温かいお言葉はやる気に、厳しいお言葉もやる気になります。
今回出てくる飛理也の昼休みの過ごし方は本当にお勧めです。長々と弁当食ってるよりよっぽど建設的だと思います。
朝の生徒会室。放課後は何度もあるが、朝の生徒会室は初めてな気がする。……何も変わらねえな、紙の匂いがするだけだ。
「で、何で俺もここに連れて来られないといけないんだよ……」
「でも、確かになんで飛理也も連れてきたんですか?」
「き……気まぐれだ! お前もどうせ違反したんだろう!」
「してねえよ! 偏見がひどい!」
いったいこのドS生徒会長は俺を何だと思っているんだろう。そして、気まぐれだったらもっと持ち物検査を何だと思っているんだろう。
「で、政秀。お前は何を持ってきたんだ」
「ああ、これだ。持内、お前も何か言ってやれ!」
「飛理也、これを見て分かってほしい。……僕は無実だって」
……何これ? 俺が生徒会長の言い分と政秀の言い分を判断しなくちゃいけないってことか? 友人である政秀の弁護をしたいところだが、コイツには一昨日裏切られているからなぁ……カルピス……。
「じゃあ、もう一度このカバンを開けるぞ」
「だから違反しているものは入っていないって……!」
「はいはい、わかってるから。お前がそういうの守るって俺はわかってるから」
そう政秀をなだめて、カバンの中身を覗き込んだ。そこにあったのは――
「長芋、パックに入ったエビフライ、つまようじ、炭酸水、綿毛になったタンポポ、ねこじゃらしの草……」
「ね、飛理也! 違反になるなんて不当だよね!」
「政秀……残念ながら、これは駄目だ」
うなだれる政秀。逆になんでいいと思ったのだろう。……まあ、ある程度わかるが。
「おい持内、なんで政秀はあれほど自身があったんだ? 同好会で使う、とかほざいていたが」
うん、まあ……その通り。
「音声研究会で使うからですよ……耳かきとして」
「…………は?」
うん、気持ちはわかる。政秀の気持ちも、生徒会長の気持ちもわかる。とりあえず、生徒会長に説明してあげることにした。
「えっと、これら全て『耳かきボイスに使われている』ものなんです。耳かきボイスは通常耳かきや綿棒で、耳の形をした音質が良い状態で録音ができる『バイノーラルマイク』を擦って録音するのですが、最近は変わり種も多いんです。長芋は先端の細長い部分、つまようじは持つ方の溝でやったりしますね。ちなみに炭酸水はそれほど変わり種でもなく、綿棒に浸して使うことが多いですね。」
「だからといって、長芋やエビフライを使うのは頭が――」
「これ以上はやめましょう! 許可を取ってないんですから! ごめんなさいファンですチャンネル登録してます!」
「急にどうした……まあいい、没収だ。エビフライと炭酸水以外は下校直前に取りに来い」
「そ、そんなぁ……え? どうしてエビフライと炭酸水?」
確かに、なぜだろう。何か共通点は……あっ。
「昼食だろ? ……持っていけ!」
「よ、夜野先輩……」
なんだ、ドSなだけじゃなかったのか。……ちょっと見直したぞ。
「すみません、僕……エビフライそんな好きじゃないし、炭酸飲めないんですけど……」
台無し。
「へ~、そんな事があって朝の会遅れたんだ。……私、となりのクラスで本当によかったわ。問題児もいないし」
「おい、待て。俺は問題児じゃない。」
「僕もさ」
いや、俺は少しお前への評価を考え直しているよ……相変わらずの音声作品厨だが、ここまでとは思わなかった。
「兄貴、昔からダメだよね~、おいしいのに。……持内先輩! 先輩は私のジュース飲めますよね♡」
「あのなぁ……ちょっとそれは下ネタ強いぞお前」
「え? 何よ、普通の会話じゃない。何を考えているのか知らないけど、変態なんじゃないのアンタ」
「うん……お前は知らない方がいいし、知らないでいてほしい。ついでに言うと俺は変態じゃないし、麻衣は変態だ」
そして、「私のジュース」なんてフレーズを下ネタに変換できてしまった俺も少しマズいのではないだろうか。俺は麻衣に毒されてしまったのではないだろうか、と思う今日この頃。
「で、だからと言って放課後にエビフライをおすそ分けするバカがどこにいるんだ」
「えへへ……二本は食べたんだけど、まだ十本あってさ」
「そういう音声作品があるからって学校に持ってきたのもおかしいけど、それでエビフライを1ダース買うのもおかしいと思うわ……」
「おう、とりあえずお前がまともで良かったわ……。妄想の時はアレだけど」
「何よ、アレって。何かひどい事を指している気がするんだけど」
正解。指示語を正確にして丁寧にすると、「お前が妄想している時は気持ち悪い」になります。でもそういう事を直接言わず、しっかりぼかしてくれる俺に感謝してほしいですね。
「実はね、昼休みに飛理也にあげようと思ったんだけど、いなかったからさ。」
「さっさと学食でメシ食って図書室でのんびり本を読むのが、俺の最高の昼休みの過ごし方だからな。てか、俺じゃなくていつもギリギリまで一緒に飯食ってるお前のダチにでも頼めばよかったんじゃ……?」
ちなみに、昼休みの図書室は静かだし、昼休みの担当らしいいつもいる図書委員も話しかけてこないので快適だが、誰かいると俺が本に集中できないので人に勧めた事はない。そして勧める相手もいない。政秀は長々とメシを食ってるし、麻衣と小佐野は本を読まない、はずだ。バカだから。
「…………あっ」
どうやら、もう一人バカ候補がいたらしい。勘弁してくれ。
次回、エビフライ戦編突入(?)