感想に関しては、返しにくいものに関しては返さないことも出てくると思うので、ご容赦ください
王立図書館。
ただ一人、そこに残ることを決意していた司書長は、現れるはずのない団体の利用者に驚き、そして、再び驚いた。
「あなたは……!」
その男、ニーサン・ガロックの訃報の『大号外』は、当然アラバスタ王国にも轟いていた。それも、彼が最後にライブを行った土地として、彼らはその死に特別な感覚を抱いていたのである。
彼に歴史を伝えた司書長も、それに心痛めた人間の一人だった。
しかも、彼の胸には血の滲む包帯が巻かれていた。
「話は後だ」と、ニーサンは彼に言った。その後ろには彼の姪であるはずの少女と、見知らぬ人々がついている。
「他の職員は逃げたのか?」
状況の整理ができず、戸惑いながら司書長は答えた。
「ええ、反乱軍がこちらに来るという知らせが届いてすぐに、私以外のものは逃しました」
「そうか、それならいい」
彼はぐるりと無人の図書館を見渡してから言う。
「それで、どうしてあんたは逃げない? いずれはここも戦場になるかもしれない……いや、必ず戦場になるだろう。状況によっては、この図書館そのものが吹き飛ぶ可能性もある」
砲撃の事を語るわけにはいかなかった。だから、仄めかすように言う。
「逃げたほうがいい」
彼は、この図書館が気がかりであった。
「反乱軍は、あと五分もしないうちに王宮前広場にたどり着くよ!」
長身で体操着の女がそういったその時、どこかで建物がガラガラと崩れ落ちる音と地響きが、図書館にまで響いてきた。彼女の言う通り、段々と戦場は近づいてきている。
「なんか言ったかい?」
「いや、何も言ってねーし」
「……彼女の『第六感』はよく当たるんだ……責任を感じているのなら、反乱の騒動に乗じた賊に襲われたことにでもすればいいだろう」
ニーサンの言うことは、間違ってはいないのだろうと司書長は思っていた。戦場が段々と近づいてきていることは、ずっとここにいる彼のほうがよく理解していたし、それ故に、今自分が逃げ出しても、誰もそれを見つけず、そして責めないだろうことも知っている。彼自身、職員たちにしつこい程に一緒に逃げるように言われたのである。
だが、彼は首を横に振ってそれを否定した。
「それは出来ません」
「……一応聞くが、どうしてだ?」
「私には、歴史を守る使命があるのです」
「そんなもん、一人じゃどうしようもないことだってあるだろう。もしこの図書館に火を放たれたとして、あんた一人でそれに対処できるとは思えん」
「確かに、私一人ではどうしようもないこともあるでしょう。しかし、もし今ここで私が逃げてしまえば、一体誰がこの国の歴史を尊重するのです?」
司書長は震えていた。その言葉一つ一つが、自らの退路を断っていることをひしひしと感じながらも、それでも譲れぬ部分が彼を奮い立てていたのだ。
「……無くなる国の歴史を尊重して何になる? あんたがここにいることで、国王軍の戦力になるのか?」
ニーサンのその言葉に、司書長は声を荒げた。
「この国の歴史は無くならない!!!」
「反乱軍が勝てば無くなるだろうが!!!」
「それでも無くならない!!!」
彼は恐怖と怒りに、身を震わせ目に涙をためながら続ける。
「どちらが勝っても、この国の新たな歴史が始まるだけなのです!!! それを守るために、私はここに残る!!! 私がこの国の歴史から目を背けるわけにはいかない!!!」
ニーサンは、その男の威圧に圧倒された。それは、彼の一歩後ろでそれを聞いていた仲間たちも同じだ。
彼と、慎重にボロボロの日誌をめくっていた男が同一人物だとは、ニーサンとミス・チューズデーは思えなかった。
だが、司書長もそれは譲れない。国王にその役職を任命されたその日から、何があってもこの国の歴史を守ると心に決めていた。今こそが、その決意の時なのだ。
「わかった、わかったよ」
ニーサンは一歩引きながら彼に言った。
「好きにすればいい」
彼は司書長に背を向けながら続ける。
「だがな……命が惜しくなったらすぐに逃げろよ。それは恥じゃねえんだから」
☆
「民間人はいたか?」
「いや、もう粗方探したが残っとらんじゃろう」
「病院も確認しましたが、病気の人もひとり残らず避難しているようです!」
「大したもんだ」
段々と近づく喧騒を感じながら、ニーサンは感心して言った。普通こういう時、老人や病人というのは真っ先に見捨てられるものだと言うのに。
最後を看取ることに決めた彼らは、まだ首都に残っている民間人を探していた。せめて一人でも犠牲を減らすためである。
それに大した意味がないことはわかっていた、どうせ今生き残っても、あとから残るのは新政府による不安定な治世だろう。革命後に安定した治世がなせるのならば、革命など起きないのだから。
「おい、ついてきているかミス・マザーズデイ」
彼らの集団から、一人遅れていた。ミス・マザーズデイである。
彼女は時折後ろを振り返り、何もない通りを眺めていた。そして、首をひねりながら前を向く。
