嘘吐き■■は箱庭で※を夢見る   作:@T

3 / 9
何故か知りませんが初の一万超え
そこまで書いてる気はしなかったんですがけっこう長くなってしまいました
前半と後半とで分けようとも思いましたが、上手く分ける場所が見つからず断念
ですので今回は長くなっております
次回からは四千文字程度にまとめる予定です

【一つの嘘を本当らしくするためには、いつも七つだけ嘘を必要とする】
-----ルター『著作集』


【喧嘩は売る物、買われる物】

 箱庭の中に入り三人がまず見たのは巨大な建造物と太陽だった

 

「……あの天幕はマジックミラーか何かだったのか?」

「? ソウ君、そのマジックミラーと言うのは何?」

 

 ソウの呟きに飛鳥は聞きなれない単語を聞いて質問する

 ソウは少し意外そうに答えた。

 

「明るい方からは鏡に見えてもう暗い方からは半透明の窓に見えるガラスのことだよ。原理としては明るい側からの光の一部を反射することによって明るい側には反射した光で鏡に、暗い側には通過した光で向こう側が見える窓になるんだ」

「へぇ……意外と物知りなのね」

「箱庭を覆う天幕は中に入ると不可視になるんです。そもそも、この天幕は太陽の光を直接浴びれない種族の為の物なんですよ」

 

 三人は感嘆の声を出して空を仰ぐ

 そこで、何かに気付いた様に飛鳥は眉を上げた。

 

「……それはなんとも気になる話ね。この都市には吸血鬼も住んでるのかしら?」

「え、そうですけど?」

 

 飛鳥はジンの何気ない返答に眉をピクピクと震わせる

 ソウはその姿に失笑しそうになるのをばれない様に皆に背を向ける

 だが、肩を震わせているのが飛鳥に見られて弁慶に痛烈な蹴りを貰った。

 

「~っ! あ、飛鳥ちゃん? 流石に酷いと思うんだけど?」

「あらソウ君、因果応報と言う言葉は知らないの? それとも自業自得の方が良いかしら?」

 

 理不尽。とソウは弁慶を擦る

 そんなソウを見て飛鳥はフンッと不機嫌そうに先に行った。

 

「え~っと……大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫。飛鳥ちゃんみたいなタイプが知り合いに居たからね、下手な事をしたら一撃もらう事もある意味予測できたよ」

「……分かっててやってるなら、馬鹿?」

 

 耀の言葉がソウに突き刺さる

 ソウは苦笑しながら弁慶を擦るのを止めて立ち上がった。

 

「なんか前にも同じ会話したな~……はは、それでも止めないのは確かに俺が“馬鹿”だからだろうね」

「……そう」

 

 懐かしそうにそう語るソウに耀は不思議そうな視線を向ける

 その視線に気付いたソウは耀に苦笑を向けた。

 

「……まぁ、君も大人になったら分かるよ」

「……何歳?」

 

「それは答えられないな」

 

「ちょっと、ジン君? ここのお店に入らない?」

 

 少し遠くに行っていた飛鳥が近くのカフェテラスを指しながらジンを呼ぶ

 ジンはそれに気付いて小走りで飛鳥に近寄って行った。

 

「……俺達も行こうか」

「……うん」

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

「え~っと、紅茶3つに緑茶を1つ。あと軽食にコレとコレと……」

「あ、俺はこのジャンボパフェDXで」

 

「……ソウ君、軽食よね?」

「【世の中の男はパフェ程度軽食と見なす】んだよ、飛鳥ちゃん」

 

 猫耳と尻尾を付けた店員の前でソウと飛鳥は漫才でもやるように言葉を交わす

 ソウの返答に飛鳥は“以上よ”と店員に言った。

 

「はいはーい! ティーセット3つに。紅茶とジャンボパフェDXとネコマンマですね」

「「「……ん?」」」

 

 店員の繰り返しの言葉に違和感を持ち、飛鳥とジン、それにソウも首を傾げる

 だが、耀は繰り返した店員を眼を丸くして見た。

 

「三毛猫の言葉が分かるの?」

「そりゃ分かりますよ~私は猫族ですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよ~」

 

 ソウ達から見れば店員は耀の猫に話しかけ、猫がそれに返答するように鳴く

 それを店員が嬉しそうに聞き、機嫌良くして店の中に入って行った

 会話が凄い気になるところだが、ソウ達には残念ながら猫の言葉は分からない。

 

