感想に関しては、返しにくいものに関しては返さないことも出てくると思うので、ご容赦ください
「大したもんだ」
打ち上げられた煙幕を追った彼らは、何故かその近辺にいた海軍をやり過ごしながらなんとかそこにたどり着いていた。
そして、地面に彫られていた『時計台』という文字を確認したニーサンは『麦わらのルフィ』一味が、砲撃手の居場所を突き止めたであろうことを予測する。
「まさか一国の王女様と小規模海賊が、王下七武海率いる秘密犯罪組織とタメを張るとは、一体誰が考えるかね」
「これ王女様勝つんじゃね?」
「さぁ、どうだろうな」
ニーサンは懐中時計を確認する。四時半まで、残り二十秒ほどしか無い。
「あの狼煙から皆がすぐに行動したとしても、時間は微妙だ……あの時計台は特殊な構造で、最上部にまで行くにはコツが居る」
「地理に詳しい王女様がいるのなら……対処できるのではないでしょうか?」
祈るように言ったミス・チューズデーに、ニーサンは「そうかもな」と、答える。
妙な気分だった。
もうすぐ死ぬというのに、なんだか、その現実をまだ受け入れられていない。
「時計台には、ミス・ウェンズデーがいるよ」
目をつむりながら、ミス・マザーズデイが言った。もはや誰もその言葉を疑うことはない。
だが、それに反応するには、残された時間が少なすぎる。
「残り、五秒だな」
懐中時計を見やる。そう言う間にも、秒針は動いている。
四。
シャッパは、時計台を睨みつけていた。砲撃が行われたら、たとえそれがニーサンの望みではなくとも、身を挺してでも彼らを守ろうと考えている。
三。
ミス・マザーズデイは、未だに頭の中を反響し続けているいくつもの『声』に悩まされながらも、傍らにいるミス・チューズデーとミス・サーズデーを両手でぐいと引き寄せた。
二。
ミス・チューズデーも、ミス・サーズデーも、ミス・マザーズデイの背中に手を回してそれを受け入れた。
一。
ニーサンは、広場で戦っている人々を眺めている。
ああ、あいつらも死ぬんだろうなあ。
ビリオンズも、あの鳥の男も、王女も、みいんな死ぬんだ。
「もったいねえなあ」
ゼロ。
響き渡るはずの轟音は、響かなかった。
相変わらず戦いの喧騒はやかましいが、それ以上にも、それ以下にもならない。
尤も、彼らはそれを当然と思っているだろう。この戦いが急に終わるなどと、一体誰が思うだろう。
ニーサン達は、一斉に時計台の方を見た。塵旋風のせいではっきりと確認することは出来ないが、数字盤が開き、何かが出ているようにも見える。
だが、やはり砲撃は行われていない。
「勝ったん……?」
真っ先にそう言ったのはミス・サーズデーだった。
ニーサンは見間違いではないかと再び懐中時計を確認する。
しかし、やはり秒針はすでに頂点を過ぎている。
ありえない。
Mr.7ペアはそのようなヘマはおかさない。
ならばやはり、何者かがその砲撃を止めたということ。
「勝ったんだろう」と、彼は呟くが、「だが」と続ける。
「どっち道変わらんさ。あの砲弾は時限爆弾でもある……」
それは彼の予測でしか無い、たしかに『ポツネン島』で使われた爆弾は時限式だった。しかし、だからといってその砲弾がそれであるという証拠はない。
だが、恐らくクロコダイルという男はそれをするだろうという確信が彼にはあった。念には念を、誰も信用せず、それ故に非情な采配。他人をあざ笑うような計画。
「なあ、旦那」
時計台を見つめながら、シャッパが言った。
「もしその『麦わら』の一味が時計台からの砲撃を止めたんじゃったら……その時限爆弾は、奴らから吹き飛ばすということになるんかのう?」
「……ああ、そうだろうな」
自らに逆らうもの、時計台からの砲撃を必死になりながら阻止した人間から、確実に殺すような計画。人を救いたいという考えを踏み潰すような考え方だ。
「なあ、旦那」と、シャッパが続ける。
「その男に……そんな事をする権利があるんかのう?」
彼は拳を握りしめている。まだ若い彼は、ここまでの怒りを感じたことはない。
「しらん」と、ニーサンが答える。
「だが、それだけのことをする『力』はあったということだ」
「まーじムカつくんですけど」
ミス・サーズデーは苛立ちを表すように刀を半分ほど抜いてから力強く納刀する。鈍い金属音が、喧騒の中に虚しく消えた。
その時だった。
不意に、ミス・マザーズデイが時計台の方に向かって「ああ!!!」と、叫んだのだ。
「馬鹿なことはやめるんだ!!!」
彼女は頭を抱えていた。『声』が彼女の中で鳴り響いているのだろう。
