禁忌少年の月ノ森ライフ   作:火の車

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初ライブ

響「__ねー、司ー。」

 

 今日は日曜日だ

 

 明石は昨日から俺の家に泊まりで仕事をしてた

 

 そして、ほんの30分前、持ち込んだ仕事が終わったのだ

 

司「なんだ?」

響「暇だよー。」

司「そうか。」

 

 確かに最近は天変地異の前触れかと疑うくらいには落ち着いてる

 

 休みが作れる程度には時間が出来てしまうのだ

 

響「そうか、じゃないよー!」

司「お前は俺に暇つぶしなんて高度なことができると思ってるのか?」

響「いや、暇つぶしを高度なんて言うのは司くらいだよ。」

 

 俺はそんな事を言いながら携帯のカレンダーを確認した

 

 基本的に予定しか書きこまれてない

 

 そういえば......

 

司「あっ。」

響「どうしたの?」

司「明石、出かけるぞ。」

響「え?どこ?」

司「ライブだ。」

 

 俺がそう言うと、明石は目を丸くした

 

響「ライブ!?司が!?」

司「失礼だな。」

響「え、いや、司だよ?」

 

 本当に失礼極まりない

 

 俺を何だと思ってるんだ

 

司「俺は呼ばれてるから行くが、明石は連れて行かなくてもいいな。」

響「行きたい!!」

司「......うるさい。」

響「ほら!早く行こ!早く!」

司「あー、分かった分かった。」

 

 俺はそう言うと、自室に戻り、外用の服に着替えた

 

 そして、明石とともに家を出た

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 会場については調べておいた

 

 場所も覚えてる

 

響「__いやぁ!楽しみだなー!」

司「そうか。」

 

 家を出てからずっと、明石はハイテンションだ

 

 いつも、テンションが低い方ではないが、今日は異常だな

 

司「ここだな。」

 

 暫く歩くと、会場に着いた

 

 結構な人数がいる

 

 最近はバンドが流行ってるらしいし、当然と言えば当然か

 

響「うわぁ!結構人いるねー!」

司「そうだな。」

響「早く入ろ!司!」

司「そうだな。」

 

 俺たちは受付でチケットを確認して会場内に入った

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 フロアに入ると、すごい熱気を感じた

 

 ちらほら月ノ森の生徒もいる

 

 桐ケ谷透子辺りが呼んだんだろうな

 

響「いくつかバンド出るみたいだけど、司はどのバンドを見に来たの?」

司「一番手。月ノ森で結成されたバンドだ。」

響「へぇ!じゃあ、やっぱりすごいの?」

司「......さぁな。」

響「?」

 

 しばらく、ステージの方を見てると

 

 4人が出て来た

 

透子『どーも!あたし達、ツキノモリ(仮)です!』

 

 Mcは予想通り、桐ケ谷透子だ

 

 この民衆の前でここまで話せるのはあいつくらいだろう

 

つくし『えー、コホン。まずは私達のオリジナルの曲から聞いてください。』

 

 二葉つくしがそう言うと、演奏が始まった

 

 聞いたことのある曲だ

 

 俺が聞いた時よりも上手くなってる

 

司「......」

 

 フロア内も盛り上がってると言えば盛り上がってる

 

 だがな......

 

 そんな事を考えてるうちに、4人は下がって行った

 

響「いいじゃん!初めてのライブにしては上出来だし、他もこんな感じだよ!」

司「......」

 

 明石がそう言ってる間に次のバンドが出て来た

 

 そして、演奏を始めた

 

『わぁぁぁぁあ!!!』

響「!?」

 

 会場はさっきの何倍もの盛り上がりを見せた

 

 天と地、それくらい違う

 

響「ど、どういう事?」

司「さぁな。」

 

 俺はそう言って出口の方に歩いた

 

響「ちょ、司!見て行かないの?」

司「俺はあくまで、広町の客だ。」

 

 俺はそれだけ言って、フロアの外に歩いて行った

__________________

 

透子「__あ、柊木さん!」

 

 フロアの外に出ると、4人が歩いてきた

 

 フロアの盛り上がりを感じて見に来たんだろう

 

司「よう。」

透子「き、来てたんっすね!ありがとうございます!」

司「広町に呼ばれてな。」

 

 桐ケ谷透子の態度はいつもと違う

 

 目に見えて困惑してる

 

七深「私達のライブ、どうだった?」

司「良かったんじゃないか。前に聞いた時よりも上手くなってた。」

つくし「そ、そう。」

ましろ「あ、ありがとう......」

司「お前たちのこれからに期待しておく。月ノ森音楽祭だったか、楽しみにしてるぜ。」

 

 俺はそれだけ言って、出口の方に歩いた

 

響「司!あ、ライブ良かったよ!頑張ってね!」

透子「は、はい。」

 

 俺たちは会場を出た

__________________

 

響「__司!」

司「なんだ。」

 

 歩いてると、明石がやっと追いついてきた

 

 何か言いたげな表情だ

 

響「あれって、あの盛りあがりの差ってなんなの?」

司「簡単な事だ。お前も答えを言ってる。」

響「え?......あっ。」

 

 明石は気づいたみたいだ

 

 あの会場の盛り上がりの差は演奏技術もある

 

 だが、それ以上に

 

司「あいつらはブランドに負けてるんだよ。」

響「そ、そっか。皆、月ノ森の生徒ってだけで過剰な期待をするから......」

司「俺の予想はあいつらは絶対に頭打ちする。」

 

 初めて見た時からずっと思ってた

 

 あいつらには崩れる部分が多すぎるからな

 

司「月ノ森のブランドで期待するのは客だけじゃない。あいつら自身もだ。」

響「どういう事?」

司「自信過剰なんだよ。だから、失敗すれば絶対にもう一度、もう一度すれば絶対に成功する、そう思う。」

響「それが、破滅への道、って事?」

司「違う。それは、全員が生粋の月ノ森生ならの話だ。だが、一人、いるんだよ。そうじゃない奴が。」

 

 俺が思う、破滅への道

 

 きっかけは恐らく

 

司「ボーカル、倉田ましろ。あいつはこのまま行くと、必ず潰される。」

響「!」

司「今はそう言う世の中だ。」

 

 俺はそう言ってまた、歩き始めた

 

響「そこまで分かってるなら、なんで、教えてあげないの?」

司「意味がないからだ。」

響「意味がない?」

司「俺が仮にこのことを教えたとしたら、あのバンドは薄くなって駄目になる。」

響「薄くなる......そういう事。」

 

 明石は理解したみたいだ

 

 俺がこのことを教えたとしても、それは表面上の解決にしかならない

 

 つまり、根っこは何も解決されない事だ

 

 そんなものに意味はない

 

司「あいつらのターニングポイントに必要な人物はいる。後はそいつの立ち回りしだいだ。」

響「じゃあ、司は何もしないの?」

司「さぁな、必要なら多少首を突っ込むかもな。」

響「珍しいね。司がそこまで贔屓にするなんて。」

司「面白そうだからな。」

 

 そんな会話をしながら、俺たちは家に帰って行った

 

 これから、どうなるんだろうな


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