俺の幼馴染みはヤンデレです 作:太公望
完結させたくない
「もうダメ、ムリ」
「耀太もさっさと準備しなさいよ。あれ、あたしカメラどこに置いたっけ」
「カメラならこっちにあるよ」
「2人はそうやってやれるから羨ましいよ」
卒業式当日。俺はまともに寝てません。なんでかって理由説明する必要ないだろ。結局今の今まで決まってないんだよ。死ぬほど悩んで悩んで悩みまくったけど、気づいたら朝でした。
「ほんっとにどうしよう」
「そうやって大事な時に決めきれないのは光羊に似てるわよね」
「でも、その場の勢いに任せたあとで後悔するのは琴美に似てるよ」
「そりゃ2人の子どもだからでしょ」
帰ってきて、飯食って風呂入ってベッドに潜ってずっと考えてた。誰も泣かせたくないし、誰もが笑顔でいられればいいと思う。だけど、そんな綺麗事が通るほど甘くないのは知っている。だからこそ、自分の思いにも正直に、相手の思いを尊重して考えている。で、結果がこれよ。
「まったく、しょうがないわね。とっておきを教えてあげる。さっさと目を瞑りなさい」
「瞑りましたが」
「そしたら自分が嬉しいと思うこと思い浮かべて。虹を見た時、クジで当たりを引いた時、なんでもいいわ。そして、それを最初に誰に伝えたいか考えて」
もし俺が今虹を見たら、きっと俺はアイツに……いや、絶対最初にアイツに教えたい。
「その人があんたの好きな人よ。あ、確証はないからね。でもおばあ様のお墨付きだから♪」
「ん……ありがと」
「愛する一人息子のためよ。悩み事ぐらいあたしでも光羊でも頼りなさい!」
これは俺が俺自身で決めなきゃ行けないことだから、誰にも頼りたくなかった。でも、今なら母さんと父さんになら頼ってもいいかなって思える。多分、アイツ以外で俺の事を1番理解してくれてるし、1番に思ってくれてる人だから。多分っていうか、絶対って言いきってもいいぐらいだよな。だって母さんと父さんだもん。
「じゃ、そろそろ行くわ」
「うん、行ってらっしゃい 」
「気をつけていくのよ。なんか必要だったら電話しなさいね」
「分かってるよ……行ってきます」
高校最後の日ぐらいバカみたいに騒いでもバチは当たらないと思う。けど、俺はあえていつも通りの道をいつも通りに歩いていたいっていう我儘を貫き通す。
「あら、今日は遅かったのね」
「耀太君! おはよ!」
「みてみてヨータ、今日の妾は一味違うのじゃ!」
「おうおう、朝から元気いっぱいだ事でよろしくて」
本当に最後の日かと疑いたくなるぐらいいつも通りの朝です。ちょっとだけ違うのは紗夜と燐子がいないことかな。まぁ、十中八九生徒会室で仕事やってんだろう。手伝いに行くか。
「遅いですよ耀太さん。あなたの分の仕事なんてほとんど終わってますからね」
「おはよう、耀太くん」
「こっちもこっちでいつも通りだな」
「先輩もいつも通りのアホズラですね」
「うっせ」
もう少しで卒業式が始まる。それが終わって、校門をくぐれば高校生は終わる。いやさ、4月1日までは高校生ですって言う先生がいるけど、俺はそうは思わないぜ。
「そろそろ卒業式前最後のHRですね。行きましょうか」
「おう、そうだな」
「耀太くん、信じてるからね」
「俺はちゃんと答えを出したよ。もう後悔しないし、俺の出した答えを曲げないから」
「私はそんな耀太くんが大好きだよ」
教室に戻ると、もう先生が来ていた。みんなが成長して卒業してくれるのが嬉しいって泣き泣き話してたから、もう終わるんだって実感が湧く。
卒業してから就職するやつもいるし、大学に行くやつもいる。まぁ、俺は大学に行くんだけどな。離れ離れになるって考えると、ちょっとばかし……いや、めっちゃ寂しい。
「あら、中学校の時は泣いていたのに高校だと泣かないのね」
「お前は泣いてんだろ。いつも泣かないくせに」