その様子に、ミス・チューズデーが彼女の体を抱えた。だが、それでも狼狽する彼女の力は抑えきれないようだった。
「姉御!!!」
「ちょ、ちょっと、何なんだし!!??」
シャッパとミス・サーズデーも同じように彼女を抱きかかえることで、ようやく彼女を取り押さえることが出来た。
だが、ミス・マザーズデイの叫びは止まらない。
「どうしてそんな事ができるんだい!!!???」
ニーサンは彼女の変貌ぶりに驚いていた。長い付き合いであるが、彼女が我を忘れるほどに狼狽するところを、彼は見たことがなかった。
更に彼女は空を見上げながら続ける。
「そんな事をして何になるっていうんだい!!!???」
ニーサンは彼女の肩を揺さぶりながら負けぬほどに叫んだ。
「何が起きているミス・マザーズデイ! 何が聞こえている!? 何が見えている!?」
「死ぬよ!? あんた死んじまうよ!?」
一つ息を吸い込んでから彼女が続けた。
「そうしてまで!!! この国を守りたいのかい!!!!????」
その言葉に、ニーサン達が疑問を持つよりも先だった。
天から、轟音が鳴り響いた。
たちまち降り注ぐ、爆風、熱風。自分たちを地面に抑え込まんとする圧力。
何が起きたのかと思うよりも先に、吹き飛ばんとする体を支えるよりも先に、ニーサンはシャッパと目を合わせて行動を開始する。
彼らは女三人をなんとか庇うように、彼らは吹き飛ばされながら倒れた。
だが、それも無駄な努力だと彼らは思っている。
『ポツネン島』で試された爆弾の威力を、彼らは知っている。
どうせその行動は自己満足だ。
せめて死ぬ前に、女を守ることが出来たという、地獄へ持ち込む自尊心を満たすための行動に過ぎない。果たして地獄にも自分の居場所があるのかどうかはわからないが。
倒れた自分たちを薄く伸ばすように、空からの爆風が髪を撫でる。
そして爆弾らしい熱線と爆風が、来なかった。
勿論背中に熱さはある、だが、ならそれが焼けるように熱いかとか、我慢ができないものかと言われれば、そんなことは無い。
それを不思議に思っていたニーサンに、彼の下に敷かれていたミス・マザーズデイが小さく言う。
「爆弾を持って……空に飛び上がったんだ……」
「は?」
「だから、爆弾を持って、空に飛び上がったんだよ……だから、カーチャン達のところまで爆風が届いてこなかったんだ」
「誰がだ?」
「あの男さ」
ニーサンは先程見送ったあの男を思い出した、恐らく鳥になれる悪魔の実の能力者。確かに彼の能力ならば、それが出来るだろう。
だが、彼はそれが信じられない。
起き上がり、皆の無事を確認しながらニーサンが言う。
「あの死にかけの男がか……?」
同じように起き上がりながら、ミス・マザーズデイが返す。
「ええ、少なくともカーチャンが聞いた『声』が正しければね」
彼女は他の二人を引き起こしながら続ける。
「国を守ったのさ。殆ど死んだような体でね」
ニーサンはそれに無言を返した。とても信じられることではなかった。
死をも越える忠誠を彼は知らないわけではない、だが、大抵そのような『死こそ忠義』であるという考え方は、大抵は不安定な、王権が極端な方向に振れている国で起こることだ。例えば忠義を死への恐怖で反故にしてしまえば、一族郎党に迷惑がかかるような、家族を人質に取るようなやり方をするような国で。
だが、とてもではないがネフェルタリ・コブラがそのような強権を振るうような長であるようには思えない。
だったら、なぜその男は自ら命を差し出したのか。
愛しているのか、この国を。
守るのか、国という不安定な、あまりにも広大すぎる『概念』を。
「反乱、終わったんじゃね?」
ミス・サーズデーの素直なその言葉で、ニーサンは思考から現実へと帰還することが出来た。
確かに、王宮前広場を静寂が支配していた、塵旋風が砂を巻き上げる音だけがそこに響いている。
「いや」と、ミス・マザーズデイが震えた声で言う。
「終わらないよ……」
爆風の衝撃から立ち上がった民衆たちは、それでも武器を手放してはいなかった。
ミス・マザーズデイが続ける。
「狂気は……終わらない……」
彼らは武器を振るった。
当然、振るわれた武器から身を守るために、彼らも遅れて武器を振るう。
先程の爆風は何だったのかとか、誰と戦っているのかとか、戦い抜いた先に何が待っているのかとか、そのような些細な考えは、すでに彼らにはなかった。
ただただ、武器を振るわなければ、振るわなければならないから、そうしなければ、この国は救われないから、ここまでのことが全て無駄になるから、死ぬから。
振り上げた拳は、どこかに降ろさなければならないから。
使命感と、責任感と、恐怖が。狂気が、彼らに武器を振らせる。
