ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
獣は生まれながらにして武器を持つ。爪と牙だ。
対する人間は生まれたあと、武器を手にする。
その中でも槍は人類の長い歴史の中で特に使用されていた事だろう。理由? リーチだ。
敵の攻撃圏外から一方的に攻撃できる利点は大きい。人はこれで地上の王となった。
しかし、相手はモンスター。地上の王者たる人類を古代絶滅に追いやった天敵。
「シィッ!」
「グロァアアア!!」
槍は的確に心臓を狙えないなら振るうべきだ。点によるダメージは少ないし、深く刺さったら抜けない。しかし己と敵の血を武器へと変えるヴァハにはその理屈は通じない。
突き刺し、枝分かれさせ引き抜き肉を抉る。革と、肉を少し。深くに差し込めない。ミノタウロス程ではないが、硬い。
「んー…………」
とはいえこちらの武器は、その形は自由自在。先端が円錐状になり、螺旋を描くように溝を刻む。
槍の形成に集中し立ち止まっていたヴァハに振り下ろされる爪を避ける。屋台が切り裂かれ石の地面がひび割れる。
「クハハ!」
当たれば重症、下手すれば死ぬその一撃にしかしヴァハは楽しそうに笑い穂先を回転させる。祖父の言葉を借りるなら、男の浪漫らしい本来の目的は掘削の道具、ドリルだ。
片足を振り上げ背を反らし、直ぐに地面を踏みしめ腰を曲げ振り絞った腕を振り抜く。全身の力を完全に伝えた投擲。
高速で飛来する槍は空を引き裂く音を奏で、避けようとしたライガーファングの右肩に深々と刺さる。
「グゥウ!?」
が、それだけ。やがて槍の穂がカランと落ちる。ライガーファングの中に入った部分は殆ど消えている。
(やっぱなあ………イキモンの体内は魔力が邪魔して操り難い)
直接血に触れていたり体表近くなら兎も角、体内深くはモンスター自身が持つ魔力のせいで操作が利かない。
内側から壊せれば楽なのだが、レベルが上がればレベル下の奴に行えるようになるだろうか? レベル上げしたくなってきた。
「グルアアア!!」
仕留められなかったのは愚策だ。突貫してくるライガーファング。手元に武器はない。直ぐに近くの血から生み出す血の短剣はライガーファングの巨体からして致命傷には至らない。
爪を防ぐ。ピキリと短剣に罅が入り、ライガーファングの長い牙がヴァハの肩を貫いた。
「ヴァハ!」
「──っ! 【癒しの──」
エルフィが思わず叫び、アミッドが治癒の詠唱を唱えようとする。だが、それより早くヴァハがライガーファングの首元に噛み付く。
全ての歯が鋭く尖り、口が大きく裂け、開いた口で牙を突き立てた。剛毛を掻き分け獣皮を貫き血管に到達する。ズルリと血が啜られていく。ミシミシと力が強まっていき、ブチリと肉が食い千切られた。
「グルオオオ!?」
激痛から慌ててヴァハを振り払うライガーファング。ヴァハは肉片を吐き捨て口に残った血を飲み込む。直ぐに傷が癒えていく。
治癒師泣かせな回復力だ。何方が怪物か解ったもんではない。口元の血を拭い笑みを浮かべる。ヴァハの姿は完全に捕食者のそれ。人類が、モンスターを喰っている。本人が聞けば何を今更と笑う事だろう。散々ダンジョンから魔石やドロップアイテムを搾取しているのだから。
「ハハハハ!」
格上の血を浴びたことでステータスにブーストが掛かったヴァハは血の爪を造る。【レッドカーペット】は最初の詠唱から今まで発動状態。加速度的に魔力を消費しているが、まだ戦える。
ライガーファングの頬を切り裂き、痛みに顔を逸らした横っ面に膝を叩き込む。傷口から溢れるライガーファングの血には血の爪から溶け出たヴァハの血が混じり、ヴァハの支配下になる。
「ハッハァ!」
「グルア!」
その血を操り大剣を造る。圧縮し、硬化し、振るう。
ライガーファングの身体に赤い線が走る。ライガーファングも負けじと爪を振るう。ヴァハの身体に3本の線が走る。ふらつくヴァハに、ライガーファングが最大の武器たる牙を突き立てるために大口を開ける。
「ハッ───!」
ヴァハはしかし、絶命の武器を前に笑う。血の大剣がうねり、槍を造り、体を起こし前に倒すように重心を移動させる。
先程の投擲と同じような動き。しかし投擲せず握ったまま、首の近く。肩甲骨の隙間を縫って、体内に侵入した槍の穂先は突き進む。
「ゴ、ルアアアッ!!」
「──!?」
ライガーファングはしかし己の死期を悟ったのか最期の力を振り絞り美しい女神のお願いを邪魔した男の命を奪わんと食い付いた。
再び牙がヴァハの身体を貫く。喰いちぎろうと顎の筋肉に力を込め………
パキン、と無慈悲な音が響きライガーファングの体が灰へと還る。
「………………あー」
崩れ落ちた灰から何かを探すように歪に枝分かれした槍が姿を表し灰の上に割れた魔石が落ちる。
槍がドロリと溶けると傷口から血が吹き出す。
「死ぬ、これは死ぬ……血が足りねぇ。だりぃ」
【レッドカーペット】で体内の血液を操り傷ついても失血しないように調整していたが魔力より先に集中力が尽きた。
「何をしているのですか貴方は……」
と、地面を赤く染めていくヴァハに責めるような声がかけられる。顔を上げるとアミッドが人形のように端正な顔立ちながら怒りを感じさせる表情をしていた。
「治るからと、そのような戦い方を。早死しますよ?」
「あー、かもなぁ…………ハハ。楽しかったわ」
「楽しい? 死ぬかもしれなかったのに? ふざけないでください、私はそのように、命を蔑ろにする者が大嫌いです」
「馬鹿言うな。命は大事さ。ガキでも解る道理だ」
「なら、何故………」
「だって俺には、それしか
口から血を吐きながらも、それでも楽しそうに笑う。
「お前も解るだろお? 聖女なんて大層な二つ名貰ってんだ。沢山救ってきたんだろうなあ……お前を
だからこそ、この楽しいゲームを続けるために命を大事にしている。むしろそこらの奴より余程己の命を大切にしているぜ?
そう笑うヴァハに、アミッドは柳眉をひそめる。
「…………やはり、私には理解できません」
「知ってんよ。それより、そろそろマジで意識が遠のいてきた」
「あ、すいません! 【癒しの雫、光の───」
「───」
ピクリとヴァハは体を震わす。
駆け寄ってくるエルフィは気付かない。
腰を落とすアミッドも気付かない。
地面に伏せていたヴァハだけが、気づいた。
「アミッド! 跳べ!」
「え……?」
突然の言葉に動揺するアミッド。ヴァハは身体を起こし、足に力を込める。急激な運動に血が一気に吹き出すも気にせずアミッドの身体を押す。
次の瞬間、地面を突き破り何かが現れる。
蛇の様な長い体躯。しかし頭部が
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ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員