禁忌少年の月ノ森ライフ   作:火の車

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救出

響「__見つけた。」

 

 明石がそう言うと、俺はモニターに目を向けた

 

 そこにはいくつもの、監視カメラの映像が映されている

 

響「多分、あたし達が仕事をした場所に行って、そこで捕まったっぽい。」

司「という事は、誘導だな。」

響「その可能性が高いね。」

 

 映像は進んでいき、天空時三久は黒塗りの車に放り込まれ

 

 車が走って行った

 

響「ここから、少し走って、着いたのはここ。」

司「......ほう。」

 

 車は見覚えのあるビルの駐車場に入った

 

 もう、真犯人は分かった

 

司「柳真廣か。」

響「仕事場所はあたし達と依頼人しか知らない。」

司「英語で書いたのは海外の俺を良く思わない人物に見せかけるためか。バカ丸出しだな。」

 

 俺は心底呆れた

 

 つまり、前の依頼で殺した奴らは柳真廣がまいた罠か

 

 俺の弱みを握るための罠

 

響「あっ、あのビルの中の監視カメラもジャックで来た。」

司「天空時三久の位置は?」

響「社長室の隣の部屋だね。社長室経由で入るのが正規ルートかな。」

司「なるほど。」

 

 見たところ、天空時三久が閉じ込められてる部屋は窓などはない

 

 外からの侵入は面倒だな

 

司「よし、作戦が決まった。」

響「どうするの?」

司「今回の作戦は天空時三久の救出、柳真廣の殺害だ。」

響「おぉ、そこまで行くんだ。」

司「パターンはB。明石はいつも通りの立ち回りで頼む。」

響「りょーかい!」

 

 柳真廣は天空時三久を誘拐してから会社から離れてない

 

 つまり、いない間を狙うのは無理

 

 だったら、パターンBで

 

 狙う時間は......

 

司「狙うのは夜。定時から1時間を過ぎたころだ。」

 

 俺はそう言って、今夜の準備を始めた

__________________

 

 夜、もう5月下旬なだけあって若干蒸し暑い

 

 俺は隣のビルから様子を見ていた

 

司「__そろそろ時間だ。」

 

 俺はそう言って、立ち上がった

 

響「さぁ、今回はどんな綺麗な花火を見れるかなー!」

司「いや、花火じゃねぇよ。」

 

 こいつはいつまでたっても態度が真面目じゃない

 

 まぁ、こんなのおふざけ半分じゃないとやってられないが

 

司「明石はいつも通り、仕掛けながら中にいる人間を追い出せ。後は俺に任せろ。」

響「制限時間は?」

司「避難時間を考えて、10分。だ。」

響「何を考えたの?まぁ、出来るけど。」

司「作戦開始。手早く終わらせるぞ。」

 

 俺はそう言って、ビルから飛び降りた

 

響「なんで、こんなところから飛び降りられるんだろ?ここ、9階なんだけど?」

__________________

 

 ”響”

 

 あたしの仕事は仕掛けと避難誘導

 

 でも、もう定時を過ぎてるだけあってほとんど人はいない

 

 あたしは携帯の画面を確認した

 

響「__普通の社員は全員、帰ったかな。」

 

 後、残ってるのは社長の協力者と思われる社員だけ

 

響「さて、あとは司の言ってた位置に仕掛けて逃げますかねー。」

 

 あたしはそう呟きながら、仕掛けを終わらせて

 

 ビルの外に逃げた

__________________

 

 俺の侵入ルートは前と同じエレベーター

 

 なんかじゃない

 

司「__これが一番早いな。」

 

 ワイヤーを引っかけて壁を蹴って登ってる

 

 どうやって、建物に入るかというと......

