音声作品研究会の日常   作:榎田 健也

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温かいお言葉はやる気に、厳しいお言葉もやる気になります。


毎日投稿、辛えぜ……


第五話

 音声作品研究会の活動は、大まかに分けて二つある。

 まず一つは、音声作品についての活動である。普段は音声作品の研究――という名の雑談で、たまに音声作品の制作――という名のパソコン弄りがある。制作とか言いながら、録音は小佐野と麻衣は別々に行い、小佐野がパソコンでそれをいい感じにしてくれるので、俺達三人はネットの海を好きなようにサーフィンしている、というわけだ。

 そして、二つめが少し厄介なもので――

 

「よし、その書類が終わったら次はこれだ。まだまだあるぞ」

「もう少し手心、というものを加えていただきたいのですが。生徒会長」

「こ、こんな公共の場でくわえるなんて……!」

「痴女は黙れ」

 

 生徒会の雑用である。生徒会にも働き方改革の波が来たようで、昨年度から週2休暇制度を採用している。これは月曜日から金曜日までの内2日を生徒会役員の休暇にするという制度であり、その休暇の日にある仕事を正式な同好会でない俺たちがやることによって会の存続を認められている。そしてそれは、あるパイプが無いと成り立たない関係である。

 

「手心なんてあるわけないだろ。最終下校時刻まで働いてもらう。さもなければお前らの同好会は解散だ!」

「飛理也、その書類は僕がやるよ。……夜野(よるの)先輩、その書類も僕が」

「お、サンクス」

 

 書類を適当に取って渡す。元凶こいつだしな。

 

「政秀くん、そんな面倒くさいもの持内にやらせればいいのよ」

「ひどい待遇だ! 労働組合に訴えてやる!」

「モチくん、諦めよう……。生徒会に労働組合も何も無いよ……」

 

 小佐野が夢も無いことを言ってくる。ていうか、マサくんだのモチくんだの二文字にするの好きだなお前。「アンタ気持ち悪い」を「キモ」に略したのお前か? あの二文字が俺をどれだけ傷つけたと思ってんだ。

 

「持内、お前はこれだ」

 

 目の前に置かれる書類の山。

 

「ドS! ドS生徒会長!」

「ふっ……何とでも言うがいいさ……」

「普段は優しいんだけどね……」

「ば、バカな事を言うな!」

 

 夜野真夏(まなつ)。この高校の生徒会長であり、政秀の従姉である。ほんとこいつは……。政秀は優しいと言うが絶対信じない。だって俺に一番仕事させるんだもの。そして当然政秀のことを好きだろうし、生徒会長が悪口を広めるのは不信任ものだから俺は安心してドS生徒会長と呼ぶ。このドS生徒会長!

 

「夜野先輩、確かに飛理也だけやけに書類が多い気がするんですが……」

「だよな、政秀! 明らかにおかしいよな! ドS生徒会長!」

 

 さっきから、ストレスの余り声が大きくなってしまっている。俺の全部の台詞にびっくりマークがついている感じだ。正確には……何だったか、エクスクラメーションマークっていうんだったか。まあいいやびっくりマークで。

 

「私にドSなんて言うからよ。自業自得、というやつね」

「おかしいな~。俺は真実を言ってるだけなんだけどな~」

「そういうとこですよ、先輩」

「まったくよ」

 

 ここにいる女子全員が敵になってしまっている。……やっぱり、持つべきは同性の友達だよな!

 

「政秀、お前は俺の味方だよな……?」

 

 ここに居る唯一の男子、政秀の方を見る。お前だけが頼りだ。

 

「言い過ぎじゃない?」

「お前もか」

 

 ここに俺の味方はいなかった。昔から思ってたけど、「ぼっち」って「孤軍奮闘」って言い換えたらめちゃくちゃかっこいい。俺は孤軍奮闘中だぜ!

 

「でも、確かに多いですよね。……先輩、こんなにたくさん♡」

「いや、今の間でそれを思いついたのは感心するけどもう遅いだろ」

「こんなにたくさん♡」

「不屈の精神……!」

「え、せーし?」

「言ってねえよ! あぁ疲れる」

 

 書類は多いし下ネタ多いしほんと――

 

「減らしてほしいわ……」

「え、フェ――」

「もうやめろ」

 

 一応、口を動かしながらでも対応できているが流石に下ネタを聞きながら作業するのは精神的に辛いものがある。なぜだろう。……思えば、親が留守の時に半裸で十八禁音声を聴いたときにもにたような辛さがあった。あの時は脳に必要な血が下半身に流れることによる脱力感だと考えたが、今は正常に血が流れている。本当になぜなのだろう。

 

「モチく~ん、イチャついてないで終わった書類ちょーだーい」

「あ、悪い。……つーかお前は俺と麻衣がイチャついてていいのかよ」

 

 小佐野は生徒会室備品のノーパソを使って、俺達が書類からピックアップして蛍光マーカーを引いたデータを表にまとめてもらっている。そしてこいつは妄想大好き女子で、俺と政秀を美化し取り合いをしている、という妄想をしている。だから俺と麻衣がイチャついてる、とからかうのはどうなんだ、と思って訊いてみた。小佐野と麻衣は仲が良いが付き合いは一か月ちょいなので妄想での関係性がわからん。……いや、まあ知りたかないけど。本当に俺、なぜ訊いてしまったんだ。

 

「一部のシナリオにはライバルとして別の女の子が出ることもあるの。だからその子から妨害を受けることもあるの。まあ、大体その子は自爆しちゃうんだけどね」

「なに? 乙女ゲーのシナリオの話になるのかよ。訊くんじゃなかった」

「違うわよ。でも、私と麻衣ちゃんは友達だから。生徒会長といっしょでライバルではあるけど」

「し、志波先輩っ!」

「わ、わたしは、別に……」

 

 何のライバルだよ、と呆れすぐに気づいた。こいつら政秀を狙う恋のライバルだった。俺だけ蚊帳の外なんだよなぁ。

 

「い、いいから口の前に手を動かせ! 早く終わらせないと帰らせないぞ!」

「「「……はい」」」

 

 俺たちは同時に答え、

 

「ははは……」

 

 三人をライバルにさせた男は、苦笑していた。




今日は寝ない予定です。昨日は午前四時に寝て午後四時に起きました。
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