「……箱庭って凄いね、三毛猫。私以外にも三毛猫の言葉が分かる人が居たよ」

「ちょ、ちょっと待って。貴女、もしかして猫と会話できるの?」

 

 動揺した様に飛鳥は耀に言う

 耀はどうとでもない様に頷いた。

 

「凄いですね。もしかして、猫以外とも意志疎通できますか?」

「うん。生きているなら誰とでも話はできる」

 

 飛鳥は耀の言葉を聞き羨ましそうにする

 それを見てソウも会話に加わった。

 

「ちなみに、今までで会話してきた動物は?」

「えっと……身近なら犬や烏、後水族館でペンギンとも……」

「「ペンギン!?」」

 

 ジンと飛鳥がほぼ同時に声を上げる

 ソウは二人にそんな驚く事があったかと疑問に思った。

 

「え……うん……他にもイルカとも友達」

「それは……凄いわね」

「全ての種と会話できるなら心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言語の壁と言うものはとても大きいですから」

 

 耀のギフトの話で盛り上がっている中、ソウは耀の膝の上に居る三毛猫を見る

 そしてボソリと何か呟いた後、三毛猫に話しかけた。

 

「……そこの珍しい三毛猫の旦那。ちょいと俺に話しかけてくれないか?」

『なんや若いもん。ワシに何か用かいな?』

 

「うおっ、まさかの関西弁だと? まさか関西出身か何かか?」

 

 ソウの言葉に三人は驚きの眼を向ける

 

「貴方も三毛猫の言葉が分かるの!?」

『なんや若いもん、お前さん最初からワシの言葉が分かってたんかいな』

「……ははは。まぁ、【人生経験】ってやつだね」

「凄いですね。まさか似た様なギフトを持つ人が複数居るなんて……」

 

 二人がソウの言葉に納得してる中、飛鳥はソウの言葉に疑問を持つ

 先ほどのソウの反応を思い返してみて不自然な点を探しだす……

 

「そう言えば、久遠さんは……」

「飛鳥で良いわ。よろしくね、春日部さん」

 

 ところに耀が話しかけてきて思考を止める

 そして、今考える事でもないかとその思考を隅に追いやった

 

「それで、どうしたの?」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持ってるの?」

 

 その質問をされて飛鳥は憂鬱気な表情を出す

 耀はその表情を見て、聞いちゃいけなかったかなと戸惑った。

 

「そうね……酷いものよ。だって……」

「おんやぁ? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はお守り役の黒ウサギとは一緒じゃないんですか?」

 

 飛鳥が答えようとする最中、品の無い上品ぶった声が会話をぶった切る

 飛鳥が不機嫌そうに声の方向を向くと、そこには2mを超える巨体をぴちぴちのタキシードで包む変な男が居た。

 

 その言葉に聞き覚えのあったジンは嫌そうな顔をしながら声の主を振り返り返事をする

 

「僕らのコミュニティ“ノーネーム”です。“フォレスト・ガロ”のガルド=ガスパー」

「黙れこの名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。どうせ自らのコミュニティの状況を話さずに連れて来たんだろう?」

「待ちなさい。なんの話をしてるの?」

 

 ガルドと言われた大男の言葉に飛鳥が反応する

 ガルドの言葉に聞き逃せない言葉があったからだ。

 

「おや、やはり……聞いてくださいお嬢様方、このジン=ラッセルのコミュニティは……」

「なんらかの要因でコミュニティが解散。そして人材も居なくなってコミュニティとして運営できなくなってるヤバい状況……だろ?」

 

 ソウの言葉に他の皆は驚きの眼を向ける

 そんな中、ソウは先に来ていたジャンボパフェを咀嚼していた。

 

「おや……知ってらしたんですか?」

「いんや、ただの鎌かけ。君の言葉で確信を持てたけどね」

 

 どうもない様に言うソウだが、鎌かけと聞きジンは震える

 飛鳥と耀もその言葉に驚いていた。

 

「……何時からですか?」

 

 ジンが震える声でソウに聞く

 自分達のコミュニティの現状をどこで勘づいたのかと……

 

「ん? ただの簡単な推理ゲームだよ、ジン君」

 

 ソウはそんなジンに笑いかける

 

