温かいお言葉はやる気に、厳しいお言葉もやる気になります。
1話2000文字以上を目指しています。
物語の始まり方は大きく二つに分けることができると思う。主人公とヒロイン含めた主要人物たちが出会う前から始まるか、出会った後から始まるかである。
あくまでも、俺が読んできた範囲――すなわちほとんどラノベであるが、大体どちらかだ。緑の文庫は前者、青の文庫は後者が多い気がする。ピンクは半々。多分、合わせると前者が多い。
恐らく、出会う前なら主人公と主要人物が出会う過程からしっかり描くことができるからであろう。
ただ、別に前者だからおもしろい、後者だからつまらない、というわけではない筈である。実際、どっちが良いのだろうか。
そんな事を、ふと思ったので話してみた。
「なるほど……。飛理也、つまり、仮に僕が主人公だとして、去年の四月から物語が始まるとしたら前者で、今から始まったら後者ってことかい?」
「ああ、その通り。流石だな、政秀(まさひで)」
多分マジメに聞いてくれていたのだろう……俺の唯一の友人である須藤政秀が言ったのは至極その通りである。流石主人公スペックである。
須藤政秀。学力も身体能力も全国クラスで、学年の人気者。俺TUEEEなスペックを持つ、ほぼ主人公である。なんなら主人公でいい。
「で、それがどうしたんだい? 耳かきボイスと関係があるのかい?」
いや、俺が口を開けばすべて耳かきボイスの話になるわけじゃねえよ。まあ、確かに普段はそうだし――
「そう、関係ある。次の音声作品の台本の話だ」
「あぁ、それで。……二人も呼んだほうがいいかな?」
二人とは、俺が所属し政秀が会長を務める「音声作品研究会」の他の会員のことであり、次の音声作品とは、その「音声作品研究会」で制作する作品のことである。
音声作品研究会とは、去年俺達四人にで結成した同好会であり、名前の通り音声作品を研究、そして制作する。音声作品が好きな俺は政秀に勧誘され入会することになった。この高校の校則にある「会員は六人以上」を満たしていないため不正式ではあるが、ある特殊な事情により存続を許されている同好会である。ちなみに部活動は十二人以上必要らしい。無理。
「あいつらはいいだろ。いても役に立たん」
「ひどい言い様だなぁ。一応、演じるのはあの二人なんだけどね……」
それもそうだが、台本制作にあいつらは不要なんだよ。余計なことしか言わねぇし。
「それで、だ。……聴き手が話し手と会っていない音声作品ってアリだと思うか?」
やっと言いたいことが言えました。前置きが長かった気がするが気にしないでおこう。
「う~ん。……ストーキングしていたヤンデレに遭遇した、片思いしていた人に話しかけた、とかかな。一応、恋愛感情が無いのなら耳かき屋さんとか――」
「愛の無い耳かきはただの掃除だッ!」
「結構耳かき屋さんのボイスあるけど……」
「愛の無い耳かきはただの掃除だッッ!!」
「わ、わかったから……」
「愛のない耳かきは――」
「わかったって!」
本当に分かったのだろうか。まあ、耳かき屋の店員が自分に片思いしている同級生、なんてのもあるから一概に否定もできないのだが。
「そういえば、他に嫌いな設定はあるのかい?」
嫌いな設定、か。確かに、いい声、いい音なのに残念ってのはたまにあるな。そう、例えば、
「主人公に俺くんとか名前がついているのは感情移入しにくくて嫌だな。運動部ってのも想像しにくくてやりにくいな。右耳か左耳か確認するのは自分でしたから必要ねえし、耳かきされる音がされていない方の耳にも同じように聞こえるのは流石に耐えられない。シチュエーションボイスと言いながら『ひーくんさんスパチャありがと~』とか言ってくるのもうれ――迷惑だ」
「途中から設定関係ないし、なんかスパチャで貢いでる! 嬉しいって言いかけてたよね!?」
言ってない。なんで俺が裏アカで貢いでること知ってんだ。俺今言ったっけ。言ってないよな?
「まあ、それはいいとして……結局どうするんだい?」
「出会った後……だろうな。初っ端からイチャコラしたい」
そしてずっとイチャコラしてたい。ところでコラってなに? 怒られるくらいイチャついてるってこと?
「……ま、まあ。台本は君に全て任せるよ。ランスさんのを超える台本を期待してるよ!」
「お、おう」
こいつはランスの台本のファンらしく、俺と初めて会った時も俺の台本がランスのものと似てるってので絡んできた覚えがある。まあ、似てるっつうかランス本人だからな、俺。まったく気づいていないが。
「そういえば、ランスさんの台本にも無かった気がするなぁ。どうだったっけ……」
「さ、さあな」
一応、俺の作風が似てるのは俺もランスのファンだから、と言っているから聞いてきたんだろうが……本人に聞いてるんだよなぁ。あったかどうかは覚えてねえけど、今度書いてみっか。
「てか、ほんとあいつら遅えな。補習でも受けてんのか?」
普段は三十分以内に全員そろって何やかんやするのだが、今日は遅い。……いや、別に心配なわけじゃないぞ? 本当だぞ?
「あぁ。麻衣(まい)は補習で、志波は委員会だって。麻衣は迎えに来いって言ってたから、ちょっと行ってくるね。荷物番よろしく」
言うやいなや腕時計を見て、約束の時間が近かったのか知らないが教室を飛び出していった。麻衣がわがままなのもそうだが、こいつはこいつで妹の事に関しては結構抜けてんだよなぁ。つーか荷物置いてくな、ここで待てってのか俺に。
「……帰りてえ」
アイツの荷物もあるし、無断で帰ると少し面倒なことになるから帰らないが、ぼやくぐらいなら別にいいだろ。……はぁ、帰りたい。
前者だと冴えカノに似てしまうのでや止めました。でも後者は後者で生徒会の一存に似てしまう気がします。気をつけなければ……。
愛のない耳かきはただの掃除だッ!!!