花見の日
季節は春
俺は今、桜の木の下でシートに腰を下ろしている
司「__はぁ......」
カグヤ「司さん、大丈夫ですか?」
司「大問題だ。」
周りには、広町たちの知り合いと言われる女が多くいる
正直、今日、来る気は全くなかった
だが、広町に泣き脅しされ、来ざるを得ない状況になったのだ
司「なぜ、女ばっかりのこの空間に俺達がいるんだ。」
カグヤ「僕は倉田さんに呼んでいただいたので。」
司「お前、彼女に従順すぎるだろ。」
俺はため息をつきながらそう言った
十条は首をかしげている
カグヤ「僕たちも挨拶に行きませんか?倉田さんたちがお世話になってる方々だそうですから。」
司「はぁ、仕方ないか。」
俺は重い腰を上げた
そして、十条と共に挨拶に向かった
__________________
司、カグヤ「......」
挨拶に出た矢先
俺たちはデカい壁にぶち当たった
そう、俺達は知らない人物に話しかけるすべを持たないのだ
基本的に俺と十条は挨拶に来られる側だからな
司「おい、どうするんだこれ。」
カグヤ「どうしましょう......」
司「取り合えず、初手はお前が行け。」
カグヤ「すいません、不可能です。あまり、初対面の人とは......」
司「あぁ、知ってた。」
カグヤ「そう言う司さんは?」
司「俺が初手に行ってみろ、確実に喧嘩になるぞ。」
カグヤ「あっ(察し)」
十条は何かを察するような声を出した
こいつ、最近、失礼になって来たな
まぁ、気にはしないが
司「それで、どうするんだ。このまま足踏みもしてられんだろう。」
カグヤ「そうですね。取り合えず、可能な限り頑張りましょう。」
司「善処はしよう。」
そうして、俺達は二手に分かれた
”木の陰”
七深、ましろ「__いいなぁ。」
木の陰で2人の様子を伺っていた2人はそう呟いた
ましろと七深は2人を凝視している
ましろ「十条君、あんなに人見知りして、可愛いなぁ......」
七深が(それは、しろちゃん、人のこと言えないよねー。)
ましろ「七深ちゃん?」
七深「なんでもないよー。それにしても......」
七深は司の視線を送った
そして、ため息をついた
七深「あの偉そうなのを若干気にしてる感じが、たまらないなー。」
ましろ(そこなの?)
恋は盲目という言葉の通り
2人にとっては汚点と言える部分も
ましろと七深には受けているようだった
ましろ「それにしても、あの2人、私達に気付いてないのかな?」
七深「えー?大丈夫だよー。こんなに賑やかなんだしー。」
ましろ「そう、なのかな?」
ましろは首を傾げた
七深は司の方を見た
司(気付いてるんだが。)
カグヤ(聞こえてるよ。)
__________________
”司”
司「__あれは。」
俺はどこかで見たことがある顔を見つけた
あれは、確か......
