禁忌少年の月ノ森ライフ   作:火の車

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疑念

 夜、俺は今、山奥にいる

 

 周りは木々に包まれ、川の水が流れる音が聞こえる

 

 見晴らし良い崖なだけあって、色々な情報が入ってくる

 

司「__あれか。」

響「うん。」

 

 そんな大自然の中にある、不自然な人工物

 

 ここが今回のターゲットだ

 

 俺は建物の詳細を見た

 

響「地上5階、地下に1階。実験対象の人は結構まばらにいるかも。」

司「そうか。」

 

 俺は画面を凝視した

 

 そこに載っているのは、ここでの研究内容だ

 

司「......」

響「大丈夫?司。」

司「......何がだ。」

響「いや、やっぱり何でもない。」

司「そうか。」

 

 俺はそう言ってから

 

 立ち上がり、軽く準備運動をした

 

司「明石はいつも通り、遠くからのナビゲート。俺は侵入して殺していく。」

響「りょーかい。」

司「始めるぞ。」

 

 俺はそう言って、崖から飛び降り

 

 研究所に向かって行った

__________________

 

 研究所の前には武装した2人がいる

 

 まぁ、関係ない

 

 俺は2人の関節部分に向けて銃を発砲した

 

「__ぐっ!?」

「な、なんだ!」

司「よう。」

 

 いくら武装してたとしても

 

 関節部分は薄い事が多い

 

「お、お前は、柊木司!」

司「ここを潰しに来た。通してもらうぞ。」

「ま、待て!__」

 

 俺は二人の頭を打ち抜いた

 

 そして、敷地内に侵入した

 

司(確か、ここのガラスは全部、防弾ガラスだったか。)

 

 俺は建物を見た

 

 窓がない部分は事件対象の人間が閉じ込められてるんだろう

 

 だが、4,5階の部屋はそれがない

 

 つまり、侵入ルートがあるって事だ

 

司(これなら、簡単に終わりそうだな。)

 

 俺は懐から、いつものワイヤー射出機を出した

 

 そして、それを引っかけて建物の壁を登った

 

 いつしかの地上2桁階のビルに比べれば低いことこの上ないな

 

司「防弾ガラスは割れない。なんて、そんな単純な思考じゃ殺されるぜ。」

 

 俺は体を置きく振り

 

 勢いをつけて、ガラスを蹴り破った

 

司「__さぁ、俺の任務開始だ。」

__________________

 

 建物内に入ると、そこには所長と思われる人物がいた

 

 すぐに俺はその人物に銃を突きつけた

 

司「__お前を殺しに来た。」

「っ!お、お前は!」

司「非人道的な人体実験の数々、お前は何人殺した?」

「ま、まさか、柊木司か......?」

司「!」

 

 こいつ、なんで、俺を知ってる

 

 まさか、こいつは

 

 いや、待て、そんなはずない

 

司「......お前はまさか。」

「あぁ、君の事はよく知っているよ。どうだい?この世で唯一、到達点に達した人間の気分は__っ!」

 

 俺はやつが言葉を言いきる前に胸を打ち抜いた

 

 間違いないこいつは......

 

 やつは血を吹き出しながら後ろに倒れた

 

司「お前の話を聞く気はない。さっさと死ね。」

「__くくっ、あはははは!」

司「!」

 

 終わった、そう思っていると

 

 やつは死ぬどころか大声で笑い出した

 

 だが、出血の量からして生き伸びるわけがない

 

「それでいい!お前はそれでいいんだ、柊木司!お前が殺すことで私の研究成果が証明される!もっとだ!もっと......!」

 

 やつはそう言いながら息絶えた

 

 俺は銃を下ろした

 

司「......」

 

 まさか、この研究が続けられてたとは

 

 俺は棚に入ってる、研究ファイルを見た

 

司「......っ!」

 

『人体強化改造計画』

 

 資料にはそう書かれていた

 

 ありとあらゆる人間、動物を組み合わせ

 

 人類を超えた新人類を作り出す

 

 成功例0、類似成功例......

