俺の幼馴染みはヤンデレです   作:太公望

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修学旅行編開始
多分これが終章になる、気がする!


48話 また平和に過ごせない今日

「なぁ、そろそろ決めてくんね?」

 

「そんなこと言うなら耀太が早く決めればいいのよ」

 

「俺の独断と偏見で文句を言わないと誓うのであれば」

 

「それはその時の気分と場合によりますね。まぁ一定以上のラインに達していなければ確定で文句が出てきますが」

 

「ほらな」

 

 高校最後の三学期が始まって、最後の特大イベント修学旅行の班を決めている。

 

「耀太君、私と一緒に行ってくれるでしょ?」

 

「もちろん私は一緒よね」

 

「絶対に私です。それは譲りません」

 

「誰がなんと言っても私には生徒会長命令があるから。分かってる……よね?」

 

 腹を空かせた4匹の狼がおびえる獲物を狙い、追い詰めていく。

 

「カノン、妾達はどうすればいいの?」

 

「わ、私にもちょっと分からないな……」

 

 その殺伐とした雰囲気の中、何が起こっているのか分からない仔犬が2匹。

 

「もう逃げていいですかね?」

 

 全ての元凶である獲物、つまり俺なんです。俺が決めればすぐ終わる。けど決めらんないんですね。

 

 修学旅行の班は基本的に最大4人まで。が、しかし、それは俺抜きで考えた場合である。

 

「ほら耀太、早くしなさい?」

 

「ならまずその威圧感やめろよ」

 

「30秒だけ待つわ」

 

「いやいやいや無理難題。あんた正気?」

 

「ええ、正気よ」

 

 修学旅行ぐらい平和に過ごしたい。だから俺はあえて選ばせてもらおう。

 

「花音、サリヤス、よかったら行こうぜ」

 

「うんうん! 行く行く!」

 

「わ、私でよければ……いいよ」

 

 はい、のほほん2人は確定枠です。問題はあと2人よ。

 

エントリーNO.1

 黄色い髪は幼馴染の証。元天才子役は今となってはヤンデレスター。その微笑みは爆発と共に凶器を降らせる。

 その名も白鷺千聖! 

 

「なによその名乗りゼリフは」

 

エントリーNo.2

 ギターとポテトと妹を愛する器用物。その裏の顔はどんなことをしても男を奪ってやろうという不器用な悪党の顔。

 その名も氷川紗夜! 

 

「最後の方は不本意ですが、とりあえずよしとしましょう」

 

 

エントリーNo.3

 黒髪ロングの生徒会長。お淑やかで恥ずかしがり屋かと思ったらベッドに押し倒して心中宣言。魔法と薬と命令を巧みに使いこなす。

 その名も白金燐子! 

 

「だって……好きな人同士結ばれないなら死ぬしかないもん」

 

エントリーNo.4

 まん丸お山に彩を。ドジっ子なのに使うのはスタンガン。ピンクを赤く染めあげる。

 その名も丸山彩! 

 

「私だけなんか雑過ぎない!?」

 

 えー、それぞれ意気込んでおりますが、俺はそれを全て返品したい所存でございます。

 

「で、誰を選ぶの? あと2人よ?」

 

「ちゃんと考えてるから急せかしなさんな」

 

 選ばなくていいなら選びたくない。でもこの中から選ばなくちゃならない。もう八方塞がり、背水の陣なんです。

 高校最大のイベントと言っても過言がない修学旅行。今年は3泊4日で京都に行くらしい。

 そんなんならもちろん楽しみたい。苦労せずに楽しみたい。

 さて、この中から選ぶとすれば誰が1番楽しくなるかが問題なんです。

 

「悩みに悩みまくるしかねぇなこれ」

 

「いくら悩んだって答えは決まってますよ。私です」

 

「なっ、ずるいよ紗夜ちゃん! 絶対に私だから!」

 

「耀太君と一緒じゃなきゃヤダ。耀太君とずっと一緒。お昼ご飯も寝る時もずっと一緒……」

 

「うんうん、言い分はわかったから考えさせろよ?」

 

