Mr.6のお仕事   作:rairaibou(風)

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感想に関しては、返しにくいものに関しては返さないことも出てくると思うので、ご容赦ください


17.絶対に降らない

 喧騒は、反乱は、まだ続いていた。

 否、当然続いていたと言うべきであろう。

 国を守りたいという思いと、国を守りたいという思いは、同じ思想であるはずなのにすでに引き返せぬところまでお互いに刃を突き立てている。

 彼らが自発的にそれを止めるには、犠牲になった仲間が多すぎた。

 

 

 

 

 

 

「うわああああん!!!! ごべんなさあああああああい!!!!!!」

 

 王宮前広場の端、二人抱き合いながら大声で泣きわめくその少女に、国王軍も、反乱軍も一様に首をひねっていた。

 この喧騒の中だ、彼女らの泣き声に構う大人など十人いれば良いほう。

 

「反乱軍は、こんな少女まで戦いに加えるのか!?」

「いやいや待ってくれ、おれたちゃこんなガキを戦力にするほど落ちぶれちゃいねえ!!! むしろお前らのほうが数は少ねえだろうが!」

「なんだと!? 我々が子供を戦場に送り込むはずがない!」

「わからねえぜ! お前らはコーザさんを不意打ちするような奴らだ!!!」

「なんだと!!!」

 

 その言い合いの中で、やはり彼らは武器を抜きそうになった。

 その様子を見て、少女の片方がため息をつく。

 

「やっぱあーしらの魅力じゃあ止まらないかあ」

 

 急に泣き止んだ少女を訝しげに覗き込む彼らは、ようやく彼女が刀に手をやったところを見たところだった。

 

「『ウチ流抜刀術奥義……不殺』」

 

 彼らが見たのは、刀が抜かれる一瞬の煌めきのみだった。

 

五分厘(ゴブリン)抜刀(ばっとう)!!!』

 

 次の瞬間、彼らは一様に悶えながら倒れる。腹部から胸にかけて激しい痛みが走った。だが、それが何なのかはわからない。

 

「サーズデーさん!」と、ミス・チューズデーが不安げに言ったが、ミス・サーズデーはプルプルと『ニコニコ蝶羽華流』の重みに両腕を震わせながら答えた。

 

「心配ねーし、峰だし……まあ、多少は痛いと思うけど」

 

 彼女がわざわざ鞘を目の前にまで持ってきて、その鯉口をしっかりと確認しながら、更に震える片手でなんとか納刀しようとしているときだった。

 塵旋風の向こう側から、一人の巨漢が、サーベルを振りかざして彼女らを襲ったのである。

 

「エージェントの座はもらったあ!!!」

「きゃあ!!!」

「ちょっ!!!」

 

 巨漢ながら、ずる賢いビリオンズだった。彼は彼女らがエージェントであることを知った上で、スキを晒すまで塵旋風の向こうに潜んでいたのである。

 巨漢はそのサーベルを振り下ろさんとした。

 だが、それは届かない。

 

『ダーツキラー!!!』

 

 同じく塵旋風の向こう側から現れたシャッパが、その巨漢の顎に強烈なクロスカウンターを打ち込んだのである。

 肉と骨が擦れるような鈍い音が響き、その巨漢はサーベルを見当違いの場所に突き立てながら膝をついて失神した。

 

「サンキューエビちゃん!」

「シャコじゃ」

 

 彼は二、三度ピョンピョンとその場で跳ぶと、塵旋風の向こう側を睨みつけながら構えた。

 

「武人とは言え、女子供相手に不意打ちに多勢とは……ワレ、知る恥すらも知らんようじゃのう」

 

 彼の類まれなる視力は、塵旋風の向こう側にいる集団をすでに見据えている。

 彼に睨まれたビリオンズ達は震え上がった、シャッパの言う通り、彼らは塵旋風の向こう側から、人海戦術でミス・サーズデー達に斬りかかろうとしていたのである。

 

『節足ノアユミ!!!』

 シャッパがガードを固めながら独特のステップで地を這うように迫ってくる。

 

