ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
後衛職であるエルフィと、中衛職のフィルヴィスが魔法を封じられた。
恐らくは『
「と、とにかく逃げなきゃ」
「無理だろ。さっきの崩落音、出入り口が塞がれたはずだ。絶対に逃さず殺すって感じかあ? ハハァ、
おそらく先程の神の気配に反応したのだろう。そして、神を殺すために尖兵を送り込んだ。
ダンジョンは神を殺せるのか? それとも、追い出したいだけか。何方にせよ、明確な使命を与えられたモンスター。通常のモンスターより強さは上だろう。
ガラガラと落ちる瓦礫の雨。黒い竜………前足がそのまま翼となっている中層に現れる竜種、ワイヴァーンがその身を完全に母なるダンジョンから切り離す。
重力に従い落ちていく体は翼を広げ大気を掴み浮き上がる。
「──オオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「「───っ!!」」
広間中の霧が揺らめく。大きく開いた口から、煌々と輝く火が見えた。
「まずい!」
フィルヴィスが息を呑む。エルフィが慌ててワイヴァーンに背を向け走り出す。フィルヴィスも直ぐ様エルフィの後を追う。
「────────ッ!!」
炎の息吹が放たれ、地面に当たると土砂を巻き上げながら津波となり
逃げ場を探すも火除になりそうな大きな岩は見つかったが遠い、間に合わない。エルフィが耐えられるか不明な熱量に包まれる覚悟をした瞬間、何かに掴まれ浮遊感に襲われた。
「へ? わ!?」
目が炎に焼かれぬように閉じていた目を見開けば霧が焼き尽くされ燃え盛る草原と枯れ木の広がる光景が見えた。自分は、どうやら宙に居るらしい。自分だけではない、フィルヴィスもだ。
「お前等重いなあ………」
「え? これ、ヴァハ!?」
「お前、何故魔法を……」
上から聞こえた台詞に顔を上げると赤い紐が絡みついた左腕を上に向け、同じように赤い紐が絡みついた右腕を下に向けるヴァハの姿があった。
左腕の紐は天井に植物の根のように枝分かれして張り付き右腕の紐はフィルヴィスとエルフィに絡み付いていた。
紐の正体は、恐らくヴァハの魔法だろう。しかし何故………
「詠唱封じだ。発動した魔法自体は防げねえんだろうな。落とすぞ……腕が取れる」
そう言って血の紐を解く。フィルヴィスは危うげなく着地しエルフィはバランスを崩しながらも何とか着地する。ワイヴァーンは何かを探すように首を振り、忌々しげに唸るとギョロリと赤い双眸を獲物たる3匹に向けた。
この光景を、知っている。
燃え盛る大地に、宙を舞う漆黒の竜。
知っている。覚えている。あの時とよく似た光景。
「さて………」
状況を整理する。恐らく出入り口は使用不能。撤去しようにも魔法が使えなくなった魔道士と魔法剣士。ヴァハの【魔力放出・雷】なら可能性はあるが大人しく出口まで向かわせてくれるとも、たどり着けても壊すのに必要な溜めを行えるとも思えない。
仮にも神を殺す尖兵だ、その強さは通常のワイヴァーンとは比較にならないだろう。対してこちらは魔法の使えぬ後衛と中衛。発動していた魔法は継続中だが火力にかける血液操作。
さて、どう殺すかな。
「グオオオオオオオオッ!!」
ヴァハの思考を遮るように吼える。ヴァハはその威嚇に対し、笑みを浮かべた。
先程の襲撃者の死体から抜き取った血液を足に纏い人の構造とは異なる足を作成、体内の血液を操作し身体能力を上げ駆け出す。
「!!」
「──っ!」
血の槍は竜鱗にあっさりと弾かれ、ワイヴァーンの爪がヴァハの喉を目掛けて振るわれる。身体をのけぞらせ避けると片脚で地面を蹴り回転しながら蹴りを放つ。その際足に纏っていた血で刃を造る。
「グッ!?」
ギャイン! と金属音を響かせワイヴァーンの横っ腹の鱗に小さな傷が付く。それを確認した瞬間には血の槍が傷口向けて伸ばされた。
「ガアアアア!?」
穂先が肉に到達し血が吹き出す。ヴァハは槍を膝で蹴りつつ右手で下に押し込み梃子の原理を利用して傷口を抉る。バキバキ鱗が内から弾け、大量の血が吹き出しヴァハを赤く染め上げた。が、ワイヴァーンもただではやられず身体を回転させ槍を引き抜くとそのまま金棒の様な尾でヴァハを弾き飛ばす。両翼から発生した風が周囲に火の粉を巻き上げた。
