もっと胡散臭くしたいのですが、基本主人公は善人です
【嘘つきがいつでも必ず嘘をつくとしたら、それは素晴らしい事である】
-----アラン『人間語録』
四人の場所から少し離れた草むら
その中から黒い髪のウサ耳を着けた15、16程度の少女が陰鬱気に四人を見ていた。
「うぅ。完全に出るタイミングを逃してしまいました」
少女としては呼び出した者達を少し観察してからパニック状態になっているだろう皆の目の前に出るつもりだったのだ
だが、少年少女達は少女の予想を上回って落ち着きを払っているせいで出るタイミングを計れないでいた。
少女の出る前に呼び出された少年少女達の苛々は最高潮に達しかけている
その中飛び出して良いのかどうか少女は草むらでうんうんと唸っていた。
「うぅ、どうしましょう……」
「何かお困りかい?」
「へ?」
少女の横から声が掛けられる
声をかけたのは何時の間にかに少女の横へと移動していたソウだった。
「っひゃー!」
甲高い声を上げて少女はソウから距離をとる
ソウはそんな少女を見てニヤニヤと笑った。
「ははは。そこまで驚く事はないだろう」
そう言ってソウは草むらから出る
少女はソウに警戒しながらそろそろと後ろを見た
勿論そこには腕を組んで待っていたとばかりの三人が仁王立ちしている。
少女は自分が怒れる鬼の前に出されたと理解した
そしてそれを意図的にやったソウは見下ろされている少女に嗤った。
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに恐い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
自分を黒ウサギと言った少女は後ろに居るソウを見る
その眼からは助けてもらえませんか? と言うメッセージが声を出さなくても伝わってくる。
ソウはやれやれと少女の肩を掴んで言った
「俺は基本優しいと自負している……が、今の俺は【怒っている】この意味が分かるな?」
「あっは、とりつくシマもないですね♪」
バンザイと少女は手を上に上げて降参のポーズをとる
しかし、その眼は冷静に四人を値踏みしていた。
「……」
それに気付かないソウではない
昔から人の心を読み取るのは彼の専売特許だ
それは彼が居た世界で培った技術であり、彼の生命線である。
「……人を観察する時は視ていると察せられない様にした方が良いな」
「へ?」
ソウは呟く様にそう少女に言い、その場から少し離れる
少女に三人がちょっかいを掛けているのを横目にソウは煙草に火を点けた。
「……ふぅ。この癖は【直した方が良い】な」
涙目になりながら三人の相手をしている少女の心情を察しながらソウは煙を吐いた
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこの様な状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
ソウもまさかここまで長く弄ばれるとは思ってなかったので苦笑いをしながら皆に近寄って行く
あまりに長い時間煙草を吸っていたので持っていた煙草のストックが無くなってしまったのだ。
近付いてくるソウに向けて黒ウサギはジト眼を向ける
ソウも少し罪悪感を感じていたので軽く頭を下げる
謝ったのが少し意外と思ったのか軽く眼を見開いた後、微笑みながら黒ウサギは両腕を大きく広げた。
「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います!」
他の人に邪魔されない様にオーバーに表現ををつけながら黒ウサギは言う
「ようこそ、“箱庭の世界”へ! 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうとかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです! 既に気付いていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます!」
「「「「……」」」」
黒ウサギの言葉に少年少女達は別々の反応をとる
鼻で笑う者、眼を横に逸らす者、首を傾げる者
ソウは黒ウサギの言葉に眉を曇らせた。
黒ウサギは皆の反応に気付かず話を続ける
「『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
黒ウサギの言葉を聞いてソウは辺りを見渡す
見える湖、木、土、そしてこれから行くであろう巨大な天幕によって覆われた都市
この眼で見える範囲全てのモノは“何か”に造られたステージ
そう考えるとソウは不敵に笑い空を見上げた。
その眼に映るのは真っ青な空と輝く太陽
その全てが自分を歓迎していると錯覚した。
(もっと速くこの世界に来たかったな)
惰眠して生きていた前の世界を思い出して苦笑する
ソウが思考を終わらせた時、ちょうど十六夜が質問するところだった。
「この世界は……面白いか」
その言葉にソウは他の者と同じ様に黒ウサギを見る
黒ウサギは皆を見回して笑いながら言う。
「……YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界の世界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー
天幕で覆われた都市の前
ソウ達はそこへと移動した
「ジン坊ちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
