ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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起死回生の一手

「くっ!」

 

 天井から地に向かって落ちながらも大口を開け獲物を食らわんと迫る食人花にアスフィはすぐに仲間達と合流する。

 

「密集陣形! ネリー、彼を頼みます」

「は、はい!」

 

 魔剣使いである只人(ヒューマン)のサポーターであるネリーにヴァハを預けると陣形に加わる。四方八方から迫る食人花に飲まれぬように互いに背中をカバーし合う。

 しかし、それはあくまで耐えるだけ。打開策が思いつかない。

 

 

 

 

「────っ!!」

 

 無尽蔵に襲いかかってくる食人花とレヴィスの猛攻にアイズの対処が遅れていく。ここに来るまでに慣らしたはずの感覚が、強化されたレヴィス達の動き全てに対処しきれない。

 一瞬の隙をつかれ剣が弾き飛ばされた。

 直ぐに取り戻したいがレヴィスが許すはずは当然なく、苦手ではないが剣技に比べると拙い格闘術で相手せざるを得なくなる。

 

 

 

 

「ウィリディス! 何処だ!?」

「フィルヴィスさん、私はここに! ………きゃっ!」

 

 自分の安否を確認しようと叫ぶフィルヴィスに返事し、合流しようとしたレフィーヤだったが食人花の群がそれをさせない。慌てて岩陰の隙間に隠れるが、自分が情けなくなってくる。

 仮にフィルヴィスと合流して、この混戦の中何が出来るというのだろうが。平行詠唱も出来ぬ自分が。

 アイズを助けるために送られたのにやっている事は足を引っ張ることだけ。得意の魔法も使えなければ、自分はこんなにも脆い。

 

──魔法が取り柄だと抜かしているうちは、てめーは一生お荷物だ

 

 不意に道中ベートに言われた言葉を思い出す。あの時はフィルヴィスが庇ってくれた。しかし、どうだ。今の現状、どこに否定できる要素がある。

 とうとう岩が破壊され食人花が覗き込んでくる。無数の口が哀れな妖精を噛み殺さんと此方を伺う。が──

 

『───!?』

 

 食人花達は炎の脚を持つ人狼に焼き尽くされる。恐らく手持ちの魔剣を使ったのであろうベートは《フロスヴィルト》から炎が消えたのを見て小さく舌打ちをする。

 先程ヴァハの雷を吸収したのもそうだが、彼の白銀の長靴は魔法を吸収する。魔法が消えるのは、取り込んだ魔法が消えた証拠。一つ無駄にした。

 

「おいっ!」

 

 そのまま呆然とするレフィーヤに近づくと胸倉を掴み上げる。

 

「俺はアイズのところに行く! ()()()()()()()()()()()()!!」

「…………へ?」

 

 その言葉を理解するのに数秒要した。言葉を理解して、意味が分からなかった。

 

「あの……え? ええ!? でも、私は………」

「テメーは『雑魚』だ! だがそのアホみてえな『魔力』だけは認めてやる! 追いつきたいだの雑魚の常套句(きまりもんく)なんて抜かしてんな! 俺達に吠え面かかせてみろ!」

 

 混乱するレフィーヤなど気にせず、ベートはそう言う。

 

あのクソババア(リヴェリア・リヨス・アールヴ)を超えてみせろ!」

「─────!!」

 

 そう、言い切る。

 誰もが認める都市最強を超えろと。アイズも、ティオナ達も、レフィーヤと親しい誰もが言わないその無理難題を、誰もが考えもしない事柄をやってみせろと何時も何時も誰かを見下すベート・ローガが言う。

 それだけ言い残すと返事を聞かず走り出したベートの言葉にレフィーヤは涙が流れる。

 

──いまはまけたままで(いつか)……、勝つのはムリでも(おいつきたい)……お前はそれでいいのか

 

(悔しい!)

