ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
ミノタウロス。
人より遥かにデカい体は当然パワーに優れ、時に大型の肉食獣すら追払う突進を喰らわせる牛の後ろ足を持つ故に直線に於いてはかなり速い。
とはいえ急に止まれない、四足の牛と違い二足の為スピードを出し過ぎると足を払われやすいなど欠点もあるが、それでも厄介には違いない。適正こそレベル2でも近接戦ならレベル3でも苦戦するかもしれない。
対してヴァハはレベル1。しかも駆け出しの冒険者。普通に考えて、勝ち目はない。
普通なら。
今回のミノタウロスは負傷している。追い詰められた獣は危険というが、それは死なぬ為に文字通り必死だからだ。必ず死ねない、そんな意思。逆に言えば、死にかけ。
そして、ヴァハは人型の相手にこそ本領を発揮できる。
「ヴォォォォォ!!」
ヴァハの首程ある豪腕が振り下ろされ地面が砕ける。細かい礫が飛び散りヴァハの頬を切る。いや、抉る。鈍い痛みが広がる。
ミノタウロスは母たるダンジョンから与えられし石斧で敵の首を切り落とそうと振るい、ヴァハはグニャリと腰を後ろに曲げかわし片足を上げ手首を蹴りつける。
「ヴ───ッ!」
正確に骨と骨の隙間を狙った爪先がミノタウロスの神経を圧迫し一時的に握力を奪う。
石斧はあらぬ方向に飛んでいく。武器は奪った。だが、モンスターはその身体自体が人を殺せる凶器。
「ヴォォ!」
「ハッハァ!」
振るわれる拳を避け胸に肘を打ち付ける。モンスターはダンジョンの天井や床、壁から生まれるくせに妙に生物的なのだ。内臓が存在し、生殖能力まで有する。
心臓も肺もあるなら胸に重い衝撃を受ければ心臓が………
「ブアアア!!」
「んが!? ん、んん〜?」
頭を捕まれ壁に叩きつけられた。効いてない。考えてみれば当然だ。レベルが違えばまず勝てないのが常識の冒険者。その冒険者がレベル2にならないとまず勝てないと判断されたモンスター………それも、力と耐久に秀でた。駆け出しの無造作に放った一撃など喰らうわけも無い。
「【血に狂え】!」
「ブォ!?」
ガンガンと壁に何度も叩きつけられ流れた血。腕に伝ったそれを、腕を振るう事で飛ばす。飛沫は細かい針となりミノタウロスの目を狙う。慌てて手を離し両手で顔を庇うミノタウロス。絶叫が響く。片目が潰れた。
「ハハ。失敗失敗………俺もまだまだこの街に馴染めてねぇみたいだなぁ………」
頭蓋に罅が入ったろう。砕けなかったのは、ミノタウロスが肩に怪我をしていたから。このミノタウロスは本来より凶暴にこそなっていても強力にはなっていない。当たり前だ。
「んー。誰だか知らねぇが感謝しねぇとなぁ………おかげで死なずに済んだ。後、楽しめる……」
恐らくこれが万全のミノタウロスだったなら、死んでいたろう。ヴァハはその辺は
「ハァ────」
で?
ヴァハは例え勝率が0でも、間違いなく戦うだろう。もし、奇跡的に勝てたら、きっと相手は良い表情を浮かべてくれるだろうから。
人間じゃないのが、心が無いのが悔やまれる。牛の表情など分からない。分かるのは精々悲鳴だけ。うん、それも楽しいな。
「クク。本当、今日だけで何度来て良かったと思えたことか……」
血は体外に流れる。それなのに興奮から一部分に流れ固く大きく形を変える。
「【血に狂え】」
「───!!」
体表の血が、傷口付近の体内の血が飛び散り先程殺したモンスター達の血と交じる。ヴァハの血が混じった血溜まりが浮き上がり剣や槍となる。ミノタウロスが一気に警戒度を上げる。
「逃げるなよ? こんなおもしれぇ殺し合い。今日を逃したら次は何時になるか」
下に潜ればミノタウロスなど幾らでも居るだろう。だが、手負いはいないだろう。なら殺されるだけだ。殺し合いは好きだ。殺されるのも別に良い。だが、死にたい訳じゃない。殺し合いの末に死ぬのは良いが殺されに行く気はない。
手を汚すベットリとこびり付いだ血を頭に塗りつけるように髪をかき上げる。元々赤い髪の毛はさらに赤く染まり濡れたことにより重くなり、粘度のある血液に絡められ纏められる。
「殺し合いを続けるぞ」
「ヴオアアアア!!」
ミノタウロスが突っ込んで来る。その拳をかわし、血の剣を突き刺す。先端が欠けた。レベル1の魔法、それも短文詠唱で付け足すなら量をこれだけ増やしたのだ。まあ、当然だろう。
なので傷口に突き刺す。
「ヴゥゥゥ!!」
恐らく傷を付けたのはレベル3か2。傷自体浅い。筋肉を掻き分け神経を僅かに掻きむしる程度が関の山。だが、十分。
「ハハハ!」
筋繊維の隙間に根を張り巡らせる。僅かだが筋繊維を千切る。本当に僅かだ。しかしこれ自体は攻撃でもない。
「BANG☆」
「!?」
人差し指と中指を相手に向け親指を立てる。特に意味はない。祖父が教えた動作で気に入っていただけの動き。だが、眩い光が辺りを包む。衝撃がミノタウロスを襲った。全身が熱い。体が痺れる。何が起きた?