「ヴァハ!」
「クラネル! くっ、コレット、ワイヴァーンは私が引きつける。ポーションを頼む!」
ワイヴァーンが口内に炎を溜めるの見てフィルヴィスは駆け出しエルフィに指示を出す。
フィルヴィスの接近に気づいたワイヴァーンが血のように赤い眼球をギョロリと向ける。
「オオオッ!!」
「くっ!」
放たれる火炎球。横に飛び避けたフィルヴィスは追撃を与えるべく再びワイヴァーンに向かって走りだそうとして、固まる。再び火炎球が迫っていた。連射速度が通常種のそれとは違い過ぎる。
腕を交差させ衝撃に備える。一級品とは言わなくともそれなりの防御力もある服だ。ある程度ダメージは軽減できる筈。
「くあ!!」
火炎球が爆発し吹き飛ばされる。連射だからか、威力は先程より劣る。それでも袖が焼け、露出した肌が痛々しい火傷を負っていた。ワイヴァーンは何時の間にか宙へと舞い戻りフィルヴィスにその爪を向ける。下降と同時に爪で引き裂く気なのだろう。
避けようと考えるも今の爆発で脳が揺らされ、足に力が行き渡らない。防御も間に合わない。と────
「カ───ッ!!」
眩い光がワイヴァーンを包む。雷だ。すぐに熱せられた空気の爆音と、雷が空気を引き裂いた独特の匂いがする。
鱗と違い脆い被膜が焦げ、穴が空いた。これで少なくとも飛べない。
「ハハァ! 続きと行こうぜ」
「ゴアアアアアっ!!」
バサバサと惨めに空を切る翼を動かしていたワイヴァーンの背にヴァハが現れる。ワイヴァーンは翼を失えどモンスターの王たる竜の誇りか、直ぐ様反撃に出た。その顔は明らかに怒りに満ちている。
「アアアアアアアッ!!」
「ハハハハハハ!!」
巨体に似合わぬ俊敏な動き。両翼についた爪と尾を巧みに使いヴァハに振るう。攻撃は、喰らわない。全て硬い鱗が防ぐ故に防御しない。
「赤星」
「────!?」
ワイヴァーンの瞳に勝利の確信が宿った慢心のその瞬間を待っていたかのように、ヴァハが左手人差し指を向ける。
左掌の中には小さな円錐があり、球体は点から線へと変わる。
円錐の正体は圧縮された血液だ。圧縮した血液の一部を硬化、一方向に開放することで放つ音速の一撃は頑強な竜の鱗を貫き肉を裂き、骨を砕く。体内に入った硬化された血液もまた圧縮されており、ワイヴァーンの体内の魔力により制御が解かれ元の大きさへと膨張する。
「アアアアアアアアッ!?」
ボゴンと肩あたりが内部から膨れ上がり内臓に傷ついたのか血を吐き出したワイヴァーンは我武者羅に暴れまわる。
体長5
「大人しくしとけやトカゲ」
バチィ! とヴァハが雷をワイヴァーンに落とす。筋肉を硬直させる雷に逆らい、ワイヴァーンが体を回す。再び尾の一撃。後ろに飛び射程外に離れるヴァハだったがフィルヴィスの真横に何かが落ちる。
「これは………腕?」
ヴァハの左腕だ。先程の一撃でちぎれたのだろうか? いや、違う。
「フィルヴィスさん!」
エルフィが走ってきた。フィルヴィスの視線はしかし紫電を纏うヴァハに向けられていた。
「どうしよう、ヴァハの傷、ポーション使っても治らないの!」
飛んできた左腕の断面は綺麗すぎる。千切れたのではない、仮面の襲撃者に
「魔力を使い過ぎるなクラネル! 死ぬぞ!」
恐らく不治の呪い。あの剣、恐らく『
規格外の自己治癒能力を持つヴァハにとって天敵とも言える呪いに付けられた傷は塞がったわけでは無かったのだ。魔法で体内の血を操りくっつけたり、止血していただけ。
魔法………つまり、魔力が尽きればその瞬間、ヴァハは再び出血を始める。致命傷である傷が開く。
「────っ!!」
だというのにヴァハは楽しそうにワイヴァーンと戦っている。フィルヴィスが何としても止めようと走り出そうとした時、縦横無尽に駆け回るヴァハを捕らえられずにいたワイヴァーンの口内に炎が揺らめくのが見えた。またブレスかと思ったが、炎に込められた魔力で尋常ではない。狙いは、地面。
「コレット!」
ヴァハも気付き血の盾を生み出し、フィルヴィスは咄嗟にコレットを守るように立ち塞がる。次の瞬間、炎が地面に放たれ、大爆発を引き起こした。
全方位に広がる炎の津波。最初の炎の濁流など比べ物にならず、3人を飲み込んだ。
感想お待ちしております
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員