だが、今度ばかりは彼女はすぐには振り返らなかった。それどころか、少し体を震わせ、汗をかいているようだ。
妙なものを感じたニーサン達は、すぐさま彼女の周りに集まった。
「おい、どうした?」
心のどこかで、彼は彼女が命が惜しくなったのかと思っていた。そして、もしそうなったとしても、彼女を責めないだろう。
だが、脂汗を流していた彼女が発したのは、彼らの全く想定外のことだった。
「今、何時だい?」
「何時って……時計台見りゃいいだろうが」
彼は時計台を指差した。首都のどこからでも確認できるように作られているであろうそれは、この国の標準時刻を表している。
「……あんたら、聞こえるかい?」
彼女の言葉が要領を得ない。
「聞こえるって、何のことだ? ドンパチやってる音なら、もうだいぶ近づいてきている」
「いや……そうじゃないんだ。声だよ、声が聞こえるかい?」
「ママさあ、さっきからずっとそれ言ってるよね、あーし何も聞こえてないって」
ミス・マザーズデイは、耳をふさいでしばらく黙り込んだ。
そして、ゆっくりとニーサンと目を合わせて言う。
「なあ、カーチャンの言うこと信じてくれるかい?」
ニーサンは彼女のその弱気な様子に驚いた。彼女がそのような様子を見せるのは、もしかしたら初めてかもしれなかった。
「どうした? お前の『第六感』をおれはいまさら疑わない」
「わかんないんだ……カーチャンもうわかんないんだよ。もしかしたら、カーチャン頭がおかしくなったのかも……情けないね、結構修羅場はくぐってきたと思ってたんだけど」
「何が起こってるかはわからんが、とにかく言ってみろ、お前がお前を信用できなくても、おれ達はお前を信用してる」
その言葉に、仲間たちも頷いた。元々彼女の突発的な『第六感』には命も救われている。
ミス・マザーズデイは、それに小さく頷いてから続けた。
「砲撃が……四時半に行われる」
彼らは一斉に時計台を見上げた。四時半までは、後三十分もない。
ニーサンはポケットから懐中時計を取り出し、それが時計台ときっちり合っているかを確認する。それは偶然か、秒針までピッタリきっちりと揃っている。
「お前の『第六感』を、俺達は信じる」
その時刻は、理に適っているように思えた。たしかにその時刻になれば、戦場のラインは王宮前広場にまで押し切られていそうだし、反乱軍の援軍も到着するだろう。
「これまでとは違うんだよ!」と、ミス・マザーズデイが続ける。
「今までと違って、カーチャンの頭の中に直接『声』が響くんだ! 色んなことが、色んな情報が入ってくるんだよ!」
「それでもいい!!!」と、ニーサンは言う。
「すべて、おれに教えろ」
彼の強い言葉に彼女は頷いてから返す。
「今、王宮にはクロコダイルがいる」
その名前に、仲間たちは緊張感を持った。
「後は、ミス・ウェンズデーと、ミス・オールサンデーもいる……国王と……反乱軍のリーダーもいる」
「コーザが?」
「名前まではわからない……とにかく、反乱軍のリーダーがいるんだよ」
ニーサンがそれにさらなる質問をしようとしたときだった。
『降伏の白旗を!!! 今すぐ降伏しなさい国王軍!!!』
よく通る声だった。それがミス・ウェンズデー、ビビ王女の声であることは疑いようがない。
「おい」と、ニーサンが仲間たちに振り返って言う。
「今のは、聞こえたよな?」
「ああ、しっかりと聞こえたわ」
「降伏……と言いましたよね?」
「国王軍が降伏しちまったら……戦争終わらね?」
しばらく考え、そして、ニーサンが叫ぶ。
「なるほど、そうか!!!」
そして彼は王宮前広場に歩を向ける。
「とりあえず現場に向かおう、うまく言えばこの国が勝つかもしれん!!!」
☆
王宮前広場では、反乱軍を待ち構えていたはずの国王軍達が、大きな白旗をそれぞれ掲げていた。
その白旗も、用意されていたものではないだろう、彼ら国王軍のマントを、それぞれがちぎり、掲げ、降伏を知らせている。
その戦闘には、反乱軍のリーダーであるコーザ。彼もまた白旗を掲げている。
その様子を、ニーサン達は物陰から眺めていた。
少し落ち着いたのだろうか、ミス・マザーズデイもなんとかそれについてきている。
「負けるじゃん、国」
見たままの感想を言うサーズデーに、ニーサンが答える。
「恐らく国王軍とコーザの間には話がついている」
「……反乱軍のリーダーと国王軍とがか?」
「ああ、恐らく彼らは、砲撃が行われることを知っているんだ。それがクロコダイルの言葉によるものか、スパイ活動によるものかはわからんが」
「は?」と、それにミス・サーズデーが首をひねる。
「だったら言うべきじゃね?」
それにはミス・チューズデーが返した。
「……いまここで砲撃を国王軍に伝えれば、確実にパニックになる……そうなるなら、降伏してでも戦いを終わらせてから伝えたほうが懸命だと言うことでしょうか」
「そういうことだ……ミス・ウェンズデーが生きているのならば、目下の敵が誰なのかははっきりとしているだろう……後は砲撃をやり過ごしてから全員でクロコダイルを狙えば……一人くらいは一太刀入れられるだろう」
「じゃあ勝つじゃん、国」
