俺は今、見るからに豪華そうなパーティー会場にいる
普段は嫌いだから俺はスーツを着ない
司「......」
響「テンション低いねー。」
司「明石か。」
俺が歩いてると、明石が話しかけて来た
まぁ、来てるのは当然なんだが
明石はいつもはまとめてる髪を下ろし、赤いドレスに身を包んでる
一見すれば、名家の令嬢だ
司「......馬子にも衣裳。」
響「うん?なんか言った?」
司「なんでもない。」
俺が呟くと、人を凍らせそうな目で俺を睨みつけて来た
響「まぁ、いいけどさ。てか、司はなんでそんなに疲れてるの?」
司「さっきまで、色んな奴に話しかけられてたからだ。」
響「あー、どっかの社長とか?」
司「それならマシだ。」
俺はため息をついてからそう言った
こういう場で面倒なのは、社長の年寄りどもじゃない
もっとも面倒なのは
司「若い女、令嬢だ。」
響「あっ(察し)」
司「伴侶がどうやら、近況はどうやら、自分はどうかやら、鬱陶しい。」
頭が痛くなる
所謂、政略結婚、玉の輿狙い
響「た、大変そうだねー。」
司「......もう帰ってやろうか。」
響「まだ開始1時間なんだけど?」
司「もう疲れた。」
響「うわ、いつも以上に真顔だ。」
これ以上ここにいると、本当にストレスで病むぞ
司「いいのか?俺も将来、あの年寄りどもみたいに禿げるぞ?」
響「いや、それどんな脅し?」
司「まぁ、冗談なんだが。」
七深「__あー、柊木君だー。」
司「......」
今日は厄日なのだろうか
どうやら、神様ってやつは俺の事がたいそう嫌いらしい
七深「ごきげんようー。」
司「......あぁ。」
響(うわ、司の目が死んだ。)
今、自分がどんな顔をしてるかなんて容易に想像が付く
多分、死人のような顔をしてるんだろうな
七深「さっき妙に人だかりが出来てると思ったら、まさかだったよー。」
響「こ、この子は司のお友達かなー?」
司「......ちが__」
七深「そうでーす。」
司「いつ、俺は広町七深と友人になった?」
今の所、俺の友人は明石のみだ
間違っても、2人以上いるわけない
響「おー!司の友達!」
司「話聞いてたか?耳が悪いのか?手術してやろうか?」
響「えー?いいじゃんー。司みたいな偉そうな男を友達って言ってくれてるんだよー?」
司「誰が偉そうだ。俺の態度は義務だ。」
七深「まぁ、いいじゃんー。バンドの練習を見てくれた仲って事でー。」
司「何がいいのかさっぱりだ。」
俺は間髪入れずにそう言った
いい加減疲れて来た
ここにいる意味はないし、もう帰ろう
司「......俺は帰る。」
響「えー!待ちなよー!」
七深「そうだよー、待ってよー。」
そう言いながら、二人は俺の前に立ちはだかった
俺はもう、頭を抱えたい気分だ
司(少し、本気逃げにかかるか。)
七深「まーまー、ちょっと待ってよー。これを見てー。」
そう言うと、一枚の紙を取り出した
見た感じ、何かが書かれている
司「......なんだ、それは。」
七深「見ればわかるよー。」
俺はそう言うので、広町七深からその紙を受け取った
司「......なるほどな。」
響(なんだろ?)
