「ふむ...」
こんな夜更けに戸を叩く音が聞こえ、何奴かと警戒しておったがまさかあの龍飛の弟子だとはな。儂に手紙を持ってきたらしい。
「...」
十二鬼月を迎え撃つ。だから弟子を譲る。氷の呼吸・陸ノ型 鏡花水月の習得が怪しい。足りないのは速さだから、そこを指導した上で最終選別へと送り出して欲しい。飲み込みは早いから知識を与えたら直ぐに覚えるだろう。
...勝手な奴じゃ。昔からそうだ。人の話をあまり聞かず、話をするのも下手。どうせこの手紙を書くのにも手こずったのだろう。
老体を理由に鬼殺隊を辞めて育手になり、育てた隊士は娘っ子一人だけか...
「龍飛...」
お前は残された者の気持ちを...娘っ子の気持ちを考えた上での決断か?手紙の内容を知った娘っ子は泣いておったぞ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
龍飛さんが死ぬ、だなんて考えられなかった。鬼は恐ろしい存在で、それでも龍飛さんならどんな鬼でも倒せる様な気がした。そこに確かな安心感があった。
でも龍飛さんはもういない。殺されるんだ。今、私がこうして寝てる間に殺されるんだ。私が弱いせいで。悔しい。桑島さんに諭された。まだ幼いからと。でも許せない。弱い私が許せない。
でも、それ以上に、鬼が許せない。殺す。必ず。全て、殺す。鬼は殺す。必ず。
◇◇◇◇◇◇◇◇
━━━━全集中・雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
「...!」
足りない"速さ"の手本として、一度だけ見せた霹靂一閃。雷の呼吸法を流し気味に話しただけでここまでの完成度に仕上げるか...!
「桑島さん。」
「...なんじゃ?」
「最終選別から戻ったら、私に雷の呼吸を教えて頂けませんか?」
「勿論じゃ。その霹靂一閃は充分お前の武器になっておる。最終選別でも役に立つだろう。」
昨日の幼さ残る娘っ子とは雰囲気が違う。吹っ切れたか、それとも鬼への怨みが強まったか...気迫は充分。間違いなく最終選別は突破するだろう。
一度指導を加えれば、それを物にする。此奴は将来柱になるやもしれぬな...
「出発は明朝じゃ。飯の用意はしておくから、夕方までは自分で修行をしているといい。」
「ありがとうございます。」
...明朝、娘っ子は儂の家を発った。飯と風呂、寝ている時間以外は動き回っておった。既に常中を完全に会得しているようじゃった。隊士になる前から常中を使える者は見たことも聞いたこともない。龍飛め、とんだ逸材を見つけたものじゃ。