ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
地下迷宮に点在する像。分かり難いが目の部分に魔力を感じる。恐らくは監視されている。
幾つかの扉を見つけたが閉じられているのは、通路を限定……誘導されていると見ていいだろう。
「大丈夫でしょ、いざとなったら壁壊せば良いし」
「そりゃ無理だろ」
と、ヴァハが否定し連れている女に顎で壁を指す。意図を察した女が壁を殴りつけると石版が剥がれ、中から金属の光沢が姿を表した。
「これって……もしかしてアダマンタイト!?」
「外見こそ石造りだが通路全体この
「君は、この地下迷路がそれほど深いと思うのかい?」
「隠れ住むだけならともかく、所々に悪意の気配がすんだよ。人を苦しめ、貶め、嘲笑い殺す……だけど俺だったらもっとこう…………うーん、ダンジョンに似せようって言う職人の無駄なプライドの無駄な技術が無駄に無駄なく使われているなあ」
ヴァハはこれを
「ダイダロスの願いなんて俺が知るかよ。ダンジョンスゴーイダンジョンスゴーイって周りから冷ややかな目で見られても気にせず変な街作るような奴だぜ?」
「ダイダロス? 建築家の? …………見知ったように言うんだね?」
「俺の家にはなぁ、ダンジョン・オラトリア原本があるからなあ」
直接見てきた好々爺直筆の。まあヴァハは生まれる前から知ってたが。知ってはいたが、こんな事をしてたのは知らなかった。
「この先に階段があります。下へと続いているようです、逆の道も同じです。待ち構えている敵の気配はありません」
「どうするフィン?」
「……二手に分かれる。どの道この大所帯じゃあ襲われたら碌な戦闘もできないからね」
そして、それぞれフィンとガレスが率いるように分かれる。フィンと離れたティオネは涙目になっていた。
「君達はどうする?」
「ん〜………俺達も二手に分かれるか。ただし、大声で名前叫ぶなよお?」
「わかってるよ」
彼女は行方不明の友人を探しに来たと言っていた。もし不用意に名前を呼んで人質にされたり、殺されたりするのを避けたいのだろう。
ヴァハはフィン、女性はガレスについた。
「そいつは前衛で、パワーだけなら格上にも通用する。シンプルな奴だからお前等とは組みやすいと思うぜ」
「奇しくも僕が言うまでもなく、殲滅型と機動型に分かれたわけか。いや、君はどっちも出来たね」
「因みにコイツ等は残念ながら偵察に向かねえぜ。俺の言葉を少ししか理解出来ねえ」
血の赤子を出しながら笑うヴァハ。この子供らが偵察に使えたなら、確かに便利だが知能は言葉を理解できるようになった子供程度。見た目通りの赤子ほど、ではないが偵察には向かない。
「それにしても、敵もモンスターも全然出てこないッス。なんか、逆に不気味っていうか」
「
現在はダンジョンの一層から二層程度。
ヴァハの発言を考えるにこれはダイダロスが設計したらしい。しかし、何人居ようと1代で築けるものではない。彼の子孫も造っているのだろうか? 如何に祖先の命題とはいえ、この規模を?
「細かい事考えるのは後にしろよ。そろそろ来そうだ」
やがて広大な部屋に出る。ダンジョンの
「フィ〜〜〜〜ン〜〜〜〜!!」
そして、フィンを名指しで叫ぶ。【ロキ・ファミリア】の団長で、ここは
「会いたかったぜぇ! クソすかした勇者様! てめぇは私の事を覚えていたか!? 覚えていたよなあ! 忘れたなんてほざきやがったらぶち殺す!」
だいぶフィンにうらみがあるらしい。さては暗黒期に相当煮え湯を飲まされたのだろう。
「腸を引きずり出して、顔を切り刻んで、全身めった刺しにして、二度となめた口利けねえ………よ、う………に?」
現れた女の眼前に、バチバチ紫電を纏った石が落ちてくる。次の瞬間、雷光が一際強く輝き雷鳴と共に爆発した。
「よし、とどめさしにいこうぜ」
『
「っ! て、てめぇ〜! このイカレ野郎が! いきなり何しやがる!」
と、通路の奥から先程の女の声が聞こえてきた。どうやら咄嗟に避けたらしい。ただ、目は見えないのか警戒してるのか奥から出てこない。
「標的変更だぁ! フィアナ、そのクソガキからぶち殺せえ!」
その言葉と共に左右の扉が開き白装束を纏った
「……………んん?」