 社会の中の一般的な常識があることを前提に考えよう。そうなると、必然的に真っ先に千聖が上がってくる俺の頭がどうかしてると思う。

 その次に上がってくるのが同率で紗夜と燐子。あ、彩は問答無用で最下位です。理由は簡単。バレないために変装するんじゃなくて、バレるために変装するからです。

 

「え、私って耀太君の中でおバカキャラだったの!?」

 

「それ以外にどういうポジションがあるんだよ」

 

「お嫁さんでしょ?」

 

「いやそれはまた別の話になってくるんですけどねぇ」

 

 もう僕は何も分からない。紗夜と燐子が上にいるって言ったけど、修学旅行でも生徒会の仕事がちょくちょくあるから、多少なりとも一緒にいる時間が長くなる。

 そしたら文句を言うのは彩なんです。もう何も分からないよレオン、僕は脳死で選ぶとしよう。

 

「もういいや、千聖と彩で妥協する」

 

「なにその妥協って! 妥協じゃないでしょ!」

 

「理由はなんであれ、選んでくれたなら万々歳ね。理由に関しては……また後でね♡」

 

「ひえっ」

 

 もうこの時点で怖い千聖と争う場所を間違えてる彩。その2人とは逆に激おこプンプン丸の2人がいるんですよ。でもちゃんと説得できる自信がある。

 

「そうやって血気盛んになるなって。どうせ生徒会で仕事あんだから一緒になるだろ」

 

「そうなったら離さないからね……♡」

 

「今はそれで妥協します。今は、ですからね」

 

「ねぇ、だから妥協ってなんなの! 紗夜ちゃんまでなんでそんなこと言うの!」

 

「うるせぇやつらだ」

 

 もうなんなんだろう。恋は混沌を呼び、混沌の下僕となる。この誰かの言葉がガッツリ胸に刺さって痛いです。

 

 そして次の時間になり、今度は班ごとに場所を決めるんだよ。 こんなメンバーだ、そう簡単に考えがまとまるわけがないだろう。

 

「妾は絶対にお城に行きたい〜」

 

「私はお守り買いたいな〜。安産祈願のやつと、学業成就、恋愛成就とか!」

 

「私はどこかいい景色が見て見たいわね。ほら、食べ歩きながらとか良さそうじゃない」

 

「わ、私は迷わなそうなところがいいです」

 

「なんでこうもみんなしてバラバラなんだよ」

 

 絶対にまとまらない意見をどうやってまとめるのか。そんなの決まってるじゃないか、決めるのを諦めるんだ。悪いが今の俺に解決策は浮かばねぇ。

 

「耀太が行きたい場所はどこがあるの?」

 

「伏見稲荷の千本鳥居とおもかる石」

 

「あ! 私もそこ行きたい!」

 

「妾も妾も!」

 

「それじゃそこで決定ね♪」

 

 なんか成り行きで決まって行った。いや、千聖が決めやがった。

 実際のところ、言った通り千本鳥居くぐって、おもかる石持てればいいなぐらいの感覚で言ったんだ。

 

「そういえばおもかる石ってなに?」

 

「お城、お城はあるの?」

 

「道、迷わないかなぁ……」

 

 最初にパスパレ入るって言ったのもこんな感じだったな。あ、生徒会も一緒か。

 最初はガチでダルすぎたけど、今となっちゃ無ければ暇になるぐらい俺の生活リズムに侵食してきやがった。

 

「さ、耀太、みんなで一緒に考えましょうか。()()()の修学旅行を♡」

 

「はいはい、全員で楽しめるように頑張って予定立てましょうね」

 

「あら、何を勘違いしてるの? ()()()っていうのは耀太と私を指して言ってるのよ?」

 

 おっと不味い、千聖のスイッチがはいりやがった。

 

「それなのによくもまぁ全員で、なんて口から出せたものね。もっとわからせなきゃダメみたいね」

 

「とととととりあえず、俺は話し合いに混ざってくるからな……」

 

「私も行くわ♪ そして今夜はもちろんお泊まり。体の隅から隅まで私の存在を分からせてア・ゲ・ル♡」

 

「あーもうめんどくせぇ!」

 

 こうやってヤンデレに絡まれるのも日常のひとつなんだけど、そろそろ俺の体が持たないからやめてほしいんですけどねぇ!




具合悪い
耀太も疲れてるかも

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