 

 これ以上は印刷ミスなのか見る事が出来ない

 

司「......まぁいい。これが、収容者のリストか。」

 

 俺はファイルに挟まっていたリスト

 

 そして、マスターキーを取り出し、所長室を出た

__________________

 

 建物の中はかなり綺麗だ

 

 今現在も使われているのが良く分かる

 

「__お、お前!__ぐはっ!」

「止まれ__」

司「......」

 

 俺は出くわした研究員を片っ端から気絶させながら進んでいる

 

 収容者は、全員救出する

 

 俺は所内のある部屋を目指して走った

 

司「ここか。」

 

 目的の部屋に着いた

 

 ここに、収容者がいる

 

 俺は持ってきておいた、キーを使って扉を開けた

__________________

 

「__誰?」

 

 中に入ると、何人もの人間がいた

 

 男、女、大人、子供

 

 全員が関係なく部屋に閉じ込められてる

 

 俺はゆっくりと語りかけた

 

司「お前たちを救出しに来た。」

「救、出......?」

「本当に?」

「た、助かるの......?」

 

 そんな声と共に全員が俺の方に群がって来た

 

 全員、かなり痩せてて、服装も最低限のものだ

 

 十分な食事と衣類を与えられていなかったんだろう

 

司「ここ以外に収容されてる場所はあるか。」

「一応、夜はここに全員が集められてます......」

司「そうか。」

 

 人数はざっと、120人

 

 まばらに収容されてる可能性があったことを考えれば、かなり手間を省けた

 

 このくらいの人数なら用意してたバスなんかに全員を乗せられる

 

「待って......」

司「なんだ。どうした。」

「お父さんとお母さんが......」

司「ふむ。誰か、場所を知ってるやつはいるか!」

「僕、さっきまで一緒にいました。」

司「案内しろ。」

「はい。」

 

 俺は一人を案内人にし

 

 それ以外には全員、外に出るように指示を出した

 

 そして、ある程度全員が外に出た後、俺たちは子供の親が連れていかれたという部屋に向かった

__________________

 

「__さっきは、ここの部屋にいました。」

 

 案内されたのは、いくつか離れた

 

 実験室と書かれた部屋だった

 

 俺は懐からマスターキーを取り出した

 

司「入るか。」

 

 俺は鍵を開け、部屋に入った

 

 中に入ると......

 

 残酷な光景が広がっていた

 

司「......チッ。」

 

 床には何らかの薬品が入った大量の注射器

 

 そして、部屋の真ん中にはポツンと拘束用の椅子

 

 その椅子には、ただ座ってるように見えるが

 

 息絶えた、子供の親と思われる二人の死体があった

 

「こ、これは......?」

司「実験の一環だろう。」

 

 親2人はまるで陸にあげられた深海魚のような死に方をしている

 

 目は黒目の位置がおかしい、薬品で中毒になったんだろう

 

 しかも、2人の身体は異常に発達している

 

 転がってる薬品の効果はこれなんだろう

 

司「これが実験中の人体を強化する薬なんだろう。」

「そ、そんなものが......」

司「もう少し遅ければ、お前もこうなっていたかもな。」

「ひっ!」

 

 馬鹿げた実験、俺はそう思う

 

 人間を生きてる間に改造して強化するのはほぼ不可能だ

 

司「おい、その2人に触ってみろ。」

「え?はい?」

 

 案内人の男は2人の死体に触れた

 

 すると、2人の死体はボロボロと崩れた

 

「__ひぃ!!!」

司「こういう事だ。肉体自体が改造について来ない。成功率は万に一つよりも低い。」

 

 これに耐えるのは、それこそ

 

 最初からそう生まれるようになっていないといけない

 

司「もう、ここに用はない。外に出るぞ。」

「は、はい!」

 

 俺は案内人にそう言って、その部屋を後にし

 

 建物の外に出た

__________________

 

響「__司ー!」

 

 外に出ると、明石がもう全員をバスに乗せていた

 

 運ぶ用意はもう整ってるみたいだ

 

響「もう、ほぼ全員乗ったよ。」

司「そうか。よくやってくれた。」

響「でもー。」

「あの、お母さんとお父さんは......?」

 

 さっきの子供がそう聞いてきた

 

 子供の目は不安の色に染まっている

 

 俺は少し黙り、子供にこう告げた

 

