嘘吐き■■は箱庭で※を夢見る   作:@T

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【醜い女はいない。 ただ、どうすればかわいく見えるかを知らない女はいる】
 -----ラ・ブリュイエール


【時には真実を吐くのも面白い】

 飛鳥とソウが門へ向かうとそこにはジンと十六夜、そして居住区から避難したであろう者達が集まっていた

 

「あ、ソウさんと飛鳥さん……」

 

 二人に気付いたジンが声を掛けてくる

 ソウはにこやかに笑って聞いた。

 

「お疲れ様。耀ちゃんと黒ウサギちゃんが居ないところを見ると、二人は病院にでも行ったのかな?」

 

 箱庭に医療施設があるか疑問であったソウがジンに聞く

 

「いえ、僕らの工房に医療用のギフトがありますので、それを使う為に戻りました」

 

 ソウは“そうかい”と笑いながら門に集まってきた者達を見る

 そして集まってきた者達に話しかけた。

 

「どうも皆さま。ご覧の通り、ガルド君の暴走は私達が止めました。もう心配する必要はありませんよ」

「そうですか。ガルドは貴方達が……」

 

 そう言う者達の顔色は優れない

 それもそうだろう

 “フォレスト・ガロ”は近隣で最大手のコミュニティだったのだ

 それに対する不安もあるだろう。

 

「一つ、重要な事をお聞きしたい」

「なんでしょうか?」

 

「いや、その……まさか俺達は、貴方達“ノーネーム”の傘下に入るのでしょうか?」

「!?」

 

 その言葉を聞いてジンの顔が強張る

 それは感謝の言葉でも、解放された喜びでもない

 自分達も“ノーネーム”になるのではないかと言う未来への不安

 それがジンには感じられた。

 

「あぁ、その事ですか」

 

 そのジンを他に悟らせない様にソウは皆の前に出てジンを隠す

 そして壮大な演技をするようにその声を張り上げた。

 

「皆さま、これよりジン=ラッセルが貴方達の奪われた誇り、旗印を返還致します。代表者の方は並んでこちらにおいでください」

 

 門の前に集まってた者達がざわつく

 ソウはそれを見てジンに耳打ちした。

 

「恩を売ってこの人達に印象付けさせるんだ。まだ俺達のコミュニティは始まったばかりだ、これで恩を売っておけば後々、味方に付けさせられる」

「布石って事ですか?」

 

「分かってきたじゃないか」

 

 子供っぽい笑みを浮かべてソウはジンを前に押しやり、ざわめいている衆人へ声をかける

 決して大きくないが、誰の耳にも印象に残るような声だった。

 

「焦らずに身内で話し合って一人だけ来てください。返還されるのは貴方達の誇りです、幾ら嬉しくても一気に押し寄せたらいけません。焦らずゆっくり、それでいて速やかに列をなしてください」

 

 アナウンスの様に機械的だが、集まっていた者達はその声に従ってジンの前に並んでいく

 それは言葉の重みがなせる業だった。

 

 そして、少し外れて立っていた十六夜と飛鳥の下に行く

 

「何処ぞの扇動者みたいだな」

「それは褒め言葉で言っているのかい?」

 

 十六夜の微妙な言葉にソウは肩を竦める

 

「それにしても、悪巧みをしているみたいじゃない?」

 

 ジンとソウの会話を見ていた飛鳥は何かを企んでいる事を察する

 ソウは飛鳥の言葉に不敵に笑う。

 

「悪巧みじゃないよ、良い巧みさ」

「どうだか」

「ソウ君が言うと全て嘘に聞こえるわね」

 

 “酷いな~”とソウは苦笑する

 それを聞いて二人も笑うのであった

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

 本拠地に戻った四人は耀の見舞いに行った

 耀が運ばれたコミュニティの工房とは、ギフトを用いた儀式場らしく

 そこには魔王の襲撃で取られなかった様々なギフトが残っていた。

 

 その中のベッドで横になる耀は血色がよくなっており、峠を超えている事が分かる

 

「春日部さんは大丈夫みたいね?」

「はい! 少し血を失い過ぎてはいましたが、傷はもうありません」

 

 飛鳥の言葉に黒ウサギはにこやかにそう言う

 そして、ギフトを見て回っているソウを見て言った。

 

「イエ、傷はありませんでした(・・・・・・・・・・)

「……」

 

 黒ウサギは眼を逸らす様にギフトを見ていたソウに近付く

 

「この工房に来た時点で耀さんの傷は何故か(・・・)ふさがっていました。ですので、失った血を増やす為の増血のみで私としては大助かりなのですよ?」

「……」

 