手を叩いたミス・サーズデーに「いや」と、ミス・マザーズデイが答える。
「そう簡単には、いかないよ」
それは『第六感』では無かった。彼女らMr.6ペアの仕事ぶりによる結果が、あるいは、それを打ち砕くかもしれないという予測。
その時、ついに反乱軍の軍勢が、王宮前広場にたどり着いた。
暴力的な言葉とともに、彼らはそこに乗り込む。
そして、彼らが見たのは、リーダーのコーザを先頭に、国王軍達が白旗を掲げている壮観な光景だった。
「戦いは終わった!!!」
その旗を掲げながら、コーザが続ける。
「全隊、怒りを収め武器を捨てろ!!! 国王軍にはもう戦意はない!!!」
若くして反乱軍何十万人を束ねるリーダーの言葉は強かった。
反乱軍達はたじろぐように立ち止まり、信じられないようなものを見る目でそれを見ていた。無理もない、これから全力を尽くして戦おうとしていた相手が、全く戦意がなかったのだから。
一瞬、彼らを取り巻く狂気が収まったように、ニーサンは感じていた。
だが。
「駄目!」
頭を抑えたミス・マザーズデイがそういうやいなや。いくつもの銃声、そして、倒れるコーザ。
完全に戦意を喪失していたと思われていた国王軍が、背後から、コーザを狙い撃ちしたのだ。
「はあ!?」
その光景に、ミス・サーズデーは思わず身を乗り出しながらそう言ってしまった。尤も、そんなことに気づくほど、国王軍と反乱軍は暇ではないが。
「ビリオンズ……!」と、ニーサンは天を見つめながら呟いた。
国王軍には、すでに何人ものビリオンズが潜り込んでいる。彼らが計画のすべてを知っているわけではないだろうが、彼らに『行き過ぎた正義』を行うように指示したのは、彼らMr.6ペアであるのだ。
恐ろしいほどの静寂が、王宮前広場に訪れていた。そして、次の瞬間。
地響きとなって首都アルバーナを揺らすほどの狂気が、そこに訪れた。
そして、それを煽るように、広場には砂塵が巻き起こった。
強烈に吹き荒れるその塵旋風は、一瞬にして前後もわからなくなるほどに濃く、彼らを包み込む。
そして、両軍に『行き過ぎた正義』による銃弾が撃ち込まれた。
倒れる仲間たちに、彼らが思うことは一つだ。
彼らは狂気に身を任せ、戦う。
最後の戦い、首都攻防戦が始まってしまった。
「無理な話だったんだ」と、ニーサンは頭を抱える。
「会社のスパイは、すでに両軍に送り込まれている……それに、この塵旋風じゃあ、誰が異物なのかも分かりやしねえ」
それだけではない、そもそも彼らはこの戦いに反乱軍と国王軍しか存在しないと思っている。まさかそこに、漁夫の利を狙う第三者が存在しているなどとは、微塵にも思っていない。
国王軍にしろ、反乱軍にしろ、彼らは殺したくはないし、戦いたいわけでもない。
だが、彼らの中に放り込まれた異物は、殺したい、戦いたい。彼らの思想が、戦局を大きく歪める。
「この塵旋風……まさか偶然じゃねえだろう」
彼は王宮を眺めようとしながら呟いた。すでに塵旋風が目の前に迫り、それはできなくなりつつある。
「用意周到にも程というものがあるだろうよ、クロコダイル」
徹底した戦略だ、もうこれで戦いは終わらない。後はゆっくりと、その時が来るのを待つのみ。
さらに、ミス・マザーズデイが言う。
「……時計台なら、この塵旋風を気にせずに砲撃を行うことが出来るだろうね。さすがのカーチャンも、そこまでは考えが及ばなかったよ」
「戦いはもう終わらねえ……もし、王女陣営が砲撃を止めることができれば……いや、それは無理だろう……最後のチャンスだった……」
「どうする? あーしらが教える?」
「……いや、それは止めよう。あくまでも俺達はこの国の行く末を見守る。とにかく今はここから離れるんだ」
彼らは狂気が覆い尽くすそこから逃げるように離れた。
無事伏線回収できてよかったです
ニーサンのキャラ造形にはロックンローラーでプロレスラーということでクリスジェリコとか棚橋弘至を参考にしたんですけど、ぶっちゃけ二人共かなりの大物なので本質が小市民であるニーサンとは似ても似つきませんでした
感想、評価、批評お気軽にどうぞ
特にワンピース二次は初めての試みなので評価とアドバイスを頂けると幸いです、楽しみにしてます
オリジナルキャラクター(ニーサン陣営)のキャラ造形についてご意見ください
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出来に概ね満足している
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満足している
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可もなく不可もなく
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もう少し作り込んでほしかった
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作り込みが浅瀬