ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている!   作:超高校級の切望

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決戦

『【ウィーシェの名のもとに願う】』

 

 レフィーヤが詠唱を始めると、早速食人花達の動きが活発化する。()()()()()為に少しでも魔石を成長させるという本能の下、高い魔力に惹かれるのだ。

 

『【森の先人よ。誇り高き同胞よ】』

 

「倒そうと思わないで! 近づけない事だけを考えなさい!!」

 

 アスフィが叫ぶ。この数だ、一体一体を倒そうとすればすぐに呑み込まれる。【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の噂は聞いている。彼女の魔法なら、確かにこの場を切り抜けられるかもしれない。

 

『【我が声に応じ草原へと来たれ】』

 

 フィルヴィスも【ヘルメス・ファミリア】に交ざりながらレフィーヤを心配そうに見つめた。少しでも食人花の注意を向けられるよう魔法を使いながら戦う。

 

『【繋ぐ絆。楽園の契り】』

 

 ここは場所がいい。大岩に囲まれながらも広い空間。警戒すべき集中した一点突破が行えず、包囲されても敵はある程度分散している。

 

『【円環を廻し舞い踊れ】』

 

 3分。決して不可能な数字ではない!

 と、僅かに安堵をうかべたアスフィだったが、次の瞬間ホセが右腕を食人花の牙に貫かれる。

 

「!! ホセを救しゅ───!」

 

 獲物を独り占めさせまいと他の食人花達にも殺到されるホセ。直ぐに助けを送ろうとするアスフィだったが、それを拒否したのは他でもない、ホセ自身だった。

 首を横に激しくふるホセに言葉が詰まる。

 

『【至れ、妖精の輪】』

 

「ホセ!!」

「全員持ち場を離れないで!」

 

 助けに駆け出そうとした団員達をアスフィが止める。陣形を崩せば、食人花の群れにあっという間に飲まれ、レフィーヤは詠唱中断を余儀なくされる。そうなれば、勝ち目はない。全滅だ。

 ホセもそれが解っているのかアスフィの判断に笑みを浮かべ………救出された。

 

『【どうか──力を貸して欲しい】』

 

「ぐあああ!?」

 

 ホセの右腕が切られる。肩から先を失ったホセはしかし食人花の拘束から逃れ、赤い紐に捕まっていた。紐の先にいるのは、赤い何か。

 

「ハハァ。油断するなよ、死んじまうぜえ?」

 

 ケタケタ楽しそうに笑うその声は、ヴァハの声だった。襲い掛かってくる食人花に対して、体から赤い刀を無数に生やし、回転して切り裂く。

 形を変え、赤い? まさか、血か?

 

「ネリー!?」

「……………」

 

 ネリーは2つの小さな傷から血を流し倒れていた。血を吸われたのだろう。いや、だとしても何故動ける? あの状態で無理に動けば体が崩壊するはず。

 いや、全身に纏うあの赤い鎧………

 

「まさか、貴方動けない体を血で纏って無理矢理!?」

「【血は炎】」

 

 アスフィの問に答えず、ヴァハは炎で食人花を焼き払い【ヘルメス・ファミリア】の下に戻る。

 

「んん〜……中々美味い血だったなあ。もうちょい頑張れそうだ」

「何を………貴方の体は、既に限界……」

「ほれ、来るぞお?」

 

 ヴァハが参戦しようとし難色を示すアスフィだったがヴァハは気にせず笑った。死にかけているのに、楽しそうに。

 

 

 

「っ!」

 

 アイズが回転蹴りを放つもレヴィスは難なく弾く。

 

「剣技に比べれば拙いものだな」

 

 続けざまに放たれる追撃をかわすも追い詰められていく。剣があればまだ戦えるだろうが、アイズの剣は先程弾かれた。

 

「いい加減、終われ!」

 

 

 

『【──間もなく火は放たれる】』

 

 不意に、よく知るエルフの少女の歌が聞こえた。彼女もまた、戦っているのだろう。そして、もう一人、この場に来ていたファミリアの仲間である灰色の狼が駆け抜けて来た。

 

「よこせアイズ!」

 

