禁忌少年の月ノ森ライフ   作:火の車

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演奏者

 ”七深”

 

 昨日の出来事がずっと、頭から離れない

 

 あれから、私は柊木君にご飯を食べさせてもらって

 

 車の修理が終わった後、家まで送ってもらった

 

 私はその間、柊木君とまともに話せなかった

 

透子「__広町?」

七深「え?あ、ど、どうしたのー?」

透子「いや、なんかボーっとしてたから、どーしたのかなって。」

七深「な、なんでもないよー。」

瑠唯「......」

 

 私がそう言っても、皆は心配そうな顔をしてる

 

 そんなに今の私、おかしいのかな?

 

つくし「最近はずっと練習だったし、疲れてるんじゃない?」

七深「だ、大丈夫だよー。」

ましろ「でも、顔色悪いよ。大丈夫......?」

 

 しろちゃんにそう言われるほど

 

 今の私の顔色悪いんだ.....

 

瑠唯「今日の練習は引き上げるのをお勧めするわ。」

七深「るいるい......?」

瑠唯「そんな状態での練習、意味がないもの。」

透子「まー、そうかも。」

つくし「私も賛成!広町さん!ゆっくり休んで!」

ましろ「うん。」

七深「え、あの......」

透子「じゃあ、かいさーん!」

 

 とーこちゃんがそう言うと

 

 皆はそれぞれ帰る用意を始めた

 

 私は茫然として動けなかった

 

つくし「広町さん!なにやってるの?」

七深「あ、ご、ごめん。すぐに出るよ。」

ましろ「急がなくてもいいよ。」

 

 私はすぐにベースをケースに入れて

 

 練習場所の教室を出た

__________________

 

 ”司”

 

 昨日は広町の様子がおかしかった

 

 まぁ、あの話を聞いて気分が良くなかったんだろう

 

司(......あの様子じゃ、もう俺に近づくことはないんだろうな。)

 

 正直、少し名残惜しい気もする

 

 久しく見つけられなかった、面白い人間

 

 それがいなくなるのは多少、残念には思う

 

司(お笑いだな。俺にもまだ、人間の心が残ってたとは。)

 

 そんな事を考えてると

 

 どこかから、ピアノの音が聞こえて来た

 

司「......この音は。」

 

 昨日、聴いた演奏と同じだ

 

 なぜか聴き入ってしまう、そんな演奏

 

司「この音は音楽室からだな。」

 

 俺は少し興味が沸き

 

 演奏者がいると思われる、音楽室に向かった

__________________

 

 音楽室の前まで来た

 

 俺が向かってる間も演奏奈鳴りやむことはなく続いていて

 

 いつも何も感じない

 

 廊下を歩く、という事でさえ

 

 少し、心地よく感じた

 

司「__入るか。」

 

 俺はそう呟き、音楽室に入った

 

 音楽室に入り、最初に目に入ったのは

 

カグヤ「......」

 

 無心でピアノを弾いてる

 

 夕日に照らされる銀髪を一つにまとめた

 

 女とも取れる容姿の男だった

 

カグヤ「......誰ですか。」

司「お前は、十条カグヤか。」

カグヤ「司さん......?」

 

 十条カグヤはそう呟くと

 

 俺の方に歩み寄ってきた

 

カグヤ「お久しぶりです。」

司「あぁ。お前は一応、元気そうだな。」

 

 十条カグヤとは3年前に会ったことがあった

 

 そして、奴を見て俺はあの演奏に納得した

 

司「ピアノは続けてたみたいだな。」

カグヤ「はい。あれから、自分のためにピアノを弾き続けています。」

司「いいじゃないか。あの時みたいな、つまらない事はしてないみたいだな。」

カグヤ「はい。自分の才能の使い方は自分で決めろ、あの言葉は今でも覚えています。」

司「そうか。まぁ、楽しそうでいいんじゃないか?」

 

 俺は十条カグヤの肩を軽くたたいた

 

カグヤ「司さんは......どこか変わりましたね。」

司「なに?」

 

 奴は急にそんな事を言ってきた

 

 俺が変わった?

 

 そんな感覚は一切ない

 

司「俺は別に変ってない。今まで通りだ。」

カグヤ「そう、でしょうか?」

司「あぁ。」

 

 奴は少し首をひねったが

 

 それ以上、俺の事を言及して来なかった

 

カグヤ「僕はこの辺りで失礼します。時間なので。」

司「あぁ。じゃあな。」

 

 俺は十条カグヤが部屋から出て行くのを見た後

 

 窓の外を見た

 

司「......変わった?俺が?」

 

 いや、そんな事はない

 

 俺は俺のままだ

 

司「......なんだ?」

 

 窓に映る自分の姿を見ると違和感があった

 

 何かが違う、俺じゃない?

 

 俺はそう思いながら、窓に近づいた

 

司(......なんだ、これは。)

 

 窓に映る俺の姿は普通の人間が見れば何も変わらない

 

 だが、俺にはわかる

 

 今の俺の目には

 

司(迷いが、ある?)

 

 信じ難い

 

 俺に、迷いだと?

 

 今まで自分を信じ切って、迷いを知らなかった俺に?

