ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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ディアンケヒト・ファミリア

 エルフィ・コレット。人呼んで『誰とでも仲良くなれる美少女かつ火炎魔法が得意な才媛』(自称)は数人の仲間と上層にてミノタウロスを探していた。

 本来なら首を傾げられるような行為だが、実は先程【ロキ・ファミリア】の遠征組に追い立てられたミノタウロス達が上へと逃げたのだ。

 一応全て倒したと思うが、生き残りが居ては犠牲者が出るからと念の為本拠に待機していた者やミノタウロス討伐に参加しておらず体力に余裕がある者達で残党を探していたのだ。その時、声が聞こえ慌てて走った。冒険者が襲われている!と慌てて魔法を放ったエルフィは冒険者の無事を確認すべく駆け寄る。

 

「あ、あの! 大丈夫でし───ひっ!?」

「んー……」

 

 酷い状態だった。全身傷だらけで後頭部など皮膚が一部剥がれ白い骨が見えている。左腕は千切れ転がっていて、その左腕自体も前腕や指が一部抉れている。

 誰がどう見ても重症だ。だというのに男は地面に転がったミノタウロスの魔石と外皮、エルフィを交互に見てからはぁ、とため息を吐く。

 

「仕方ねぇな。うん、時間かけた俺が悪い。ドロップアイテムと魔石は持ってきな」

 

 ベルトポーチから取り出したポーションを飲み込む男。質があまり高くないのか、傷の治りは遅い。せいぜい血が止まったぐらいだ。

 

「ち……」

「ち?」

「ちりょー!!」

 

 ガシ、と腕を掴み走り出すエルフィ。仲間への連絡?忘れている。

 向かうはディアンケヒト・ファミリアだ。男は突然の事に驚き慌てて薬草などを入れているバッグを足に引っ掛ける。

 エルフィはレベル3。魔法使いタイプの後衛職とはいえ少年の一人二人簡単に運べる。ちなみに重症者を乱暴に扱わないほうがいいと言う知識は彼女にはなかった。傷だらけの男をバッグごと引きずるエルフィ。目立ったのは、言うまでもない。

 

 

 

「誰か! 治癒士の人、空いてますか!?」

 

 【ディアンケヒト・ファミリア】のホームの扉を勢いよく開き中に入るなり叫ぶ。何だ何だと視線が集まる中エルフィは男を前に押し出した。

 

「急患です!」

「「「────!!」」」

 

 その余りに痛々しい傷に目を見開くディアンケヒトの眷属達。直ぐに奥の部屋に通される。団員の一人がアミッド様を呼べ!と叫んだ。どうやら彼は【戦場の聖女(デア・セイント)】の治療を受けられるらしい。

 

「なぁ、俺ぁホームに帰りてぇんだが?」

「喋ってはいけません! 安静に!」

「横になってください! 指は何本に見えますか!?」

「…………」

「くそ、意識が………!」

 

 無反応の男に意識が混濁していると判断する団員達。大声で呼ぶ。と、扉が勢いよく開いた。

 

「急患は!?」

 

 150(セルチ)に届かない小柄な身体。白銀の長髪に、長い睫毛がかかった大きな双眸。精緻な人形を思わせられる美少女、アミッドは直ぐにベッドに寝かされた少年に駆け寄る。

 

「出血が酷い………今から血液型を調べます。該当の血液を追加で持ってきてください」

「は、はい!」

 

 血だらけと聞いて幾つかの血液は持ってきているようだ。その内どれを使っていいか調べる為に血を採取しようとして───

 

「LUCKY☆」

 

 少年が唐突に上体を起こす。当然誰もが驚き硬直する。見た目完全に死にかけなのだから。

 しかし少年は周りの反応など無視して輸血用のパックを手に取る。中身は見えないが匂いで解る。皮を引き裂き中身を大口を開け口に垂らす。

 

「ん、んぐ………ぐご…………はあぁ………」

 

 溢れ、口元を汚す血を拭い一息。血を啜るという悍しい光景に誰もが固まる中、変化が起きた。

 傷が、塞がっていく。机に置かれていた腕を掴み千切れた箇所に近づければ細かく砕けた骨の破片が落ちて、筋肉や血管、神経が蠕き絡み付いていく。腕の距離がある程度近付くと骨も再生していき肉に包まれ皮膚に覆われた。

 

「んん〜………ハハァ」

 

 指を動かし拳を作ったり開いたり。肩をグルグルと回す。支障はない。

 

「な、な………な………え?」

 

 誰もが混乱する中ヴァハは考える。自身が持つ特殊すぎる【血染め(レアスキル)】。その一番の危険性は人として異質な行為を行うことでは無く、経験値補正。

 それさえ隠せば良いだろう。ヴァハとしては、『レアスキル』を巡って争いが起きるのはむしろ望むところ。それでも恩義があるので避ける方向を取る。その辺りの常識は取り敢えずあるのだ。

 

「俺のスキルだよ。『血潮吸収(ブラッドドレイン)』。人だろうとモンスターだろうと血を啜りゃ魔力も体力も傷も治る」

 

 ちなみに己の血は完全に効果がなく、己の血を混ぜ操れるようにした血は効果が薄い。そりゃそうだろう。自前で回復できるはずも無い。

 

「………『レアスキル』ですか」

「ああ、本来ならお前らの世話になる必要は無かったんだがなぁ。【ディアンケヒト・ファミリア】で金使うとダンチョがうるせぇし。まあ、血はご馳走になったからな。その分の金は払うさ……」

「あ、その………それ、【ロキ・ファミリア】が立て替えます」

「んー?」

 

 エルフィの言葉に首を傾げるヴァハ。一応彼女からすれば自分が助けた相手。その上金まで払ってくれるとは。

 

「その………ミノタウロスが上層に居たのは、私達のせいで」

「ハァン………なるほどねぇ」

 

 手負いのミノタウロス。やはり逃げてきた個体だったか。個体というか、群れらしいが。

 

「俺は【ミアハ・ファミリア】のヴァハ・クラネル。主神も心配してるだろうから一旦帰る。話はその後にしてくれ………金の方はよろしく」

「え? あ、は、はい!」

「………ミアハ?」

 

 エルフィは慌てて返事をする。ヴァハは話は終わりだと言わんばかりに歩き出す。金が払わなくて済むなら此処に用は無い。ディアンケヒトの眷属達も血を啜り傷を癒やした不気味な存在に思わず道を開ける。

 

「貴方は………ミアハ様の?」

「ああ。だからここに借り作るわけにゃ行かんかったのよ。ディアンケヒトはミアハにやたら突っかかるんだろ? また助けてやったから借金増やせとか支払い日を早めるとか言われたらたまらねえし」

「…………それは、言いそうですね」

「ところでお前薬を買うと代金として臓器抜き取って素材にするって本当?」

「………エリスイス………!」

 

 ヴァハの言葉に頭痛がするとでも言うように眉間を押さえるアミッド。

 

「そのような事実は存在しません」

「だろうなぁ……まあ、今後とも宜しく。支払い日とかで会うかもなぁ」

「今回のように怪我をしていたら、早死します。どうかお大事に」

「んっんー………そいつぁ無理だなぁ」

「………借金を返す為に、潜るのは必要ですがそれで死んでは元も子もありませんよ……」

「ハハァ。借金なんざ、興味ねぇよ。俺が楽しいから潜るんだ」

 

 ヴァハはそう言い残すと扉を開け【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院から去っていった。




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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