ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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悪の血統

 英雄に憧れる者は少なくない。このモンスターが蔓延る世界で、その身一つで伝説を作りたい者は山ほどいる。なにせ神の恩恵などという簡単な強さを上げる方法があるのだ。誰もが自分ならとオラリオに飛び込み、現実を知る。

 二つ名持ちにはなれても後に語られる物語の名持ち(ネームド)にもなれない所謂端役(モブキャラ)でしかなかったと。有名な【ロキ・ファミリア】とて同じ事。

 

「心が折れなきゃ良いけどなぁ。名持ち(ネームド)になれるかギリギリの()()()()()共に頼りきりだったツケを、まさか払わされる時が来てるなんて思ってもなさそうだったしなぁ」

 

 知り合いが死んだら悲しいかもしれない。自分は悲しまないが。それより今は……

 

「『毒蛇(ヒドラ)』」

「おっと……」

 

 毒属性を伴った衝撃波を回避し眼の前の少女見る。

 小人族のみが崇めていた架空の神……戦士の女神の名を持つ少女。

 放たれる魔法(どく)は距離を取ればそこまで脅威ではない。衝撃も吹き飛ばされる程度だし毒の濃度も高くない。しかし不用意に近づけば内臓にダメージを与えるレベルの衝撃へと変わり、毒もかなり強力なものとなる。

 

(耐異状とっとくんだったな………いや、これ普通に超えてきそうだな)

 

 魔法というよりは呪詛(カース)に近い。魔法の毒だから血液から不純物を取り除く、なんてことは出来ない。

 内出血はどうにかなるが全身の神経に熱した針を刺したかのような痛みは消えない。我慢できない事はないが毒の魔力だ、無駄に喰らい続けるのは避けたほうがいいだろう。

 

(とはいえ……)

 

 距離を取りながら血の弓を引き絞り、矢を放つ。

 

「『血は炎』」

 

 燃え上がる炎に対して、少女は慌てることなく詠唱を噤む。

 

「『睨め(ネメア)』『アルテルフ』」

 

 魔法の威力が弱まっていき、やがて消える。威圧されたかのような『魔力対抗魔法(アンチ・マジック)』。

 近付けば『毒蛇の牙(ヒドロビウス)』。離れて魔法で攻撃しようにも『獅子の一瞥(アルテルフ)』。

 いっそ理不尽な程の組み合わせは、一人の女を思い出させる。

 

「とはいえまだまだ………」

 

 同レベルまで育てれば全盛期、とは言わなくとも死にかけだったあの頃、7年前ぐらいには迫れるだろう。つまり成長させればオラリオと対抗出来るだけの才能を持っている。

 ただ………恐らくだが早熟系のスキルは持ってないだろう。果たして何年かかるやら。

 

「フィアナ様! 我々もお力に!」

「必要ありません。貴方達は、出入り口を防いでください」

 

 そして、これだ。未だ未成熟で、おまけに折角の死兵の使い方も知らないと来た。なんだかなぁ、惜しいんだよな、このガキ。

 

「……まあ、とはいえ」

 

 楽しむ方法は、まだありそうだ。

 

 

 

 

 

 各所で戦闘が起こる。闇派閥(イヴィルス)に加え、放し飼いのモンスター。さらには彼等が雇ったであろう暗殺者。

 連絡の取れぬ【ロキ・ファミリア】は各々が懸命に己のやる事をなそうとしていた。運良くフィンと共にいた者達も、同じく。

 

「おいおいなんだよフィ~~ン! 仲間に見捨てられちまったかぁ!?」

 

 ゲラゲラと通路に一人残されたフィンを嘲笑するヴァレッタ。そんな挑発に対して、フィンは答えない。

 

「元気だね、ヴァレッタ……」

「そういうお前は元気がねぇなあ。残念だぜ、フィアナの奴に陵辱(おか)させようと思ってんだがなあ」

「………その名を、軽々しくつけるなよ」

「ヒヒッ。存在しねえ女神(ビッチ)の名前つけられたのがそんなに不愉快かぁ? だがまあ喜べよ、お前等の女神様よりかぁ役に立つぜあのガキはよお」

 