 ビリオンズ達はそれを見切ることが出来ない。どちらにかわしても、ステップが間に合って攻撃が飛んでくるような恐怖に足がすくむ。

 

順路(コース)刈掘二亜(カルフォルニア)ロール!!!』

 体を左右に振りながら、その勢いを利用して右から左から拳を繰り出す。

 

 一人、二人と一撃でのされていく光景に恐怖を覚えながら、ビリオンズ達はそれぞれその魚人から身を守ろうと画策する。

 だが、両手で顎のガードを固めた者は脇腹に一撃を喰らい、かと言って脇腹を守ると顎を撃ち抜かれる、頭を抱え体を丸めた者は頭が良かったかもしれないが、シャッパはそのガードの上から拳を振り抜き、やはり一撃で相手をのす。シャコのパンチ力に、拳の壊れぬメリケンサック。凡人がガードを固めたところで意味など無い。

 

 ある者はデタラメにサーベルを振った。迷いなく放たれたそれは、意外にもシャッパを捉えているようにも見えた。

 だが、「ガァ!!!」という声と共に振り抜かれた左の拳が、なんとそのサーベルを叩き割った。鋼のメリケンサックを刃にぶつけることで、彼はそれを成したのである。

 

 右に体を振った勢いで相手の顔を殴りつけながら、シャッパは不思議に思った。

 振り下ろされた刃とぶつかったというのに、左の拳に痺れがなかった。否、それどころか、メリケンサックの鋼と刃がぶつかった感覚すらもなかったのである。

 まるで見えない鎧を身にまとっているかのような感覚だった。

 

「あーしらも行くよ!」

 

 ミス・サーズデーはようやく刀を鞘に納刀し、未だに体を振り続けるシャッパに向かって歩んだ。

 

「はい!」と、ミス・チューズデーもそれに続く。

 

 喧騒はまだまだ止まぬ、彼女らは反乱の何万分かの一を、ようやく鎮めたばかりだったのだ。

 

 

 

 

 

 

「おいおいMr.6さんよお!!!」

 

 やたらにガラの悪いその国王軍の男は、突如として目の前に現れたフロンティアエージェントに下卑た笑みを投げかけていた。

 その男は、喧騒に背を向けていた。戦っている風で、実は戦ってはいなかった。

 だが、その男たちは、広場にいる誰よりも、戦いを望んでいたのだ。

 

「お前さんがどうしてここにいるかは知らねえが……」

 

 男は、国王軍の武器である先端が扇状の刃である槍を振りかざす。

 彼の背後にいた男たち、ビリオンズも同じようにそれぞれの武器を構えた。

 集団心理というものは、時として不相応な自信を持つようになる。

 

「エージェントの席を空けてもらおうかぁ!!!!」

 

 エージェント候補生であるビリオンズたちにとって、彼らは手の届きやすい『商売敵』である。彼らの寝首をかこうとするのは、野心あるビリオンズならばいわば当然の行為。

 だから、ニーサンたちにとってはやりやすかった。

 自分達が目立てば目立つほど、向こうからやってくるのだから。

 

 振り下ろされた槍は、地面を叩いた。

 そして、その柄を、飛び上がっていたニーサンが踏みつける。

 その重みに、槍が手から弾き落とされたことにその男が気づいたときには、すでに目の前にはニーサンの拳があった。

 

『ロック&ナックル・パート!!!』

 顔面の真ん中に、弓をひくように思いきり振りかぶられた拳が無遠慮に叩きつけられた。

 

 血を吹き出しながら吹き飛んだその男に、ビリオンズ達は一瞬怯んだ。

 

「悪いとは思っている……こりゃあ、ロクでもない行為だ」と、ニーサンは呟いた。自分自身のその行動が、彼ら犯罪組織に対する『裏切り』であることを、彼は強く理解している。

 

「だが、おれはロックにやらせてもらう!!!」

 

 次の瞬間には、次のビリオンズに照準を定めている。姿勢は低く、スプリントは激しく。

 

