禁忌少年の月ノ森ライフ   作:火の車

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リクエストで来てたお題です(一年前)
後日談も投稿予定です。


誕生

 ましろさんと結婚して、4年ほどが経った

 

 僕は親の会社を継ぎ、今は社長をしています

 

 まぁ、ここまでやれているのは、司さんの手助けのお陰なんですが......

 

カグヤ(は、早く終わらせないと。)

 

 そんな僕ですが、今はものすごく焦っています

 

 今、僕の奥さんのましろさんは妊娠中で

 

 もう出産予定日近くです

 

 出来れば、病院について行きたかったのですが、急な仕事が入ってしまい、そうもいかなくなってしまいました

 

(Prrrrr!)

カグヤ「!」

 

 そんな中、僕の携帯に電話がかかってきました

 

 片手でタイピングをしながら電話を取ります

 

響『カグ君!ましろちゃん、陣痛来たよ!』

カグヤ「もうですか!?予定日は明日のはず......』

響『早まったみたい!どう!?これそう!?』

カグヤ「い、行きたいのはやまやまなんですが、まだ仕事が__」

 

 ど、どうする

 

 ここで僕が行けば、社員の人たちが困ってしまう

 

 でも、ましろさんの出産に立ち会わないのも嫌だ

 

 何か、何か案を__

 

(ズドンっ!!!)

カグヤ「!?」

司「__おい、貴様はここで何をしている。」

 

 僕が酷く慌てていると、突然、扉が僕の横を通過していった

 

 そして、重力を感じていないように右足を挙げた司さんがいた

 

 え、どうしてここに?

 

カグヤ「ど、どうしてここに?」

司「あ?そろそろ十条夫人の出産予定日だからな。手伝いに来てやった。」

カグヤ「え?」

響『司!?いるの!?』

司「明石か。あぁ、今来たところだ。で、その焦りようってことは。」

響『そう!もう、ましろちゃん陣痛来てる!』

 

 その会話が終わると、司さんは僕の方に近づいてきて、椅子から立たされた

 

 そして、ドンっと背中を押された

 

司「この程度の仕事量にこれほどの時間をかけるとは。まだまだだな。まぁいい。」

カグヤ「!」

司「さっさと妻の所に行け、バカ者が。」

カグヤ「は、はい!ありがとうございます!」

司「車を待たせてる。急げ。」

カグヤ「はい!行ってきます!」

 

 僕はそう言われ、部屋から駆け出した

 

 司さんがここまでしてくれたんだ

 

 全力で急がないと

 

 “司”

 

司「おい、けいた__もう行きやがった。」

 

 あいつ、携帯忘れていったぞ

 

 どんなに焦ってるんだ

 

 急げと言ったが、冷静さを失ってどうする

 

司(まっ、そのくらい妻を愛しているから、俺は奴を買ってるんだがな。)

響『随分と優しいじゃない、司さーん。』

司「あ?まだ切ってなかったのか。」

響「ちょっと甘やかしすぎじゃなーい?」

 

 明石はからかうような声でそう言ってくる

 

 甘やかしすぎか

 

 まぁ、確かにそうかもしれんな

 

 だが......

 

司「俺は力など吐いて捨てるほどある。あの夫婦を助ける程度、造作もないことだ。」

響『甘々だね~。』

司「無駄口を叩いていないで貴様は出来ることをしろ。俺はあいつの仕事を片付けるのと、扉の修理をしなければならんのだ。」

響『いや、なにしてんの。』

司「勢い余った。」

響『ま、まぁいいや。じゃあ、あとで来てあげなよ!』

司「あぁ。」

 

 そう言って、俺は電話を切った

 

 本当に、世話のかかる奴らだ

 

 まぁ、さっき言った通り、力など腐るほどあるのでな

 

 あいつらを助けるくらい、誰も責めはしないだろう

__________________

 

 “カグヤ”

 

 司さんが用意した車で、病院までこれた

 

 携帯を忘れてこっちの状況は分からないけど

 

 急げるだけ急いで、病院に入った

 

カグヤ「__ましろさん!」

ましろ「カグヤ、くん......」

カグヤ「大丈夫......なわけないよね!えっと、えっと__」

響「落ち着いて。」

カグヤ「いた!」

 

