ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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豊穣の女神

 銀花夏梅(シルバイン)

 迷宮のマタタビと呼ばれる下層で取れる植物で、それで作るマタタビ酒は絶品とのこと。

 

「そしてこれがその銀花夏梅で造ったマタタビ酒だ。欲しいかあ?」

「欲しい! 欲しいニャー!」

「ニャニャ〜ん♡」

 

 酒の入った瓶をチャポチャポ揺らすと二人の猫人(キャットピープル)が駆け寄ってきた。アーニャとクロエだ。

 

「んじゃ、ちょっと俺の願いを聞いてもらおうか?」

「にゃ、お前の!?」

「ぜってえ怪しいニャ! お断りにゃ!」

「じゃあ俺が飲むか…………うはは! にっが! マズ!」

「ニャニャ!?」

「うにゃー!」

 

 マタタビ酒の好みはかなり別れる。ヴァハは苦手な部類だったらしいが猫娘達の反応を見て、それを肴に楽しそうに笑いながら飲んでいく。

 

「わ、わかったにゃ! 何でもするニャ!」

「にゃにをすればいいにゃ!?」

「まあ俺が頼み事したいのは黒猫の方だがな………」

 

 茶髪のキャットピープルが床に付した。

 

 

 

「それで、これはどういう事にゃ?」

「よ、よろしく……あ、お願いします」

 

 朝。ミアにはヴァハから交渉したらしく用が終わったら買い出しする事を条件に午前の休みを貰い、外壁の上にやってきたキャットピープルのクロエは目の前でお辞儀する少女を見つめる。

 

「鍛えろ。それがお前の仕事だ」

「ニャンで?」

「3年後、10歳になったらファミリアに入る予定なんでな。それまでに基礎を鍛えてくれ」

「なんでミャーが」

「あの中で、学んできたのはお前だけだろ? 他は実践で覚えた動きだ。お前は()()()()()()()()()()()。簡単だろ?」

「……………」

 

 クロエが目を見開き固まる。ヴァハはそんな態度に気づかないのか、気付いて無視しているのか座禅したまま動かない。

 

「ジジイのパシリと旅してた時、何度かお前と同じような足運びの連中に襲われたな。彼奴はファミリア所属の暗殺者とか言ってたな。主神の名は………」

「黙れ───」

 

 冷たい声が響き、ヴァハの喉にナイフが添えられる。張り詰めた空気にメイナはビクリと震え涙目になる。クロエは翡翠(ジェイダイト)の目を細めヴァハの紫水晶(アメジスト)の瞳を見つめる。

 

「冗談さ。怒るなよ、お前からする血の匂いはだいぶ渇いている。辞めて長いな? それに、そういう目をする奴は決まって()()()()()()()自分が嫌いな奴だ。命を奪うことを忌避できんなら、お前は良い奴なんだろうな」

 

 「俺はどうとも思わないけどな」と笑うヴァハにクロエはハァ、とため息を吐いてナイフをしまう。

 

「ごめんねメイナちゃん。怖がらせちゃったにゃ?」

「え、あ………えっと………」

「お詫びに、お姉さんが知る限りでいいにゃら、戦う技術を教えてあげるにゃん」

 

 基本的な動作はモンスター相手にしろ人相手にしろ変わらない。それは知ってる。体の作り方も教えることは、確かに出来る。とはいえ、一般人の、それもこんな幼い少女の前で久方ぶりに殺気を漏らしてしまった。暗殺者が殺気を漏らす時点で三流だし、子供を怯えさせるなんて以ての外だ。怖がられるのも仕方ないと、心の中で苦笑する。

 

「わ、私………強く、なりたいです。お兄さんの、足を引っ張らないように………だから、お願いします、先生」

 

 

 

 ヴァハはその光景を黙って見つめる。クロエに渡されたナイフをクロエの言うとおりに振ろうとして上手く行かず、クロエに改めてコツを聞いているメイナを見ながら聞き耳を立てる。後で実践してみるかと考えながら。

 では今は何をしているか? 簡単だ。血液を操っている。

 ヴァハの持つ魔法【レッドカーペット】は血液操作の魔法。主な使い方は体外に出し武器へと変化させ、硬化し武器として扱う。

 ヴァハが新たに考案した使い方は体内で硬化させ耐久値の底上げと、体内で操作し身体能力の底上げに使うこと。

 そして、フィルヴィス戦や謎の仮面戦でこれを使ったがこの際体内の血管が破けた。すぐに治癒したが、一々内出血を起こしていてはその内治癒力のストックが先に切れる。なので、血管を破らぬように操作しなくてはならない。

 イメージとしては体内の中にある液体を動かそうとしたから駄目なのだ。血管の中にある液を、血管の何処かが破けぬように均等に力を加えるように操作する。そのため現在魔法で血管内の血液を流している。魔力を流した血液の位置は詳しく解る。とてつもなく細かく、枝分かれした血管の把握、時間が掛かりそうだ。

 

「あ、やべ。心臓あたりの血管が切れた」

 

 

 

 

 

 正午。ミアハから『お主さては何か予定を与えておかないと危険な場所に率先して向かうな?』と神推理をされ、予定を入れられた。

 何でも貧乏ファミリアである【ミアハ・ファミリア】やとある極東の武神が収めるファミリアに時折野菜などを持ってきてくれる心優しい女神が居るから、彼女の治めるファミリアの手伝いをして来いとの事だ。

 

「こんにちは。あなたがヴァハちゃんね? ミアハから聞いているわ。今日はよろしくね?」

 

 ここでなら危険な事なんてないわよ、と微笑む蜂蜜色の髪をした美しい女神。あんまり主神(おや)を困らせちゃ駄目よ? と鼻をつついてくる彼女の態度に、並の男なら心奪われる事だろう。ヴァハは近所のおばちゃんみてぇだ、と割と失礼なことを考えていた。

 後はまあ、おっとり繋がりで祖父の愛人の一人エウロペにも似てるかも。

 

「レベルは1だったわね? 力仕事は、難しいかしら? それとも、これも修行にしちゃう?」

「あー、つってもB行ってるし………いや、どうせならA目指すんでお願いします」

「ええ、解ったわ」

 

 土の匂いがする。冬を越し、命が今まさに芽吹こうとしている春の土と、見渡す限りを黄金色に染めた豊穣の大地の匂いが合わさったような、そんな匂い。

 嗅いでいて、フワフワする匂いだ。血の匂いは好きだ。興奮する。この匂いも、それなりに好きだ。心地良いとでも言うのか、眠くなる。

 後、彼女の匂いに混じり別の匂いもする。ごく最近嗅いだことがあるような匂い、何処だろうか?

 その日はお土産に野菜を貰い、【ミアハ・ファミリア】の夕食は少し豪華になった。

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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