ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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フィアナ

 剣戟の音が響く。

 ヴァハとフィアナ。二人の神造の天才が地下の闇の中ぶつかり合っていた。

 

「『毒蛇(ヒドラ)』」

 

 毒の衝撃波から距離を取るヴァハ。それを見越して範囲を広げたようだが、その分速度が落ちる。音と同速度じゃないなら、恐れるまでもない。

 

「『毒蛇(ヒドラ)』」

「っ!? がぁ!!」

 

 と、魔法の速度が増す。全方位に広がっていた衝撃波は指向性を持ち、しかし似たような天災級の天才の魔法を知ってる故に回避したヴァハを名の通り蛇の様にうねり壁に叩きつける。

 速度も威力も増している。助骨が折れた。ただでさえ吸血した分のエネルギーは魔力に回しているというのに。

 

「まあ、さいわい餌はあるけどよ」

「え? あ、ぐわぁ!?」

 

 近くの闇派閥(イヴィルス)を血の鎖で捉え引きずり寄せると頚動脈に牙を突き刺し血を啜る。快楽効果は一切なしだ。バタバタ暴れるがLv.差の力で押さえつける。

 

「ぷは……おいおい、何固まってんだよガキ? 獲物を食ってる瞬間はどんな動物でも一番の隙だろうが。お優しいこって…」

 

 失血死した死体から火炎石を取ると死体を蹴り飛ばす。斬るでもなく、魔法で撃ち落とすでもなく回避した。

 

「え………?」

 

 その死体が、ナイフを振るう。ヴァハの追撃を警戒していたフィアナは予想外の攻撃に反応が遅れ頬を切り裂かれる。

 

「神々は何かと技に名前つけたがるよなあ。俺も、思いついた技を覚えたり偽動作(フェイク)に使えるから良く名前つけるんだ。これはそうだな………『ネクロボルト』ってのはどうだ?」

 

 キラリと僅かに光を反射する血の糸。その先端、血の針が死体の首……脊髄に刺さってた。

 

「幸い、人形の準備にゃ事欠かねえ」

「───ッ!!」

「…………………」

 

 その言葉に、フィアナはヴァハへと迫る。剣と魔法、両方で攻める。剣で進路を限定させ……

 

「『ヒド──』」

「おせえよ、ボケ」

 

 しかし詠唱が完了する前にヴァハがフィアナの頭を掴む。

 

「あぎ!?」

 

 全身を駆け巡る激痛。雷に打たれたもの特有の疵が肌に刻まれる。

 

「当たり前っちゃあ当たり前だが、お前の『魔法対抗魔法(アルテルフ)』はエンチャントじゃねえんだな。まあ普通はそうか。彼奴が色々おかしい………しかし惜しいなあ、動揺しすぎた。お優しいこって」

「わた、しが………やさし、い? わたしは、『悪』だ……優しさ、なんて………」

「仲間を切りたくなかったから、俺を急いで倒そうとしたんだろお?」

 

 ケタケタと笑うヴァハに、闇派閥(イヴィルス)達は自分達が悪行なす側ではなかったかと少し疑問に思うも、すぐに駆け出そうとし………。

 

「寝てろ」

 

 広間をいつの間にか駆け巡るように張り巡らされた血の糸から伸びてきた針が頭に刺さり全員倒れる。

 

「いい夢見てろよお………さて、さてさてさて……お次はお前だが」

 

 周りに意識を割きながらも、きっちり踏みつけた首筋に電気を流して麻痺させていたヴァハはフィアナに視線を向ける。

 

「大人しく俺の言うことを何でも聞くなら助けてやるよ。まずは人を助けてみようぜ、【ロキ・ファミリア】とか………なあに、つい最近まで仲間だったやつを殺すだけの簡単な仕事だ」

「お断りします。私は、『悪』です───『ヒド──ギャゥッ!!」

 

 超短文だろうと詠唱が必要な以上無詠唱のベルやスキルで雷を放てるヴァハにとって隙にしかならない。

 

「お前が悪? 笑わせる。仲間を傷つけたくないくせに。本当に悪なら巻き込んで殺せよ。こんなふうに」

「……え」

 