終わらない、この狂気は。
「そんな……」
「マジ……ありえないし……」
ニーサン達は、命が助かった喜びをすでに忘れていた。
否、むしろ、死んでいたほうが良かったのではないかとすら思っている。
こんなにも醜い光景を見るくらいならば。
いや、本来ならば、これこそが、彼らの望んでいた光景だったはずなのだ。
ならば、ならば。
自分たちは、なんてものを作り出してしまったのか。
もう、終わりなのだろうか。
ニーサンは一歩後退りしながらそう思った。
終わりだ、終わる。もう、アラバスタ王国は終わっている。
その時だ。
『――いを――てく――さい!!!』
声が聞こえた。
だが、それはミス・マザーズデイが聞いた『声』ではないだろう。
なぜならば、ニーサン達は全員、その声がした方向に目を向けていたから。
その声は、時計台からだった。
若い女の声だ。
『戦いを、やめてください!!!』
「ミス・ウェンズデー……」と、ミス・マザーズデイが呟いた。
『戦いを!!! やめてください!!!』
塵旋風にかき消されるであろうその言葉が、王宮前広場に届くとは思えない。
『戦いを!!! やめてください!!!』
だが、王女は叫び続けていた。
「届かねえよ」と、ニーサンは呟いた。
「この塵旋風だ、声が届くはずがねえ」
事実、彼女の叫びが広場に届いている様子はなかった。
彼らは言葉を失った。
あまりにも虚しい事実だ。
喧騒は、塵旋風は、この国を思う少女の声をかき消している。
一瞬、彼は自分ならあるいは、と思った。
王女よりかは、自分は広場の近くにいる。自分の歌ならば、声量ならば、彼らに届くのではないかと思った。アラバスタ王国の国家を歌えば、彼らは立ち止まってくれるだろうか。
だが、何を馬鹿な、と、彼は自嘲気味に笑って首を振った。
歌で国など救えるはずがない。それができれば、自分は国など奪おうとしなかった。
彼はどこからか取り出したパイプ椅子を小脇に挟む。
そして、喧騒の中に向かって歩いた。
その行動に、シャッパが慌てて「旦那!!!」と叫んだ。
「何をするつもりじゃ!!!??」
ニーサンは王女の声を聞きながら答える。
「反乱を止めに行くんだよ」
その言葉に、ミス・マザーズデイがすぐさま反応した。
「あんた……この国の結末を見届けるって」
「死に損なって気分が変わった。おれは会社の敵に回る」
「いーの? 王下七武海を敵に回すよ?」
「構わん。最初に裏切ったのはあいつらのほうだ……死ぬときゃあいつの右目に中指突き立ててやるさ」
急な変わり身に、しかし仲間たちはそれを拒否はしなかった。
それが贖罪になるとは、当然思ってはいない。これからどれだけこの国に貢献しようが、この罪は償えないだろう。
だが、それで良い。
罪を償うとか、国を救うとか、そういう些細な問題はもうどうでもいい。
ただただ、自分が思ったようにやりたかった。
たとえそれが今まで積み重ねてきたものを裏切る行為であろうと、日和見に見えようと、ダサかろうと、そんなこともどうでもいい。
ただただ、自分の感情に嘘を吐きたくない。
この国を、もう少し見てみたい。
この国を必死に守ろうとしている人間たちを、これ以上裏切りたくない。
「ビリオンズから狙え……民間人は気絶にとどめろ」
自分たちは、見分けることが出来る。反乱を望むものを見分けることが出来る。
もう、自らについてくるかどうかを聞くこともない。
仲間たちがついてくることを確信しながら彼は続ける。
「反乱を止めるぞ!!」
それぞれの声が、それに同調した。
ミス・マザーズデイは二十代前半~中盤で設定してます
感想、評価、批評お気軽にどうぞ
特にワンピース二次は初めての試みなので評価とアドバイスを頂けると幸いです、楽しみにしてます
バトル描写について質問です。
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バトルの描写に満足している
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可もなく不可もなく
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バトルの出来には不満がある
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そもそもバトルは読み飛ばす
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もっとバトルをかいてほしかった