 

 再び襲いかかってくる食人花の蔦をかわしながら地面を転がり泥で体を汚すレフィーヤ。

 悔しくて仕方がない。そんなふうに問い掛けるだけの権利を持てるベートの強さが、情景(アイズ)を助けに行動できる強さが。

 何より、弱さを嘆くだけの自分が………!

 

「フィルヴィスさん!」

「ウィリディス、無事か!?」

「私を……」

 

 心配して問いかけてくるフィルヴィスには悪いと思いつつも、レフィーヤは彼女に頼み込む。

 

「私を、【ヘルメス・ファミリア】の人達のところへ!」

 

 

 

 

「ちくしょおお! なああんた、さっきみたいに雷でなんとかならないのかよ!?」

「オー、出来るぜえ。代わりに俺が死ぬから絶対やらねえがなあ」

 

 ルルネの懇願に対してヘラヘラと笑うヴァハを見てルルネはいっそう怒りが募る。地上に戻ったら絶対この腐った性根を叩き直してやると心に誓う。

 と、食人花の一部が魔法によって吹き飛んだ。それによりほんの少し息を整える余裕ができる。  

 

「助かったぜ……」

「今のは誰の……?」

 

 ポックとポットが呟く中、レフィーヤがその場に現れる。

 

「……お願いします、私を守ってください!」

「ま、守るってどーすんだよ!? 幾らお前の魔法が強いって言ってもこの数じゃ……」

 

 レフィーヤの言葉にルルネが言う。当然だ、戦う者と背を預け合うのと、動けぬ者を守り続けるのでは勝手が違う。ただでさえ、今はヴァハを守っているというのに。

 

「わ、私を信じて………」

 

 喉が震える。今から彼等の命を自分が背負わなくてはならないと思うと、押し潰されそうになる。けど、この場にリヴェリアは居ない。いるのは自分だ。

 【千の妖精(サウザンド・エルフ)】レフィーヤ・ウィリディスだ!!

 

「私は魔導師です! 私を守る貴方達を、救ってみせる!」

 

 もう出来ないことを嘆くな。自分に出来ることを、自分にしかできない事をしろ!! してみせろ!

 

「全員【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の下に! 彼女に全てを委ねます!」

 

 その覚悟を感じ取ったアスフィは直ぐに新たな指示を出す。

 

「方円陣形!」

 

 レフィーヤと、動けないヴァハとヴァハを守るためのネリーを中心に円形に並ぶ。ネリーも陣の中から攻撃できるように片手でヴァハを抱き片手に魔剣を構えた。

 

「5分! いえ、3分持たせてください!」

 

 レフィーヤの言葉に、一同はどう思ったのか。いや、きっと誰もが長いと思った。ヴァハはチラリと己を抱き寄せ微かに震えるネリーを見る。

 この瞬間この役目を押し付けられるということは、前線向きではないのだろう。温存すべき魔剣を使っているし、本来はサポーター。今この場に於いてヴァハを守る以外にあまり役目がない少女の細く白い首を目にして、ヴァハは笑みを浮かべ唇の隙間から牙を覗かせた。

 

「ったく、やになるわね【ロキ・ファミリア】って、誰も彼もスタイルいい美人。私へのあってつけ?」

 

 エリリーがはぁ、とため息を吐きながら言う。

 

「そりゃあんたと比べれば誰だって」

「しっ、それ以上は可愛そうでしょ?」

 

 と、そんなエリリーをからかうようにポットとポックが言う。

 

「某はありがたいね。守るんなら美女に限る」

「こんな時にも軽口が叩けるお前等が頼もしいよ」

「空元気の気休めかもよ?」

「オイオイ、そういう事は解ってても言うもんじゃないぜ」

 

 【ヘルメス・ファミリア】の団員達は絶望的な状況の中で笑ってみせる。それは確かに、空元気なのだろう。だが………

 

「空元気結構! 我々に残された唯一の活路です! 3分間!! 絶対に【千の妖精(サウザンド・エルフ)】を守り抜きますよ!!」

「「「おうっ!!」」」




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ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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