ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
「見つかった扉は2つ、か……うち一つは、どうにも誘い込まれたようにしか見えないけどね」
フィンの言葉にヴァハは興味なさそうにふーん、と呟く。
「だけど入るしかねえだろ? それとも、両方の入り口に水でも流し込むか? それなら内部を破壊しまくって上の町に被害が、なぁんて事にならねえとは言わねえが、可能性は低い。
「おい!」
ヴァハのふざけた様な態度にフードを被った女性が叫ぶと、ヴァハは反省した様子もなく冗談だよ、冗談と肩を竦める。
「どのみち却下だよ。内部構造がわからないんだ、その毒液がどこに流れるかもわからないし、水だけだとしても地下に居を構えるなら通気設備や排水機能は備えているだろう」
かと言って放置するわけにも行かない。ここに精霊の分身の種があった場合、時間をかければ地上で上級冒険者複数人と渡り合える怪物が数匹現れる可能性がある。
「このまま突入する」
「だとよ、良かったな」
「…………君達も、来る気かい?」
「俺は別にどうでもいいんだけど、こいつは知り合いが行方不明でな。街中探してあとはダイダロス通り。こんな怪しい場所があるなら、探してみなきゃだろ?」
フィンはロキに視線を送る。ロキは黙って頷いた。つまり、今の言葉に嘘はない。
「君達独自で動くつもりか?」
「俺は別に指揮下に入ってもいいぜえ。勇者殿は扇動……もとい先導が得意と聞くからなあ」
「…………良いの?」
と、女性がヴァハの服の裾を掴みながら耳を寄せる。仲がいいのだろうか、とフィルヴィスがその様子をじっと見つめる。
「中身は未知数。今まで見つからなかったのは相当周到に隠し続けたから。それが見つかったってのは、どう考えても準備オッケーになったとしか思えねからなあ。備えたほうが良いだろ。お前は自分なら死んでいいと思ってるかもだが、お前が死んだら俺も辛い…」
「え……」
「ミアかーちゃんにぶち殺される」
「…………あ、そ。勝手に殺されてろよ」
チッ、と忌々しげに舌打ちする女性にヴァハはカラカラ笑う。と、偵察に出ていたベートとクルスが戻ってきて。
中は、暫く進むと複雑に入り乱れた迷路の様。まるでダンジョンの様な印象を受けたとの事だ。
「救いなのは恐らくこれは
「何故そう思うんだい?」
「有利な陣地を今まで一度も見つからなかったのは本格的に使われなかったから。壊されることを嫌ったんだろ。破滅思想の馬鹿どもらしくねえ……所有者は別。ゼウスやヘラなんか入れた日には壁壊しながら進むだろうし……まあ要するに、
サラリと【ロキ・ファミリア】を馬鹿にするヴァハに剣呑な視線がいくつか向けられるものの、納得したくなくとも納得出来る理由だったのか文句は飛んでこない。
「なら簡単だ。フィン、雑魚は置いてくぞ。足手纏はいらねぇ、邪魔だ」
「ああ? 別に良いだろ。足手纏いってのは助けようと立ち止まるから足を取られる。無視して進めばそいつ等が死ぬだけで、むしろモンスター放し飼いにされてたら足止めには使えるんじゃねえ?」
「ああ? ふざけてんのか、てめぇ」
「なら志願制にしようぜ? 潜って死ぬのは自己責任にすりゃ、お前が気にすることはなぁんもねえんだからよお」
ベートがグルル、と唸ればヴァハは吸血時のように牙を鋭くさせ笑う。古来より伝説に存在する吸血鬼と狼男は、よく対立で描かれる。
「お前だって言ってたろお? 救えねえ奴を擁護しても意味がねえって。ここで志願しといて死ぬって事は、トマト野郎と同じく身の程知らずって事だ。ほら、死んでも冒険者の名を汚す馬鹿が居なくなってくれたって酒でも飲みながら笑ってやろう」
パァン! と柏手の音が響く。振り返るとロキが手を叩いたようだった。
「そこまでや。喧嘩は終い」
「はいはい。これから潜る仲間だもんなぁ」
ヴァハは肩をすくめる。ベートも舌打ちして背を向けた。
「………参加者は指名制にする。責任は僕にある、ベートもヴァハもそれでも良いかい?」
「勝手にしろ」
「いんじゃね」
「前衛と後衛、そして治療班。僕とガレスが率いて
「わかった」
「各員、ヴァハもかつて受けた
「ああ、この前渡されたやつか」
ヴァハは既に手に入れていたらしい。
「お前は、随分と聖女に気に入られているな」
「何だ、レフィーヤとの会話は終わったのか?」
「ああ、彼奴は私が必ず守ると誓った」
「俺は無視か、仲良くなれたと思ったのに悲しいねえ」
「お前は放っておいても死なないだろう?」
「いやぁ、死ぬ時は死ぬさ。別段不死身じゃねえんだし」
ほぼ不死身みたいな反則級自己治癒スキル持ちが何を言ってるのか。
「それじゃあ行こう……突入部隊、前進」
フィンの号令に歩き出す一同。ヴァハは
──責任は僕にある、ベートもヴァハもそれでも良いかい?
そう言ってたからまあ関係ないだろ。まあなるべく手は貸してやるが。
三時間後。
「あはははは!」
「や、やめ! ぐはぁ!」
「何故こんな!? 裏切るのか!」
「いいや、俺達はあの人に正気に戻してもらった!」
「そう、私達はさっきまで狂っていた! でも、もう大丈夫!」
キラキラした目で笑顔で
「いやあ、やっぱり愛とか友情とかって素敵だなあ。そう思わねえかあ後輩」
「ぎ、あ………も、やぁ………うぎぁ!?」
涙を流し、這いずろうとする少女の背骨をゴリ、と踏み付けるヴァハ。
「ほら見ろよ。愛とか友情とかで正義に目覚めて実行する勇気。王道っていうんだろこう言うの」
「ひら、にゃ………わら、しは………あ、ぐぅ……だ」
舌を貫く針のせいで舌を口の中に戻せずうまく喋れない少女にヴァハはケラケラ笑う。
「笑わせるな後輩。お前が悪? そうなるように育てられたお前が? どうせ正義はお前の敵だなぁんて教わって育てられてきたんだろお。いいか? お前がどれだけの悪党の血筋を混ぜられてようと、正義にも悪にも血は関係ない。その行為が善悪か己で判断できない以上、お前は悪じゃねえよ」
と、
「さあお前ら! 愛と勇気と友情で目覚めた正義とかなんかその辺の力で、この都市を守る為に【ロキ・ファミリア】のために死んで来い!」
「「「おおおおおおおお!!」」」
歓声を上げ走り去っていく
「ハハァ。正義の味方なんて面倒くせえだけかと思ったが、正義に導くのはまぁまぁ楽しいなぁ。正義なんて知らねえけど」
何があったのか、次回は時間を遡ります
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員