「まず、ジン君達は俺達を喚んだ。なんの為に? そこでまず思い浮かぶのは俺達に何かさせる為だ。その事からジン君のコミュニティは何か困った事が起きていると分かる」

 

 “確かに”と呼び出された二人は頷く

 

「そしてリーダーがジン君である事。ジン君自身、自分が若輩者だと言ったよね。この事から君はまだリーダーになって新しい事が分かる。そして君以外に迎えが無かった事だ。リーダーと言っても十一歳の子供である君一人だけを迎えにやって他の人は高みの見物? 新しく歓迎する人達の準備をしているのかもと考えたが、それにしては会ったのは黒ウサギちゃんとジン君の二人だけ。怪しすぎる」

 

 二人もうんうんと頷く

 それに比例してジンの顔も青くなっていく。

 

「まぁ、色々と疑問に思った事を重ねていくと、何故それを隠しているのか? って疑問にぶち当たるんだ。そしてさっきのガルド君のコミュニティの名前とジン君のコミュニティの名前、つまりは“フォレスト・ガロ”と“ノーネーム”。ほら、名有りと名無し。ガルド君が名無しを馬鹿にしてる事から名無しはよほどの事であると考えられる。だとすると、ジン君のコミュニティは解散したか新しい作り立てって事だ。貴種だと言う黒ウサギが作り立てのコミュニティに居るかどうかを考えると、ジン君のコミュニティは“なんらかの要因で解散してしまい、人材不足になってヤバい”って事になる」

 

 ソウは言い終えて満足したとパフェの咀嚼に戻る

 二人はジンの言葉を待った。

 

「……その通りです。僕らのコミュニティ“ノーネーム”はとあるモノの要因で解散しました」

 

 ジンは小さい声で説明を始めるのだった……

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

「ふ~ん……魔王ね」

 

 ジンからコミュニティの現状を聞いて飛鳥は呟く

 ジンは魔王にコミュニティの“名”と“旗印”を奪われてコミュニティが解散した事を話した。

 

「ですがお嬢様方、この小僧が名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材は残っていたはずなのです。つまり、今のコミュニティの現状は全てこの小僧の我が儘で成っているのです」

「……」

 

 ジンはガルドの罵倒に何も言わない

 それは自分の所為でコミュニティが危険に陥っていると分かっているからだ

 それ故、膝に置いた拳を握りしめる事しか出来ない。

 

「……名前を残したかった事の何が悪いんだ?」

 

 そのジンに向けてパフェを食べ終わったソウが話しかけた

 

「え?」

「戻ってくるかもしれない仲間の為にジン君は名と旗印を残したかった、名と旗印を改めるってのはそのコミュニティがやってきた過去の行いを一回全て白紙にするって事だろ。ジン君はそれが嫌だったんだろ?」

 

 煙草に火を点けてソウはジンの眼を視る

 その蒼い瞳からジンは暖かな何かを感じた。

 

「確かに我が儘だったかもしれない。だが、たとえキツイと分かっていてもそれを決められるのはある意味リーダーとしての才能だ」

「で、ですが! それで今のコミュニティの現状です。生活もキツイ、商業も出来ないそんな状況に小僧は……」

 

「なあ、それって……」

 

 ソウは焦りながら言うガルドに一言告げる

 

「そんなに悪い状況か?」

「はい?」

 

 ソウにとってその状況はそこまで悪い状況では無いと言えた

 それはそれ以上の状況を経験した事があるソウだから言える言葉だった。

 

「俺が最悪と言えた状況は身動きも言葉も発せられない状況で痛みだけが長い年月ずっと与えられるって状況だった。そんな状況でも俺は打破できた」

「え? はい?」

 

「この程度で諦めるのはまだ早い……だろ?」

 

 同意を求める様に飛鳥と耀にソウはウインクする

 飛鳥と耀はそれぞれ同意した。

 

「そうね。私は元の世界じゃ裕福な生活していたし、こんな逆境を体験してみるのも面白いかもね」

「私はこの世界に友達を作りに来ただけだから……」

 

「あら、そうなの? じゃあ、私が友達一号に立候補していいかしら? 私達って正反対だけど、以外と仲良くやっていけそうな気がするの」

「……うん。飛鳥は私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」

 