 ヴァハが倒れている一団に向かい火炎石を投げつける。爆炎が彼等の火炎石に引火し爆発する。周囲に肉片が飛び散った。

 

「ああでも彼奴等死ねば願い叶うんだっけえ? しまったなぁ、いい事をしてしまった」

 

 まあ良いか、と笑うヴァハ。いい事をしたならそれはいい事だもなぁ、と嘯く頭上の男を、フィアナは理解出来ない。聞いてた話と違う。正義を騙る冒険者達は、適当な理由付けを考えて己を正当化してからじゃないと人を殺せないが、いざ考えてからは簡単に人を殺す様な奴等だと聞いてはいたが、これは違う。絶対違う。理由付けなんて考えてない。適当にその時思いついた事を言ってるだけ。

 

「俺だって年端もいかねえガキ拷問するのは気が進まねえよお? でもなぁ、殺すのはやっぱり可哀想だし。けど仲間がピンチなんだ。お前みたいに強いのを放っておくのもなあ………だから、言うこと聞くように拷問しよう」

 

 何がだから、なのか。意味が分からない。だが……

 

「無駄です。私に、拷問なんて………」

 

 鞭で打たれた。炎で焼かれた。針で刺された。鋸で切られた。鉄の洋梨を使われた。あらゆる苦痛を体験した。今更どんな拷問だろうと、既に死んだ心を動かすなんて出来るはずが無い。

 

「まぁまぁモノは試しだ。まずは爪を剥ぐ」

「…………あぐ」

 

 血が蠕きフィアナを拘束する。詠唱対策に口が開いた状態で固定され、唾液が垂れる。

 

「よし、まずは爪を剥ごう」

「……………」

 

 爪………母にも剥がされたことがある。人を殺せなかった時だ。一瞬痛みが理解できず指に衝撃が走り、その後焼けるように熱くなる。それだけ………

 

 プツッ

 

「い、あ!?」

 

 だが、予想に反した痛み。ヴァハは血で出来た針を爪と肉の隙間に深く差し込む。

 

「!? な、あ……ふめを、はわすっへ……………!」

「なんだ? ペンチで一気に引っ剥がすと思ったか? 馬鹿言うな、せっかくキレイな爪なんだ。形が残るようにゆっくり剥がすさ……」

 

 指の周りの血が動き、針と繋がりシーソーの支点部のような形になる。

 

「〜〜〜〜!? が、ぼぉ! おお!?」

 

 ヴァハがトントンと針を叩けばミチニチャと湿った音が鳴る。その度に、言い様のない痛みが、熱が、爪から走る。ボタボタと溢れる涎で靴が汚れたヴァハは近くの闇派閥(イヴィルス)の服で拭い、向き直る。

 

「んじゃまずは一枚目だ」

「─────!!」

 

 力を加えられると針の当たる場所を中心にミチミチと音が鳴り、激痛が襲う。爪を剥がれた後とは違う、別の痛み。

 

「あ………」

 

 パキャッと爪が割れ剥がれる。根本の肉も序でに千切れた。

 

「おおああ!? ぼ、おおおお!!」

「針が細すぎたな。一部に力かけ過ぎたら、そりゃ割れるか。刺し難いけど次は板にするぜ」

 

 わざわざ説明しながら目の前で血を整形するヴァハ。今の痛みが……或いはそれ以上の痛みがもう一度? いや、そんなの何度も経験してる。

 

「まずはやり直しだな。ポーション持ってきて良かったぜ。爪なんて結局表皮の変化だしな。簡単に治るんだ、知ってたか?」

 

 知ってる。母にやられたから。でも、母は10枚剥がし終えたらそれまでだったし、こんな剥がし方はしてない。

 

「何、安心しろ。取り敢えずきりのいい50枚剥がしてから次の拷問に移るから」

 

 パキンと何かが割れるような、折れるような音が、聞こえた気がした。

拷問描写

  • SAN値が弱いんです(やめてください)
  • 可哀想だし(やめてあげて)
  • 可哀想だし(いいぞもっとやれ)
  • 可哀想は可愛い(ガンガンやれ)
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