 

司「ダイナミックに......」

 

 俺は体をひねって、助走をつけた

 

 そして、勢いよく窓に向かって行った

 

司「邪魔するぜ!」

 

 俺は窓ガラスを蹴り破って建物に侵入した

 

司「__よう、久し振りだな。柳真廣。」

真廣「っ!な、なに!?」

 

 流石に予想してなかったみたいだ

 

 柳真廣はかなり面食らったみたいだ

 

司「さて、俺が来た理由は分かるな?」

真廣「......もう、ばれていたか。」

司「中々、悪くない策だったぜ。ただ、相手が悪かった。」

 

 俺は奴の横を通り過ぎて広いスペースに身を置いた

 

司「ちなみに、そこで隠れてるお前の協力者にはここで退場願おうか。」

真廣「!?」

 

 俺は壁に向かって5発発砲した

 

 壁の向こうからは、男5人の声が聞こえた

 

司「さて、もう仕事は9割終った。」

真廣「......クソ。化け物が。」

司「ははは、随分な言いようだな。まぁ、負けが確定すれば遠吠えもしたくなるよな。」

 

 俺はそう言いながら、銃口を向けた

 

司「ただの人間が、俺に太刀打ちできるわけないんだよ。だって、そもそもの次元が違うんだから。」

 

 俺はそう言って、奴の眉間を打ち抜いた

 

真廣「がっ__」

 

 奴は崩れ落ちるように倒れた

 

司「さてと。」

 

 俺は天空時三久が閉じ込められてる部屋の扉を蹴り破った

__________________

 

 中に入ると、椅子に括りつけられた天空時三久がいた

 

司「なんだ、起きてたのか。」

三久「柊木、司......?」

司「見た目の割に可愛げのないやつだ。」

 

 俺はそう言いながら天空時三久に歩み寄った

 

司「天空時三久。月ノ森学園2年生。ありとあらゆる分野を高いレベルでこなす才女。富裕層の間ではトラブルを解決するなどでも有名らしいな。」

三久「知ってるんだね。」

司「あぁ。ストーカーの情報を知りたいのは当然だからな。」

 

 俺はそう言いながら、縄をほどいてやった

 

司「このくらい、自分で解けたな。」

三久「力がなさ過ぎて無理だったの。」

司「あぁ、そういう事か。」

 

 俺は時計を確認した

 

 あと、2分

 

司「さて、脱出するか。」

三久「え?__きゃ!」

 

 俺は天空時三久を担ぎ上げた

 

 そして、割った窓の方に歩いた

 

司「さぁ、飛ぶぞ。舌噛んで死ぬなよ。」

三久「と、飛ぶって......きゃぁぁぁあ!」

 

 俺はあるものを頬り投げてから

 

 窓から飛び降りた

__________________

 

司「__ここだな。」

 

 俺は地面ぎりぎりでワイヤーを引っかけて着地した

 

 この道具、汎用性が高すぎるな

 

 ワイヤーを射出して、好きな場所に引っ掛けられて人2人を吊るせる

 

司「さて、走れ。」

三久「え?ちょっと__」

 

 俺は天空時三久を引っ張って明石のいる方へ走った

 

響『__司ー、今どこー?』

司「天空時三久を回収した。今、お前の方に向かってる。」

響『あ!見えた見えた!』

 

 少し目線を挙げると、明石が手を振っていた

 

響「うん!時間通り!」

司「当然だ。それで、仕掛けは終わってるな?」

響「うん!もう、上がる時間だよ!」

三久「仕掛けや上がるって、何の事__」

 

 天空時三久が喋ろうとすると

 

 ビルの方から爆発音が鳴った

 

三久「なっ!?」

司「任務完了。天空時三久の救出および、犯罪者の殺害。」

 

 俺はそう言った

 

三久「な、なんで!こんな事!」

 

 天空時三久は目に見て怒ってる

 

 まぁ、気にしないが

 

三久「なにも、殺すことなかった!警察に引き渡せば!」

響「これ、見て。」

三久「え?」

 

 あれは、あらかじめ調べておいた柳真廣の罪状だ

 

 殺す根拠だ

 

司「薬物の取引、人身売買、これが奴が裏でしてたことだ。」

三久「っ!」

司「奴は法で裁けない。だから、俺が裁いた。」

響「あの人は殺されても仕方なかった。正義なんて、通用しないから。」

 

 俺は天空時三久の目を見据えた

 

 良い目だ

 

 正義感の強い、真っ直ぐな

 

 だが......

