夏季休暇が終わり
今日から2学期だ
つまらん始業式を聞き流し
教室に戻ると、色々な連絡を受けた
担任「__もうすぐ、月ノ森音楽祭です。」
司「......」
そう言えば、あいつらどうなったんだ?
広町にもしばらく会ってないし
よくわからん
そんな事を考えてるうちに
ホームルームが終わった
司「......?」
教室を見回すと
倉田ましろと二葉つくしの表情が暗かった
すると、2人が教室から出て行った
司「俺も帰るか。」
俺はそう呟き、教室を出た
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校門に行くまでの中庭で
見知った姿があった
ましろ「......これ、知ってる?」
司「!」
俺は物陰に隠れた
これは、まさか......
ましろ「私達の事、話してる人見つけたんだ......」
倉田ましろはそう言って携帯を出した
やっぱり、来たか
つくし「『月ノ森のバンドなんか残念だったね』......?」
七深「『あの学校の子にしては普通な感じ』......」
司「......」
だいたい、想像通りだ
だが、これじゃない
もっと、爆弾がある
七深「__『月ノ森のボーカル、思ったより平凡だった。』『あの学校ならもっと歌える子いそうな気がするけど。』」
司「......これだ。」
間違いなく、こうなることは分かってた
倉田ましろは月ノ森の水準ではない
だから、印象で語られればこうなると
司「......ふん。」
練習を見る限り
倉田ましろは練習に精力的だった
だからこそ、批判を受けた時の反動がでかい
そして、性格を見る限り
倉田ましろは間違いなく、人に当たる
つくし「__出来なかったら人のせいなの!?そんな事言うなら、もうやらなくていい!!」
二葉つくしのそんな声が聞こえた
ここが、分岐点
間違いなく、あいつらの未来に関わる
司(今は俺が手を出すべきじゃないな。)
カグヤ「__あれ、司さん?」
司「十条カグヤか。」
カグヤ「何をしているんですか?」
司「何もしてない。」
俺はそう言って
校門の方に体を向けた
司「あ、そうだ。」
カグヤ「?」
司「倉田ましろが思い悩んでる。」
カグヤ「え?」
司「後はお前次第だ。」
俺はそう言って、歩いて行き
学校を出た
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”カグヤ”
昨日の司さんの言葉は何だったのだろうか
倉田さんが思い悩んでる?
僕は何も分からないままボーっと廊下を歩いていた
カグヤ「__あれは、倉田さんと八潮さん?」
廊下を歩いてると
窓際で2人が話してるのが見えた
僕は曲がり角に隠れて、聞き耳を立てた
ましろ「__私は練習にはいかない。もうバンドはやめるから......」
カグヤ(え......?)
それから、倉田さんは八潮さんに事情を話した
僕はそれを聞いて、変な気持ちが沸いてきた
倉田さんがバンドをしてる事は知ってた
でも彼女はそれを話そうとはしなかった
ましろ「あれからバンドやめるの止めに来てくれなかったし......」
カグヤ「__!」
それから倉田さんと八潮さんはしばらく話し込んだ
八潮さんの言葉は的を射たおおよそ正しい物だった
倉田さんは周りの人にすがってて
八潮さんが言ったように甘えてる、のかもしれない
カグヤ(でも......)
倉田さんの気持ちだって分かる
人には縋ることのできる人が必要だから
そんな事を考えてると、八潮さんが離れた
倉田さんは動いてない
カグヤ(......行かないと。)
僕は拳を握り締め
倉田さんの方に歩いて行った
カグヤ「__倉田さん。」
ましろ「じ、十条君......」
倉田さんは暗い顔をしてる
僕は倉田さんの隣に立った
カグヤ「八潮さんとの話、聞いたよ。」
ましろ「!」
そう言うと、倉田さんは僕から顔をそむけた
ましろ(十条君に......き、嫌われる......でも、どうせ私だから、嫌われるよね......)
カグヤ「僕の話を聞いてほしいんだ、倉田さん!」
ましろ「え?」
僕は倉田さんを呼び止めた
倉田さんは足を止めてくれた
カグヤ「僕は倉田さんの気持ちが分かるよ。」
ましろ「十条君......?」
カグヤ「僕も倉田さんみたいにピアノをやめようと思ったことがあるから。」
ましろ「!?」
倉田さんに話し始めた
カグヤ「僕は小さい時からピアノをしてて、何回もコンクールに出て、賞を取ってた。両親も良く褒めてくれた。」
ましろ(やっぱり、私とは違う......)