司「ロゼリア、だったか。」
友希那「......あなたは誰?」
司「!」
どうやら、向こうは俺に気付いてるみたいだ
俺は5人の方に歩いた
司「柊木司だ。湊友希那。」
友希那「あら、私の事を知っているのね。」
司「お前だけじゃない。そっちから、今井リサ、氷川紗夜、宇田川あこ、白金燐子だろ。」
あこ「あこ達の事も知ってるの!?」
リサ「モルフォニカの5人から聞いたのかな?」
司「半分正解だ。」
紗夜「半分?」
司「あぁ。残り半分はFUTURE WORLD FESからだ。」
燐子「成る程......」
俺はこんな時のために持ってきておいた菓子を出した
面倒だったから、取り合えず一番高いやつを買っておいた
友希那「これは?」
司「初対面の挨拶兼フェスの祝い兼広町たちをよろしく頼む、ってとこだ。」
友希那「かなり兼ねるわね。」
リサ「って、これ、かなり高級なやつじゃん!」
あこ「あこも見たことある!これ、ひと箱で何万円とか......」
今井リサははれ物にでも触るような手つきで
菓子を受け取った
何をそんなに気にすることがあるんだ
燐子「あの、いいのでしょうか......?こんな、高級なものを......」
司「構わん。金なんて腐るほどある。」
紗夜「......待って、まさか。」
リサ「どうしたの?紗夜?」
紗夜「あの、お名前は柊木司さん、でしたよね?」
司「あぁ、そうだ。」
俺は氷川紗夜の問いかけに頷いた
すると、見る見るうちに
湊友希那を除いた4人の顔色が変わった
リサ「柊木司って、あの!?」
友希那「......有名なの?」
あこ「確か、すごい実業家で大金持ちだって!」
燐子「世界的に見ても、34%の財に息がかかってると言われるほど、だと......」
友希那「え?」
紗夜「政府ですら彼の意向には逆らえず、彼の所有する土地は治外法権のようなものになっているとか。」
友希那「そんな事あるの?」
湊友希那も目を丸くしてる
まぁ、俺の名前を知ってる人間は珍しくない
だが、顔まで知ってる人間というのは一般人にはそう多くないだろう
リサ「TOKOに加えて、柊木司まで......月ノ森ヤバすぎ。」
紗夜「流石に驚きました。」
あこ「あこはもう、目が飛び出すと思いましたよー。」
友希那「なんで、そんな人物がこのお花見に参加しているの?」
燐子「確かに、もっといい庭園とか、そんな場所でしてるものだと......」
5人は疑問のまなざしを向けて来た
まぁ、普通ならそう思うよな
司「広町に呼ばれた。」
紗夜「広町さんに?」
リサ「でも、それで来るような人なの?」
司「恋人の頼みだ、そりゃ来るだろ(泣き脅しだったが)」
ロゼリア「彼女!?」
司「?」
5人が突然、驚きの声を上げた
俺は首を傾げた
あこ「柊木くんって彼女いたんだ!」
リサ「へぇー!意外ー!」
司「まぁ、意外と言えば意外だな。」
リサ「まぁ、座りなよ!」
司「いや、俺は__」
リサ「いいから☆」
俺は半ば強引に座らされた
なんでこうなった
リサ「でさでさ、彼女のなんで好きになったの?」
司「どこが......?」
燐子「?」
どこが、と言われると
考えたこともないな
今一度、考えてみるのもいいだろう
司「あえて言うとすれば、広町だから、だな。」
リサ、あこ「きゃー!///」
友希那「うるさいわよ、2人とも!」
リサ「だってさ、友希那ー!」
あこ「シンプルに一番うれしい言葉ですよ!羨ましいなー!」
今井リサと宇田川あこのテンションが高い
他の3人がついて行けてないな
紗夜「あなた程の人なら、女性なんていくらでも寄ってきそうなものですが。」
司「興味もない。」
燐子「それって、彼女さん以外に興味がないととっても......?」
司「構わん。」
リサ「うっわ、イケメンでお金持ちで一途とか最強じゃん!」
あこ「かっこいいー!」
氷川紗夜と白金燐子が対応しだした
湊友希那はまだ若干ついて来れてないが
司(ん?)
後ろから視線を感じる
俺は後ろを見て、出所を探した
司(......何してるんだ?)