『ロック&エルボー!!!』

 今度は肘を顎に打ち込む。拳に比べて力を伝える関節が少ない分、その威力は強烈。

 

 二人目が倒れたその時に、ビリオンズ達はようやく『商売敵』の実力を思い出す。

 その男はフロンティアエージェントのトップ。『悪魔の実』に関係の無い最高戦力、『ロックンローラー』Mr.6だ。

 

「どきな!」

 

 その声を聞くや否や、ニーサンはその場にしゃがみ込む、その上空を、一人の女が飛び越えた。

 

『世界獲り回転レシーブ!!!』

 猫を思わせるようなしなやかなひねりから着地したミス・マザーズデイは、すでに『レシーブ』を終えている。

 ニーサンに照準を合わせて発射されていたその銃弾は、すでにそれを撃ったはずのビリオンズの肩に『レシーブ』されている。

 

「次ィ!!!」と、ミス・マザーズデイはビリオンズ達を睨みつけて叫ぶ。

 

 ビリオンズ達はすでに腰が引けていた。信じられない技術と身体能力、彼らと自分達の格の差は火を見るより明らかだった。

 そのうち勘のいい一人は、すでに彼らに背を向けて逃げ出そうとしていた。悪くない判断だろう。

 だが、彼は左手首を掴まれていることに気づいた。

 

「もう、逃げられねえんだよ。おれも、お前らも」

 

 ニーサンのその言葉は、まるで自分に言い聞かせているようだった。

 

 ぐいと、ものすごい力でそれを引かれる。

 ビリオンズはなされるがままであった。

 右腕が自らに向かって振り抜かれるのが見える。

 

『レインメーカー!!!』

 ショートレンジ式のラリアットに、それを喰らったビリオンズは首を中心に一回転して地面に激突した。

 

 

 

 

 

 

 その時は、突然だった。

 

 ニーサンが、もう何人目かもわからぬ民衆をパイプ椅子で殴って失神させたその時だ。

 不意に、地面が揺れたような気がした。

 

「なんだ!?」

 

 彼はすぐさまミス・マザーズデイの方を確認する。

 上から振り下ろす張り手で反乱軍の一人を失神させていた彼女は、同じく彼の方を見やっていたが、目が合った瞬間に首を横に振る。

 

 彼らは、この地震に心当たりがなかった。

 アラバスタでの作戦の殆どに絡んでいた自分達が、この揺れを知らない。ならばこの揺れは自然なものなのか、否、アラバスタは地震のある国ではないはずだ。

 彼らの脳裏に一つの予感が走る。

 ならばこれは、クロコダイルが用意していた最後の策なのか。

 ありえぬ話ではない。

 あの男ならやりかねない。あの悪辣な、それでいて誰も信用しない、あの男ならばやりかねない。

 

「旦那!」と、塵旋風の向こうがわからシャッパが現れた。その後ろからミス・チューズデーとミス・サーズデーもついてくる。

 

「こりゃなんじゃ!?」

「わからん……少なくともおれは知らん」

「まだなんかあるわけ!?」

「この国に地震はないはずです……」

 

 それぞれがそれぞれの意見を持ち合っていた時、不意に『何かが割れる音』鳴り響いた。

 それは『ポツネン島』を破壊した爆破のそれによく似ていた。なにか強大なエネルギーが、地面を割らんとするような、衝撃。

 経験したことのないものだった、あの爆破に比べても、更に大きいような気がする。

 ならば爆弾か、いや、違うだろう、これだけのエネルギーを生むことの出来る爆弾ならば、こんな事を思う暇もなく、そのエネルギーに飲まれているだろう。

 

「あれを!」と、ミス・マザーズデイがある方向を指差した。

 

 一斉にそれを見ると、そこには、その上空には、人がいた。

 ニーサンはその影に愕然とした。たとえ塵旋風が目くらましをしていようが、その影が纏う悪のドレスをごまかすことは出来ない。

 分厚い毛皮のロングコート、左手には義手のようななにか。

 それは、政府公認海賊、王下七武海、サー・クロコダイルであった。

 彼はすでに何かの力に操られるがままに上空を舞い、そして、すでにこの星の重力に操られるがままに、地面に激突しようとしている。

 