 

司「この数日間、お前が体験したのは正義なんて全く通用しない世界だ。」

三久「正義が、通用しない......?」

司「あぁ、そうだ。」

三久「......」

司「お前は関わるべきじゃない。この世界で勝つのは......」

 

 天空時三久を見下ろすように前に立った

 

司「悪に罰を与える、悪だ。」

三久「......っ。」

司「明石、天空時家に向かう。連絡しろ。」

響「りょーかい。」

 

 明石は携帯で電話をかけた

 

 それからすぐに車が来た

 

司「明石。」

響「うん?」

司「天空時三久のケアを頼む。」

響「分かったよ。」

 

 俺はそう言って先に車に向かった

 

 ”三久、響”

 

響「__調子はどう?三久ちゃん!」

三久「......良くはないです。」

 

 三久はすっかり、落ち込んでいた

 

 自分が信じた正義が通用しない世界があったことのショックが大きいのだ

 

響「ねぇ、三久ちゃん。」

三久「はい......?」

響「司の事だけどさ。」

 

 響は静かに話し始めた

 

 声は優しい

 

響「司は確かに悪だけど、正義でもあるんだよ。」

三久「え?」

響「さっきの人身売買にかけられた人たち、全員、司が助けてるんだよ。」

 

 響はそう言った

 

 三久は目を見開いた

 

響「全員、司が買い取って。この後の人生を全うに生きられるように子供は学校に入れて、大人は自分のもとで働かせながら自分のしたい仕事を探してもらってね。」

三久「彼が、そんな事を?」

響「うん。」

 

 響は軽くうなずいた

 

 そして、神妙な表情になった

 

響「......ずっと、人を導く事しか出来ないんだよ。だって、誰よりも優れちゃってるから。」

三久「それは、どういう事ですか?」

響「さぁね!」

 

 響き一転して、明るい表情でそう言った

 

 三久はかなり驚いた表情だ

 

響「行こ!司を待たせちゃう!」

三久「ちょ、ちょっと、待ってください!」

 

 二人は司の待つ車まで、歩いて行った

__________________

 

司(来たか。)

 

 しばらくすると、2人が車に乗ってきた

 

 そして、車が出発した

 

三久「柊木司、君......」

司「なんだ。」

三久「今日は、ありがとうございました。」

 

 そう言うと、天空時三久は深く頭を下げた

 

司「礼などいらん。依頼だ。」

 

 俺はそう言って、ペットボトルの水を飲んだ

 

 渇いた体に、水はよく染みる

 

司「さて、ここからが依頼の話だ。」

三久「依頼の話?」

司「あぁ、主に依頼金だ。」

 

 そう切り出すと天空時三久の顔が引き締まった

 

 企業のお嬢様の顔ってやつだ

 

司「今回の任務にはかなりコストがかかった。」

三久「はい。親は多分、いくらでも出すと言うと思います。」

司「だが、それはお前の救出でじゃない。」

響「!」

司「柳真廣の殺害は俺の勝手だ。コストは99%こっちだ。」

 

 俺はそう言って、軽く手を振った

 

司「よって今回、依頼金を取るのは正当じゃない。だから依頼金はいらない。」

響「まー、そうだねー。」

 

 俺は背もたれにもたれかかった

 

司「ただ、1%分頼みを聞け。」

三久「頼み?」

司「俺のストーキングをするな、それだけだ。」

 

 俺はそれだけ言って目をつぶった

 

三久「もう、しません。」

司「そうか。......俺は少し寝る。」

響「うん。お休み。」

三久「おやすみなさい。」

 

 こうして、きわめて面倒な一日が終わった

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