ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
エルフは左手に
「………おーう」
ヴァハは己の剣を見る。罅割れていた。やはり造りがイマイチだ。
「ふっ!」
「はっはぁ!」
が、問題ない。振るわれる
距離が出来た瞬間、何かを口ずさもうとしたエルフ。しかしヴァハの後ろで状況を把握できていないエルフィを見て固まり、その隙を逃さずヴァハが横っ腹を蹴る。
「──っ!」
体内の血液を操り底上げされた力と速度。ミシリと嫌な音が足から伝わってくる。しかし相手も近接戦に慣れているのかとっさに飛んで勢いを幾らか殺し、水路を挟んだ向かいの通路に着地する。ここからなら、狙える!
「【一掃せよ、破邪の
「ハハッ!」
エルフが詠唱を唱える。ヴァハの右手で紫電が弾ける。
「【ディオ・テュルソス】!」
「BANG」
白き雷と黄金の雷光がぶつかり合う。超短文詠唱の魔法と魔力そのものを雷に変化するスキルのぶつかり合い。威力は、互角。
「───!?」
魔法は詠唱が長いほど威力を増す。逆に言えば、超短文詠唱は魔法の中でも威力は下だ。それでもかなりの威力はあるのは確か。なにせエルフだ。それに、込める魔力で多少威力は変動する。
が、今回はすぐさま決着をつけるために発動速度を重視し魔力は最小限。対するヴァハは魔力を込めるだけ威力が制限なく増すスキル。バチバチと中で弾け、浄水柱を幾つも焼き焦がす。
雷光に目が焼かれそうになる中ヴァハはエルフのもとに向かって飛び出す。血のナイフを振るえば鞭のようにしなりながら伸び、エルフに迫る。しゃがみかわすもエルフの真上で斬撃が止まり、ヴァハは縄を使う軽業師のようにエルフに迫り蹴りを放つ。
(………やっぱり、すごい)
単純に強いのもあるが、戦い方が
全てかわして、かわせそうに無い蹴りが放たれそうになったら膝を踏んだりしてそもそも放たせない。
互角の戦いに見えるのはエルフがヴァハよりレベルが高いからだ。実際はヴァハばかりが攻撃を当てている。エルフの白い肌に少しずつ傷が刻まれて行く。と───
「────そこまでだ」
「「「───ッ!!」」」
空間を支配する威圧感。エルフが、エルフィが、ヴァハが思わず動きを止める。本能に訴えかける『畏怖』。その気になればこの地上一帯を片手間に滅ぼせる全能者たる一端を開放した『神』に、ヴァハは
「先程の言葉から察するに、君はフィルヴィスを何者かと勘違いして襲ったのだろう? なら、これで終わりにしよう。フィルヴィスも、良いね?」
「し、しかしディオニュソス様!」
「…………」
「っ! も、申し訳ありません……」
フィルヴィスと呼ばれたエルフは食い下がるもディオニュソスと呼ばれた男が困ったような顔をすると慌てて頭を下げる。
ディオニュソスとやらはニコリと微笑んだ。思わずエルフィも赤くなる笑みだ。
「君も、それでいいかな?」
「ん〜………ハハァ。別に良いぜ。代わりに、話をしようぜ。美味い酒でも飲みながら」
「私も
「俺はヴァハ・クラネル。お前はあ?」
「……………」
「ハハァ。無視かあ」
あの後さて情報を交換しようとした所、ロキとその眷属
ベートは勝手な行動していたエルフィに雑魚が出張ってんじゃねえと罵倒し、エルフは喋らない。剣呑な空気にヴァハは何時誰が手を出し始めるのかワクワクしている。因みに遠くから見る神々の何人かも似たような顔をしている。
「………で、雑魚が雑魚連れてあんなところで何してやがった」
「昨日の
「ハッ。雑魚がくだらねえことすんな。大人しく巣穴に引っ込んでろ、てめえ等如きに出来る事なんざありゃしねえよ」
「なるほどなるほど。お前は優しいねえ………心配するな。俺はまともじゃねえ自覚はあるが律儀だって自負してる。エルフィだけでも無事に返したさ」
「ああ?」
「弱え奴が死ぬのがいやなんだろ? 雑魚が無意味に死ぬのがムカつくんだ、お前は」
「…………………」
ケラケラ全てを見透かしたように笑うヴァハの姿に、ベートは神の姿を幻視する。ムカつくやつだ。
「ああ、そうそう。俺の弟な、やっぱり立ったぞ」
「……………あ?」
「あの後予想通りホームにも戻らずダンジョンに向かった。ハハァ防具もつけねえでなあ」
「…………ハッ。だから何だ。雑魚でいたくねえなら、当然の事だ」
