朝、俺は駅前のベンチに座っていた
何故、座っているかというと、待ち合わせだ
夏季休暇に入ってすぐの土曜日
駅前には腐るほどの時間を持て余してる有象無象が腐るほどいる
司(......暑い。)
俺はそんな事を思いながら
待ち合わせてる人物を待っていた
そして、10分後、そいつは来た
三久「__お待たせしました。」
司「......やっと来たか。後3分以内来なかったら帰ってた。」
今日の待ち合わせてたのは天空時だ
俺は遅れてきた天空時に不機嫌そうにそう言った
三久「今来た、くらい言ってくれてもいいじゃないですか。」
司「こんな所で嘘をついて何になる。」
三久「......ですよね。」
天空時は肩を落とした
俺はベンチから立ち上がった
司「それで、今日はどこに行くんだ。」
俺は天空時そう尋ねた
すると、天空時は気を取りなおした様子で話を始めた
三久「今日は美術展に行こうと思っています。」
司「美術展だと?」
三久「はい。近くの施設で期間現でしているんです。」
司「へぇ。」
美術展か
まぁ、室内だったら涼しいし
下手に動き回るより全然いい
三久「あの、興味がありませんでしたか......?」
司「ない事はない。そこにあるもの次第だ。」
百聞は一見に如かず
口で絵の良さなんて伝わるわけがない
俺は見てからすべてを判断する
司「行くぞ。外は暑すぎる。」
三久「は、はい!」
そうして、俺達は美術展をしている施設に向かった
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施設に来ると
俺たちは美術展の受付を済ませた
そして、作品が展示されている場所に行った
そこには期間限定にしてはかなり多い作品が飾られてる
司「__へぇ。」
期待してたかと言われると
全く期待してなかった
だが、結構いい作品もある
三久(意外と楽しそう、なのでしょうか?)
司「......これ、書けるな。」
三久「いや、とんでもない事をサラッと言わないでください。」
司「なんだ?」
三久「いえ、なんでもありません。」
天空時はそう言って、作品に視線を向けた
俺は不思議に思ったが、また作品を見た
司(先人と呼ばれる奴らの絵は面白いな。何を考えてこれを書いたかさっぱりわからん。)
こいつらはまさか、ある一つの分野なら俺の理解を超えられる天才だったんじゃないか?
だったら空気を読めと言いたい
現代に生まれてこい
俺はそんな事を思いながら絵を見てた
三久「__あの、そろそろ移動しませんか?」
司「?」
三久「もう、7分もここで留まってますよ?」
司「そうか。」
三久「行きましょう。まだ、作品はありますよ。」
天空時がそう言うので
俺達は別の場所に移動した
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俺たちは次に像が置いてあるエリアに来た
ここにも中々、奇抜な作品があった
司「__おぉ。」
俺が目をつけたのはショーケースに入ってる
魚の頭を模して造られた像だ
青色に輝いていて、無駄にクオリティが高い
かなり年季が入ってる
司「この作者は何を意図してこれを作ったんだ?」
三久「さ、さぁ?」
司「普通の人間ならこんなものを作ろうとも思わないだろ。」
十中八九、こいつはまともな奴じゃない
多分、相当な変わり者だ
そして、間違いなく天才だ
三久(柊木君の目の付け所が独特過ぎます......きっと、天才にしか見えてない世界があるのでしょう。)
司「この作者に一回くらい会ってみたいな。」
三久「もう何年も前に亡くなってる方みたいですが。」
司「そうか。」
なんで、俺が天才認定する奴はみんな死んでるんだ
もうちょっと気合入れて生きろ
司「さてと、次行くか。」
三久「え?もういいんですか?」
司「あぁ、こいつの迷宮はもういい。」
三久「?(迷宮?)」
司「行くぞ。」
三久「あ、ま、待ってください。」
俺たちは移動した
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それから、俺達は色々な作品を見た
それで、分かったことがある
俺は大部昔の絵が受けて
近代の絵はあまり受けない
司「__ん?」
三久「どうしまして......って、あれは?」
一か所、異様に人が集まってる場所があった
見えずらいが、何かの絵が飾られてるらしい
司「なんだあれ?」
三久「分かりません。何かすごい作品があるのでしょうか?ちらほら、見たことある方もいますし。」
司「へぇ......」
俺は人ごみの方に歩いて行った
天空時は俺の後ろをついてきた
司「__これは。」
人ごみをかき分け
俺は作品の前に来た
三久「すごく、綺麗。」
どこかの海中の風景を地上にいるように見て描いたような絵
流石に俺もゾッとした
これを書いたのは魚人かなんかなのか?