「しょ、しょうがないじゃない。私だって高校生なんだし、泣いたって、泣いたって……」
「ハンカチ、後で返せよ」
珍しく感情を隠しきれてない千聖にハンカチを渡した。言われてみれば千聖も高校生なんだもんな。泣かない方がすごいよ。
「あーあ、俺まで泣けてきそうだわ」
「もう泣いてるじゃないですか」
「くっそ、隠しきれるわけねぇだろバカ」
「だ、誰がバカですか! 私だって隠したいですよ!」
みんな泣き泣き、先生も泣き泣き。教室にいる人が全員泣いてます。
体育館に向かっている途中でも泣き止まないやつもいて、寂しいとか離れたくないとか話してるやつがいた。そんな中、俺の左手を掴む人がいた。
「よ、耀太くん……」
それは燐子だった。酷く怯えた様子で、身体を震わせていた。
「緊張してんのか」
「う、うん。だから、少しだけ…… 」
「気にすんな、好きなだけやってろ」
「ありがとう、耀太くん」
開けられた体育館の扉をゆっくりとくぐり、練習通りに決めてある席に座った。
卒業式が始まると、校長が話したり、聞いたことがない人からの式辞が届いてるからって読み上げたりして、いよいよ燐子のスピーチの番となった。
「え、えっと……生徒会長の白金です……」
燐子のスピーチはさほど長くなく、簡潔で分かりやすいものだった。泣かせにきてんのかって思うぐらいだったんだけど、終盤になって燐子は一息置いて話し始めた。
「私は臆病で……せ、生徒会長なんてやりたくなかったです。でも、そんな私を励ましてくれた人がいました。今この場を借りて言っておきたいことがあります。い、今まで……私を励ましてくれてありがとう。どんなことになっても、いつまでもずっと好きです」
一瞬目が合って、燐子は俺に笑いかけてくれた。そんなことされたら揺らぐに決まってんだろ。やめてくれよ。
「終わっちゃったね」
「ええ、終わったわね」
「でもお前らはパスパレで会えるだろ」
「もう、そんな問題じゃないの! がっこうであえなくなっひゃうんだよ!」
「そういう時でもお前は噛むんだな」
卒業式が終わって、本当に最後の時間になった。それぞれ教室で集合写真を撮ったり、抱き合ったりして別れを惜しんでいた。
「耀太くん、さっきはありがとう」
「なにもしてねぇよ」
「嘘つき」
「2人だけでイチャつかないでください!」
「だからイチャついてねぇってんの!」
なんやかんやあったけど、いよいよ終わっちまうんだな。でも、やっとこっから俺のターンが始まる。ちゃんと伝えるって言ったんだ、言わなきゃ俺の気がすまん。
「よーうーた☆」
「誰だよ」
「琴美ちゃんここで泣くわよ?」
「やめてもろて」
「耀太、卒業おめでとう」
どっから湧いて出てきたか知らん母さんと父さんが教室に来た。ここに母さんが来るとさ、めんどくさいんだよね。だって母さんの雑誌読んでる人めっちゃいるんだもん。
「ほら、3人で写真撮るんでしょ?」
「3年ぶりにちゃんと写真撮ろうじゃない♪」
「ったく、写真に映りたくないってんのにさ……撮るなら撮ろうぜ」
先生に頼んで屋上で3人の写真を撮ってもらった。父さんは半泣きだったし、母さんは俺に抱きつきながらピースを決めてた。もちろん俺は無表情、と言いたいところだが、今回は笑えたよ。
「よーし、耀太、時間でしょ」
「ん……行ってくる」
「あんたが決めたんだから、後悔しないようにね」
「耀太、頑張るんだよ」
「母さん、父さん、ありがとう。2人の子供でよかったよ。行ってきます」
2人に背中を押されて俺はアイツの元へ向かう。待ってろよ。って今日の今日まで待たせたんだから、一刻も早く行きたい。そしてアイツに俺の口から言うんだよ、好きだって。
えー、次からルートとしてやって行きます。大体1人につき3話ぐらいですね。頑張ります