 言葉はそれだけ。しかし十分。すれ違いざまに『風』を白銀の長靴に喰わせ、アイズは剣を取りに行く。怪物の相手は、獰猛な狼が受け持った。

 

「おとなしくしてろ化物女!」

 

 風を纏ったベートの蹴りに目を見開くレヴィス。『アリア』の風を扱う狼人(ウェアウルフ)に苛立ったような視線を向ける。

 

「邪魔だ、どけ狼人(ウェアウルフ)!!」

 

 紅の剣が振るわれる。防御や攻撃にも使え、走力の底上げも行ってくれる風を纒いなおレヴィスはベートを圧倒する。

 

『【忍び寄る戦火。免れえぬ破滅】』

 

 しかし聞こえてくる声はベートが弱者と見放す妖精の少女の声。最強の魔道士を超えて見せろと叱咤してきた、己より弱い雑魚が、抗っている声。

 

「てめえがくたばれ!」

 

 押し返す。敵わなかろうが、そんな事は関係ない。弱者に対し文句があるなら言ってみろと、弱い相手にしか噛みつけないならすっこんでいろと吠えるベートは、自分が行わぬ事を他人に強制する小物ではないのだ。

 

 

 

 

『【開戦の角笛は高らかに鳴り響き】』

 

 食料庫(パントリー)外からも魔力に惹かれた食人花の増援が来る。円陣を組む【ヘルメス・ファミリア】に対して赤い獣は戦場を好き勝手駆け回りモンスターの血を啜り、無数の刃と大量の炎で命を蹂躙していく。

 

「────」

 

 が、口元から血が流れ血の鎧が一瞬揺らぐ。全身が文字通り砕けていく。無茶が過ぎたか、身に余る力の代償が騒ぎ立てる。

 

『【暴虐なる戦乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎】』

 

「おい、化物! あれ使え!」

 

 と、不意に聞こえてきた声に振り返ると小人族(パルゥム)の男が何かを指差し、女の方が別の場所を指していた。見ると火炎石が残っている闇派閥(イヴィルス)の死体と、大岩が見える。

 

「ああ、なるほど〜」

 

 誰もが生きるために必死だ。小人族(パルゥム)の男も生き残るために必死で策を考えたのだろう。早くしろと叫ぶ中ヴァハはやはりこんな状況でありながら笑い、血の鎖で死体を掴み、大岩の真下に放り投げる。

 再び血で何かを生み出す。それは、弓矢だ。

 

『【無慈悲の猛火。汝は業火の化身なり】』

 

「【血は炎】」

 

 生憎と雷は使えない。故に矢に炎を纏わせ放つ。

 爆音が響き渡り、男と大岩が倒れる。後方が塞がれ、全員前方に移動する。

 

「前方中央敵が密集!」

 

 本能か、偶然か、食人花達がひと塊になって突っ込んでくる。

 

「……ムリだよ、こんなの……」

 

 ルルネが絶望したような力なく言う。

 

「固まって突っ込んでくるぞ!」

「っ!」

 

 フィルヴィスは動けないレフィーヤを見て直ぐに駆け出す。

 

「【盾となれ破邪の聖杯(さかずき)】!!」

 

 それはフィルヴィスの2つ目の魔法。

 

「【ディオ・グレイル】!!」

 

 それは白く輝く円形障壁。聖なる壁が悪しきモンスター達の進撃を阻む。

 

『【ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを】』

 

「ぐ、う……っ!!」

 

 なるほど強力な盾だ。だからこそ、食人花達の勢いもます。盾の隙間から漏れた敵を【ヘルメス・ファミリア】とヴァハが対処する。

 

「───っ!」

 

 だが、抜けた数匹が地面を通りレフィーヤへとその蔦を伸ばす。盾を構えるフィルヴィスは動けずアスフィとルルネが駆け出すも間に合わない。

 レフィーヤも、溜めた魔力が多すぎて動けない。

 

「おらぁ、行ってこいチビ共!」

「へっ? きゃあ!」

「っ!? く、くっそおおお!!」

 

 そしてヴァハは体重の軽い小人族(パルゥム)の双子を血の鎖で縛ってぶん投げた。

 

「やってやらああ! くたばれ糞花!」

「はああああ!!」

 