司「お前の親は死んだ。」

「え......?」

司「俺からはそれしか言わない。」

「そ、そんな......」

 

 子供は地面に膝をついた

 

 目からは大粒の涙が流れている

 

響「だ、大丈夫!?」

司「......」

 

 俺は黙ってその場を離れた

 

 後ろからは子供の泣き叫となだめる明石の声が聞こえた

__________________

 

 俺は少し森の中の開けた場所の真ん中に立っていた

 

 空には綺麗な月が見える

 

司(後味悪いな。)

 

 そんな綺麗な物を見ても

 

 俺の気分は全く晴れない

 

司(......クソみたいな実験しやがって。)

 

 俺は拳を強く握り

 

 歯を食いしばった

 

 馬鹿げてる、ただの人間を改造なんてできない

 

司「クソが。」

 

 ガサガサガサ!!!

 

司「?」

 

 考え事をしてると、近くの草が揺れた

 

 何かが近づいて来てる

 

熊「......!」

 

 木々の隙間から、巨大なクマが出て来た

 

 体長は3mほどだろう

 

 明らかにこっちを威嚇してる

 

司「なんだお前。」

 

 俺は動じることなく、クマに話しかけた

 

 熊は血走った眼で俺を睨みつけている

 

 今にも食いついてきそうだ

 

司「さっさと森に帰れ。死ぬぞ。」

熊「グルルルル......!」

司「......」

 

 一定の距離を保って様子を見てきてる

 

 熊からすれば、もう喧嘩が始まってるんだろうな

 

 さっきから俺の周りをウロウロしてる

 

熊「___グルァァァ!」

 

 熊が俺に牙をむいてきた

 

 数メートルの距離を時間にして一瞬にして詰めて来た

 

司「......はぁ。」

 

 それでも、俺はため息しか出ない

 

 だって......

 

司「無駄だ。」

 

 俺は熊の頭上に飛んだ

 

 そして、両目を潰し、熊の眉間を殴った

 

 そうすると、クマはうめき声をあげながら倒れた

 

司「__他の生物と違い、知能が発達し発展したのが人間だ。」

 

 俺は独り言でそう呟いた

 

 熊はさっきから全く動く様子がない

 

司「だが、悲しい事にその中で俺が生まれてしまった。」

 

 人間の欠点

 

 他の生物にあって、人間にないもの

 

 そのほとんどを補い、限りなく完璧なスペックに近づいてしまった

 

司「普通の動物が俺に勝てるわけないんだよ。」

 

 俺はそう呟き、明石の待つ方に歩いて行った

 

 森の開けた真ん中には目を潰されてる以外の一切の外傷がないクマが残された

__________________

 

 俺が戻ると、もう、バスは全て出発していた

 

 明石は迎えの車に乗って待っていた

 

司「__待たせた。」

 

 俺は車に乗り込んだ

 

 そして、車が出発した

 

響「今回の依頼もあっさりだったね。」

司「そうだな。だが。」

響「?」

司「今回の依頼は何かがおかしい。」

響「え?」

 

 明石は不思議そうに首を傾げた

 

 確かに一見すれば、ただの違法な研究所を潰すだけの依頼だ

 

 だが......

 

司「あの男に会った。」

響「え、ま、まさか......!」

司「あぁ。そのまさかだ。」

 

 明石は困惑の表情を浮かべている

 

 まぁ、それはそうだろうな

 

司「そして、実験失敗の人間がそのまま残されていた。」

響「!」

司「そのまま、処分もせずにだ。」

 

 これもおかしい

 

 普通の研究所なら、失敗は処分するか

 

 サンプルとして保存したりするはずだ

 

響「まるで、司が来るのが分かってたみたい。」

司「あの研究員の少なさ。もしかしたらな。」

 

 今回の依頼人のプロフィールを見た

 

司「いい噂を聞かないやつだ。もしかしたら、な。」

響「うん......」

 

 俺はそう言った後、背もたれにもたれた

 

 そして、ため息をついた

 

司「だが、この程度じゃ俺は乱れない。」

響「うん。わかってるよ。」

司「ひとまず、今日は終わりだ。」

 

 俺はそう言って目を閉じた

 

 こうして、少しの疑念を残し依頼が終わった

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