 二人がガールズトークを始めてしまったので男三人は蚊帳の外になる

 二人が楽しそうにしているの横目に見て苦笑をしたソウは改めてジンの眼を見た。

 

「な? なんとかいけそうな気がしてきたろ?」

「は、はい」

 

 少し戸惑いながらもジンはソウの言葉に頷く

 だが、それで面白くないのは自分の言いたい事も言えなかったガルドである。

 

「み、皆さま。少し結論が速過ぎる気がするのですが?」

 

 不機嫌を表す様に口の端をピクピクと震わせてガルドは三人を見る

 あまりにも不機嫌なのを隠そうとしないガルドを見て、ソウはしょうがないなとガルドに話を振った。

 

「そう言えば、ガルド君のコミュニティはもしかしてこの店の旗印のコミュニティかい?」

「そ、そうです! あの六本の傷が入った旗印は私達“フォレスト・ガロ”の旗印です! ここら一帯の店やコミュニティは全て私の傘下なのですよ!」

 

 やっと言いたい事が言えたのかガルドは喜々として他の者にも聞こえる声でソウに言う

 ソウは“ほう”と感嘆の声を上げてガルドを見たのでガルドは機嫌を良くした。

 

「それは凄い、どうやったらそんなに傘下を広められたんだい?」

「簡単です。その旗印のコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければ良いのです」

 

「ほう、つまりそのギフトゲームに勝てばその勝負を仕掛けた相手のコミュニティを傘下に入れられ、負ければ相手の傘下に入る事になると」

「はい。私のコミュニティはそれでここら一帯にコミュニティを広げましたから」

 

 ガルドのコミュニティ自慢が終わり、ソウはニコニコとガルドを見る

 ガルドも自分のコミュニティがどれだけ凄いかソウ達の前で言えてご機嫌だ。

 

「どうですか、皆さん。私のコミュニティ“フォレスト・ガロ”に入り……」

「すまないが、君の発言で完全に入る気が無くなったよ。飛鳥ちゃん達は元々入る気がなさそうだったが、誰が入りたいと言っても止めさせてもらう気になった」

 

 ソウはニコニコとガルドに笑いながら言い捨てる

 ガルドはその言葉に眼を丸くした。

 

「そ、それは何故ですか?」

「ふふ。そんなに俺の簡単な推理が聞きたいかい?」

 

 まるで全てを見透かした様にソウはガルドを見る

 ガルドはその瞳を見て肝が冷える感覚がした。

 

「……き、聞かせてもらえますか?」

「そうかい、それじゃあ俺の推理を聞いてもらおうか」

 

 ソウはそう言って新しい煙草に火を点ける

 まるでソウの周りだけ暗くなった感覚に周りの皆が陥った。

 

「まず、さっきまでの俺達の会話から“旗印”と言う物がどれだけコミュニティで大切な物であるか理解できる。まぁ、傘下に入るって事は上位の者に自分達を支配されるって事だ。“旗印”はコミュニティと生命線だと考えても良いだろう?」

 

 ソウはそう言ってジンを見る

 ジンはソウの視線に気付き同意した。

 

「そうですね」

「……なら、どうして簡単に自分の“旗印”を賭けてギフトゲームが出来るんだ? 自分から生命線を相手に差し出す様なものだぞ?」

 

 確かにとジンは考え込む様に口に手を当てる

 ガルドは冷や汗をかきながら血走った眼でソウを見ていた。

 

「考えられるのは二つ。一つは相手が弱そうに思って勝負を受けた。だがこれじゃあコミュニティが大きくなってきたら相手が警戒して勝負を受けてくれなくなる。となると、もう一つは……」

 

 その時、ガルドは動いた

 その手から鋭い爪を出し、ソウへと一撃を放とうとする。

 

座りなさい(・・・・・)

 

 だが、飛鳥の言葉にその行動を止めて席へと座る

 その様子を丸い眼で皆が見つめる中、ソウは飛鳥に眼を向けた。

 

「ありがとうね、飛鳥ちゃん。それにしても、良いギフトだ」

「あら、お世辞でもありがとう。さあソウ君、続けて」

 

 飛鳥にそう言われソウは推理の続きを話し始める

 

「もう一つは……相手の弱みを握る事だ」

「相手の弱みを握る?」

 

 ジンはどう言う事かとソウを見る

 その視線を感じてソウは飛鳥と耀を見た。

 