 僕があたふたしてると、響さんに頭を叩かれた

 

 それで少し冷静になって、周りを見た

 

 病室には、看護師さんと響さん、それに七深さんと愛純さんがいた

 

七深「出来る限りのことは私たちがしたから、落ち着いていいよ~。」

愛純「痛いときはね!おててをぎゅーってすればいいんだよ!」

カグヤ「な、なるほど。」

 

 そう言われ、僕はまず、手を洗った

 

 そして、大きく深呼吸をして

 

 ましろさんの横に立った

 

ましろ「ふふっ......今日は、あわてんぼさん、だね.......」

カグヤ「ご、ごめんね。慌てて来たから。」

ましろ「大丈夫だよ......嬉しいから......」

 

 ましろさんの音、やっぱりかなり弱ってる

 

 けど、お腹の子の音も強くなってる

 

ましろ「進行、早いみたいでね、思ったよりもすぐ、出産が始まるかも......」

カグヤ「うん。僕も一緒に行くよ。」

ましろ「奥さん思いの旦那さんで、嬉しい......でも、ここから長いだろうから、少し休んでもいいよ.......?」

カグヤ「それは、遠慮しておくよ。今、ましろさんから離れる方が嫌だから。」

ましろ「そっか......///」

 

 それから数時間、僕はましろさんの手を握っていた

 

 ましろさんから離れるのがこんなに怖いのは初めてかもしれない

 

 いや、僕が恐れてる場合じゃない

 

 今、一番不安を抱えているのはましろさんだ

 

 僕は毅然とした態度でいないと

__________________

 

 あれから、ましろさんの出産が始まった

 

 僕はましろさんが分娩室に運ばれてから、また手を洗って、分娩用の服を着た

 

 そして......

 

ましろ「う、ぐっ、うぅぅぅぅ......!!!」

カグヤ「ましろさん......」

 

 さっきから、ましろさんの音がさらに弱くなった

 

 お医者さんからは健康そのものとは言われてるけど、やはり不安になる

 

 こんなましろさんはもちろん初めて見るから

 

カグヤ「ましろさん......頑張って。」

ましろ「かぐや......くん......!」

カグヤ「僕は、ずっと一緒にいる。」

ましろ「う、ん......!」

 

 それからの時間は永遠のように感じた

 

 ただただ、ましろさんの苦しむ声を聞いて

 

 これほど、自分の耳が良いことを恨んだことはなかった

 

 ましろさんが感じる痛みを少しも引き受けられない自分が恨めしいと思った

 

 ましろさんの握る手に段々と力が入って、どれほど頑張ってるのかは分かった

 

 早く産まれて欲しい、無事であってほしい

 

 僕にはそう思う事しかできなかった

 

「頭出てきましたよ!もう少しですよ!」

カグヤ「!」

「頑張って!」

カグヤ「ましろさん!」

ましろ「うんっ......!」

「手を胸の上に置いてはーはーはーと息を吐いてください!もう産まれますよ!」

 

 ましろさんは目を瞑って、言われた通りに息をしている

 

 もうすぐだ

 

 僕は拳を固く握って、必死に祈った

 

 その瞬間__

 

「__ふぇん!ふぇぇぇん!!」

カグヤ「!!」

「生まれましたよ!元気な女の子です!」

ましろ「あ......私たちの、赤ちゃん......?」

 

 助産師さんが抱っこしている赤ちゃんを、ましろさんは眺めている

 

 その表情は、穏やかなものだった

 

 心底安心していて、嬉しそうで

 

ましろ「カグヤ君、見て......私たちの赤ちゃんだよ......」

カグヤ「うん、見てる。可愛いよ。」

ましろ「あれ、泣いてるの......?」

カグヤ「分からない......でも、前がよく見えないよ。」

ましろ「ふふっ、珍しいね......」

 

 感情がグチャグチャだ

 

 さぞ、今の僕の音は乱れてると思う

 

 喜び、安心、愛おしさ

 

 それらが混ざり合って、それが涙になって流れていくように感じた

 

