ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
『27階層の悪夢』。
恩恵持ち故に一般人では歯が立たず、
とはいえ、戦いは数と知恵。
ダンジョン内で不審な動きがあるわざと
果には階層主さえ巻き込んだ大乱戦。多くの死者が出たらしい。そこまでは、少し調べれば分かること。
フィルヴィスは今もなお『悪夢』として語り継がれる事件の数少ない生き残り。そして、その事件以降彼女とチームを組んだパーティーは遅かれ早かれ彼女を残して全滅した。
「皆、気の良い奴等だった。私を憐れみ、手を差し伸べてくれた。そのせいで、死んだんだ……」
「それは、でも………フィルヴィスさんのせいじゃ………」
想像よりも遥かに重く、辛い過去に、エルフィは言葉に詰まる。貴方のせいじゃない、そう言いたいけど、言葉が上手く出てこない。
「どうする? ここで別れるか? 私はお前達も殺すかもしれんぞ?」
自嘲するように力なく笑うフィルヴィスに、ヴァハは無表情で視線を向ける。
「コレット、少し話しただけでも解る。お前は優しい奴だ、私とクラネルの仲を何とかしようとしていたのだろう?クラネルも、デュオニュソス様から聞いたぞ? 私達を、自分より心配してくれたと………お前達は、私なんかとは比べ物にならないほど綺麗だ」
「私は汚れている」。己の手を見ながら呟くフィルヴィスに、彼女の顔に何も言えなくなるエルフィ。それに対して、ようやくヴァハが口を開いた。
「だがお前は美しい」
「っ! 話を聞いていたのか、ふざけるな!」
「聞いていたさ。言葉が足りなかったな。嘆くお前の姿は、美しい。愛おしく思える程にな」
「ちょっ、ヴ、ヴァハ!?」
「嘆き、苦しみ、誇り高くあろうとして、結果余計苦しむ憐れさが
「────っ!」
ヴァハの言葉に固まるフィルヴィス。その頬にヴァハが触れ優しく撫でる。
「理解できないか? 仲間を失うのは辛いらしいなあ、俺にゃさっぱりだが………」
「触れるな、私は、お前を穢したくは………」
「俺を汚すう? ハハァ、面白い事言うなあ」
力なくヴァハの手を払おうとするフィルヴィスは、しかし何かを思い出し、怯えるように震える。
「世間じゃ誰かを殺して喜ぶ人間が汚らわしくて、後悔する奴は精神面やり直せるんだとよ。爺の書いた英雄譚にゃ良く出てた………」
「私が、やり直せるわけが」
「だろうなあ…………俺もそう思う」
壁から生まれてきたモンスターの四肢を切り落とし腹を踏みつけるヴァハ。
「だが、楽しんでねえなら俺よりマシだろうよ。殺し程度なら俺も散々やってるしなあ」
人を殺した事をケラケラと語るヴァハに、フィルヴィス達は何も言えなくなる。
「だからお前が俺に言うことは決まってる」
「………触るな、私が、汚れる」
再びフィルヴィスに触れようとしたヴァハの手を、フィルヴィスは弱々しく払う。
「面倒くせえ奴」
他人を穢れているもの扱いして、己が言えたことかと苦しそうな顔をするフィルヴィスにヴァハは面倒くさい奴と呟いてどうでも良さそうに欠伸をした。
「…………すまない」
「ハハァ、しっかり感謝して俺の代わりにエルフィを守るんだぞお」
「本当にレベル1なのかな?」
「近接戦だけでも
キラーアントの群を切り刻んでいくヴァハを見ながら呟くエルフィの問に、エルフィに迫るキラーアントを対処するフィルヴィスが応える。少しだけ、話しやすくなった。フィルヴィスはヴァハを時折恐れるよな視線を向けていたが。
「次で10階層………もう少し下まで進めるかもな」
「油断はするな。過信して命を落とす冒険者も多い」
「それはそれで………」
「ふざけるな」
「ヴァハ〜、フィルヴィスさんの前でそれは無いよ〜」
楽しそうだ、と続けようとしたヴァハをフィルヴィスが睨みエルフィもジトっとした視線を向ける。ヴァハは反省の色を見せずにヘラヘラと笑い肩をすくめた。
10階層は霧が立ち込めている。更には枯れ木なども生えており、これらはモンスターが持つと武器になるそうだ。『
「……………妙だ」
「ヴァハ?」
「一向にモンスターの気配が無い。同業者の気配も………それに、不自然なまでに匂いがしない」
