ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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100話記念 あるいはこんな可能性

「私は君を傷付けたりしないよ? さぁ、こっちへ」

「何やってんだ馬鹿かてめぇ」

 

 闇派閥(イヴィルス)の衣装に身を包んだ少女を保護しようとしたアーディの横を通り抜け、幼い少年が少女を他の闇派閥(イヴィルス)の下へと蹴りつける。

 

「ヴァハ君!? 何を───っ!?」

 

 アーディが叫ぶが、その叫び声は爆音に掻き消される。

 

「チッ。惜しかったな………つーか、ひでえ正義の味方も居たもんだ。あんな小さな子供を保護せず蹴り飛ばすなんて」

「自爆兵なんざ知るかよ」

「……じ、自爆兵?」

「ヒャハハハハハハハハハ!!! その通り! まあ、なんの役にも立たねえまま死んだがなあ!」

「っ! なんて、なんてことを!」

 

 珍しく怒りに顔を歪めるアーディに対して、高笑いするヴァレッタは笑みを崩さない。

 

「怒るのは後にしろよ。要するに、制圧から殲滅に変えりゃ済む話だろ」

「ヒャッハハハハハ! やっぱりてめぇはこっち側だあ! なあ、正義の味方の友達なんてやめてうちに来いよ」

「……………」

 

 その言葉にヴァハは子供だった肉の塊の破片を見る。

 

「やだねバァカ。てめぇみてえな奴の方が痛めつけたらいい声で泣いて良い顔をするって相場が決まっている」

 

 

 

 

 

「…………この、鐘の音は」

 

 都市の各所に火の手が上がる中、ヴァハは不意に顔を上げる。

 

「………お前、か? お前だな! お前が……来ているのか、アルフィアァァァ!」

 

 歓喜の咆哮を上げ、周囲の状況など全て無視して駆け出すヴァハ。都市の惨状など、仮にも同盟を組んでいたファミリア達の行動も、最早眼中に無い。

 

「私の音に惹かれて、やはり来たか、小僧」

「……………ああ?」

 

 だというのに、その女の反応にヴァハは不快感に顔を歪ませる。たかだか十二の小僧が最強の女を前に恐怖でもなく怒りを覚える。

 

「あいも変わらず、恐怖を知らぬ愚者か。早々にいね、貴様の様な輩に用はない」

 

 ヴァハは、目の前の美女だけを見ている。倒れているエルフにもドワーフにも目をくれず、その女だけを見ている。なのにその女の目は……

 

「ふざけてんのか、何だその目は。俺が憎いんだろ? あの女の腹を使って生まれた俺を、お前は憎んでたはずだ! なのに、何処を見てやがる!? 俺を見ろ、アルフィアぁ!」

「………これから行わねばならぬ間引きにおいて、お前は些事だ。英雄にもなれないお前に、今更意識を割いてやる価値はない」

 

 

 

 

 

 アルフィアから受けた傷を回復してもらったヴァハはアルフィアを探して都市を回る。途中出くわすのは雑兵ばかり。

 死兵などに興味は無く、彼にしては珍しく早々にケリをつけその場から去る。その道中、石を投げられている正義の眷属達を見つけた。

 

「………また馬鹿な連中が現れたもんだなあ」

「ああ!? ナンダてめえ、このガキ! 何か文句でもあるのかよ!」

 

 そう叫んできた男に、ヴァハは丁度持ってた闇派閥(イヴィルス)の死体を幾つか投げつける。

 

「ひ、ひぃ!?」

「文句あるなら()()使っててめぇでてめぇの大事なもん守れ。力がねぇのを言い訳に何もしねえくせに力がある奴に文句を言うなら………力やるからてめぇでやれ。命を失っても守ろうとし続けた奴がいるんだ。そいつ等を責めるんだ、簡単だろう?」

「ふ、ふざけないで! 貴方達のせいで、あの子は! まだあんなに小さかったのに、あの子はぁ!」

「………元気だなぁ、あんた。子供が死んだのは爆発か? 剣か? 近くにいた筈なのに、ピンピンしてやがる。助かりたくて逃げ出したくせに吠えるなよ」

 

 責める口調ではない。たまたま目に入った光景が、たまたま耳に入った雑音が五月蝿かったから黙れと言うだけの、煩わしそうなヴァハの態度に住民達は怒りを増していく。

 

「文句があるならうちに来いよ。主神に頼んで恩恵を刻んでやる。力がねぇから守ってもらいたい。でも守ってくれる奴は駄目駄目だつーなら、お前等で力を手にして戦えよ、キャンキャン吠えやがって鬱陶しい………あいつは静かなとこが好きなんだよ。出て来なかったらどうすんだ」

 