 

司「......チッ!」

 

 俺は窓から目をそらした

 

 これ以上自分の姿なんて見ても時間の無駄だ

 

 そう思って、俺は音楽室から出た

__________________

 

司(疲れてるだけだ。明日になれば治ってるに決まってる。)

 

 俺はそう言い聞かせながら廊下を歩いた

 

 足音がいつもより大きい

 

 かなり苛立ってるんだろうな、今の俺は

 

司(俺は何も迷ってない。金を稼ぐ事、殺すことしか考えてない。俺はそれだけの生物だ__)

七深「__あ、ひ、柊木君......」

司「......広町?」

 

 廊下の曲がり角

 

 俺はそこで広町と出くわした

 

七深「ご、ごきげんよう......」

司「......あぁ。」

 

 広町は気まずそうに挨拶をしてきた

 

 それを見て、俺は変な感覚に襲われた

 

司(......なんだ。)

七深「き、昨日は、ありがとうー。」

司「......別に、いい。」

 

 こんな事、今までなかった

 

 訳が分からない

 

 気持ちが悪い

 

七深「じ、じゃあ、またね......」

司「おい、広町!」

 

 名前を呼んでも、広町は止まらず

 

 どこかに走って行った

 

 俺は広町の方に伸ばしてた手を静かに下した

 

 追いつこうと思えば、追いつける

 

 でも、追いかけようと思わない

 

司「......っ。」

 

 俺はポケットに手を突っ込んだ

 

 そして、そこからすぐに立ち去った

 

司(クソ。なんだこれは。気分が悪い。)

 

  俺は心の中でそう吐き捨てた

__________________

 

 ”ましろ”

 

ましろ(__お、遅くなっちゃった。)

 

 私は使ってた教室のカギを職員室に返して

 

 透子ちゃん達が待ってる所に向かっていた

 

 本当は走っちゃダメだけど、今はほとんど人もいないし

 

 少しくらい、いいよね

 

ましろ「__きゃ!」

カグヤ「......っ」

 

 廊下を走ってると

 

 曲がり角から出て来た人にぶつかった

 

ましろ「ご、ごめんなさい......」

カグヤ「......」

 

 すごく、綺麗な人

 

 綺麗な青い目には私の姿が写ってる

 

 さっきから何も喋らないし

 

 表情も変わらない

 

ましろ(お、怒ってるのかな......)

 

 私は目を合わせないように目をそらした

 

 怖くて、動けない

 

ましろ「......っ!」

カグヤ「......」

 

 ぶつかっちゃった人が私に向かって手を出してきた

 

 私は怖くなって目をつぶった

 

 叩かれるのかな、痛いのは嫌......

 

カグヤ「......大丈夫?」

ましろ「......え?」

カグヤ「ごめん。少し考え事をしてて気づかなかった。」

 

 その人は私に怒るどころか

 

 逆に謝って、私に手を差し出して来た

 

 私はすごく戸惑った

 

ましろ「は、はい。ご、ごめんなさい......」

 

 私はその人の手を取って立ち上がった

 

 見た目に反して、すごく力強くて

 

 よく見れば、男子の制服を着てる

 

ましろ(お、女の子みたい。すごく、綺麗......)

カグヤ「怪我はないかな?」

ましろ「だ、大丈夫です。」

カグヤ「それなら、よかった。」

 

 そう言って、少し優しく微笑んだ

 

 夕日に照らされて、更に綺麗に見えて

 

 つい、見とれてしまった

 

ましろ「......///」

カグヤ「どうしたの?」

ましろ「な、なんでもないです......///」

カグヤ「?」

 

 この人は誰なんだろう

 

 私は彼を凝視してしまう

 

カグヤ「まぁ、怪我がなかったのは良かった。僕は行くよ。」

ましろ「!」

 

 そう言って、彼はどこかに行こうとした

 

 私は気づいたら、声をあげていた

 

ましろ「あ、あの!」

カグヤ「はい?」

ましろ「あの、その......」

 

 つい呼び止めちゃったけど

 

 なんて言えばいいんだろう

 

カグヤ「どうしたの?」

ましろ「あの、その。お名前はなんですか......?」

 

 やっとの事で絞り出した言葉がそれだった

 

 もう、完全にナンパみたいになっちゃってる......

 

カグヤ「僕は十条カグヤ。君は?」

ましろ「倉田ましろ、です......」

カグヤ「倉田ましろさん、か。うん、いい名前だね。」

ましろ「!///」

カグヤ「僕は行くよ。また会えるといいね。倉田さん。」

ましろ「は、はい......!」

 

 彼はそう言って、どこかに歩いて行った

 

 私はその背中を見えなくなるまで、見続けてた

 

ましろ(十条、カグヤ君......)

透子「__おーい!倉田ー!」

ましろ「と、透子ちゃん。」

透子「もー、何やってんのー?」

ましろ「ご、ごめん......」

透子「いや、別にいいんだけど......ん?」

ましろ「?」

 

 透子ちゃんは私の顔を見ると、不思議そうな顔をした

 

 そして、まじまじと見てきた

 

ましろ「ど、どうしたの?」

透子「いや、なんか倉田の顔、赤くない?」

ましろ「え?」

 

 私は自分の顔を触った

 

 確かに、いつもより熱い気がする

 

 この感じ、思い当たることは......

 

ましろ「......///」

透子「倉田ー?」

ましろ「な、なんでもない!///」

透子「え?あ、うん?」

ましろ「い、行こ、透子ちゃん!」

透子「ちょ、押すなって倉田ー!」

ましろ(な、なんなのかな......///)

 

 私は熱い顔と激しく動いてる心臓を落ち着けるように大きく息をした

 

 その後は、透子ちゃんと二葉さんと虹を飲みに行った

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