俺の幼馴染みはヤンデレです   作:太公望

52 / 62
4日目(吐き気)


51話 修学旅行2日目

 寒くもなく暑くもない風が吹く今日は修学旅行2日目である。

 朝から動き出して、俺は生徒会として卒業アルバム用の写真を撮りに彦根城に来ている。

 

「耀太君、あっちいこう」

 

「耀太さん、早く天守閣に登りますよ」

 

 とりあえず一言言っておこうか。

 

「めんっどくせぇぇ!」

 

 なんで朝からこんな連れ回されなきゃ行けないんすか。俺だって城がカッコイイからちゃんと見て回りたいんだからさ、もう少し自由にさせてくれよ。

 

「何をそんなに叫んでるんですか。効率良く城を回るなら天守閣からと相場が決まっているでしょう。それともなんですか、私と行くのが嫌なんですか?」

 

「私と一緒に行くことは当然でしょ?」

 

「1人で回りたいからどちらも断ってよろしいでしょうか」

 

「質問に質問で返さないでください。私が先に質問しているんだから答えてからしか何も言いませんよ」

 

「私に質問しないでよ。質問しないでも分かるでしょ」

 

 たとえこの身が滅びようとも、俺は答えはNOと言おう。てか、質問に質問で返すなってダメでしょそれ。質問しないでよもダメでしょそれ。

 

「うん、逃げるね」

 

「逃げられると思ってるの?」

 

「ですよねー」

 

「なら決まりですね。時間もないので白金さんも一緒にどうですか?」

 

「そうしよっか、耀太君」

 

 というわけで逃走手段を失った俺は一緒に回ることになってしまった。

 逃げたい、逃げたいけど逃げられないこのジレンマ。

 でもありがたいのが燐子よりも紗夜が積極的に絡んでくること。燐子が積極的に絡んできたら周りの目線やばいでしょ。

 

「耀太さん、あなたいま私に失礼なこと考えてませんでしたか?」

 

「べ、べっつに〜」

 

「そうですか、ならいいです。どちらにせよお仕置はするので」

 

「意味不明なので最高裁に訴えます」

 

「何言ってるんですか、あなたが私の質問に答えてない上に逃げようとしたからでしょう」

 

 そんなこと言っても紗夜も紗夜でやばいんだよな。

 普通ルックス良すぎるやろ。読モって言われても疑わないぞ? それはリサも一緒なんですけど。

 

「あう、人が多い……」

 

「って燐子が言ってるから休もうぜ」

 

「そうですね。近くのカフェで少し休憩しましょうか」

 

 燐子が顔色悪そうにしてたから、さすがにこれはまずいと思って休憩することにした。バンドじゃあんだけの人を前にして堂々とキーボード弾いてんのに、人が苦手ってなんだよ。ヤンデレじゃなければ速攻で惚れてますよ。

 

 ていうかさ、なんで俺の周りってこんなにヤンデレが多いのか疑問でしかない。ヤンデレじゃなければ惚れてる人ばっかだぞ。

 

「燐子、飲めるか?」

 

「飲ませてくれると嬉しいな」

 

「さっきまでの具合の悪さはどこいったんだよ」

 

「ちょっとだけ嘘ついちゃった」

 

 そういいながらペロッと舌を出すのをやめていただきたい。あざといって言いたいところだけど、後々何されるかわかんないから言わないでおきます。

 

「パフェ食べさせてほしいな〜」

 

「自分で食べて」

 

「私の目の前で白金さんとイチャつくなんて……」

 

「いやいやいや、イチャついてないから! 」

 

「私にも、私にも食べさせてください!」

 

 左右両方から燐子と紗夜から迫られてるこの状況はなんなんでしょう。

 ほかの男子から見たら羨ましいでしょうね。だって2人ともめっちゃ可愛いし、絶対モテてるもん。あれだよあれ、両手に花ってやつ。

 

「暑苦しいし狭いから2人とも離れてくんね?」

 

「暑苦しいって……そっか、この時期に暑苦しいってことは熱があるんだね。それじゃ早くホテル行って休もうか。膝枕がいい? それとも抱き枕がいい?」

 

「そんなことより一緒に寝た方が体が温まりますよ。あ、それより先に汗流した方がいいですよね。背中流しますよ」

 

「とりあえずてめぇらここでそういう話するんじゃねぇ!」

 

 この間紗夜と燐子は比較的常識あるって言ったけど、あれ撤回するわ。常識あったら公共の場でそういう会話しないだろ。こいつら何考えとるん? アホちゃう? 