ヴァハの言葉に鼻を鳴らすベート。ヴァハはやはりニヤニヤ笑う。
「んじゃ改めて情報共有しようぜえ」
ベート曰くロキに連れられ地下水路を調査し、旧水路の貯水槽を見つけたらしい。そこには昨日の食人花が大量にいたらしい。素直に向かっていたら死んでた。
「………我々もそこに辿り着いた。すぐに引き返したが」
「はん。そっちの陰険エルフは身の程を弁えているみてえだな。てめえ等も見習え」
「だとよ、エルフィ」
「え? 私?」
「てめえにも言ってんだよクソヒューマン!」
「だとよヒューマン」
「さっきからおちょくってんのかてめえ!」
「今更気づいたのか?」
「ぶっ殺す!」
「べ、ベートさんストップ! ヴァハも煽らない!」
ヴァハに掴みかかろうとするベートを慌てて抑えようとするエルフィ。ヴァハはゲラゲラ笑う。
「なんや、仲良うなったんか?」
と、そのタイミングで主神が戻ってきた。ベートは舌打ちして歩き出す。エルフィもロキがおいでー、と手招きしたのでじゃあね、と手を降って立ち去る。
「…………さて、情報共有は出来たかな?」
「そのエルフ、口下手過ぎて出来てねえ」
「……………」
「そうかい……なら、場所を変えようか。改めて、君の考え、君の得た情報を教えてくれ」
「お前に染み付いている酒とは違う匂いだな」
「そうかい? 行きつけと言えば、ここなのだが………」
「ま、これはこれでうまいから良いさ。まあ、昨日味わった奴に比べりゃ劣るが」
「ほう、それは私も気になるな、どんな酒かな?」
「酒じゃねーよ」
ディオニュソス一押しという酒場。個室がありそこで酒を飲みかわす一柱の神と一人の人間。酒も飲まずディオニュソスの後ろで控える妖精はおかしな事をすれば殺すとでも言いたげな目でヴァハを睨んでいた。
「しかし、なる程………他の入り口、か。君は、ギルドは白だと?」
「仮にギルドが黒だとしても、あのサイズのモンスターを数匹運ぶのは不可能だろ。俺はむしろ、ダンジョンの入り口が一つという絶対性を疑うね。
「人が掘る、は現実的ではない気がするが……オラリオには地下水路が多く存在する。ダンジョンに被らぬようにね。逆に言えば、ダンジョン一階層でもそれなりの深さがある。そう簡単に横穴は作れないよ」
「そうか?
「ふむ………」
「もしくは………いや、流石にこれは現実的じゃねえか」
顎に手を当て考えるヴァハに首を傾げるディオニュソス。聞かせてくれるかい? と問えば笑うなよ、と返す。
「何世代に渡って、ダンジョンを掘る奴らが居る可能性………恩恵を刻まなくても時間を掛けて………つっても、
「そうだね。一、ニ世代ならともかく、何世代となると現実的じゃない…………」
「まあ、居たらいたで面白れえがなあ」
仮に祖先の大望を果たそうとする子孫がいたとして、今もなお掘り続けているとしよう。その一族を全員殺す。
大望を果たせず、迫りくる死に顔を歪める。
「ハハァ。その表情のまま首を切り落とせば、きっと楽しいだろうなあ」
「…………君は、なんというか………趣味が悪いな」
「自覚してるう。でも好きなんだ、痛みと恐怖で歪む顔が。まあこのご時世、最後まで楽しむには相手が悪人じゃねえといけねえがな」
「生きにくそうだね。少し前なら、
「仕方ねえさ。まあ、それが一番好きってだけだ。退屈な人生、長く感じちまうがモンスター相手でも
そう言い残すと席を立つ。エルフはやはり最後まで睨んで居た。
「あ、お兄さん!」
「ん〜?」
ホームに帰ろうとしていると不意に声をかけられる。振り返るとメイナが駆け寄ってきた。
「昨日、大丈夫だった?」
「死にかけた」
「ええ!?」
「ハハァ………」
ヴァハの言葉に目を見開き驚愕するメイナに、ヴァハはニヤニヤ笑う。からかわれたと思ったのかメイナはプク、と頬を膨らませた。
「心配した。悪い冗談はやめて」
「お前が心配したところで俺の安否が変わるわけじゃねーけどなあ」
「………解ってる。強くなりたい。でも、冒険者になるのは10歳からってお母さん………後、3年」
「あー………なら、修行つけてもらえ。ステイタス刻む前にある程度鍛えるだけでも、ちげえから」
そう言ってヴァハは『豊穣の女主人』を見つめた。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員