 メイスとハンマーを振るい蔦を叩き落とす。打撃に強い食人花。弾かれるだけで、健在の蔦が再びレフィーヤを狙うが僅かな隙を無駄にするヴァハではない。仲間を放り投げるという予想外の行動に固まっていた【ヘルメス・ファミリア】と違い実行犯のヴァハは追い付き血の刃を振るう。

 

『【焼きつくせ、スルトの剣───我が名はアールヴ!】』

 

 そして、魔法が完成した。最強の魔道士にのみしか許されぬ筈の魔法がこの場に召喚される。

 

『【レア・ラーヴァティン】!!』

 

 魔法円(マジックサークル)から巨炎が放たれ、放射状に広がる火炎の極柱。ベート達を避けて天井まで昇る業火は食人花を飲み込み、焼き付けし、絶叫まで溶かす。

 

 

 

「なんだと!?」

 

 炎の光が横顔を焼き、レヴィスは目を見開く。それでもベートが放った蹴りを受け止める。

 

「貴様如きが「風」を纏おうと…!!」

「雑魚共が足掻いてみせたんだ!」

 

 白銀の長靴に夥しい亀裂が走る。皮膚が、肉が血を吹き出し骨が圧砕する。

 

「テメーごとき抑えねぇで……」

 

 しかし琥珀の瞳に宿る光は苦痛に歪まない。寧ろ、力強く輝く。

 弱者の少女(レフィーヤ・ウィルディス)はモンスター達を殲滅した。格下ばかりの集団(【ヘルメス・ファミリア】)はレフィーヤを守りきった。だというのに、強者(ベート)がなんの成果も挙げられず……

 

「どの面晒そうってんだぁああああ!!」

「───!?」

「が──っ!!」

 

 雷がベート達に落ちる。白銀の長靴にまとわりつき、渦巻く風に雷が混ざる。

 嵐を携えた白銀の長靴が、紅の大剣を弾いた。

 

「………っ!」

 

 ベートごと雷を浴びせてきたヴァハをギロリと睨みつけるベート。ヴァハは罅だらけの顔でニヤニヤ笑っていたが、ベートに向けられた右腕が文字通り砕ける。

 

「やっちまえ」

 

 絶対に、何が何でも地上に戻った暁にはぶん殴る。そう決めたベートは自分の真上を通過する金の影を見て、一旦怒りを収める。今は一人の少女に檄を飛ばすことにする。

 

「アイズ」

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

 再び剣を手にし、風を纒い迫るアイズ。レヴィスは体勢が崩れたまま、防御が行えない。

 

「───あああああああっ!!」

 

 渾身の一撃! 紅の大剣を切り裂き、レヴィスの胸に到達する。剣身の気流が叫び声を上げながら暴れまわり、レヴィスを吹き飛ばす。魔石のある胸の中央には届かなかったが、それでもアイズが競り勝った。

 

「……今のお前には勝てないようだ」

 

 傷を修復しながら、レヴィスは起き上がる。赤い大主柱(はしら)まで吹き飛ばされる程の威力、相当なダメージを負ったはずだが、その顔に焦りはない。

 

「この大主柱(はしら)……これは食料庫(パントリー)中枢(きも)だ………これが壊れるとどうなるか、知っているか?」

「っ!?」

 

 ──まさか!?

 慌てて止めようと駆け出すアイズだったが遅く、レヴィスの拳が大主柱(はしら)に叩き付けられ、砕く。

 それに連動するように、天井が崩れ始めた。

 

「逃げねば埋まるぞ? 特に、助けが必要なお前の仲間はな」

 

 レヴィスの言葉を肯定するように、慌てる冒険者達の声が聞こえてくる。

 

「怪我人には手を! 荷物は捨て置きなさい、脱出が最優先です!」

「情けねえ犬人(いぬ)とは違うんだ!助けなんかいるか!」

「あーっ面倒くさい! これだから狼人(ウェアウルフ)は嫌なんだ!」

「ウィリディス!?」

 

