音声作品研究会の日常   作:榎田 健也

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温かいお言葉はやる気に、厳しいお言葉もやる気になります。


ついに、あの伏線が回収!


第六話

「ふわ~あ」

 

 五月の朝。風は冷たいものの太陽はとても暖かい。ゴールデンウィークはとっくに終わり中旬ではあるが五月病はまだ完治しておらず、ぼーっと歩き、あくびをし、ぼーっと歩いて学校に向かっていた。ふわ~あ。

 俺が登校する時間は始業チャイムギリギリに教室にたどり着く時間。ギリギリまで寝ていても寝足りないが、今のところ遅刻はない。……今学期中は、だが。

 

『お前昨日のアレ見た?』

『おう見た見た。すごかったよなアレ』

『だよな~』

 

 前方には歩みの遅い三人の男子グループがおり、俺と歩調が合わないため抜かしたいが抜かすのはちと難しい。しかたないので、俺は歩みをそいつらに合わせ、話に内心ツッコミをすることにした。意外に暇をつぶせ、お笑いスキルも上がる。目指せR1優勝! 相方作れねえのかよ。

 

『そういえば小テストの勉強やった? 俺全然やってなくてさ』

 

 やったやつの台詞だぞそれ。やってねえやつはそんな話題振らねえよ。

 

『お~余裕余裕』

 

 やってねえやつの台詞だぞそれ。多分こいつテスト直前に丸暗記するタイプだ。

 

『う~ん、昨日一通り復習したんだけど三平方の定理の応用ができなくてさ』

『さ、三平方……?』

 

 わかってねえじゃねえか! てか、そういう場合は基本を完璧にしとけ。そうしたら応用もある程度出来っから。

 

『そういえばウワサで聞いたんだけどさ』

 

 お、学校のウワサか。共通の話題としては知っておくべきかもしれないが、政秀はあまりそういう話はしないからな。盗み聞きをさせてもらおう。

 

『今年の体育祭は応援合戦が無くなるらしいぜ』

 

 お、それは嬉しい。六月上旬に体育祭が予定されているが、去年の体育祭は蒸し暑くてしんどかった。水分補給を勧められてはいたが、応援で喉が渇いて本当にしんどかった。だから応援をひたすらやる、というプログラムである応援合戦が無くなるのは非常に助かる。

 

『そういえば、なんか俺らの学年に女子を泣かせまくっているクズ野郎がいるらしいぜ』

 

 うわ、最低だな。一人の男として腹立たしいし、軽蔑する。一体どんな奴なんだ、まったく。

 

『落合っていうらしいんだけど、そんな奴二年生にいたっけ?』

『落合……だれ?』

 

 ……………………俺には関係ない。そうに違いない。とりあえずあの痴女に会ったら問い詰めるが、俺には関係ない。そう思っておこう。俺の名前とよく似ているが、気のせいだ、気のせい。いや、本当に。気のせいだし関係ない。……そう思わないとやっていけない。

 

『……おい、正門でなんかやってるぞ』

『うわ、持ち物検査じゃねーか、あれ!』

 

 持ち物検査。昔の学校では当然のように行われていたが、今はプライバシーとかなんとかで廃れた行為。俺も中学生の頃までどこの学校もやっていないと思っていたのだが、驚くべきことにこの学校では以前から導入されており、風紀委員会と生徒会が週に一度合同で行う。最近めっきり行かなくなったが、遊園地や大型イベントで行われるような大掛かりなもので、カバンの中はもちろんポケットの中までくまなく検査され、服装検査も兼ねる。

 俺は以前、持ち物検査はクリアできても「前髪が長い」と服装検査に引っかかったことがあり、以来気をつけるようになった。

 

「お、おはようございます」

「おはようございます。それでは鞄を開けてください」

 

 正門から学校敷地内に入ると工事現場でよく見る誘導棒で複数の列に分けられ、朝の挨拶の後鞄を開ける。風紀委員の女子だったが、こ、コミュ障でも挨拶くらいは出来る!

 

「特に違反しているものは――おや、この本は何ですか?」

 

 本……うわ、休み時間に読むものだが、見られては非常にまずい。ラノベだから挿絵と表紙が際どい、ていうのもあるが他にも理由がある。ブックカバーもしているし、とにかく誤魔化すしかない。

 

「しょ、小説です!」

「マンガのようなサイズですが……」

 

 何だよ、近頃の風紀委員は文庫本とマンガのサイズも分からねえのかよ! ……まあ、最初のカラーページは漫画なんですけどね……。でも一応ラノベ。一応小説。

 

「まあ、小説なら問題はありません」

 

 ほっ。

 

「では、次にポケットを確認させていただきますポケットの中身を全部出し、何も入れていないか証明してください」

 

 細けえな、と思いながら素直に従う。従わない場合は執行妨害として反省文を書かされるらしいし、女子に逆らう気力はない。……痴女と妄想女とドS女は別な。

 

「はい、携帯電話の電源も切ってありますし、問題ありません。……始業まで時間が無いのでお急ぎください」

「はい、ありがとうございました」

 

 返してもらった財布とスマホとティッシュをポケットに入れ、カバンを受け取った。よし、無事に終わった。時間もないし、さっさと教室に行こう。

 

『夜野先輩! これは違うんです!』

『何が違うんだ、証拠ならここにあるではないか!』

 

 ……よし、見なかったことにしよう。時間もないし、さっさと教室に行こう。そうしよう。

 

『あ、飛理也! 助けて!』

『も、持内! お前もちょっと来い!』

 

 しまった、見つかった。

 

「つーか何してんだよ。持ち物検査にでも引っかかったのか? 優等生なのに」

 

 こいつは成績優秀で生活態度も非常にしっかりしており、人当たりもよく音声作品厨というスペックの優等生だ。持ち物検査に引っかかるはずがない。

 

「いや、僕は……持ち物検査に引っかかってしまった……。ごめん、飛理也……!」

「なん……だと……?」

 

 そんな……バカな……!

 

 

「あー。……とりあえず生徒会室行くぞ」

 

 一人空気を読まなかった。




明らかになる真実……!

次号、センターカラー!
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