 傷ついた住民などまるで眼中にないと言うその態度に、住民達の怒りはヴァハに向く。ヴァハからすれば闇派閥(イヴィルス)相手に復讐しに行く勇気もないくせに反撃されない相手にキャンキャン吠える民衆など価値はなく、むしろ彼女を遠ざける可能性があるなら邪魔でしかない。ゴキリと指を鳴らし……

 

「はいはいそこまで。言い過ぎだよ、ヴァハ君」

 

 後ろからアーディに抱き寄せられ口を塞がれ黙り込む。この女もこの女でアストレアと同じく母に似た雰囲気を持っており、苦手としている。ヴァハは仕方なくその場から立ち去った。

 

 

 

 時間と場所が変わればまたもっと早く助けろと叫ぶ住人の非難が聞こえる。ヴァハはしかし無視して次の爆音が聞こえ場所に向かう。都市の存亡も、どうでも良いから。

 

 

 

 

「なるほどなるほど。アルフィアの言っていた、英雄のなりそこない。ヘルメスの作った神造英雄計画の果てはお前か………正義には見えないが一応聞いておこう。『正義』とは?」

「種を存続させる為に同種を守る獣の本能を知性があるからと特別視する為の名称」

「…………つまらんガキだな」

 

 

 

「アルフィア! そこの邪神を守りに来たか!? なら戦え。俺と殺し合え!」

「喧しいやつだ。何度も言わせるな、貴様など私にとって、もはや些事だと」

「…………些事、ね。ああ、その目にゃ俺なんざ殆んど映ってねぇみてぇだな。だがんな事知るか。煩わしいなら殺せ。しつこいと呆れたなら殺せ。お前はそれだけの強さがあるだろうが!」

「……そうだとも。殺し合いにすら、ならん」

 

 

 

 

「今の英雄の在り方は、偽りだらけだ。かつて恩恵無くモンスターを打ち倒した英雄に比べ、神に縋る英雄のなんと惰弱な事か………だというのに、その歪みを歪みに歪め生まれた憐れな子供がそれだ」

 

 燃え盛る18階層、集まった正義の眷属と道化の眷属2名に、ヴァハ・クラネル。

 それらを前になお余裕を崩さぬアルフィアはヴァハを見て、今この時代の間違いの象徴こそがヴァハであると告げる。

 

「血を選び、才を選び、誰かの記憶を書き写されるつもりが誰か達の記憶を押し付けられ誰もが持ち得なかった感情でしか己を自覚できぬ、哀れで愚かな……我が半身の子。そんなものを生み出した神が作ったこの時代に、どうして期待などできようか」

「また………その目か。その目をやめろ! 誰でもない誰かにされた憐れなガキを見る目で俺を見るんじゃねえよ!」

 

 これが他の誰かならヴァハ・クラネルは気にしない。だがアルフィアは別だ。彼女にだけは、そんな目を向けられたくない。

 憎悪と殺意。ヴァハ・クラネルに生きたいと思わせた、ヴァハ・クラネルを始めてくれたあの感情以外を向けられたくない。

 

 

 

 

 

 

 炎が未だ湧き出す大穴に向かって歩き出すアルフィアの足を、ヴァハが掴む。満身創痍、一番レベルが低いくせに一番最前で戦いなおも生きているのは、奇跡と言ってもいいだろう。

 

「ふざ、けんな……死体を灰にしてほしいなら、俺がする。だから、まだ死ぬな………また、俺と殺し合え! その他大勢の一人じゃなくて、俺と………!」

「何処までも、我儘な奴だ………強情なところはあの子に似なくて良いだろうに」

 

 呆れたように、優しく笑う。母を連想させるその笑みを目の前の相手が浮かべるのは、ヴァハにとってはこれ以上ない絶望と知りながら。

 

「………お前は私を忘れるよ。お前が私より強くなれば、私がこのまま、お前より弱くなれば………お前の中の私は小さくなり、消えていく」

 

 ヴァハ・クラネルとはそういう男だ、たとえアルフィアが自分に生を実感させてくれた存在だろうと、殺し合いに身を投じる生き方において、弱者は薄れていく。付き合いが長くなれば多少愛着くらいは湧くだろうが、殺し合いの標的として選んだアルフィアに限りそれはありえない。殺せるようになった瞬間から、興味は失せていく。

 

「お前はそうして、殺せなかった私を一人想い続けろ。それが、あの子を愛そうとしなかったお前に対する、私の復讐だ」




時間がないので普通にミノスと契約しただけの精霊契約者。精霊の生き血を啜った過去が無いため血液吸収(ブラッドドレイン)に目覚めていない。因みに所属ファミリアは【ゴブニュ】。主に拷問器具を自作している。
初恋拗らせて一生童貞。

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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