 アスフィが撤退命令を出し、ベートが助けなど居るかとルルネに罵倒を浴びせる。

 フィルヴィスは精神枯渇(マインドダウン)を起こしたレフィーヤを助けようと手を伸ばし、固まる。汚れた己の手で美しい同族に触れることを躊躇したのだ。だが、その手をレフィーヤが掴んだ。

 

「慎重に運べ〜、今の俺は割れ物だからなぁ。ハハハ」

「死にかけのくせに元気だなこいつ。頭おかしいんじゃねえの? 置いてっちまおうぜ!」

「駄目よ。地上に戻ったあと、やった事どころか生きてることを後悔させるほどお仕置きするんだから」

 

 小人族(パルゥム)の姉弟に運ばれるヴァハはケラケラとこんな状況で笑っていた。

 仲間達の様子を見て、アイズもまた撤退を決める。そんなアイズに、レヴィスが声をかけた。

 

「『アリア』…59階層に行け。ちょうど面白い事になっている。お前の知りたいものがわかるぞ」

「……どういう意味ですか?」

「薄々感づいているだろう? お前の話が本当だとしても体に流れる血が教えているはずだ。お前自ら行けば手間も省ける……詳しいことは『ミノス』にでも聞け。ヤツは、ある程度、お前より感づいているようだ」

 

 アイズの問に、要領を得ぬ言葉を返すレヴィスはヴァハを見て、続いて崩れゆく天井を、否、地上を睨む。

 

「地上の連中は私達を利用しようとしている……精々こちらも利用してやるさ」

 

 地上……彼女の仲間が、地上にもいるのか。

 

「おい【剣姫】!」

「アイズ、急げ!」

 

 まだまだ聞きたいことは山ほどある。しかし、彼女と戦っていては逃げることも不可能になる。何より、きっとベート達も残ろうとする。アイズは仲間達の下に駆け出した。

 

 

 

 

 

「何をどうしたら、こんな体になるのですか」

「強いて言うなら、呪い?」

 

 罅割れ、砕けかけるという大凡あり得ぬ状態のヴァハを見てアミッドは呟く。それに対してヴァハは呪いだと笑う。

 しかし呪詛(カース)の類は感知されない。かと言って、確かにそれ以外の要因も想像ができない。

 

「これが呪いだと言うなら、貴方は一体()()()()()()のですか?」

「勘がいーな。教えねーけど」

「………何故ですか? それでは、適切な治療は───」

「知った所で、たかがレベル2。世界最高で、回復に於いては最高の魔道士すら超える君でも処置は不可能さ」

 

 と、その時軽薄な声が聞こえた。振り向くと面会謝絶の筈の病室の扉が開かれ、一人の男が扉の縁に背を預けていた。

 

「何者ですか? 現在ヴァハは、原因不明の重体で面会はお断りしているの、です………が」

 

 勝手に入ってきた相手に対し若干怒りを滲ませるアミッドだったが、その正体に気づき目を見開く。

 

「何者? そうだね、種族こそ異なれど、俺はその全身罅だらけの彼の友達さ」

「爺のパシリだ。つまり俺のパシリ………」

「あれえ?」

 

 気障ったらしく微笑む美青年に対し、ヴァハはそう返す。パシリ扱いされた人物………否、神物は苦笑する。

 

「久し振りだな、()()()()

「ああ、久し振りだねヴァハ・クラネル。輝かしき表の英雄譚とは無縁でありながら常に英雄と共にその時代を生きる多くの者の心を動かし、歴史を華やかに彩る我等が愛しき影の英雄(ダークヒーロー)よ」




その頃のロキ・ファミリア

アイズ「59階層に行きたい」 

団長「解った。良いだろう」

ママ「お前達の報告にあった女が言っていたらしいな」

アイズ「うん。詳しいことは、ミノスに聞けって」

ヒゲ「ミノス? 誰じゃ、それは」

アイズ「………………えっと……………誰だろ?」



アイズはヴァハをヴァハとして覚えている。この後フィンがベート達に聞きに行くまで解らなかった



感想お待ちしております

ヴァハ君のヒロイン

  • フィルヴィス・シャリア
  • アスフィ・アル・アンドロメダ
  • アミッド・テアサナーレ
  • エルフィ・コレット
  • メイナちゃんやティオナを混ぜて全員
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