 

 そんなことを思いつつもちゃんと生徒会の仕事をしながら1日楽しんでホテルの温泉に肩まで浸かっている俺です。1日の疲れを取るのは湯船が1番なんだよ。これ世界共通項でしょ? 

 

「あ、修学旅行2日目終わりやん」

 

 ふとした時に気づくこの時の流れの速さよ。

 昨日はサリヤスに告白されたし、今日は今の今まで生徒会で走り回って疲れてた。

 そしてこの後は燐子と屋上で星見るって約束したんだっけ。さすがに何も無いと思うけど……警戒して損は無いな。

 

 温泉から上がった俺は部屋に用意されていた寝巻きに着替えた。持ってきたパジャマでもいいんだけど、俺が持ってきたのはほとんどジャージみたいなものだから、あんまり人前で着たくない。ならなんで持ってきたかって? 焦って用意したら間違えたんだよ。

 

「あ、耀太君」

 

「おっす」

 

 屋上につくと、燐子は既にベンチに座っていた。

 約束の時間までまだ10分以上あるのにいるのは驚き。だけど、早めに来てよかったよ。

 

「こ、こうやって2人きりになるのは久しぶりだね」

 

「まぁな。ホットミルクとカフェオレ買ってきたけど、どっち飲む?」

 

「ホットミルクがいいな」

 

「知ってた」

 

 少し肌寒くなると思って買ってきたホットミルクを燐子に手渡す。

 なんか昼間と全然雰囲気が違うんですよ。このホテルの寝巻きが他のところより浴衣っぽいせいなのか、なぜか大人っぽく見える。しかも燐子の綺麗なストレートの黒髪をより一層の際立たせていて、どこか妖艶ともとれる。

 

「あの、その……昼間はごめんね。氷川さんもいたし、人も多かったからちょっと気が動転しちゃって……」

 

「さぁーなんのことでしょー。おぼえてないですねー」

 

「そうやって嘘つくんだから。でも優しい嘘つく耀太君が好きなんだよ」

 

 面と向かってそう言われるのは初めてだからいっしゅんドキッとしてしまう。

 優しい嘘だかなんだか知らないけどさ、俺は覚えてたくないんですね。

 

「星、綺麗だね」

 

「山の中だからな。周りに光が少ないから見やすいんだろ」

 

「あ、流れ星」

 

「お願いするか」

 

 流れ星が流れてきたからお願いごとをする。それが流れ星が流れきる間に3回唱えられれば願いは叶う。

 いい歳した高校生が何やってんだよって言われそうだけど、俺はこういうのが好きだからやってんだよ。

 

「お願いごと、何にしたの?」

 

「特に変わったものでもないぜ。健康に楽しく過ごせますよーにってな。燐子は?」

 

「もちろん耀太君と幸せになれますようにってしたよ」

 

 聞かなくてもわかってたけど、聞かざるを得ない事なんです。もうちょっと違うこと言って欲しかったって思ってる自分がいるけど、当然のことだからって安心してる俺もいる。

 

「あ、でもでも、もう薬使ったりはしないよ。耀太君が私を選んでくれるって信じてるから」

 

「もしもの話としてするけど、選ばなかったら……?」

 

「今の気持ちのままならキッパリ諦めきれると思う。耀太君のことは大好き。耀太君と一緒に幸せになりたいと思う。でも、私と一緒で耀太君が幸せになれないなら、私は耀太君を諦めるよ」

 

 いつぞやのバカを思い出させる発言ですね。

 自分を押し殺して押し殺して、最後の最後に耐えきれなくなって潰れる。そしてやっと周りに頼る。

 

 1回潰れた俺だからわかることだけど、燐子も危ないんだと思う。

 心の支えがなくなったら簡単に折れるし、立ち直るのに時間がかかる。

 俺の場合、折れて折れて、何も無くなって0から始めることになった。

 どれだけ辛いことなのかは俺が1番知ってる。あんなのはもう二度とゴメンだ。

 