司「ついて来い、広町七深。」
七深「はーい。」」
響「!?」
司(まぁ、想像通り。見てたな。)
広町七深から受け取った紙には『パンドラ』と書かれていた
俺は主催者が用意している、個室に広町七深と向かった
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個室は意外と広く、ホテルの一室のような部屋だった
司(__盗撮、盗聴機器はないな。)
機械から発せられるかすかな音はなかった
まぁ、今更俺の弱みを握りたい資産家、社長はいないんだがな
七深「私ねー、今日は家族が自分の作品を売り込みたいって来たんだー。」
司「聞いてない。」
俺はそう言いながら椅子に座った
そして、広町七深も向かいの椅子に座らせた
司「それで、お前の目的は何だ。」
七深「目的?」
司「弱み程でもないが、俺の秘密を持ってる。つまり、今、この世で俺に交渉の余地があるただ一人の人間だ。」
七深「そうなんだ。」
俺の日本国内で握っている財は36%
そして、地球上で見れば、34%だ
これが、世界一と言われる由縁だ
そんな俺と金関係の契約をするのは、実質、完全勝利と言っても過言じゃない
七深「うーん、少し気になっただけなんだけどー。」
司「なに?」
七深「?」
こいつの呼吸、心音から判断して
嘘は一切ついてない
つまり、本当に目的がないって事だ
司「変な奴だ。」
七深「え?ふ、普通じゃない?」
司「あぁ、異常だ。」
七深「じ、じゃあ、お金を用意してもらおうかー、ぐへへー。」
司「ふっ、なんだそれは。」
変な奴だ
変な奴過ぎて笑ってしまった
七深「おー、笑ったー。」
司「いや、俺も笑いはするぞ。」
失礼な奴だ
まるで、俺が笑わない人間みたいに言いやがって
司「まぁ、金くらい用意してもいい。いくら欲しい、言ってみろ。」
七深「い、いや、お金なんていらないんだよ......」
司「そうか。」
広町七深はそう言うと
俺にこう聞いてきた
七深「柊木君は本当に、パンドラ、殺し屋をしてるの?」
司「あぁ、そうだ。」
俺は迷いなくそう答えた
隠す意味なんて全くない
七深「なんで?柊木君はもう、実業家として成功してるのに。」
司「なんで?そうだな。」
なんで、この副業をしてるか
久しぶりにそんな事を聞かれた
司「向いてるからだ。」
七深「向いてる?」
司「そうだ。」
七深「ど、どういう事ー?」
司「俺は考えたんだ。自身が持つ能力を最大限に活用する方法を。」
これを初めて考えたのは小学校5年生の時
そして、初めて手にかけたのもだ
司「俺は普通の人間とは圧倒的に違う。頭脳、身体能力、ありとあらゆるものが水準をはるかに上回る。」
七深「それなら、殺し屋じゃなくて、他でもよかったんじゃー?」
司「言っただろ、俺は圧倒的に違うと。」
七深「?」
理解できないと言った表情だ
まぁ、そりゃそうだ
司「俺が殺し屋を選んだ理由は等しく罰を与えるためだ。」
七深「っ!」
司「俺は罰を与える者。俺に依頼が来る奴はみんな、殺されて当たり前の奴ばかりだ。」
俺は少し笑いながらそう言った
司「禁忌に触れ、人の感情の箱が空けられ怒りが零れる時、その者に罰が降りかかる。それが、パンドラの名前の理由の一つだ。」
七深「そ、そっか......」
司「まぁ、そういう事だ。」
俺はそう言って椅子から立ち上がった
司「へぇ、良い小物持ってるじゃねぇか。」
七深「っ!い、いつの間に......!?」
俺は広町七深のカバンから売り込み用と思われるこもを抜き取った
司「これ、売り込み用か?」
七深「うん、一応......」
司「ふむ。」
俺はそれをじっくりと見た
司「ほう......」
かなり質の高いものだ
俺が見た中でトップクラス
普通の人間の上、別の分野で考えると明石レベルの仕事だ
司「これは、いくらで売るんだ?」
七深「そんなにお金取れないから、25000円くらいかなー。」
司「ダメだな。」
俺は懐に忍ばせておいた財布を出した
そして、中にある金を数えた
七深「え?」
司「この品質、所謂、高級アクセサリー店にもなかなかない。」
俺は財布の中に入ってる札をすべて出した
司「ざっと150万。使われてる宝石から考えて、これが妥当だ。」
七深「い、いや、それは......」
俺はそう言って机に札束を置いた
司「これは、口止め料の一部だ。」
七深「口止め料......?」
司「あぁ。一つは俺の力の一旦、それと金だ。」
俺はそう言いながら出口の方に歩いた
司「じゃあな。」
俺は軽く手を振りながら部屋を出た
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部屋を出て
俺は会場に戻るために廊下を歩いていた
響「__司。」
司「明石か。」
大体予想通り
どうせ、明石は聞き耳を立てていたんだろう
司「今日は喋り過ぎた。だが、パンドラがこれ以上、広がることはない。」
響「いや、それは心配してないよ。心配なのは司。」
司「俺?」
響「パンドラの意味はあれ一つじゃ__」
司「言わなくていい。」
俺は服装を整えながら、明石の前に言った
司「いずれ、時は来る。その時まで、俺は等しく罰を与えるだけだ。明石もそれまでは協力しろ。」
響「......りょーかい。」
俺はそう言って、会場の方へ歩いた
明石も、俺の後ろについて会場に戻った