温かいお言葉はやる気に、厳しいお言葉もやる気になります。
R15にするか迷った。
「なんでお前だけここに来るんだよ……兄ちゃんはどうしたんだ」
「イクの遅かったから待ちきれなかった♡」
須藤麻衣(まい)。音声研究会唯一の一年生で、声優担当。須藤政秀の妹で、煩悩に頭を支配されたバカである。見た目は小柄で可愛らしいが中身は本当に残念な痴女。おかげで全く興奮しない。
「あのなぁ……約束の時間を破った奴はもちろん悪い。ただ、約束をしたにも関わらず相手を信じずに勝手に行動するやつも、勿論悪いぞ。……アイツが戻ってきたら謝れ」
「柄にもなく常識人みたいなこと言います……びっくりです」
「俺は常識人じゃないと!?」
俺がコイツにするのと同じく、コイツも俺に酷い評価を下しているらしい。
「まったく……一応、俺先輩なんだけど。その態度どうにかならない?」
毎度毎度こいつは嫌味ばっかり言ってくる。この前は俺の外見を挙げ、「だからせんぱいは彼女いないんですよ、改めてください! そうしたら私が考えてあげます!」とまで言われた。猫背はともかく、整形しないと俺に恋人は出来ないのかよ。ていうか目つきの悪さって整形でどうにかなんのかよ。あと何を考えんだよ。
「え~、敬ってないのに敬語使っているし、せんぱいって呼んでるじゃないですか。……それとも、タメ口であ兄ちゃんって呼んでほしいんですか? このへんたい!」
そんな願望ねえよ。ていうか、変態に変態って言われるの割と凹む。
「お前は血の繋がったお兄ちゃんがいるじゃねえか。俺より全てのスペックで優ってるぞ、あいつ」
「アレが兄貴なんてサイアクですよ! スペックが何とか知りませんけど、全然私の為に動いてくれないんですよ! 妹想いスペックはゼロです!」
「……ツンデレってやつか?」
俺の知るラノベ主人公の中で、妹から好かれていない主人公など一人もいない。当然、こいつもそうな筈である、だって主人公スペックだもの。
「違います。ツントゲです」
何だそりゃ。まあ、ツンデレは自分の事ツンデレって認めないからな。まったく……。
「まあ、私は好きな人に大人の色気でアピールしますからね! せんぱいもわたしの色気でムスコさんを元気にしていいんですからね?」
「残念だな、お前みたいなバカの前ではいい子に寝てんだよ」
てか、色気なんて全くないし、他の所で勝負した方がいいと思う。
「別に私で元気になってもいいじゃないですか……というかバカとは何事ですか! バカとは!」
「はぁ!? お前はバカで変態だろ!」
本来の俺はとても紳士的であり、女性に暴言など決して吐かないのだが――あ、いや、別に女性が苦手なわけではないぞ! 本当だぞ! そもそも女性と話せないわけじゃ……! って誰に弁明してんだよ。……俺は紳士だから女性に暴言など決して吐かないのだが、コイツを含めた一部の女子は別だ。理由としては、「政秀に惚れているな違いないから、俺が彼女らにどんな感情を持たれても関係ない。むしろ、恋人の友人ともうまく付き合うことが必要」というもの。だって、こいつ妹だから絶対惚れてんじゃん。
「ひどいです先輩! こうなったら先輩が女子を泣かせる鬼畜ってウワサを学年で流しますよ!」
「残念だったな、そんな噂を流しても『二年の持内先輩……だれ?』となるだけだ。人の噂も七十五日、とはよく言ったものだが、俺の噂は七十五秒で終わる」
「一分五秒で終わるんですか先輩のウワサ……ま、まあ、ウワサになっても私が困りますけどね」
「なるほど俺の知り合いだから迷惑と。……あと、一分は60秒だバカめ」
少し心配になってきた。コイツ、数学の補習を受けてきたのではあるまいか。
「ちょ、ちょっと間違えただけです! そんなにバカバカ言わないでください!」
顔を紅くして弁明しているバカ。こんな感じで幼い感じを出せばいいのに。
「ん、どうしたんだバカ。現実を突きつけられてショックなのかバカ」
「本当に鬼畜です! こうなったら――」
おうおう、こうなったら?
「――先輩はホモで兄貴とカップルだってウワサを流します!」「申し訳ありませんでした」
それだけは止めてほしい。シャレにならん。俺と政秀は確かに友人ではあるが、一緒にいる姿を勘違いされるのは本当にマズい。
「悪かったよ、マジで勘弁してほしい。帰る前に自販機でジュース買ってやるから」
椅子に座ったまま机に頭がぶつかるまで頭を下げた。人に物を頼むとき腰は低く、交換条件を用意して、だ。
「まあ、カ〇ピスで勘弁してあげますよ。……先輩の、今出してもいいですよ♡」
「おう須藤妹。カラダにピースしてやろうか。目だぞ」
「目潰しって言うんですよ、それ。……あと、須藤妹は止めてくださいって言ってるじゃないですか」
いや、確かに須藤は二人いるから止めろと言うが、いくらどう思われてもいいとはいえ名前で呼ぶのはどうなんだとは思うんだが。
「まあ一応、友人の妹だからな……『親戚のお兄ちゃん』みたいに呼べばいいか」
「ま、まあ? 別の関係でもいいですけど?」
別の関係ってなんだよ。奴隷になるつもりはねえぞ。……親戚のお兄ちゃん、親戚のお兄ちゃん……クソ、親戚に会ったことねえ! 美人の従姉が欲しかった!
「もうさっさと兄ちゃん呼んでこいよ、ま……麻衣……」
おかしいな、何回か呼んでいた筈なんだが、猛烈に恥ずかしい。
「はぁい、じゃあ行ってきますね飛理也先輩!」
「あ、あぁ……。って、ならアイツの荷物を……っ!」
……行ってしまった。寂しいわけじゃない。別に好意を抱いているわけではない。
ただ、ただ……少しアイツが羨ましい。
パロディを控えようとは思っているのですが、理性を抑えられずにカル〇スを出してしまいました。