ベル・クラネルの兄が医療系ファミリアにいるのは(性格的に)間違っている! 作:超高校級の切望
「ダーク、ヒーロー?」
聞き慣れぬ言葉にアミッドは首を傾げる。ヒーロー………は英雄だろう。ダークは………ダークファンガスとかのダークだろうか?
闇の英雄? 何だそれは。
「こちらの話さ。そうそう、ヴァハ君。
そう言ってヘルメスがヴァハに投げ渡したのは、赤い液体が入った小瓶だ。話の流れからして、恐らく血液。
「それは、誰の血液ですか?」
「大丈夫大丈夫。変な病気とかないから……」
「ま───」
現在ヴァハを診ている者として、何者かも解らぬ血を飲ませるのは気が引ける。しかしヘルメスはヘラヘラと笑い、ヴァハはあっさり飲み込む。そして、うぇ、と顔をしかめた。
「…………ああ、なるほど」
「………あれ?」
特に変わった様子はない。てっきりこれで治るかと思ったヘルメスは不思議そうに首を傾げる。ヴァハは納得したように頷く。
「大丈夫ですか? 体に、異変は……───え?」
ヘルメスが持ってきた辺り、本来なら何らかの効果が現れる類なのだろう。ひょっとしたら『人魚の生き血』かもしれないが、今のヴァハにどんな薬がどんな反応を及ぼすか分からない。故に薬も使えずに居たのだ。
体調に変化がないか診察するために近づき、のばした手が掴まれ引き寄せられる。
「───!?」
首筋に、ヴァハの牙が二本突き刺さる。
ビクリとアミッドの体が震える。皮膚が貫かれ、痛みが確かに走ったが次に来たのは快感だった。
蜂の中には新鮮な獲物を喰らうために虫を麻痺させる種類もいると聞くが、それに似たようなものなのかもしれない。
獲物を逃さぬ為に、逃げる気力を奪うために与えられる思考を麻痺させる快楽に咄嗟に押しのけようとした腕から力が抜ける。体が熱を持ち、その熱を逃がすように熱い吐息が漏れる。
「ヴァ、ハ………? あ、っ………う、くぁ………」
ふと、つい最近の出来事を思い出す。
聞けばヴァハに噛まれたらしい。当然ヴァハに抗議しようとしに行ったアミッドだったが、エルフィ本人に止められた。
──その、あの状況じゃ仕方なかったし………えっと、あの………気持ち、良かったし
「っ………ふ、うぅ………」
その時は一体何をと思っていたが、今この瞬間嫌というほど理解した。確かにこれは、噛まれたことに怒りなど沸かない。
「…………ぷは」
「はぅ………〜〜〜〜〜っ!!」
漸く満足したのかヴァハが首から牙を抜く。しばし快楽の余韻でぽーっとしていたアミッドだったが直ぐに正気に戻り首を抑えて距離を取る。その顔は、真っ赤に染まっていた。
「な、何を!! 私の血は、既に試したでしょう!?」
「呪いが解ける前にな………」
「…………!」
と、ヴァハが腕を見せる。どれだけ血を与えても癒えなかった体の亀裂が白煙を上げ、消えていった。失った片腕も生えてくる。
「…………一体、なんの血を」
「俺の力の大元。そりゃ、力使い過ぎた代償を精算するにはこれ以上無い血だったわな。んじゃな………」
そう言って病室から出ようとするヴァハの腕をアミッドが掴んだ。
「経過観察をします。ベッドへ戻りなさい」
「いやいや、アミッドちゃん? ヴァハ君ならもう大丈夫だと思うけどな………」
「ヘルメス様。先程、貴方の言葉には確信がなかった。それはつまり、ヴァハがああなるのは初めてだったのでは?」
「それは、まあ………」
「で、あるなら完治したかどうかはわからぬはず。あれを見て、完治した確信もなく退院させるわけには行きません」
「いや〜、でもさ………」
「神であろうと、なんであろうと、この治療院では私がルールです」
「……………は、はい」
「使えねえパシリ………」
ヴァハとしてはアミッドの気を損ねて美味い血を分けて貰えなくなるのは避けたい。口が達者なヘルメスならなんとかするかと思ったがアミッドに気圧されてそそくさ逃げていった。その際ヴァハに何かを手渡す。
「お兄ちゃん!」
「ヴァハ! 大丈夫〜?」
ヘルメスが帰ったあと、面会謝絶が解除され早速見舞いに来た人物は、ティオナと、メイナだった。
ベッドに飛び込んでくるティオナと駆け寄ってくるメイナ。どちらも心配しているというのが表情からわかる。
「って、ヴァハ? 治療院でタバコ吸っちゃだめでしょ? しかもメイナちゃんまでいるのに」
「タバコ、臭い………」
因みにヴァハは煙草を吸っていた。ヘルメスから受け取ったのだ。オラリオには無い銘柄で、ヴァハは基本的にこれしか吸わない。
「ほらほら、煙草の火を消して」
レベル5の素早い動きでヴァハから煙草を奪ったティオナは灰皿に先端を押し付け火を消す。まだだいぶ長さがあったのに、勿体無い。
「でも意外、ヴァハって煙草吸うんだね。初めてみた」
「びっくり……」
「俺の故郷の近くの、精霊の祠近くで群生していた葉から造られた特注品だ。俺は基本的にこれしか吸わねえ」
「精霊の祠!? ヴァハの故郷って、近くに精霊の祠あるの!? お伽噺みたいな!?」
「絵本みたい……」
精霊の祠の情報を聞き目をキラキラさせるおとぎ話や英雄譚が大好きな少女二人。話して話してと目で訴えかけてくる。
「喧しいやつだった。まあ、もう死んだがな」
「え? せ、精霊が? なんで、だって、精霊の寿命は」
「凄く、長いはず」
「そりゃそうだ。精霊は、基本的に寿命で死ぬなんてまれだ」
「じゃあ、どうして」
「そんなもん、外的要因による死亡………誰かに殺されたに決まってんだろ?」
ヴァハはそう言ってケラケラ笑う。
「ま、どうでもいいじゃねえか。しかし、ちょうどいいな。何時だったか約束してた、『アルゴノゥトの真実』を話してやるよ」
「いいの!?」
「楽しみ」
そうして、ヴァハは語り始めた。人に騙され王に騙され、なし崩し的に怪物に攫われた姫を助ける事になった道化の物語を。
道化のまま、英雄達を導いた始まりの英雄の物語を。
感想お待ちしております
因みにヴァハの血が美味いランキング
1位アミッド
2位フィルヴィス
3位エルフィ
ワースト3位
3位チンピラ
2位飲んだくれ
1位ヘルメスが持ってきた何者かの血
ヴァハ君のヒロイン
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フィルヴィス・シャリア
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アスフィ・アル・アンドロメダ
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アミッド・テアサナーレ
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エルフィ・コレット
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メイナちゃんやティオナを混ぜて全員