。あ、そうだ、寝る時って……一緒に寝るとか言う?」
「よー先輩がいいって言うなら……」
待って待って待って! よー先輩が一緒に寝ようって誘ってきてくれた!? そ、そんなの聞いてないし、まだ心の準備も何も出来てないのに……なのになのに! なんて返事しちゃってるの私!
「んじゃ一緒に寝ようぜ。俺の部屋で待っててもいいし、ここにいてもいいよ」
「わ、わかりました」
よー先輩がお風呂に向かったあと、なぜかよー先輩の部屋に行ってベッドに座っていた。すっごく安心できるけど、この後ここでよー先輩と一緒に寝るんだって考えると……どうにかなっちゃいそう。
「上がったぞ」
「え、あ……はい」
自分の枕を抱きかかえて待っていると、よー先輩はお風呂から上がってきた。その姿だけでもカッコイイのに。もしかして寝顔はかわいくてギャップとか? そんなことあったら本当にどうにかなっちゃうよ。
「眠いし寝るか」
「そ、そうしましょっか」
とは言ってみたものの、私もよー先輩もすぐ動くことはなく、少し考えた後に2人同時に動き始めた。私が壁側でよー先輩が逆方向。私が寝返りうって落ちないようにって言ってたけど、間違えてよー先輩のこと抱き枕なんかにしちゃわないかな……
「なぁましろ、起きてるか?」
「起きてますよ……?」
うつらうつらとしていた時、よー先輩の声が聞こえて目が覚めた。どうせこのまま寝れないんだったら話してた方がいいかな。
「家の中でぐらい気楽にいていいぜ? 俺とましろと2人きりなんだし、俺もその方がなんか安心するって言うかなんていうか」
「で、でもよー先輩は先輩だから……」
「無理にとは言わないよ」
確かに家の中ぐらいでならいいのかな。よー先輩公認の通い妻なんだし、2人きりの時ぐらい頑張らなくちゃ振り向いて貰えないし……うん!
「えっと、その……ようた、さん///」
「グフッ……それはさすがに不意打ち」
「お、おやすみなさい!」
言えたけど恥ずかしすぎて顔が熱いよ。本当に湯気出ててもおかしくないんじゃないかな。でも、ちゃんと言えたんだね。これで1歩前進できたんだ。明日からも頑張ってよー先輩、ううん、ようたさんに好きって伝えなきゃ!
そしてその次の朝、私は見事にようたさんのことを抱き枕にしていたのだった。
耀太公認の通い妻は吹くんだけど笑笑。しかもなに?向かうご飯粒とってそれ食べるとかやってんなぁおい。それにましろもましろで抱き枕にするとか……耀太は寝れなかったことだろうね!(実体験あるからわかること)