 女神(フィアナ)の名を出され怒気を放つフィンにヴァレッタは余裕の笑みを崩さす得意気に話す。

 

「………確かに、あの年で随分才覚に恵まれていたね。見る目がある………どこで攫ったんだい?」

「攫ったなんて人聞きの(わり)ぃ。フィアナ(あいつ)はアタシが腹ぁ痛めて産んだ実子だぜ?」

「─────」

 

 それは、つまり。7年前、もう彼女が生まれていたであろう時から、子供に爆弾を持たせ自爆させるなんて作戦を実行していたのか。

 

「どっかの神が強い眷属を作ろうと血を掛け合わせるなんて事してたらしくてなあ。闇派閥(あたしら)邪神達(かみさまども)もそれに倣う事にしたんだよ。その代最も強いメスに強いオス達が孕ませてなあ………そのガキがまた次の世代を孕ませるか孕むかする。ま、てめぇ等のせいで最後に残ったのは彼奴一人だが」

 

 そうそう、お前は父親の仇なんだぜ? と付け足すヴァレッタの目は、悪意に満ちていた。

 

「その言い方だと、まるで闇派閥(イヴィルス)以外の神が始めたみたいだね」

「そう言ってんだよ! 正義を唱うお前等側の神々がぁ、真っ先に始めたことだ。まぁったく業が深いぜぇ!」

「…………そうか」

 

 と、フィンが話を切るような言葉を発した瞬間、天井から人影が降ってくる。だが……ヴァレッタはあっさり反応し頭を掴み床に叩きつける。

 

「うがっ!?」

「まあそんなオチだろうなぁ。アタシがLv.5だって事を忘れたかぁ?」

「僕がLv.6(かくうえ)だって事を忘れたのかい?」

「はっ?」

 

 そして、次の瞬間ヴァレッタがフィンの拳を腹に叩き込まれる。

 

「がぁ!? お、お前……傷、は………?」

「傷? ああ………君達の仲間が、ヴァハ・クラネルに同じ呪いを与えたろう? 生憎オラリオの聖女様は、その呪いを放って置けるほど怠惰じゃないんだ」

 

 

 

 

 

 

 少女は悪として望まれた。

 生まれて、自我を持ったその頃から、ナイフを渡され人を殺すように言われた。苦しむ人を見て躊躇えば、母は殴る。蹴る。何なら切る。

 大人しく従えば褒められた。殴られなかった。痛くなかった。

 自分には恩恵というのが刻まれているらしく、モンスターと戦わせられた。痛くて、怖くて、でも母はもっと痛い事をしてくる。もっと怖い。

 ただ黙って従えばいい。大人しく、心を殺して……壊して。苦しむ声から目を逸らす。他人の不幸を見て見ぬ振りをする。自分は悪なのだから、他者に向ける心は悪意だけでいいのだから。

 

 

 

 

 

「…………さて」

 

 ヴァハは何時だったか、祖父にされた質問を思い出す。

 

──もし目の前に、恐怖に支配され己の心を押し込めて剣を向けてくる少女が居たらどう救う?

 

 眼の前の少女は、まさに典型的なそれ。悪役(ヒール)でありながら肉便器(ヒロイン)の権利を持つ英雄(ヒーロー)に救われるべき可愛そうな存在。

 

──僕は………えっと、抱きしめる、とか? もう怖がらなくていいんだよって、安心させてあげたい!

 

──そうだとも! なぁに、一発抱いてやればどんな女でもおとなしくなるわい。ムフフ………で、お主はどうするんじゃ?

 

──俺? 俺はなぁ………

 

Q目の前に恐怖に支配された少女が居ます。彼女は剣を向けてきます。貴方ならどう救いますか?

 

A

 

──より強い恐怖で支配する(恐怖を上書きしましょう)




次に貴方は救えって言ってるじゃんと感想に書く

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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