俺の幼馴染みはヤンデレです 作:太公望
お前のために
「10分だけ待ってくれ」
俺はアイツにそう伝えた。そしたらアイツは
「屋上で待ってる」
だそうです。さっき屋上から出たばっかなのにまた屋上か、とは思うけど、この際どうでもいい。
待ち合わせの時間まであと1分。俺は屋上への階段を全力で駆け上がっていた。
屋上への扉を前にして俺は乱れた息を整えるために深呼吸した。走ってきたからだけじゃない、俺はアイツにちゃんと言わなきゃならないことがあるんだ。
「よ、待たせたな」
「ええ、待ったわ。3秒の遅刻よ」
そこに居たのは千聖だ。俺がここに千聖を呼び出した。もう、覚悟は決めたんだ。
「3秒は許容範囲だろ」
「あら、人を呼び出してる方が言える立場かしら?」
「すいませんでした」
「べ、別に気にしてないわよ。たった3秒じゃない」
「なんだったんだよこのくだりは」
思わず顔を見合わせて笑ってしまう。やっぱ、幼馴染ってだけあってこういう所はシンクロするみたいだな。
「それで、こんな所に呼び出してなにかあったの?」
「なんもなければ呼ばねぇよ」
「知ってるわよ」
「なら聞くな」
「念の為よ」
覚悟はきてる。でも、話を切り出す勇気がない。言ったらどうなるか想像がつかない。いい方向に行くかもしれないし、悪い方向に行くかもしれない。だけど、俺は後悔はしたくないんだ。
「千聖、ちゃんと聞いてくれ」
「ええ」
「俺は……お前のことが好きだ」
「それはlikeの方? それともLove?」
「そんなの決まってるだろ。Loveの方だ」
俺が言えるのはこんなところだ。覚悟ができてたって結局ビビりなのには変わりがない。それでも俺はベストを尽くしたと思う。言いたいことは言った。後悔はない。
「それで、どうしたいの?」
「なんだ、その……俺と、付き合ってください」
「声が小さくて聞こえないわね」
「あぁはいはい、何度でも言ってやるよ。俺はお前のことを死ぬほど愛してる。だから俺と付き合ってくれ!」
千聖のやつ、絶対俺のことからかってるよな。さっきの声がこの距離で聞こえないなんてありえないだろ。
「実は私からも言うことがあるのよ。ちゃんと聞いてなさいね」
「わかった」
「私、白鷺千聖はあなたのことを愛しています。私でよかったら……こちらこそお願いします」
終業式の日に宣言してから、いや、文化祭の時にフラれてからずっと考えていた。俺自身がどうしたいのか、俺はどうすればいいのか。そして出した答えがこれだ。夢や妄想なんかじゃない。俺が俺自身に嘘をつかないために出した答えだ。
「まぁ……改めてよろしく」
「これからも、でしょ」
これまでとこれからはどれだけ変わるのか。そんなのは想像つかない。いやでも想像つくことはありますよ。これまで以上に話しづらくなると思います。特に女子とですね。
「ねぇ耀太、私のどこが好き?」
「全部」
「あら残念。私なら耀太の好きなところを事細かに言えるのにね」
「じゃぁ全部言ってやるよ。一言一句聞き漏らすんじゃねぇぞ」
「録音するもの、聞き漏らすも何も無いわ」
2人で帰りながらそれぞれ言いあっていた。このまま言い続けても一生決着なんてつかないだろうな。俺は千聖がどんなやつかよく知ってる。千聖は俺の事をよく分かってくれてる。母さんと父さんを除けば、千聖と一緒にいる時間が1番長いんだ。当たり前といえば当たり前だな。
「荷物置いたら少し2人で歩きましょ」
「ああ、わかった」
夕焼けが綺麗に見えるからと言って、2人で河川敷の辺りを歩いていた。昔もこういうことあったっけ。確か仲直りした時とか。
「私ね、不安だったのよ。紗夜ちゃんも燐子ちゃんも彩ちゃんもいたし、もしかしたら嫌われてるかもって思ったし」
「そっか。悪かったな」
「なんで謝るのよ」
「不安にさせたからだろ」
無駄なお世話かもしれないけど、言うだけ言っとかないとなんかすごいモヤモヤするんだよ。こう、なんていうか……言葉にしづらい感じに。
「別にいいわよ。不安になるのは私の勝手じゃない。余計なお世話よ」
「余計なお世話って言うなし」
「でも、そこがあなたのいい所よ。余計すぎる世話焼きさん♪」
「はいはい、どうもこんにちわ。余計すぎる世話焼きさんです」
余計すぎる世話焼きって他に名前なかったのかよ。やっぱり千聖はネーミングセンスもないんだな。画力も壊滅的だし。
「あら、何か言ったかしら?」
「なんも言ってねぇよ」
やっぱりこいつ読心術使えるやん。そろそろ俺も無心になる修行しなきゃダメかな。
「耀太、2人で幸せになりましょうね」
「唐突になんだよ」
「変なことでも言ったかしら?」
「……いや、別に」
いきなりそんなこと言われるとこっちまで照れるだろ。
「絶対幸せにするから。嫌になるほど幸せにしてやる」
「嫌になるほどって……それは言い過ぎよ」
「なんだ、既に嫌になるほど幸せか?」
「そ、そんなわけないじゃない! まだまだ足りないわよ!」
「知ってるよ。だから、ずっと一緒にいてくれよな。千聖」
多分、俺は今が一番幸せだ。だけど、これからはもっと幸せになれる。ヤンデレが暴走しなければの話ですがね。
がんばる