カグヤ「最初はピアノは僕の特別だって、そう思ってた。でも、学年が上がるたびに変わって行ったんだ。」
ましろ「変わって、行った......?」
カグヤ「両親が段々とピアノを褒めてくれなくなったんだ。」
ましろ「褒めてくれない......?」
カグヤ「うん。それで、僕は必死にピアノを弾いた。もっと賞を取れば、結果を残せばまた褒めてくれるって、そう思って、必死に練習した。」
嫌な記憶が蘇ってくる
あの、光なんてない、時が......
カグヤ「でも、そんな事はなくて、ピアノが嫌いになったこともあったよ。」
ましろ(十条君が......)
カグヤ「そんな時、お父様が開くパーティーでピアノを披露しろって言われたんだ。」
ましろ「パーティーで?」
カグヤ「その時、僕はこれが最後だって思ってた。人前なら、お父様もお母様も言葉では褒めてくれる。ここで終われば、特別で終れるから、ここでやめようって、そう思ってた。」
僕は少し顔をあげた
カグヤ「そこで、司さんに出会ったんだ。」
ましろ「柊木君に......?」
カグヤ「僕の演奏を聞いた司さんは、こう言ったんだ『つまらん演奏をして楽しいか?』って。」
ましろ「!」
カグヤ「その時、僕は何かに射抜かれたような感覚があったんだ。そして、この言葉で全て分かった。」
ましろ「言葉......?」
カグヤ「『自分の才能の使い方は自分で決めろ。』ってね。」
ましろ「柊木君、らしいね......」
カグヤ「僕もそう思うよ。でも、あの言葉は確実に僕を救ってくれた。僕のピアノを生き返らせてくれた。」
僕は語気を強めた
あの時の気持ちが蘇ってくる
カグヤ「僕が今、僕自身のためにピアノを弾けてるのは間違いなく、司さんのお陰なんだ。」
僕は分かった
僕は司さんに導かれた、だから
次は僕が倉田さんに同じようにしないといけないって
倉田さんのバンドってものを死なせちゃいけないんだって
ましろ「そんな事が、あったんだ。」
カグヤ「うん。だからね。」
ましろ「え?」
カグヤ「僕にはやめるのを止めてくれた人がいたから、僕は君を止める。」
ましろ「!!」
カグヤ「倉田さんが何のためにバンドをするか、それを、見つけてほしいんだ。」
カグヤ「今は見えないかもしれない。だから、自分の感情に従って、転んだとしても、また立ち上がれるって、僕はそう思ってる。」
僕はそれだけ言って
倉田さんに背中を向けた
カグヤ「またね、倉田さん。」
僕は自分の教室に向けて
歩いて行った
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”司”
司「......ふっ。」
十条カグヤめ
人の言葉を使いやがって
司「成長したじゃねぇか。」
自分の才能を使えなかった、小僧が
次は人を導く人間になる、か
世の中分かんねぇな
司「よくやったな、十条。」
俺はそう呟きながら、廊下を歩いた
もう、倉田ましろは大丈夫だ
後はどう流れても、あいつはバンドに戻るだろう
司「__ん?」
廊下を歩いてる途中、電話がかかってきた
明石からだ
司「どうした?」
響『司、依頼だよ。』
司「明石の方にか?珍しいな。」
響『今夜、直接話がしたいって。』
司「直接?」
パンドラに直接会って依頼?
そんな事、3年ぶりだぞ
司「......まぁ、いい。今夜だな。」
響『うん。』
司「今夜、依頼主の所に行く。落ち合うぞ。」
響『りょーかい!』
明石はそう言って電話を切った
俺は携帯をポケットにしまった
司(......なんだ、この胸騒ぎは。)
俺はそれの正体を考えながら
放課後までの時間を過ごした
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夜、俺と明石は豪華な屋敷に来た
規模だけなら、弦巻の屋敷と変わらない
響「__広いねー。」
司「ふん。」
俺たちは屋敷の中の主の部屋を目指している
案内の使用人も出さないとは、無礼な奴だ
そんな事を思ってるうちに、主の部屋に着いた
俺たちはその部屋に入った
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司「__?」
中に入ってもだれもいない
どういう事だ?