「ハハァ! 痺れたかぁ?」
ヴァハのスキル。【魔力放出・雷】だ。魔力をそのまま雷に変換して撃ち出す無詠唱魔法と言っても差し支えの無い『レアスキル』。体内に根を張る血の武器から伝い、己を内から焼く雷にミノタウロスは確かにダメージを負った。だが───
「ゴアァ!」
「───!! カハ、ハ………ッハハ!」
それでも怪物は動く。豪腕を持って獲物を叩き潰さんと拳を振るう。咄嗟に血の武器を溶かし腕に纏う。赤い生物と非生物の中心の様な鎧。極めて忠実に再現されているのに何処か違和感を生じさせる虫の彫刻のような
「ハァ、ハハハハァ!」
この魔法を手にして一週間。未だ試行錯誤中で全容を知らない。一つ、今解ったことがある。
身体に近い程より硬く硬化出来る。身体に触れていれば、魔力消費を抑えられる。
刺々しいフォルムになった血の篭手。拳を振るうと同時に篭手を操り加速させる。
ミノタウロスの体が震える。皮膚が僅かに裂ける。対して此方は身体に無茶な動きをさせているからか肘関節と肩が軋む。腰が痛い。関係ない。
「ハハハヒヒヒャハハハハァ!!」
「ヴァァァァァァァァっ!!」
拳を交わし、殴り合う。ヴァハはミノタウロスよりよっぽど細みのその体格差と対人経験から得た動きの先読みで致命傷になるのを全て避け、或いは力が乗り切る前に迎撃する。
生まれたばかりのミノタウロス。生まれて16年のヴァハ。ここに来て両者の経験の差が如実に現れる。
「ヴォ、オオオオ!!」
本能か、僅かなうちに学習したのか、地面をその蹄にて踏み砕くミノタウロス。腕の数倍の力を持つ足が放った一撃に、まるで3級冒険者の短文詠唱魔法程度の爆発が生まれる。
吹き飛ばされ、転がる事でダメージを最小限に抑える。ミノタウロスは………両手を、否
「───ハハ」
まるで突撃体勢に入った猛牛。だが、その知識は何の意味もなさない。ビリビリと肌を震わす殺気が教えてくれるからだ。これが最大最強の一撃だと。
とても良い。絶頂しそうだ。
「カモォン♡」
操れるだけの血液殆どを左腕に纏める。圧縮され、硬化が施された血の鎧は鋼鉄を超える強度を誇る。
「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「アアアアアアアハハハハハハハハハヒャヒャヒャハハハ!!」
両者激突。ミノタウロスと角が、ヴァハの拳にぶつかる。ピシリと両者に亀裂。
押し負けたのは、ヴァハ。中指と薬指の付け根、前腕の上部が刳り取られる。角の先端が上腕と肩の付け根に突き刺さり、ブチブチと音を立て千切れていく。
「ヴォアアアア!!」
「ヒィヒャアァハハハ!」
勝利を確信して咆哮を上げるミノタウロス。その口内に、血の槍が刺さった。
「腕取ったぐらいでよぉ! なぁに勝った気になってやがんだぁ? 腕が取れただけだろうがぁ!」
ミノタウロスの目に、恐怖が宿る。理解できないこの生物に、恐れを抱く。が、直ぐに立ち向かう。
これは殺し合いなのだ。生きてさえいれば勝ち。片腕が失われた所で、それが何だと気付く。才能がある。このミノタウロスには、殺し合いの才能が。
「ギャハハハハ!」
だが、ヴァハとは才能も経験も差が開いていた。それが敗因。雷が口内から体内へと落ちる。全身が硬直する。まだ死んでない。だが、それだけ。喉を踏みつけられ口内から無理やり槍を引き抜かれ、枝分かれした先端が口内をズタズタに引き裂く。再び触れられたことにより、槍の強度は増す。今度は大量の血液を圧縮した。が───
「フレイム・リフト!」
「…………あ?」
いざ突刺そうとした瞬間、ミノタウロスは炎に飲まれて上半身が消し飛んだ。
フレイム・リフト
一体何処ファミリアのエルフィ・コレットの仕業なんだ
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員