視線の正体は広町だった
顔を赤くしながら、俺の方を見てる
リサ「ねぇ、柊木君!」
司「なんだ。」
リサ「柊木君的に彼女の一番かわいいところってどこかな!?」
あこ「あこも聞きたい!」
司「広町の一番かわいいところ?そうだな......」
俺は少し考えた
いくらでも選択肢はあるが
多分、一番はこれだな
司「からかい甲斐があるところだな。」
友希那「からかい甲斐?」
司「あぁ。この前、あいつが急にキスをしてきたときにあったことだが。」
ロゼリア「キス!?」
司「なんだ?」
紗夜「い、いえ。」
リサ「続けて続けて!」
司「広町がしてやったりみたいな顔をしてたから、思いっきり顔を引き寄せて__」
七深「__わー!!!///」
司「ん?どうした?」
俺が話してると、広町が話に割って入ってきた
俺はそれをにやけながら眺めた
七深「柊木君、喋り過ぎだよ!///」
司「事実だろう?」
七深「うっ、そ、それはそうだけど......///」
広町はモジモジしながら小さな声で喋ってる
俺は追い打ちをかけることにした
司「あのときは可愛かったぜ?強気な態度から段々、弱気になって行って、最後には__」
七深「柊木君、ステイー!!///」
司「ははは!いい顔だな、お似合いだぜ?」
七深「むぅー!///」
広町は広義の視線を向けると同時に
俺の腕を掴んだ
司「なんだ?」
七深「ついて来て!///」
司「まだ話してる途中なんだが?」
七深「柊木君は何言うか分からないからだめ!///」
そう言って、広町は俺を立ち上がらせた
そして、引っ張ってきた
司「まぁ、こんな感じだ。可愛いだろ?」
リサ「そ、そうだね!(あぁ......)」
あこ「か、可愛いね!(柊木君って......)」
紗夜(ドSなのね。意外でもないけれど。)
燐子「き、キス......///」
友希那「さ、最近の高校1年生は進んでるのね......///」
リサ(友希那が純情でかわいい。)
俺たちはロゼリアの5人から離れていった
__________________
俺は広町に引っ張られ
誰も寄り付かない物陰に来た
司「__なんでこんな所に来たんだ?」
七深「......///」
司「広町?」
七深「んっ///」
広町は突然、唇を重ねて来た
そして、3秒ほどして、離れていった
司「どうしたんだ?」
七深「だって、柊木君があんな話するから......///」
司「?」
七深「キス、したくなっちゃったんだよ......///」
司「......へぇ。」
俺は少し笑いながら
広町を見た
広町は俺をウルウルした目で見てる
七深「柊木君からも、キスして......?///」
司「ふーむ、どうするか......」
七深「え?」
俺は考えるそぶりを取った
すると、広町の顔色が変わった
七深「して、くれないの......?」
司「そうだなぁ、もう一回、俺好みにねだれたらいいぞ。」
七深「......///」
俺がそう言うと広町は顔を赤くしてうつ向いた
スカートを握って震えてる姿は何とも愛らしい
そう思ってると、広町が顔を挙げた
七深「柊木君の、ここに欲しいよぉ......///」
司「!!」
七深「んんっ!///(ふ、深い!///)」
広町がそう言った瞬間
俺はすぐさま、広町にキスをした
さっきよりも深く、長く
流石の俺も息が苦しい
時間にして10秒後、俺達は離れた
すると、広町はその場に座り込んだ
七深「はぁはぁ......///」
司「中々、弁えてるじゃないか。柄にもなく取り乱したぜ。」
七深「......あ、あんなのが///」
広町は顔を抑えながら
小さな声でつぶやいている
聞こえてるんだがな
司「どうだった?広町が渡してきた漫画に載ってたんだが。」
七深「ほ、本当に、き、気持ちよかった......///」
広町は恥ずかしそうにそう言った
こんな姿を見てると、なにか湧き上がってくるものがある
七深「柊木君に支配されてる感じがして、それがなんだか、気持ちよくて、それで......///」
司「......」
七深「柊木君......?///」
こいつは俺の感情を乱す天才か
なんか色々なものが込みあがってくるぞ
落ち着け、クールダウンだ
俺は自分にそう言い聞かせた
司「......それは、よかったな。」
出た言葉はひどく棒読みだ
それだけ心の余裕がない
七深「ねぇ、柊木君......?///」
司「......なんだ。」
七深「もう一回、欲しい......///」
司「っ!?」
七深「もう一回、私を支配して......?///」
その時、俺の中で何かが切れたような気がした
それが何かなんて、どうでもいい
俺がとるべき行動は一つだ
俺は広町を壁に追い詰めた
司「......今度は本気で行くからな。」
七深「~!///」
それからの事はよく覚えてない
ただ、終わった後の広町の表情を見る限り
濃密な時間を過ごしたのは、確かだ