ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
ヴァハが目を覚ますと見知った天井が見える。
「ようやく起きた」
「ダンチョ……」
「何なのかな、ヴァハは定期的に死にかけないと死んじゃう病気?」
ジトーとした瞳を向けるナァーザにヴァハはこれからも死にかけると笑うと拳骨を落とされる。呆れたように去っていくナァーザだったが疲労回復のポーションを置いていった。
「起きたようだな、ヴァハ……」
入れ替わるようにミアハが訪れる。空になった瓶を見てニコリと微笑む。それだけで多くの女が色めき立つことだろう。
「体に異変はないか? 聞けば、呪いを受けたとか。こんな時ばかりは、神の力が使えぬことを煩わしく思う」
「あ〜………」
そういや傷が一向に癒えなかった。あれ、呪いだったのか。
「アミッドに感謝しておけ。その呪いは、彼女が消した」
「あの剣は?」
「アミッドが解析している」
ヴァハの身体を切り裂き、癒えぬ傷を与えた剣。ヴァハは己の命を蝕んでいたその剣を忌避なく使用した。ワイヴァーンの堅牢な鱗を切り裂いたのは一級品と比べても遜色ないあの剣のおかげなのだ。
「それと、【ロキ・ファミリア】にもな」
「?」
「ちょうどダンジョンに潜っていたらしい。『
遠征ではないだろう。そういう噂は聞かない。恐らく資金集めの帰りか。下層について聞けば装備を溶かす芋虫がどうのとエルフィが言ってたし、決して壊れぬ『
「武器ねえ…………造り方、学んだ方が良いな。本格的に」
これまでの経験を踏まえるなら2、3日で基礎は覚える。後は己で発展させていくのがヴァハのやり方だ。
まあ、ものづくりに関しては素人。今回は漸く自分の才能にはない事かもしれないが。
「あまり心配をかけるなと言って、聞くお前ではないな」
「イエース」
「では、私にせめて出来る助力をさせておくれ」
その言葉にヴァハは起き上がり服を脱ぐ。ミアハはその背に指を当て、血を付ける。ステイタスの更新だ。神が己の
「……………む、これは」
「どーしたんすか?」
「おめでとう、ランクアップだ」
所要期間、約3週間。モンスター討伐
Lv.2到達記録を大幅に塗り替えた
「ランクアップおめでとう! やっぱり兄さんはすごいや!」
「ハハァ。お前も、魔法を覚えたそうじゃねえか」
「うっ! あ、あはは………」
ランクアップを祝して『豊穣の女主人』にて小さいながら宴を開く。発表されるのは後日。ヴァハが駆け出しとは知らない周りの冒険者達は嫉妬する者、まだレベル2だと馬鹿にする者、先輩面する者、感心する者様々だ。
素直に称賛してくるベルに魔法を覚えたとマナポーションを売ったナァーザから聞いていたヴァハが祝福すると引きつった笑みを浮かべた。
「ベルさん、お店にあった忘れ物の本を読んだんです。それがどうも
「ふーん。まあ忘れるほうが悪いだろ」
シルの説明を聞きふと、とある美の女神が頭によぎるヴァハ。ベルはシルさんが貸したんじゃないですか〜、と情けない声を出す。そう言えば彼女、なんか似てるな。
「ふっふっふ………」
「? どうしたあクロエ、とうとう完全に脳が腐ったか」
と、何やらニヤつきづらのクロエがやってきた。もともと頭が空っぽなのを知っていたヴァハはとうとう本当に脳にまで影響が出たかと憐れむ。
「ヴァハがランクアップしたという事は、より下に行けると言うことにゃ! そこにミャーもついていけば
「店の仕事があんだろ。それに、そういう事なら結局報酬はもらうぜえ?」
「にゃに!?」
どうやら自分で取りに行けばただでマタタビ酒が手に入ると浅い考えをしたらしく、ガンとショックを受けるクロエ。
「あ、そうだ兄さん、【ソーマ・ファミリア】って知ってる?」
「ん? ああ、ソーマね。知ってんよ」
何故そんな事をと尋ねれば、どうやら弟はサポーターを雇ったらしい。そのサポーターが所属しているのが【ソーマ・ファミリア】で、そんなサポーターの少女を嵌めないかと勧めてきた輩もいるらしい。
「少し調べりゃ簡単にわかる事だが、彼処はソーマを信仰してんだよ。神ではなく、その神が造った
「お酒を?」
「市場に出回ってんのは全部失敗作らしいが、それでもお前のその装備より高い。非売品の完成品はすげえ美味いらしいぜえ? 団員達は自分でその酒を買うために日夜身を粉にして働くわけだ。あまりの美味さに、それこそ手段を選ばなくなっちまう程になあ」
「…………………」
「全く、酒で人を支配しようなんてひでえ話だなあ。酒は飲んで楽しむもんだろうに」
「まあ、酒ごときで言うことを聞く方も聞く方にゃー」
「うん、そうだよね。お酒なんかで………あれ?」
何で店員達がお前が言うなとでも言うような視線を二人に向けているのだろう?