カグヤ「ありがとう......そして、お疲れ様、ましろさん。」

ましろ「うん......!」

「旦那さん。ここから色々な処置がありますので、一度退室していただいてもいいですよ?」

カグヤ「そうですね。こんな顔でここにいるのも気が引けますし、一度失礼します。」

「すぐに会えますので、お待ちください。」

 

 僕はそう言われ、分娩室から出た

 

 取り合えず、顔を洗いに行こう

 

 赤ちゃんにちゃんと見せる顔がこれなんて、示しがつかない

 

 少しでも、マシな顔にしないと

__________________

 

 分娩室から出て、僕は顔を洗った

 

 取り合えず、少しは落ち着けたと思う

 

七深「カグヤ君!どうだった?」

響「ちゃんと生まれた!?」

カグヤ「七深さん、響さん。」

 

 そんな僕の前に、2人が歩いて来た

 

 こんな平日に来てくれるなんて、感謝しかない

 

 おかげで、ましろさんの不安も軽減されたと思う

 

カグヤ「今日はありがとうございます。」

響「いいっていいって!それより、おめでと!」

七深「おめでと~。よかったね~。」

カグヤ「ありがとうございます。」

司「__ふむ。その様子じゃ、無事に生まれたようだな。」

愛純「ようだな~。」

カグヤ「!」

 

 2人と話していると、どこか威厳のある声が聞こえて来た

 

 顔を上げて確認するまでもない

 

 司さんの声だ

 

カグヤ「司さん。」

司「夫人の無事な出産、嬉しく思う。」

カグヤ「司さんには本当にお世話になりました。そう言えば、仕事は大丈夫だったんですか?」

司「もうすべて終わらせてきた。ついでに、向こう半年分は片付けてやった。」

カグヤ「へ?」

司「育児休暇が必要だろう。あ、扉は修理したから心配するな。」

カグヤ「いえ、その心配は特に......」

 

 やっぱり、この人はすごい

 

 まだ十時間くらいしか経ってないのに、そんな量の仕事をこなすなんて

 

 やはり、次元が違う

 

司「赤子と言うのは、産まれた後の方が大変なことが多い。気を引き締め、育児にあたることだ。」

愛純「あすみも赤ちゃんと会いたーい!」

カグヤ「会えますよ、すぐに。」

響「うわー!楽しみー!」

 

 皆、こんなに楽しみにしてくれていたのか

 

 最近、他の皆さんからも連絡が来ていたし

 

 報告の連絡を入れておかないと

 

司「して、十条。」

カグヤ「はい?どうかしましたか。」

司「......いや、後でいいだろう。それよりもまず、食事をとると良い。そして、貴様の忘れ物だ。」

カグヤ「あ、携帯。」

 

 司さんに渡されて、やっと存在を思い出した

 

 そう言えば、忘れてたっけ......

 

 よく覚えてないな......

 

司「食事は特別に用意させた。さっさと食って、夫人を迎える準備をしておけ。」

愛純「パパ―、愛純もお腹すいたー。」

司「ふむ。もうおやつの時間だな。何か食べに行くか。」

愛純「わーい!」

七深「私も行こ~。」

響「奢ってよ司~。」

司「いいだろう。では、俺たちは明後日、改めて伺うとする。夫人の体調がすぐれない場合は連絡してくれ。」

 

 その言葉の後、4人は歩いて行った

 

 さて、僕も用意してもらった食事をいただこう

__________________

 

 あれから2日が経った

 

 ましろさんは完全ではないけど、調子は良くなってる

 

 あの日、愛純さんには悪いことをしてしまった

 

 すぐに会えるって言ってしまったし......

 

愛純「わー!かわいいー!」

七深「美人になりそうだね~。」

ましろ「ふふっ、ありがとう。」

 

 そんな心配をよそに、愛純さんは赤ちゃんを楽しそうに眺めてる

 

 司さん曰く、ましろさんの調子がすぐれないことは理解してたらしく

 

 2日後に会いに行くことに賛成してたらしい

 

 流石は司さんの娘さんだ

 

 天才だ

 

司「ふむ。して、2人はこの子にどのような名前をつけるつもりだ?」

カグヤ「あぁ、この前のあれはそれのことですか。」

ましろ「一応、2人で考えてはいるんです。」

司「ふむ。で、その名前は?」

 

 色々候補はあったけど、昨日に赤ちゃんの顔を見て、なんとなく決めた

 

 そう、この子の名前は......