先を歩いていた黒ウサギが門の前に座っていた少年へと声を掛ける
少年は黒ウサギの声に気付くと手を振って応えた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人の方が?」
「はいな、こちら御四人様が……」
クルリと振り返り黒ウサギは固まる
そこにはいかにも問題児筆頭の十六夜が欠けて三人しかいなかった。
「……え、あれ? もう一人居ませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児”ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと? 彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ”と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
そう言って指すのは上空から見えた世界の果て
水が流れ落ちる滝の方向である。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”と言われたもの」
「なんで黒ウサギに教えてくれなかったんですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
二人の少女の答えに黒ウサギは耳をしならせて膝を着く
そしてソウに眼を向けた。
「……ん? ああ、ぶっちゃけ面倒だった」
「このお馬鹿様!」
久々に正直に答えたのに返ってきたのはハリセンによる返答
ソウは解せぬと頭を掻いて苦笑した。
「た、大変です! “世界の果て”にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が!」
ボケとツッコミをやっているさ中、ジンと呼ばれた少年が顔を蒼白にしながら言う
「幻獣?」
だが、そんな少年の慌てている事よりも面白そうな単語を聞いて三毛猫を持つ少女は聞き返す
少年はそんな少女の様子から少し冷静になってその疑問に答えた。
「あ、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー? ……斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンは必死に事の重大さを伝えようとするが、二人は黒ウサギに叱られても肩を竦めるだけである
ソウはその様子を横目に見ながら“世界の果て”を見る
そしてボソリと誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「……俺もついて行けば面白かったかもな」
「何を言ってらっしゃいます、お馬鹿様!」
だが、黒ウサギの耳はその言葉をしっかりと聞いていた
ハリセンで後ろから叩かれながらソウは苦笑する。
「……地獄耳」
「ちゃんと聞こえてますからね~」
ソウとのやり取りを止めて黒ウサギは呆然としている三人に向き直る
三人からしてみればいきなり黒ウサギがソウを叩いた様にしか見えないからだ。
「それじゃあジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様の案内をお願いしてよろしいでしょうか?」
「……あ、うん。分かった。黒ウサギはどうする?」
黒ウサギは少年の疑問の声に微笑み、艶のある黒い髪が淡い緋色に染めて“世界の果て”へと身体を向けた
「問題児様を捕まえに参ります。事のついでに……“箱庭の貴族”と謳われるこの黒ウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」
突風を残して黒ウサギはその姿を四人の視界から消えた
「……。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心したわ」
「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属ですからね。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女ならよほどの幻獣と出くわさなければ大丈夫だと思いますが……」
少年の言葉に三人は生返事を返す
ソウは周りを見渡してから心配そうにしているジンに声を掛けた。
「……黒ウサギちゃんがちゃんと十六夜君を探してくるだろうし、案内をお願いできるかな?」
「あ、はい。そうですね」
「そうね、エスコートは任せたわよ」
そこで少年は自己紹介をしていないと気付く
そして、三人を見て自己紹介した。
「コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。貴方達の名前は?」
自己紹介されてソウから名前を言っていく
「【木葉ソウ】だよ、歳は秘密だ。こちらの紅いリボンのお嬢様は」
「久遠飛鳥よ、歳を言う気はないわ。そこで猫を抱えているのは」
「春日部耀……歳は黙秘」
三人はジンの礼儀正しい自己紹介に倣い、一礼した
「自己紹介もしたし、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね、軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
前を歩くジンの横を歩きながら飛鳥は笑顔で門をくぐる
そんな飛鳥を見ながら耀とソウも笑って門をくぐって行った……
前書きの言葉は名言集、または勝手に考えた言葉です