ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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一方的な戦い

 ヴァハ・クラネルにとって殺し合いとは趣味であり、他人に押し付けるものではない。故にこそ己の命を狙う輩以外は基本的には痛めつけない。

 そんな彼ではあるが、殺した数は数十はくだらない。理由は、とある男との旅路。時に戦場に訪れ、時に盗賊と戦った。戦って、勝ってきた。

 戦場に剣が落ちていれば剣を使い、槍を持てば槍を使う。

 鎖鎌や分銅など扱いが難しい武器も、一度それを持てばどう使えば相手に勝てるかが理解できた。

 武芸百般全て一流。才能に恵まれ、しかし慢心することのないヴァハは目の前の男を前にどうするか、と策を考える。

 

(勝ち筋が全く見えねえ。ここんとこ、そんなんばかりだ……)

 

 例えばフィン・ディムナ。例えばアイズ・ヴァレンシュタイン、ヒリュテ姉妹。アレンもそうか。

 だけど、まあ殺し合いを始めた最初の頃は割とあった事だ。それでも生き残ってきた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。気が楽だ。

 

「ヒャハハ!」

 

 地面を蹴り駆け抜ける。その速度はもはやLv2に匹敵するだろう。

 

「【血に狂え】」

 

 ズルリと体外へと溢れた血が蠢き、槍を形作る。狙いは心臓。弾かれる。

 眼球、弾かれる。

 肺、動脈、気道、骨の隙間。全て正確に放たれる槍の雨。体内の血液を使い直接身体を操作する。

 

「ほう……」

 

 目の前の男は遥か格上。長く続ければ不利になるのは自分だ。故に覚えたばかりで威力が安定しない()()な身体強化はしない。体内で幾つもの血管が切れる。結果、ヴァハの攻撃速度はレベル3でも中位に位置するレベルとなっていた。

 だが───

 

「温い」

「………おお」

 

 全て弾かれる。弾かれただけで腕が痺れた。というか血の槍が砕けた。数度打ち合いしただけでこれだ。飛び散った血を操り2つの剣を生み出し斬りかかる。

 

 

 

 大した武芸だ。オッタルは目の前の男を素直に称賛する。方法は不明だが身体能力の底上げはまるでランクアップ。代償が大きいのか内出血が見て取れる。それは先程アレンから受けた傷を癒やしたのと同様に、すぐに塞がっていくようだが。

 先程飲んだ液体は、ただのポーションではないのか? 効果が持続するのか、特殊スキルを発動させるキーだったのか。それは不明だ。だが、どうでも良い。

 真に彼を強者たらしめるのはやはり武芸。様々な武器に切り替え、それを十全に使いこなせる才能。同じ身体能力の者を集めれば彼に勝てる者は殆ど居ないだろう。つまり実質レベル3にさえ勝てる実力を持っている。

 

「ハハ! 当たらねえ! 全然当たんねえ!」

 

 だが、()()()()()()()()()()。ランクアップ出来ない。何故なら、こいつは()()()()()()()()。殺し合いを行うその瞬間にしか目を向けていない。その時のみ勝つ気で、負けた後、次こそ勝てるようになどと考えない。

 敗北に悔しさを覚えない。敗北に傷つく誇りがない。敗北が命を失う事だとしても、敗北を忌避しない。

 

「お前は、強くはなれない。なれはしない」

「────!?」

 

 オッタルの大剣がヴァハを切り裂く。肋は砕かれ、内臓が溢れる。

 咄嗟に硬化させた体内の血液。鋼鉄に匹敵するその強度は、まるで意味をなさなかった。

 

 

 

 

「ヴァハ!」

「チッ、オッタルの野郎、どうせ殺すなら俺にやらせろってんだ」

 

 赤い血を撒き散らし倒れるヴァハを見て叫ぶクロエ。アレンはやりたくても主神命令で出来なかった事をやったオッタルに嫉妬と主神の名に背いた怒りを滲ませながら舌打ちする。

 

「この男は聖女と関わりが深いらしい。死にさえしなければ、助かるだろう」

「ふん。傷を癒せるだけの女か……あんな女の、何が良いのか」

「てめえ等! ぶっ殺してやるニャ!」

 

 もう終わったとばかりに会話するオッタルとアレン。クロエは怒りに顔を歪めながらアレンに迫る。体の無意識なリミッターが怒りによって外れたのか、その速度はかなりのもの。だが、アレンは「オラリオ最速」の冒険者。

 確かに速いが、アレンより遅い。顎を蹴られる。浮き上がった腹を蹴られる。背中から壁にぶつかり肺の中の空気を吐き出す。

 