 黒ウサギの笑みが黒い

 耀の傷を塞ぐ様なギフトをジンと飛鳥は持っていない

 耀がその様なギフトを持っていたとしたら直ぐに使う筈なので耀も持っていないだろう

 必然的に傷を塞いだのはソウのギフトと言う事になる

 そう考えると、直ぐにそのギフトを使わず包帯を巻いたのは応急処置のためではなく包帯で傷を見えなくさせる為であった考えられる

 つまり、ソウは“ワザと”直ぐにギフトを使わなかった訳だ

 おそらく、黒ウサギを焦らせる為に。

 

 ソウは黒ウサギから距離を取る様にゆっくりと横に移動する

 上半身をまったく動かさない様に無駄な技術を使いながら距離をとる。

 

止まりなさい(・・・・・・)

 

 が、それを飛鳥は無理やり止めた

 ソウは錆びたロボットの様に首を動かしながら飛鳥を見る

 飛鳥はにこやかにソウに言った。

 

「春日部さんの傷を治すのは良いけれど、女性を心配させるのは駄目よね?」

「……おっしゃる通りで」

 

 黒ウサギからハリセンを受け取り飛鳥がソウを一発叩く

 そして黒ウサギも数発叩くのであった。

 

 

ーーー☆ーーー☆ーーー☆ーーー

 

 

「人の頭は一度叩かれただけで細胞が数万個は死ぬって言うのは嘘らしいけど、だからって叩いて良い物じゃないと思うんだよね。そこのとこどう思う?」

「叩かれる前に避ければ良いだろ」

「なら、叩かれない様にすればよいのではありませんか?」

 

 工房から出てきたソウと黒ウサギと十六夜は本拠の三階にある談話室で話していた

 頭を擦りながらソウは十六夜に聞くが、二人に即刻話題を切って捨てられた。

 

「それで、仲間が出されるって言う例のゲームはどうなったんだ?」

「え? 十六夜さん、出てくれる気になったんですか!?」

 

「オチビが最初のままなら出る気はなかったんだが、誰かさんが面白く焚き付けてくれたからな。出るのも面白いと思ってよ」

 

 そう言って十六夜はソウを見る

 ソウは“なんの事やら”と肩を竦める

 そして十六夜の言うゲームの事が気になった。

 

「俺は聞いてないんだけど、そのゲームってのは?」

「はい……ですが、あの……」

 

 黒ウサギはソウの疑問に憂鬱気に答える

 その言葉を聞いて十六夜とソウは眉を曇らせた。

 

「ゲームが延期?」

「はい……申請に行った先で知りました。もしかしたらこのまま中止になるかもしれません」

 

 黒ウサギの耳が落ち込むように萎れる

 ソウは困った様に頭を掻いた。

 

「告知していたゲームを中止するって言うのはどうなのよ?」

「白夜叉に言ってどうにかならないのか?」

「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったようですから」

 

 ソウと十六夜は不快そうに舌打ちをする

 ソウは人の身柄を勝手に売買する行為に不快を表し

 十六夜は金を積まれたからといってゲームを中止するホストへ不快を表した。

 

「ッチ、所詮は金か。箱庭もそれは変わらないようだな」

「ッチ。所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしちゃ五流もいいところだな。プライドってもんはないのかよ」

「仕方がないですよ。“サウザンドアイズ”は群体コミュニティです。今回の主催は“サウザンドアイズ”の傘下コミュニティの幹部、“ペルセウス”。双女神の看板に傷が付くのも気にならないほどのお金やギフトを得れればゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

 達観した様に黒ウサギは言う

 そう言いながら悔しさは二人の何倍も大きいだろう

 それは彼女が握りしめているスカートの皺の大きさからソウは判断できた。

 

「……」

 

 ポケットから煙草を取り出して口に咥える

 流石に室内で吸うつもりはないので火はつけないが、それでも窓へと近づき窓を開ける。

 

「まぁ、次回に期待するか。それでそのお仲間ってのはどんな奴なんだ?」

「そうですね……一言で言えば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです」

 

 そして、外からこちらを見ているブランド髪の少女と眼があった

 ソウとしては何処ぞのコミュニティの監視かと思っていたのだが、黒ウサギの言った特徴に苦笑する

 何度か黒ウサギとその少女を視線で行ったり来たりした後、苦笑しながら少女に手招きした。

 

「ふむ。呼んだか?」

 

 少女はフワリと浮かび上がってソウ達の居る談話室まで上がってくる

 ちなみに三階なので跳ぶと言うより飛んできていると言った方が良いだろう。

 

「イヤ、黒ウサギちゃんの言ってる特徴が一致したんでね。警戒する必要がなくなっただけだよ」

 

 後ろで未だに目の前の少女を称賛する言葉を聞きながらソウは少女を観察する

 黒ウサギが称賛する程の綺麗な金髪に、端整な顔立ち

 美女と言うより美少女だが、白夜叉と同じく後数年ほど成長したら見事な美女になるだろうと思われる。

 