ヴァハはその中の数人に違和感を覚え、一人首を掴み顔を覆う布を剥がす。
「んぐ、うぅ……! んむうぅ!」
口が縫われ喋れなくされた女性の顔。恐らく舌も切り取られている。わざわざこんな手間を仲間入りの儀式に使うとも思えない。つまり
「あ、やべ……」
キラリと光る細い糸が見えたヴァハは女性を
「【ロキ・ファミリア】! こいつ等、喋れなくされた一般人が紛れてるぞ!」
「な!?」
「でもどうせ無力化しても殺されるしこっちが一々気にしてる余裕もねえし、27階層の時みたいに見殺しにしろ『
ヴァハの言葉に【ロキ・ファミリア】の面々が一瞬固まる。その一瞬、奥から迫る影。
片方は
「はっ!」
それに対してヴァハも容赦なく首や手首、心臓を狙い剣を振るうが少女も対処する。恐らくはLv.4。その身に刻まれた戦闘経験は、かなり深い。一体どれだけ幼い頃から戦わされてきたのか。
「おもしれえなあお前。ヒューマンだな? 見た目通りのガキなのに大した才能じゃあねえの」
「………………」
ヴァハの質問に答えず、少女が袖の下で何かをいじる。途端に床や残った扉が開き食人花や見たこともない極彩色のモンスターが溢れてきた。
「っ! 総員迎撃! 人間には、近づくな!」
「なぁに甘ったれた事言ってんだあの
かつては多くの共に戦った仲間を見捨てたくせに、一般人相手に目撃者がいないここで風聞を気にするフィンに呆れていると少女が迫る。
「『
短く呟かれた超短文詠唱。名の不穏さからヴァハが飛び退くと同時に空間一体を紫の衝撃波が迸る。
「ぐ、あ……」
「んぐ、うぶぼ!」
恩恵を持たない一般人が倒れ中には胃の中のものを吐いたのか頬を膨らませ隙間から液体を零すものまで。
恩恵持ちの
「……………」
短い詠唱で、強力な魔法。ヴァハの脳裏に過る、灰色の女。
「ひゃはははははははははは!! どうだあ私の自慢の
視力が回復したのか女が戻ってきて叫ぶ。
「っ! ヴァレッタ!」
フィンが忌々しげに女を睨む。ヴァレッタ、それが彼女の名らしい。
フィアナは
「しっかし血統書付きねえ………なるほど、後輩か」
一人納得したヴァハ。バチリと片手に紫電をまとえば盾のつもりか一般人の後ろに隠れ………たので一般人に雷を当てる。火炎石が爆発しフィアナは慌てて距離を取る。
「…………ん〜」
無感情にも見えるフィアナの目に、ヴァハは確かにある感情を読み取る。
「お前、いいや。エインは何処だ? 居るんだろ? ここに」
「………………」
ヴァハの質問に答えず、少女はヴァハの足元を一瞬だけ見た。
「………お?」
次の瞬間ヴァハの足元が開く。直ぐに血で鎖を作ろうとしたが少女が飛びかかってくる。
「『
「────!」
先程より規模の小さく、しかし威力の高い衝撃波に吹き飛ばされる。全身を襲う倦怠感。ゴボ、と喉の奥から血が溢れる。序に目や鼻からも血が流れ出た。
毒の威力がさっきより高い。範囲を狭めると濃度が増すのだろう。
「ヴァハ!」
落ちていくヴァハに叫ぶフィン。彼なら何だかんだ生き残りそうだが楽観視も出来ない。仕方ない、一度彼を忘れてまずはヴァレッタを………!
「…………っ!!」
咄嗟に反応できたのは、長年の経験と、罠を張るならここだと冷静な部分の警告。襲いかかってくる赤髪の
戦闘力がかつてと比べ別物レベルで跳ね上がっている。
(魔法を………!)
使わなければ負ける。だが、『ヘル・フィネガス』は理性を失う技。今この瞬間、指揮官を失わせるのは!
時間にして一秒にも満たぬ迷いは、しかし致命。
フィンの体を怪人の振るう凶刃が切り裂く。
【ロキ・ファミリア】の要。決して倒れず、倒れてはいけない存在が膝をつく。誰もが、レフィーヤや、ベートですら思考を停止させられた『ありえない光景』の中、ラウルだけが動いた。
「続けえ!」
とどめに振り下ろされた一撃からフィンを救い出し新種が出てきた穴に飛び込むラウル。何人かはそれに続いた。
オリキャラ
フィアナ
ヴァハが後輩と呼ぶ少女。非常に優れた才能を持つ血統書付きらしい。せっかく見逃されたのに絡んでしまった。ああ哀れ。
好きなタイプは優しいお兄さん。好きな容姿は可愛らしいタイプ。ヒロインではない。
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員