 飛鳥は何かに勘づいたのか眉を上げて不機嫌を表し、耀は首を傾げる

 

「相手のコミュニティの隠し事を探るとかそんな所さ。まぁ、君の所はそんな甘い考えじゃなさそうだけどね?」

 

 ソウの言葉にガルドは拘束を解こうと躍起になる

 だが、どうやっても拘束は外れず、ガルドは叫こうと口を開ける

 

「お……」

黙りなさい(・・・・・)

 

 だがそれも飛鳥のギフトによって阻止される

 動く事も喋る事も出来ない視聴者の出来上がりである。

 

「さぁ、佳境だ。相手の隠し事も分からない、だが相手の弱みを握りたい! さぁジン君、君ならどうする?」

「え?」

 

 突然話を振られてジンは慌てる

 そして慌てたまま答えを出した。

 

「あ、相手のコミュニティにスパイを送り込む?」

「残念! それは相手の隠し事を探す事に該当するね。でも、そんな事より簡単に相手の弱みを握る方法があるよ」

 

 ソウはガルドを見ながらその結論を言う

 その眼は冷めた眼でガルド見ていた。

 

「“相手のコミュニティの人を攫う事”だ」

 

 無言、無言

 誰もがその後の言葉を発さない

 それもそうだろう、ソウが告げたのはここら一帯を支配するコミュニティが犯罪をしているであろうと言う事だ。

 

 そんな事をしていたのかとジンはガルドを見る

 ガルドがソウを見る眼は今にも首を噛み切って殺してやるという殺意の眼だった。

 

 だが、ソウの言葉は止まらない

 

「それも反抗できないギフトを持ってない女か子供だろうね。毎回勝負を仕掛ける前に攫って相手に勝負を受けて負けないと攫った奴を殺すぞって脅したんじゃないのかな? 攫った人を人質として隠しておけばコミュニティも言う事を聞くしかないだろうしね。もしそれでも受けなかったら周りのコミュニティを傘下に置いた後に圧殺やらなんやら、まぁ方法は幾らでもあるだろうしね? どちらにせよ、人質は居るだろうね。命令を聞かせるために……」

「……」

 

 周りの眼がガルドを貫く

 ガルドは眼を左右に振りながら周りを見た。

 

「……ソウ君が言った事が本当か嘘か正直に答えなさい(・・・・・・・・・・・・・)

 

 飛鳥がガルドに命令する

 ガルドは飛鳥の命令通り正直に答えた

 

「本当だ」

「……そう」

 

 ガルドの言葉を聞き飛鳥は冷めた紅茶をすする

 もう話すことも無いと言う事だろう。

 

「! さ、攫った人は!」

 

 ジンが気付きガルドを見てから飛鳥を見る

 飛鳥のギフトを使って攫った者が居る場所を聞くつもりであろう。だが……

 

「……」

 

 飛鳥は何も言わない

 イヤ、既に攫った者の扱いをなんとなくだが察していたからだろう。

 

 そこでソウは飛鳥の代わりにジンに言う

 

「ジン君、絶対にモノを奪われない場所は何処だが分かるかい?」

「……え?」

 

 そんな所があるのかとソウを見る

 ソウ視線を上へと向けた

 ジンもそれを真似て空を見る。

 

「……」

 

 その瞳には何も映さずただ青色の空を映す

 そして数分してジンは結論に至った。

 

「……まさか」

「……その可能性が一番高いね」

 

 ジンの結論をソウは肯定する

 ジンは椅子へと崩れるように座った

 それを見て、飛鳥はガルドに言う。

 

「……人質の場所を答えなさい」

「殺した」

 

 ガルドは続ける

 

「攫ったその日に帰りたいと五月蠅くしたから殺した。その後の奴も五月蠅くしたので苛々して殺した。身内を殺したとばれたらコミュニティに亀裂が入ると思ったから殺した子供は腹心の部下にく……」

「黙りなさい!」

 

 もう聞きたくないと飛鳥はガルドの口を閉じさせる

 既にその場の何人もがこの会話を聞いているであろう

 ガルドのコミュニティは終わりだ。

 

「本当に外道ね貴方、清々しい位に……ジン君、今の証言でこの外道を箱庭の法で裁く事は出来るかしら?」

「……厳しいですね。確かに今の証言で裁く事は出来るでしょうが、その前に箱庭の外に逃げ出せてしまえば裁く事はできません」

 