「名前を伺っても良いかな、魅惑のレディー?」

「レティシア。今は他のコミュニティに所有されている身の上だ。そう言う君の名前は何かな、紳士君?」

 

「【木葉ソウ】。今は“ノーネーム”で活動している身の上だね」

 

 言い終わりソウとレティシアは同時に笑う

 そして称賛し終わって満足した黒ウサギとニヤリと笑う十六夜を見る。

 

「近くに居るのならせめて一度お話ししたかったです……」

「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

 黒ウサギの言葉に窓の外から見ていたレティシアはにこやかに笑う

 何時の間にそこへ居たのだと驚いた顔をする二人にソウも笑った。

 

「レ、レティシア様!?」

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。“箱庭の貴族”ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

 苦笑しながらレティシアは談話室へと入ってくる

 

「こんな場所からの入室ですまない。ジンに会わずに黒ウサギにどう会おうか考えていたところに紳士君が手招きしてくれてね」

 

 そう言ってレティシアはソウを見る

 ソウは肩を竦めて返答した。

 

「そ、そうでしたか。あ、直ぐにお茶を淹れてきますので少々お待ちください!」

 

 小躍りする様に黒ウサギは談話室を出ていく

 仲間に久しぶりに会えた嬉しさがあからさまに見て取れた。

 

「やれやれ、黒ウサギも変わらないな」

「昔からあんなに慕われてたのかな?」

 

「そうだな。昔から本当に変わらない……」

 

 そう言いながらレティシアは十六夜の視線に気付いた

 十六夜の不思議な視線に小首を傾げる。

 

「どうした? 私の顔に何か付いているか?」

「別に。前評判通りの美人……いや、美少女だと思ってな。眼の保養に観賞していた」

 

 十六夜の回答にレティシアは心底楽しそうな哄笑で返す

 口元を隠しながら笑いを殺し、上品に座るレティシアにソウは雅と言う言葉を思い出した。

 

「ふふ、成るほど。君が十六夜君か。白夜叉の話通り歯に衣着せぬ男だな。そちらの紳士君も話通り胡散臭さが滲み出ている。しかし、観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うのだが。あれは私と違う方向性の可愛さがあるぞ」

「あれは愛玩動物なんだから、観賞するより弄ってなんぼだろ」

 

「ふむ。否定はしない」

「弄る時には緩急をつけた方が反応に新鮮さがあって面白いからお勧めだよ」

「否定してください! それと、ソウさんは十六夜さんに変な事を教えないでください!」

 

 紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギが口を尖らせて怒る

 カップに注ぐ時も不機嫌そうにしている黒ウサギにソウは苦笑した。

 

「レティシア様と比べられれば世の女性の殆どは観賞価値のない女性でございます。黒ウサギが見劣る訳ではございません」

 

 ムスリとそう言う黒ウサギをソウは顎に手を当てて頭から足まで見る

 そして紅茶が注ぎ終わるタイミングを見て黒ウサギの顎に手を当てた。

 

「そうは思えないが? 美しさのベクトルは違うと思うが黒ウサギは俺の眼から見て綺麗だと思えるぞ。どこか手の届かぬ高嶺の華を思わせるレティシアよりもこうして手を伸ばせば届きそうな黒ウサギの方が俺は好みだ」

「……」

 

 思考を停止させた黒ウサギが眼を点にしてソウを見る

 そして正気に戻ったのか、顔を真っ赤にさせてその場からソウの手を逃れるように跳び退いた。

 

「な、な、な」

「おっ、良い反応。やっぱり時々こうやって真剣に言葉を吐くのも人生で忘れちゃいけないな」

 

 十六夜にこれが緩急のつけ方だとソウは笑う

 そこで黒ウサギは自分がからかわれていた事に気付いた。

 

「ソウさん!」

 

 顔を真っ赤にさせた黒ウサギはハリセンを取り出してソウに殴りかかる

 ニヤリと嗤いソウはその一閃を避けて黒ウサギの耳に小声で囁いた。

 

「今の言葉は【嘘】じゃないぞ」

「にゃあぁぁぁぁ!」

 

 黒ウサギのウサギならぬ声にソウは笑いながら飛んでくるハリセンを避ける

 その二人のやりとりを見ながら、レティシアはボソリと呟いた。

 

「……もしや、私は無粋だったか?」

「イヤ、それはないだろ」

 

 十六夜は二人のやりとりを見ながら肩を竦めるのであった




ちなみにソウの仲間達への印象は↓の通りです

 飛鳥→元居た世界の仲間に似ている娘。ツンデレ少女?
  耀→猫好きな少女。色々と考えすぎな所があると思われる。
十六夜→快楽主義少年。力の使い方を間違えない事を祈るよ。
 ジン→背伸びした少年。背伸びに疲れたら肩を貸すよ。




黒ウサギ→ナイスツッコミ、弄りがいのある少女。可愛いと思ったのは嘘じゃないよ(笑)
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