「耀太君のこと諦めたらね、またピアノ頑張ろうかなって思ってるんだ。Roseliaのキーボードとして今までずっと頑張ってきた。氷川さんと今井さんと湊さんとあこちゃんと。だから、今度はRoseliaとしてじゃなくて、私として頑張りたいなって」

 

「まぁ、いんじゃね。俺は燐子のキーボード好きだけどな」

 

「ふふっ、ありがとう。それじゃ、お願いひとつ聞いてくれる?」

 

「できることな」

 

「卒業したら私は頑張ってピアノを練習します。そして、私が納得できるような音を出せるようになったら……一番最初に聞いてください」

 

 今まで接してきた燐子からは想像できないほど()が籠った声で言った。

 てっきり「私と付き合って」とか「私と一緒にいて」とかだと勝手に思い込んでいた。

 

「一番最初に聞いて終わりじゃねぇからな。一年に一回はぜってーに聞きに行ってやる」

 

 柄でもないことを口にしてしまう。

 正直、俺はピアノについては疎い。やっていた訳でもないし、触れたことがある訳でもない。

 でも、燐子のピアノは何故か聞きたいと思ってしまう。

 

「約束だよ」

 

「おう、約束だ」

 

 なんなんだろう、この甘い雰囲気は。

 これがアレですか、高校生の甘い青春の1ページってやつですか。

 ついに、ついに来たのか俺の青春! 高校3年生の最後の最後の大イベントである修学旅行にてついに来てくれたのか。髪は俺を見放さなかったようだ、アーメン。

 

「ホットミルク無くなっちゃった」

 

「カフェオレ、飲むか? 口つけたやつだけど」

 

「うん、飲みたい」

 

 そういいながら飲みかけのカフェオレを燐子に渡そうとしたその時だった。

 

「ヨウタさん?」

 

 伝説の風紀委員番長、氷川紗夜の降臨である。

 

「なんかいい雰囲気だったんだから空気読んでくれます? ぶっ壊さないでくれます!?」

 

「そんなの知りませんよ! なんで私に黙って白金さんと2人っきりで天体観測なんかしてるんですか。私も生徒会ですよ!」

 

「じゃあなに、一緒に見たかったと。1人だけ仲間外れにされて寂しかったと」

 

「そ、そうですよ。何が悪いんですか!」

 

 紗夜の可愛い一面をしれたのは面白い。

 紗夜って犬っぽいと思ってたけど、案外うさぎの方が近いかもな。

 

「じゃ、一緒に見ようぜ」

 

「ええ、そうします。が、またこれは話が別ですね」

 

「今度はなんなんですか」

 

「なんなんですかじゃないですよ。なんで飲みかけのカフェオレを渡してるんですか。ハレンチにも程があります! 風紀の乱れは人間性の乱れ! あなたの人間性の乱れを粛清してあげます!」

 

「ちょっ、おわっ!?」

 

 なんか意味わかんないことを叫んでいる紗夜にベンチに押し倒された。うん、これはヤバいやつでしょ? ヤバいよねぇ、ねぇ! 

 

「このまま2人で卒業しましょうか。そうすれば風紀を守れますよ♡」

 

「いやいやいや、それこそダメなやつやん!」

 

「耀太君はそうやって浮気するんだ……氷川さんがそうするなら……私も実力行使だよ♡」

 

 紗夜に感化された燐子も迫ってきました。

 あの、はい、さっきまでの胸焼けするほど甘い雰囲気を返してください。お願いだから落ち着いて! 

 

「離せ2人とも! そうだ、話し合いで解決しようよ!」

 

「今から話し合いは遅いよ。でも、実力行使なら間に合うよ♪」

 

「そうですよ。ちゃんと楽しみましょうか」

 

 その後、服を剥ぎ取られそうになりましたがしっかりと逃げ切りました。夜の屋上に呼び出されても二度と1人では行かない。そう誓った夜になった。

 

 ではここでひとつ叫んでみましょう。

 

「俺の青春を返しやがれぇぇぇ!!!」




明日は六花
1日1話書き上げるのは大変だね。僕頑張るバル!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。