それくらいにリアルだ
お俺は作者の名前を見た
司「!」
三久「こ、これは......!」
絵の下にある作者の名前が書かれたカード
そこに書かれてる名前は魚人のものでも
すでに死んでるものでもなかった
俺も天空時も知ってる
『広町七深』という名前だった
三久「ひ、広町さん?」
司「な、なんだと?」
流石に驚きを隠せない
これをあの広町が?
俺は腕に付けてるあるものを見た
司「納得した。」
あの時、軽いノリで買ったこれは想像よりもすごい物だったらしい
青い宝石使われてるブレスレット
このクオリティ、この絵を見れば納得いった
司(八潮が言ってたのはこういう事か。)
三久「かなり混んでますね。移動しましょう。」
司「あぁ、そうだな。」
俺と天空時はその場から移動した
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移動した後、俺達は時間を見て
近くのレストランに入った
そして、注文を済ませ、料理を待っていた
三久「__それにしても、驚きましたね。」
司「あぁ。」
そこで俺たちはさっきの事を振り返っていた
天空時はまさかと言った表情だ
三久「私も広町さんの噂は聞いたことがありました、でも、まさかあそこまでとは......」
司「そうだな。」
三久「柊木君は知らなかったのですか?」
司「あいつが芸術の分野で優秀だったことは知っていた。」
俺は水に口をつけた
冷たい水は頭を冷やしてくれる
司「天空時、これを見ろ。」
三久「ブレスレット?」
俺は腕に付けてたブレスレットを外して
天空時に見せた
三久「凄く高価そうですね。これをどこで?」
司「広町から買った。」
三久「え?」
天空時は目を丸くした
まぁ、そりゃそうか
三久「彼女は一体、何者なんですか?」
司「元天才だ。間違いない。」
三久「元?」
司「今のあいつは普通の女だ。本人もそれを望んでる。」
三久「望んでる?」
司「あぁ。」
店員「__お待たせいたしました。」
俺たちが話してる途中
店員が料理を持ってきて
テーブルにそれを置いた
俺たちは食事を始めた
三久「どういう事なんですか?」
司「そのままの意味だ。」
俺はパスタを口に運ぶ前にそう言った
天空時は首を傾げた
三久「なぜ、あれほどの才能がありながらそれを放棄するような真似を?」
司「......」
天空時のその言葉にフォークが止まった
俺には多分、それが分かってる
三久「柊木君?」
司「才能は嫉妬と過度な期待を生む。」
三久「!」
司「あいつはそれが嫌で、普通を目指したんじゃないのか。」
俺はそう言って、パスタを口に運んだ
多分、これが正解だと思う
誰しも、俺みたいに周りを気にしないわけじゃない
嫉妬や期待に耐えられないことだってあるだろう
司「......まぁ、期待がうっとおしいのは分かるがな。」
三久「え?」
司「なんでもねぇよ。はい、ごちそうさま。」
三久「早いです。」
俺は食後のコーヒーを手に取った
コーヒーは年中、必ずホットだ
しばらくして、天空時も食事を終えた
三久「お会計に行きましょうか。」
天空時はそう言って財布を出そうとした
俺はそれを止めた
司「いらん。」
俺はそう言って、レジに歩いて行った
そして、俺はカードを出した
司「これで。」
店員「か、かしこまりました。」
店員はある程度の店なだけあって
少し顔が引きつってたが、素早く会計を済ませた
店員「あ、ありがとうございました。」
司「あぁ。」
三久「はい。」
俺たちはそうして、その店を出た
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店を出て、俺達は待ち合わせをしてた駅前に戻ってきた
三久「__今日はこんなものにしておきましょうか。」
司「そうか。」
三久「あまり長く外にいてもですし。今日行きたかった場所もいけましたし。」
そう言って天空時は止まってる車の方に歩いて行った
そして、途中、俺の方を向いて手を振ってきた
三久「ごきげんよう、柊木君。」
司「あぁ、じゃあな。」
ニコッと天空時は笑うと
体の向きを戻し、今度は真っ直ぐ車の方に行った
そして、乗り込んですぐに車は出発した
司「さて、俺も帰るか。」
そう呟いて
俺もその場を後にした