司「明石、避けろ。」
響「っ!」
俺は明石を後ろに引っ張った
明石がいた場所には、矢が突き刺さっていた
響「こ、これって!」
司「ご挨拶だな。よく教育されてる事だ。」
俺は肩を回した
次仕掛けてきたら、俺も仕掛ける
?『__ははは!お見事!』
響「!」
司「......志木小鞠。」
志木『お久しぶりでございます、柊木殿!』
こいつは面倒だ
良い噂を聞かない
それにさっきの行動
そして、俺が仕掛けようとした時に引く判断力
司「直接姿を見せないとは、不敬だな。」
志木『申し訳ございません!柊木殿の前に出るのは恐れ多く。』
志木小鞠は気持ち悪い笑みを浮かべながらそう言った
目の前にいるこいつは映像だ
確実に俺を警戒してる
司「それにお前、今、明石を狙ったな?」
志木『申し訳ない!少しあなた様を試したのです!』
司「試した?」
志木『今回の依頼を達成できるか、分からないでございますからねぇ!』
鬱陶しい
こいつ、目の前にいたら絶対に殴ってた
司「もういい。今回の依頼内容は何だ。」
志木『そうでございますね。では、こちらの画面をご覧ください!』
志木小鞠がそう言うと
でかいスクリーンが出て来た
そして、そこに映像が映し出された
司「__は?」
響「こ、この子って......!」
スクリーンに映ってるのは
よく知ってる......
志木『あなた様にはこの、広町七深を殺してほしいのです!』
司「......」
志木小鞠はそう言った
志木『出来ますよね?生きる伝説、パンドラ様なら?』
司「......チッ。」
響(そんな依頼、司が受けるわけない!)
司「......いいだろう。」
響「え?」
俺は静かにそう答えた
横の明石は驚きの声を上げた
司「決行日はいつだ。」
志木『そうですねぇ......月ノ森音楽祭の夜、なんていかがでしょうか?』
司「......いいだろう。」
志木『その他の依頼の事項はそこの書類にあります!どうぞ!』
司「......ふん。」
俺は目の前の書類を手に取った
そして、扉の方に歩いた
志木『それでは、くれぐれも死なないように気を付けてくださいませ!』
部屋を出る直前
そんな言葉が聞こえた
響「__ちょ、司!」
司「......」
響「なんで、何も言わないの!?」
俺たちは屋敷の中から出た
__________________
響「__司!!」
司「そろそろいいだろう。」
屋敷から少し離れた位置で
俺は明石の声に反応した
明石は少し怒っているようだ
響「なんであんな依頼受けたの!?あの子、司の友達でしょ!?」
司「気付いてなかったのか?」
響「何に!?」
司「あの部屋、そこら中に機関銃があったんだぜ。」
響「え?」
明石が驚きの声を上げた
あの部屋にあった機関銃は30
あらゆる方向から隙間なく俺たちを狙えるようにしてた
司「多分、俺達が依頼を断ったらあれを使う気だったんだろうな。」
響「な、なんでそんな!」
司「それは依頼の事項が書かれてる紙と奴の最後の言葉でわかる。」
俺は明石に紙を渡した
明石はそれに目を通した
響(__普通に時刻とか、依頼料とかしか......え?これ?)
司「失敗条件、柊木司の死亡だ。だが、そこには仕事名、パンドラと書かれてない。」
響「じゃあ、あの人の狙いって......」
司「俺を殺すことだろうな。」
響「っ!」
俺がそう言うと
明石の肩が跳ねた
司「奴が今日、俺の前に現れなかった理由は俺の前に出たくなかったで間違えない。だって、俺がこれを察することを分かってたから。もう一つは、もしもの時、俺達を簡単に殺せるようにだ。」
響「じ、じゃあ、どうするの?依頼をすっぽかす?」
司「それは出来ない。」
響「え?」
司「今回のターゲットは広町だ。つまり、友人、俺の弱みになる人間だ。」
響「そ、そうだけど。」
司「奴は十中八九、俺たち以外の殺し屋を呼んでる。」
響「!」
司「それなら、俺を殺すのにも使えるし、仮に俺たちが依頼をすっぽかしても、奴らが広町を殺す。」
だったら、殺し屋を全員殺せばいい、とは思う
だが、それにはリスクがある
殺し屋の数が不明なうえに
俺の浅い部分の思考を読み取れる奴の存在
絶対に何らかの対策をしている
少なくとも一人は俺たちを確認できるぎりぎりの位置で
俺の死亡を確認する奴がいるだろう
響「ど、どうするの?それじゃあ、どうしようもないじゃん!」
司「大丈夫だ、策はある。とっておきのな。」
響「え!?それって、どういうの!?」
司「そうだなぁ、まずは......」
俺は考える仕草を見せた
明石は首をかしげている
響「司?」
司「俺と出かけようぜ、明石。」
響「__え?」
俺がそう言った後
明石の呆気にとられた声が
夜の街に木霊した