その翌日、まずは【ロキ・ファミリア】に向かったが、殆どの冒険者は出払っていると言われた。
「例の地下水路の捜索や。ちゅーか自分、昨日死にかけたと違うん?」
「ああ、それで?」
「それでって…………まあ、取り敢えず礼はいらん。医療費は今回ばかりは払えんがなあ」
「いいさ。あの程度ならすぐに稼げる」
「はは。駆け出しとは思えんなあ」
ヴァハの言葉に苦笑するロキ。これで嘘を言っていないのだから大したものだ。と、その時……
「ロキ様、お客様が」
「ああん? 誰や、ウチは誰も呼んどらんぞ」
「その、神です。ディオニュソスと………」
「昨日の今日でまた来おったか」
「気になる情報を仕入れたんだ。情報とは一日で増えるものだよ」
うんざりした表情ながら一応通したロキに、ディオニュソスは爽やかな笑みを浮かべる。
「昨日? お前達は、昨日も共にいたのか?」
フードを被ってやってきたフィルヴィスを見て、昨日のワイヴァーンによる攻撃で髪が焼かれたからと察したヴァハはハサミを借りフィルヴィスの髪を切り揃えてやりながら首を傾げた。
「…………気を悪くしないで欲しいが、君の力を借りたいと同時に、私は君を疑っていたからね」
「つまりフィルヴィスは俺の監視かあ……俺がエルフィに何かしねえか見張ってたのか?」
「私も、後になって聞かされた」
ショキショキと静かな音を奏でていたハサミを置き、フィルヴィスに巻いていた布を取ると髪を解かすヴァハ。エルフが、それも女のエルフが髪を触らせている光景にロキは感心しディオニュソスは微笑んでいた。
「ロキの眷属に何かをするというより、何かを出来ないように常に監視をつけるつもりだったさ。ところが、君は身を呈して少女を二人も守ったそうじゃないか………まあ、何もしなかったというわけでは無いが」
「───っ!!」
ディオニュソスの言葉にフィルヴィスは包帯が巻かれた首を片手で抑える。昨日の、文字通り唾液がつくほどの接近はもちろん血を吸われるという行為で感じた快楽、その快楽に身を委ね血を啜らせていた事実に顔が赤くなる。
「おおせや、ウチの子にも文字通り傷つけおったらしいなあ………」
「そういうスキルなんでね」
一応ロキの眷属も控えている。スキルの詳細を知られるようなことはどちらも隠してくれるようだ。故にヴァハも明確な言葉にはしない。
「取り敢えず、昨日はお前達は共にいたということで良いのか?」
「ああ……時間は、ちょうど君達が潜って、一、二時間といったところかな?」
「そうか……」
となると、あの謎の神物は彼等ではないことになる。読みが外れたか?
「終わったぞフィルヴィス」
「ああ、すまない」
「ふむ………似合っているぞ、フィルヴィス………」
「あ、ありがとうございます」
ロングからセミロングへと変わったフィルヴィスを見て微笑むディオニュソス。フィルヴィスは顔を真っ赤にして照れる。
「それでは本題に入ろうか、ロキ………」
ディオニュソスがロキに持ってきた情報は、24階層で起きている異変だった。何でも、モンスターが大量発生しているらしい。
同様の事件が30階層でも起きていたらしいがこちらは下層のためあまり人に知られなかった。ギルドはこの情報を制限している。そして、今回も。
ギルドの長であるウラヌスは事件そのものをもみ消す気ではないかとディオニュソスは勘ぐっているようだ。
「…………中層ねえ」
「まさか、向かう気か? レベル1には危険すぎるぞ」
「ああ、レベルなら昨日2になった」
「「「………………は?」」」
ヴァハの言葉に、ヴァハが正真正銘の駆け出しであることを知っているロキ、ディオニュソス、フィルヴィスが固まる。
「な、なな………なんや……………なんや?」
思わず叫びそうになったロキだったが、その頭にポトンと羊皮紙の巻物が落ちた。上空には、一羽の梟。中身を見て、嘆くように天を仰いで手のひらを額に叩きつけた。
「アイズが24階層に行きおった……」
「よお、久し振りだなベート・ローガ」
「またてめえ等か」
「よ、よろしくお願いします」
「……………」
ヴァハがベートに声をかけると不服そうな顔でフィルヴィスとヴァハを睨むベート。エルフの少女、レフィーヤが自己紹介するもフィルヴィスは無言のまま。
「足を引っ張るようなら蹴り飛ばすからな。くたばる前に失せろよ」
「……抜かせ、
「くたばるようなら置いてけば良いだろお?」
「う、うぅ〜」
アイズを追うために急遽組まれた即席チーム。空気は最悪。レフィーヤは、涙目になった。
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ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員