「【一掃せ───!?」

「遅え」

 

 超短文詠唱。『魔導』の発展アビリティを持つ故に威力が増し、速さの代わりに失った威力を補う『魔法剣士』であるフィルヴィスは近接もこなせる。だが、相手が悪い。詠唱は完成することなく途切れる。頭を掴まれ、地面に叩きつけられた。

 意識が飛びかける。

 

「フィルヴィス! っ!!」

 

 己の眷属までやられ、思わず神威をとき放とうとするディオニュソス。しかしそれより先にアレンの持つ槍の穂先が喉元に添えられた。

 

「余計なことはするな、お前はさっさと、あの男をディアンケヒト・ファミリアに連れていけ」

「───っ!」

 

 神は全能である。しかし地上に於いては『神の力(アルカナム)』を封印し、人間と変わらぬ。何も出来ない。歯噛みするディオニュソスにアレンは鼻を鳴らし去っていった。

 

 

 

 

 

 激痛で気絶するなど久し振りだ。そう思いながら目を覚まし周囲を見回すヴァハ。ベッドに眠るクロエとフィルヴィスの姿を見つける。

 怪我はないようだ。

 改めて部屋を見回す。

 

「やあ、起きたようだね」

 

 と、椅子に座ったディオニュソスが声をかけてくる。

 

「巻き込んじまったみてえだなあ」

 

 アレンの発言を聞く限り本来の狙いはヴァハ。次点でクロエ。フィルヴィス達は完全な巻き込まれだ。

 

「気にしないで欲しい。運がなかっただけさ、あの女神に目をつけられた君自身もね」

「…………ここは、【ディアンケヒト・ファミリア】か」

 

 見覚えのある部屋だ。本当に、世話になる。

 

「治療費は私から出しておこう」

「俺、ここの使用料自腹で払う日来るのかねえ?」

 

 基本的に奢られている気がする。

 

「しかし、すごい効果だな」

「ん?」

「アミッド・テアサナーレが君に赤い薬品を飲ませたらあっという間に治った。彼女は、君のスキルのキーに過ぎないと言っていたが」

「バラしたことには謝罪しません。月も跨がぬ内に何度も死にかける罰だと思ってください」

 

 と、アミッドが入ってくる。ジト目で睨んだあと、ヴァハの顔色を見てはぁ、とため息を吐いた。

 

「今回は俺のせいじゃねえよ」

「聞いています。ですが、背中を負傷したようですね。人の命を助けようとしたのは、美徳だと思いますが」

「俺は傷がすぐ治る。なら、俺が盾になりゃ戦力を失わずにすむだろ?」

「合理的ですね。本心なのでしょうが………」

 

 「ですが彼女は貴方が傷ついた姿を見て、憤ったようです」とアミッドは寝ているクロエを見る。ディオニュソスも頷いた。彼からアミッドに伝えたのだろう。

 

「貴方が傷つく事で、心に傷を負う人も居ます。それは、私では癒せない。ご自愛ください、自分の為ではなく、()()()()()()()()()………」

「だが断る」

 

 レベル2(アミッド)の拳がレベル1(ヴァハ)の顔面にめり込んだ。

 

「ぶっちゃけ誰が傷つこうと俺にゃ関係ねーしなあ」

「…………」

「ま、これからもお前がその身を差し出してくれんなら、心の内にはとどめておくさ」

 

 そう言うとベッドから立ち上がり窓に向かうヴァハ。ディオニュソスが止める間もなく飛び降りた。

 

「…………なんと言えばいいか」

「構いません。たった数日で、慣らされました……それに、私の願いを彼は無下にはできないでしょう」

「ああ、【ミアハ・ファミリア】には借金があるんだったか……」

「それは、関係ありません。彼が短期で万全に回復するには私が必要なのと、彼自身、身内には甘いようですから」

「………………」

 

 ディオニュソスは先程のヴァハの行動を思い出す。

 目を覚まし、傷の具合も場所の確認もせず、まず最初にクロエとフィルヴィスを探した。

 

「良い子、何だろうね。きっと、彼は己のズレを理解し、周りを理解してやり、その上で理解される気がない」

「ええ、本当に………不器用な人です」

 

 

 

 

 

「フレイヤちゃ〜ん、あ〜そ〜ぼ!」

 

 都市最強のファミリアの一つ【フレイヤ・ファミリア】。そのホーム『戦いの野(フォールファング)』。ヴァハが巫山戯た挨拶をすると無数の団員が武器を構え取り囲んだ。

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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