「……そう」

 

 飛鳥は不敵に笑って指を鳴らす

 するとガルドを拘束する力が解けたのか、ガルドは行動を開始した。

 

「舐めるなよ、小娘共ガァァァァァァァ!」

 

 ガルドはその丸太の様な剛腕を振り上げて飛鳥に爪を振り下ろす

 しかし、それよりも速く動く影が二つ。

 

-----ガスッ-----

-----ゴキッ-----

 

 

「ガアアァァァァァァ!?」

「喧嘩はダメ」

「ヤベッ。関節外しちまった」

 

 一方は耀が右腕の関節を決める音、もう一方はソウが勢い余って関節を外す音である

 耀はやり過ぎではないかと言う視線をソウに向け、ソウは声を出して苦笑した。

 

 二人に関節を決められて地面に伏せるガルドを飛鳥が見下し嗤う

 

「あら、無様ね」

「テメェ等、俺の後ろに誰が居るのか分かってやってるんだろうなぁ!? 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!」

 

 ガルドの言葉を聞いて飛鳥は鼻で笑う

 

「それで? その魔王がどうしたのかしら?」

「分かってねぇのか!? 俺に喧嘩売るって事はその魔王に喧嘩をう……」

 

「黙りなさい」

 

 飛鳥はガルドの言葉を途中で止める

 そして楽しそうに言った。

 

「魔王? ふふ、面白そうね。私は別に貴方の上に誰がいようと気にしませんから。それに、ジン君も気にしないんじゃないかしら?」

「え?」

 

「貴方のコミュニティの名と旗印は魔王に奪われた、そしてそれを取り返そうと考えている。つまり、魔王に元々喧嘩を売る気だった。そうでしょう?」

「は、はい! 僕達の最終目的は魔王を打倒して名と旗印を取り戻す事です。脅しには屈しません!」

 

 飛鳥は面白くなってきたと笑う

 

「さて、貴方の破滅は確定事項。もう逃げられはしないわ、諦めなさい」

 

 ガルドは屈辱を受けながら飛鳥を睨みつける

 それを見て、飛鳥は恍惚の表情を浮かべながらガルドに提案する。

 

「でも、そんな可哀想な貴方に慈悲を与えてあげようと思うの、皆さんどう思います?」

 

 “何?”と喋れない口をもぐもぐと動かしてガルドは尋ねる

 ソウは飛鳥の表情を見て、“あかん、この娘サディストや”と冷や汗をかいた。

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレスト・ガロ”と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて。貴方の様な外道はズタボロにしてあげるわ」

 

 ソウと耀は顔を見合わせ苦笑した

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

「なんであの短時間で喧嘩売っちゃってるんですかー!?」

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省している」」」

 

 三人が声を合わせて言葉を発しているのに対してソウは苦笑する

 そんな三人に対してハリセンが飛ぶのを見ながらソウは黒ウサギに言った。

 

「まぁ、まぁ、黒ウサギちゃん。飛鳥ちゃんの提案には理由もあるんだし、ね?」

「そうですよ! なんでソウさんも居るのにこんな内容で承諾しちゃうんですか!?」

 

 そう言ってソウの前に“契約書類(ギアスロール)”を突き出す

 賞品にはガルドは罪を認めて箱庭の法に裁かれるとしか書かれてない。

 

「悪いかい?」

「勝っても得がないじゃないですか!? こんなのただの自己満足ですよ!?」

 

 賞品内容に納得がいかないと黒ウサギは言う

 ソウは“それでも十分だと思うのだが”と苦笑する。

 

「良いじゃないか、自己満足。それに、相手の増援は無しってルールだよ。負ける筈が無い」

「それでも、危険には変わらないじゃないですかー!」

 

 苦笑するソウに十六夜は助け船を出す様に言う

 

「おいおい黒ウサギ、話をあまり聞かないで賞品なしって決めつけちゃいけないだろ?」

「へ? 十六夜さん?」

 

 そう言って十六夜はギアスロールのルールの部分を指す

 ソウはそれを見て少し驚いた。

 

「凄いね。まさか直ぐに俺の考えを読むとは」

「お前みたいな胡散臭い奴が普通に勝負を受ける訳がないだろ?」

 