 

ましろ「星に空で、星空(せいら)。」

カグヤ「それが、この子の名前です。」

七深「良い名前だね~。」

愛純「可愛いね~!」

 

 七深さんの愛純さんは好感触らしい

 

 自分たちで考えたけど、良い名前だと思う

 

 響きが綺麗で

 

司「ふむ。非常に良い名だ。では、星空......っと。」

カグヤ、ましろ、七深「ん?」

司「よし、出産祝いだ。受け取ると良い。」

カグヤ「え?」

 

 司さんは綺麗な封筒に僕たちの名前を書いて

 

 それを渡してきた

 

 えっと、これは......

 

司「中に10億の小切手が入ってある。好きに使うと__」

七深「おバカ!」

司「!__なに、俺に攻撃を当てただと?」

ましろ(そこ?)

七深「一度にそんな大金貰っても困るでしょ!」

 

 流石は七深さん

 

 僕たちが言えないことを言ってくれた

 

 と言うより、10億って......

 

 僕の年収より遥かに多い......

 

七深「全くもう。そう言うのはもう少し小分けにしなさい。」

司「ふむ。」

ましろ(ていうか、10億あげることには反対しないんだ......)

カグヤ(七深さんも感覚がマヒしてる......)

 

 司さんは規格外だ

 

 これを素でやってるんだから

 

 この人にとっては1万円あげてるくらいの感覚なんだろうなぁ......

 

司「色々と金がかかると思ったのだが。」

ましろ「も、もう、ベビー用品なども貰ってるので。」

司「ふむ。では、祝の度に渡すとしよう。」

 

 よ、よかった......

 

 流石に10億なんてもらったら大変だ......

 

司「それにしても、なんだ。」

カグヤ「?」

司「俺も愛純が生れた時のことを思い出した。」

愛純「?」

 

 司さんは愛純さんの頭を撫でた

 

 すごく優しい表情をしてる

 

司「嬉しいものだよな。我が子が生まれるというのは。」

カグヤ「はい。」

司「夫人も、幸せそうでなによりだ。」

ましろ「は、はい。(本当に、優しくなったなぁ......)」

 

 司さんは僕たち3人を優しい目で眺めてる

 

 そして、ぽつりと

 

司「俺もまた、その喜びを味わいたいものだ。」

七深「!?///」

愛純「愛純に弟か妹が出来るのー?」

司「さぁ、どうだろうな。運命のめぐり合わせ次第だ。」

 

 司さんは愛純さんに言い聞かせるように言った

 

 あの、小学校1年生に求めることじゃないのでは......

 

愛純「えー!愛純はほしー!」

司「なら、自分で運命を変えることだ。」

愛純「どうすればいいの?」

司「よく学び、よく食べ、よく寝ることだ。」

愛純「はーい!」

 

 司さんはふっと笑うと、また僕たちの方を見た

 

司「では、俺たちはそろそろ失礼しよう。他の者も来るだろうしな。」

カグヤ「はい。」

司「じゃあな。また、そちらに出向くこともあるだろう。」

七深「じゃあね~!」

愛純「またね~!」

 

 そう言って、司さん達は病室を出て行った

 

 何というか、今度は僕たちがお祝いする側になりそうだ

 

 なんとなくだけど......

 

ましろ「柊木さん、変わったよね。」

カグヤ「そうだね。愛純さんが生れてからは特に。」

ましろ「カグヤ君がどう変わるか、楽しみ。」

カグヤ「うーん、ご期待に添えるか不安だよ。」

ましろ「ふふふっ。」

 

 少し悪戯っぽく笑うましろさんを見て、僕も小さく笑った

 

 これからは、父親でもある

 

 ましろさんと星空の為にも、もっと成長しないといけない

 

 司さんのようにはいかないけど、そこは僕なりのやり方で

 

 2人を世界で一番、幸せにしよう

 

 

 

 

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