「……なんであんなところから飛び出してくるのか、カーチャンにはわからないけど……」

 

 ニーサンは握った拳を震わせていた。それは感動でもあったし、驚きでもあったし、恐怖でもあったし、それから逃げた自らに対する情けなさでもあった。

 

「……負けたのか、あいつが……」

 

 想像すらしていなかった、いや、想像すらできなかった。その男に、その悪の化身のような男相手に、真正面からぶつかって自らの我を通すなど、考えた事すら、最初の選択肢にすら無かった。 

 ミス・サーズデーは、すでに地に堕ちたクロコダイルが先程まで舞っていた空を眺めながら言う。

 

「あいつらが、勝ったんだ……」

 

 それは、思ったことを口に出す彼女だからこそ言えたのだろう。その偉業をたやすく信じるには、ニーサン達は毒されすぎている。

 

 更に続けて、それは起こった。

 

 ニーサンの頬を、ある水滴が撫でた。

 彼は最初、それは誰かの血であろうと思った。だから何気なくそれを拭ったし、それを確認もしなかった。

 だが、彼はそれが『冷たい』ことにすぐに気づいた。

 慌ててそれを確認する、だが、それを拭ったはずの手の甲には、何もなかった。

 二つ、三つと、それは更に彼の頬を、額を、髪を撫でる。

 

「嘘だろ……」と、彼は天を見上げる。

 

 ミス・マザーズデイ達も、それに気づいたようだ。

 それは『雨』だった。

 ニーサン達がこの国から奪ったはずの『雨』だった。

 

 そんな馬鹿なことがあるわけがない。

 雨を奪うはずのダンスパウダーは、きっちりと、きっちりと撒き続けていたはずだ。

 

「絶対に、降らないはずだろう……!!!」

 

 ニーサンはミス・チューズデーを見た。そこには、行き場所の無い憤りもあった。

 彼女も同じことを思っていたのだろう。顎に手をやって答える。

 

「絶対に降らない、はずです……しかし……現にこうやって降っている」

「ダンスパウダーか?」

「いや……そんなはずは……」

「奇跡じゃね!? やっほー!!!」

 

 ノーテンキに笑う彼女の言葉が、最も真実に近いように思えた。

 

「静かじゃ」

 

 それを浴びながら、シャッパがポツリと呟く。

 雨を感じた民衆は、一様に空を見上げていた。

 その言葉に、ミス・マザーズデイは思い出したように『声』を聞く。

 

「狂気が……止まっている」

 

 彼らは群衆を見た。彼らは不意に降り注ぐ『雨』に言葉を失い、

 

「武器に、迷いが」

 

 少しずつ強くなっていく雨が、いつの間にか塵旋風をかき消していた。

 

「ああ……終わってしまう」

 

 その様子から、ニーサンは自分達の作り上げたものが終演を迎えつつあることを覚悟した。

 時計台を見る。彼はシャッパほどの視力はないが、それでも、そこに一人の少女が立っているのが見える。

 

『もうこれ以上……!!! 戦わないでください!!!』

 

 群衆は、時計台から叫ぶ王女に釘付けになっていた。

 口々に、彼らは彼女の名を呼んだ。

 

 王女の声は、ついに届いた。

 

「終わったんだ」

 

 ニーサンがその声に背を向けながら言った。それと向き合うには、自らの存在はあまりにも矮小に思えた。

 

「『雨』が、この国を正気に戻したんだ」

 

 彼は奇跡を信じない。救いを信じない。人の愚かさを、国の愚かさこそを信じている。

 だからこそ、この光景は、彼には直視できぬほどに眩しすぎた。




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特にワンピース二次は初めての試みなので評価とアドバイスを頂けると幸いです、楽しみにしてます

バトル描写について質問です。

  • バトルの描写に満足している
  • 可もなく不可もなく
  • バトルの出来には不満がある
  • そもそもバトルは読み飛ばす
  • もっとバトルをかいてほしかった
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