目を細め周囲を見回すヴァハの言葉にフィルヴィス達も周囲を見回す。ヴァハは暫く周りを見た後エルフィとフィルヴィスの二人を見て頭をかく。
「
「え? あ、うん………」
「迷惑をかけるな」
困惑するエルフィと気を使われたことを察したフィルヴィス。
『───何故引き下がる。この先にお前の待つ物があるのに』
「「───!?」」
「………………」
突如聞こえてきた声に3人は足を止め振り返る。そこには、仮面を被った何者かが居た。
全身を覆い隠す紫根の
人、ではない。自分達より次元が上であると否応なく理解させる存在感。神だ。
『そのような者など放っておけ。危険を避け、お前の望む殺し合いなど巡り会えるものか』
特殊な加工でもされているのか、声がくぐもって男女の判別が出来ない。匂いも不自然に消されている。
謎の神物はゆっくりと歩み寄ってくる。
『それとも、共に連れて行くのも良いかもしれない。お前の望む恐怖に歪む顔が、絶望が奏でる絶叫が待っているぞ』
「……………」
『私の下に来い。逃げ惑い、泣き叫び、壊れていく人類を………極上の
この手を取れと言うように手を差し出してくる仮面の神物。
「へえ、それは面白そうだなあ……」
「ヴァハ!?」
「……………」
ニヤニヤ笑うヴァハにエルフィが叫びフィルヴィスが苦々しげな顔をする。
「だが断る」
『…………何故だ?』
「ハハァ。お前、
バチリと紫電を迸らせるヴァハ。ここでこの神を天に還せばかの神の眷属、
『そうか、残念だ。君なら私と共に、酒を酌み交わせると思ったのだが』
「残念だったなあ─────!」
ヘラヘラと笑うヴァハだったが、不意に目を見開く。振り返り、エルフィの肩を掴み押しのける。
「────っ!!」
赤黒い剣が振るわれ、ヴァハの左腕が切り飛ばされる。鮮血が薄暗いダンジョン内で飛ぶ。
「【血に狂え】」
『───っ!』
飛び散った血は無数の針となり剣を振った人物を貫こうとするもかわされた。
「クハハ、てめえかあ………また会えたなあ、嬉しいぜ」
紫の
「俺を殺しに来たか? 約束を守ってくれて嬉しいぜ」
『…………』
「人違いは許してくれ。惚れた女を見間違えてた……」
ケラケラと軽口を叩きながら血の紐を造り宙を舞っていた左腕を引き寄せ切り口を合わせる。が、首を傾げる。
『……………』
仮面の人物は何も応えず、駆け出す。狙いは───フィルヴィス
「っ!?」
咄嗟のことに反応できず目を見開くフィルヴィス。すぐに短剣を構えるが、遅い。禍々しく輝く赤黒い剣が振るわれる。
「────っ!!」
「────な」
しかしその剣はフィルヴィスを傷つけることは無かった。切り裂いたのは、ヴァハ。左肩から右脇腹に向かって切り進む剣はしかし止まる。仮面の人物が僅かに動揺した瞬間傷口から溢れた血が剣に絡み付きながら仮面の人物に迫る。
剣から手を離し再び距離を取る仮面の人物。ヴァハは剣を抜き、その剣を眺める。
「【忌まわしき歌を奏でる喉を喰い千切れ】」
「!? も、もう一人!?」
「チッ……」
仮面を付けた体型と声からして男が飛び出してくる。狙いはエルフィ。ヴァハは舌打ちして血の槍を放つ。
「───っ!! ご、が……【サイレンス・ダート】」
詠唱が完成する。腐肉のような赤黒い泥のようなものが這い出て3人を包み込み、一瞬喉が焼けるような痛みが襲う。
「!? 何だ、クソ………」
「がっ!!」
男は体内で枝分かれした血の槍に内蔵をズタズタに掻き回され息を引き取る。その死体から血を奪い鎌を造り神を狙うも、仮面の人物に弾かれる。
『では、死ね。怪物に喰われ、私に悲鳴を届けておくれ』
豊作の稲穂を思わせる
途端に、迷宮が震える。呻くように、唸るように、怒るように鳴動し、何処からともなく崩落の音が聞こえる。
ビキリッ、と。迷宮の天井に亀裂が生まれた。砕けた天井が降り注ぎ、卵の殻を破るように『それ』が姿を表す。
「…………黒い、竜?」
インファント・ドラゴンを除き、上層では生まれるはずの無いモンスターの頂点たる『竜種』が生まれる。
神と仮面の人物は何時の間にか霧の奥へと姿を消していた。
「
「【────】!………? !?」
「………詠唱が、なんで………声は出るのに」
「『
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員