 そう言って十六夜はソウに笑う

 ソウはそれは酷い誤解だと十六夜に笑う。

 

 だが、そう言われても黒ウサギは首を傾げるしかなかった

 

「あの……どう言う事ですか?」

「あん? まだ分からないのか? 黒ウサギ」

 

 そう言って十六夜は黒ウサギにルールのある部分を指す

 そこに書かれていた内容は……

 

「え~っと……“ギフトゲーム内での場所で発生した被害賠償はノーネームは一切負わない”これですか?」

「そうだ。そして、開催場所はアイツの本拠地」

 

 そこで黒ウサギもソウが何をしようと考えているか分かる

 

「まさか、ギフトゲーム内で窃盗するつもりですか!?」

「違うよ、黒ウサギ。俺は【ギフトゲーム内で壊れてしまうかもしれない大事な物を壊れる前に回収する】だけだよ」

 

「犯罪です! 黒ウサギは認めません!」

「おいおい、黒ウサギ。もう決まっちまったもんは止めようがないだろ?」

 

 十六夜は愉快愉快と笑う

 その様子を見て落ち込むように兎耳がしな垂れた。

 

「うう、身内から犯罪者が出るとわ……」

「はは、黒ウサギが駄目と言うなら止めておくさ。けど、賞品の変更を認める気は無いよ」

 

 そう言ってソウは叩かれて痛がっている三人を見る

 三人も気付いて頷いた。

 

「あの外道が一秒でも速く裁かれなきゃ気が済まないわ」

「犯罪駄目、絶対」

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼の様な悪人は逃がしちゃいけない」

「うぅ、仕方ありません」

 

 納得は出来ないが仕方ないと黒ウサギは苦々しく頷く

 

「まぁ、十六夜さんがいればフォレスト・ガロなんてらくしょ……」

「あぁ? 俺は出ねぇぞ」

 

 “え?”と黒ウサギは固まり十六夜を見る

 十六夜は“何驚いてんだ?”と黒ウサギを見返した。

 

「ど、どうしてですか!?」

「あん? この喧嘩はコイツ等が売ってあっちが買った喧嘩だ、それに俺が手を出したら無粋だろうが」

「当たり前よ。手なんて出させないわ」

 

 “ふぇぇぇ学級崩壊です”と黒ウサギが涙目になってソウを見る

 ソウは何故俺を見るのかと苦笑した後、ハッと何かに気付いた。

 

「俺、この世界に来て苦笑ばっかしてる」

「なんでそんな事を今考えてるんですか!?」

 

 ソウの頭に渾身のハリセンが振り落とされた……

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

「そう言えば私気になってたの」

「何がだい? 飛鳥ちゃん」

 

 黒ウサギが先頭に立ち移動しながら飛鳥がソウに聞く

 一番後ろで歩いているので前の三人に聞かれる事はないだろう。

 

「あのカフェテラスの事よ。貴方、あれだけの推理力があるなら元の世界で探偵でもしていたの?」

「あぁ、あの推理ね」

 

 

 

 

 

 

「【嘘】だよ」

「え?」

 

 そう言うソウを飛鳥は凝視する

 ソウは笑いながら飛鳥を見た。

 

「あの推理は適当にでっち上げただけ、ぶっちゃけあそこに行くまでは世界を見ているだけで何も考えてなかったからね」

「そ、それじゃあ、あの結論はどうやって……」

 

「実は昔から人の心情を察するのが得意でね。ジン君がガルドに“名無し”って言われた時に焦っていたのを見て黒ウサギが俺達を値踏みしている事を思い出して結論を出した」

 

 “ガルドが来なかったら気付かなかっただろうな~”とソウは軽口を叩く

 気付けば飛鳥は歩くのを止めていた。

 

「……」

「どうしたの、飛鳥ちゃん?」

 

 足を止めた飛鳥にソウは尋ねる

 飛鳥は足を止めている内に考えた結論をソウに聞く。

 

「それで、今のも【嘘】?」

「……」

 

 ソウは少し驚いた後、飛鳥に笑いかける

 飛鳥もソウのその反応を見て笑った。

 

「飛鳥ちゃん、【嘘】を信用させる方法は【嘘に数割真実を混ぜる事】だよ」

「そう。それは面白い事を聞いたわ、嘘吐きさん」

 

 前に歩いている三人に追いつく様に二人はまた歩き出した……




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